自動運転で使う高精度3D地図データ、その作製方法は?(深掘り!自動運転×データ 第41回)

MMSが大活躍、汎用カメラ使った作製技術の開発も



自動運転技術の実用化に伴って重要となってくるのが「高精度3次元地図」(高精度3Dマップ)だ。そんな高精度3次元地図はどのように作製されているのだろうか。具体的に解説していこう。

■高精度3次元地図の作製
MMS(モービルマッピングシステム)が主流

高精度3次元地図の作製は、国内においてはモービルマッピングシステム(MMS)の利用が主流となっている。

MMSは、GPSやカメラ、LiDAR(ライダー/レーザースキャナ)、IMU(慣性計測装置)など計測に必要な各種センサーを搭載した車両で、実際に道路を走行し、位置を特定しながら道路や道路周辺の形状や構造物、地形などをデータ化していく手法だ。

カメラによる画像やLiDARによる点群データから、建物や道路の形状、道路標識、ガードレール、路面文字、マンホールといった道路周辺の3次元位置情報を高精度かつ効率的に取得する。

その後、MMSで生成された高精度3次元データから、基盤地図をベクトルデータとして抽出する。路肩縁や区画線、停止線、横断歩道などの実在地物をはじめ、各車線の中心線を表現する仮想の車線リンクもベクトル化し、図化していく。

図化工程で整備された地物データの関連付け(構造化処理)や、各社が独自に情報を付加する競争領域において後々利用しやすいフォーマットへの変換(DMPフォーマット)を行い、協調領域としての高精度3次元地図データが完成する。

新たなマップ作製・更新技術も

国内の高精度3次元地図の作製はダイナミックマップ基盤(DMP)社が担っており、すでに2019年3月末時点で全国の高速道路や自動車専用道2万9,205キロのイニシャル整備を完了している。一般道については事業化に向けサンプルデータの作成を進めている段階だ。

林道や農道を除く一般道は総延長約128万キロに及び、これを網羅するためにはMMSで全ての道路を走行する必要がある。また、作製後もデータを最新のものに保つため定期的に更新しなければならず、一大作業が延々と続くことになる。

こうした課題を解決する研究開発も進んでおり、トヨタ系のTRI-AD(トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント)が効率的に高精度地図を生成・更新する技術開発において一定の成果を挙げている。

TRI-ADは、MMSなど専用の計測車両を使用せず、衛星や一般車両から得られる画像データなどを基に高精度3次元地図を作製する実証を行い、高解像度の衛星画像を使用した実証では相対精度25センチ程度、ドライブレコーダーのデータを使用した実証では相対精度40センチ程度の地図生成に成功している。

2020年4月には、自動地図生成プラットフォームAMP(Automated Mapping Platform)を活用し、車両センサーで収集した画像などのデータから道路上の変化を検出することで、DMPの高精度3次元地図の効率的な更新の可能性について実証を開始することを発表している。

一般車両に搭載可能な普及価格帯のカメラで入手したデータによって高精度3次元地図の更新が可能になれば、計測車両の走行距離や台数、人件費を大幅に削減しながら迅速に更新することが可能になる。

将来こうした技術が確立されれば、全国各地をくまなく走行している無数の一般車両からデータを収集し、マップの作製・更新を行うことが可能になる。LiDARを搭載したレベル3、レベル4の自動運転車が社会実装されれば点群データも更新可能になるかもしれない。

■ダイナミックマップへの進化

自動運転においては、高精度3次元地図にさまざまな情報をリアルタイムで付加したダイナミックマップが用いられる。

路面情報や車線情報、建物の位置情報など「静的情報」を備えた高精度3次元地図をベースに、交通規制の予定や道路工事予定、広域気象予報情報といった「準静的情報」、事故情報や渋滞情報、交通規制情報、狭域気象情報などの「準動的情報」、周辺車両や歩行者、信号情報といったリアルタイムの「動的情報」を重ねていくイメージだ。

各情報の更新頻度は、静的情報がおおむね1カ月以内、準静的情報は1時間以内、準動的情報は1分以内、動的情報は1秒以内とされている。数値は今後変わる可能性があるが、膨大なデータが更新され続けることになりそうだ。

■【まとめ】未来の高精度3次元地図は一般乗用車が作製する?

マップ作製においてはMMSが主流であることに変わりないが、膨大な作業が必要になる観点から、TRI-ADが開発を進める汎用レベルのカメラを活用した取り組みは要注目だ。

ゼンリンとMobility Technologiesも地図情報のメンテナンス効率化に向け、走行車両が得る映像データを機械学習によって自動でデータ化する技術開発に着手している。タクシーなどの営業車を活用することで、膨大なデータを集めることができそうだ。

今後、ADAS用カメラの有効活用をはじめ、マップデータ収集機能を搭載したドライブレコーダーの登場など、さまざまな展開が想定される。将来の高精度3次元地図は、一般乗用車が担うことになるかもしれないと思うと非常に興味深い。

一方、このような高精度3Dマップのデータ取得などに使うカメラやレーダーなどのセンシングデータが正常に記録されていなかったり、長時間の走行によってデータが破損してしまったりしては、元も子もない。そのような理由で、車載品質の堅牢性や耐久性などを有した信頼性の高いストレージが求められてくる。

そんな車載品質のストレージを試すためのプログラムとして、ストレージ開発大手の米Western Digitalは、検証用に車載用フラッシュストレージを無償提供するプログラムを実施している。プログラムでは、利用目的に応じて5製品の中から利用目的に応じて選択することが可能だ。

プログラムについての詳しい内容は「検証用フラッシュストレージの無償提供プログラム」から確認できる。

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