自動運転バス×データを考える BOLDLYとWestern Digitalが対談

境町で無料運行、求められるストレージの要件は?



ウエスタンデジタルのラッセル・ルーベン氏(左)とBOLDLYの佐治友基社長(右)

自治体で初めて自動運転バスの定常運行を2020年11月から開始している茨城県境町。この自動運転バスの運行業務を担っているのがソフトバンク子会社のBOLDLY(ボードリー)だ。

地方都市などにおける公共交通機関の存続の「切り札」として自動運転バスが注目を集める中、BOLDLYは自動運転車両運行プラットフォーム「Dispatcher(ディスパッチャー)」を活用し、遠隔からの運行管理などで貢献している。







このような遠隔管理において重要な役割を果たすのが「データ」だ。通信によって映像データなどが逐一共有されることで、自動運転バスの安全性を飛躍的に高めている。

今回は、茨城県境町での自動運転バスの運行におけるデータの取り扱いや、円滑なデータの取得や活用に向けて何が必要になるのかなどをテーマにした対談の内容をお届けする。

ご登場頂くのは、BOLDLYの佐治友基社長と、自動運転を含む車載向けストレージを開発・製造・販売する米ウエスタンデジタルのラッセル・ルーベン氏(車載向けストレージ部門マーケティングディレクター)の両人だ。

■茨城県境町で自動運転バス、5カ月間にわたり安定稼働

ルーベン氏:早速ですが、茨城県境町での運動運転バスの取り組みについて教えて頂けますか?

佐治氏:境町では現在、5カ月間ほど安定して1日3台の自動運転バスを稼働させています。住民の方たちが自動運転バスに乗ってスーパーに行き、乗って帰ってくるという日常使いをしてくれており、1日約40〜50人の利用があります。

現在は、車両運行責任者としてセーフティドライバーが同乗する必要があり、セーフティドライバーがタッチパネルの発車ボタンを押すと自動運転が始まります。ただし今後、道路運送車両法や道路交通法などが無人運転に対応した法律となる見込みですので、それと同時に我々もセーフティドライバーを乗せずに運用を始める予定です。

また、車両から運行管理に必要なデータを取得するために車載対応のストレージデバイスを使う必要があるのですが、そこに御社(Western Digital)の製品を搭載させて頂いています。

■世界で最もさまざまな種類の車両を試したことがある会社に

ルーベン氏:BOLDLYさんは車両から取得したデータをどう活用しているのでしょうか?

佐治氏:これまで、さまざまな種類の自動運転バスを走行させ、車両とシステムを接続してデータを取得し、そのデータを運行管理システムに表示し、どのタイプが最も実用化に向いているかを試してきました。

自動運転車両には、小型や中型、ガソリン車やEV(電気自動車)などさまざまな種類がありますが、2016〜19年ぐらいの4年間で19車種を試し、気付けば世界で最もさまざまな種類の車両を試したことがある会社になっていました。

ただし、優秀な車両が今後どんどん出てくる中で、小さなベンチャー企業である弊社が完成車両を作ろうとしても、なかなか勝ち目がないと考えています。

ではBOLDLYの戦略として何をすべきか。それは、将来的に自動運転バスを導入する事業者を想定し、その事業者のIT化やITで行わなければいけない業務を支援する会社になることだと考えました。

こうした考え方のもと、自動運転バスのオペレーターに将来なるであろう地域の企業ともビジネスに取り組んでいます。

日本の各地域には、地域に根ざす「〇〇交通」や「〇〇バス」という名前の事業者がたくさんあります。事業者によっては100年前後の歴史を有していますが、人手不足という課題を抱えています。彼らこそが自動運転バスというツールを使い、これからの100年も交通事業を展開していくと考えています。

ルーベン氏:ちなみに19種類ある車両の中で最も有用だと感じた車両は?

佐治氏:サステナブル(持続可能性)で本当にフル無人オペレーションを想定できるものという視点では、フランスNavya製の電動車両「NAVYA ARMA」が候補に上がります。走行実績のほか、メンテナンス体制や保険なども一番進んでいる印象です。

ARMAは低速の自動運転シャトルですが、境町での運用では最高時速を20キロまでにするという意思決定が最初にあったので、ARMAを導入しました。ただしARMAも完璧ではなく、障害物回避の点などまだまだ改善が必要です。

境町で運行する自動運転バス「NAVYA ARMA」
■データ取得は「直接型」、映像はSDカード1枚に1日分

ルーベン氏:境町では現在、1日で自動運転バス3台が稼働しているとのことですが、データは車両から直接取得していますか?

佐治氏:データの取得方法としては「直接型」と「間接型」の2パターンがあり、我々は直接型です。車両から直接データを取得しています。間接型は、メーカーがサーバーにデータを集約し、そのサーバーからデータを取得する形です。

どちらのパターンもデータ容量が大きいとコストが大きくなるため、もちろん生データであればそれに越したことはないのですが、データ量をどのように圧縮するかというノウハウが求められてきます。

映像については、フレームレートが30fpsや60fpsあると映像がすごく綺麗に見えますが、それを5fpsぐらいまで落としたり、あるいは画素数もかなり下げたりして、何が起きているかは分かるけれど人の顔までは鮮明には見えない程度の圧縮具合を実現しています。

ルーベン氏:データの記録用には弊社の64GBのSDカードを使って頂いていると思いますが、それはずっと挿したままですか?

佐治氏:ドライブレコーダー用のSDカードとして高精細な画質や音を記録するのに使っており、SDカード1枚を1日分として使い、1日ごとに別なSDカードを挿して記録を行っています。

SDカードは車両ごとに30枚程度を配備しており、それらをまとめると過去1カ月分のデータとなります。車両内で使っているため振動や日差しなどの厳しい環境にさらされますが、今のところ全く問題なく動作しています。

■車両電源の突発的な遮断に耐えうるストレージが求められる

ルーベン氏:走行中に大量のデータを取得し、走行後にいざ使おうとしたときに、データが取得できていなかったり、データが壊れていたりすることは自動運転業界の「あるある」だと聞きます。BOLDLYさんとして、データやストレージに関する製品に求めている要件を教えて下さい。

佐治氏:充電ケーブルを挿すときなど、車両の電源が突発的に遮断されるケースが結構あり、電源が急にオフになっても書き込みが保証される機能が非常に重要だと思っています。

また、事故が発生した後は記録データが重要な情報源にもなるため、データが改ざんされない仕組みがあることも重要な要素だと考えています。

■BOLDLYが開発する「Dispatcher」、その概要は?

ルーベン氏:続いて、Dispatcherの概要をお教えいただけますか?

佐治氏:まず事業者名や会社名を入力し、自動運転バスを配備する営業所を入力します。そこに自動運転バスの遠隔管理ができる人や整備できる人なども登録し、自動運転バスが3台ある場合は車両を3台登録します。すると、それぞれにIDが割り振られます。

車両や人が登録できたら、次は走行するルートの登録です。新規登録でバス停を追加し、緯度・経度などを入力し、そしてバス停をつなげば走行ルートとなります。あとでバス停を追加登録することも可能です。

次に、例えば平日は午前10時から走り始めるようにしたり、30分おきに発車するようにしたりと、時間とルートを組み合わせてリクエストを作ります。

運行前の点検項目はさまざまあり、オペレーターや遠隔管理者の点呼状況、睡眠不足ではないか、体温は高くないかなどのほか、今日の天候、バッテリーの状況、カメラの状況、ドラレコ本体にSDカードが挿入されているかなどの項目があります。

全ての点検を終えないと、自動運転バスはグリーンの状態、いわゆる「ステータスOK」にならず、エラーとなります。

ルーベン氏:自動運転で走行中、Dispatcherはどのように動作するのですか?

佐治氏:実際に何かが起きればアラートが出ますし、GNSSの信号が取得しにくい場所でもアラームが出るようにしています。

また、新たに追加できるアラートもあります。例えば車両がふらつき、その現象が起きてもアラートが出る設定でなかったとします。その際には同様の現象が起きた際にアラートとして表示するように設定すれば、その後は画面上でアラートが出るようになります。

Dispatcherの画面
■境町が自動運転バスをスムーズに使いこなす社会に

ルーベン氏:渋滞でバスがスケジュール通りに運行できないこともありますか?

佐治氏:あります。境町はWoven City(※編注:トヨタが開発しているコネクティッドシティ)のように自動運転のために作った環境ではなく、ごく一般的な公道ですので、ハードルは高いです。しかし、一般的な公道で自動運転バスを運行できれば、「横展開性」はとても高いと思っています。

境町では、郵便局などがあって路上駐車が多かった場所も、境町の人たちがとても協力的で、路上駐車をしないよう気遣ってくれるようになりました。自動運転バスが停まっているときは追い抜きをしてくれるため、渋滞も起きません。

最初に自動運転バスが時速20キロで走行することを住民の皆さんに伝えたとき、「渋滞が起きるのではないか」「路上駐車があると走れないのではないかと」などと懸念されていたのですが、実際に運行が始まると住民の方の理解が高まっていき、自動運転バスがスムーズに受け入れられました。

ルーベン氏:ちなみにルート上に信号機はありますよね?車はちゃんとそれを意識して停まるのですか?

佐治氏:現在、信号機がある場所では必ず停まる設定にしています。ただし、青信号のときは停まってはいけないので、同乗しているセーフティドライバーがゲーム機のコントローラーのようなハンドルの「進めボタン」を押し、停まらずに信号を通過するようにしています。

信号機は県警の管轄ですが、県警が次世代の信号機に変えてくれると、信号機との通信によってこの動作を自動化できます。この点につきましては、BOLDLYは、過去に千葉県で信号情報を取得して車両と連携させる実験に成功しています。

■ARMAはレベル2の扱いだが、「実質レベル4」を実現

ルーベン氏:現在の法律下において、境町で走行するARMAはどういう扱いですか?

佐治氏:ARMAは法律的には「レベル2」の扱いであり、ゲームコントローラーをハンドルの代わりと認めてもらっています。

「ハンドルを使わずに車両がこんなに動けるなら、自動運転レベル4なのでは?」という声もありますが、運転手が乗っているから運用上はレベル2として考えられ、公道で走行する許可が出ています。

ただ、人の操作でARMAが動いているものではないことを住民は理解しています。運転手には地元の方を雇用していますが、「この車両はエレベーターと同じで行き先だけを設定すればいい」という感覚ですので、実質的にはレベル4と近しい状態です。

ルーベン氏:つまり、今の運行体制を維持している限りにおいては、レベル2扱いではあるものの、自動運転で自由に走れてしまうということでしょうか?

佐治氏:レベル4での走行を認める法律はなくても、「実質レベル4」の実用化は日本ではできています。ただし、万が一事故が発生した場合には運転手が責任を取る形になります。本当のレベル4であれば「運転手」という概念は存在しないので、責任分担の考え方はレベル2の扱いと言えます。

警察としては、走行や技術実証はどんどん進めてほしいというスタンスです。そして境町のように住民を乗せた運行も実際に始まっています。

■レベル2の自動運転バスで「運転手」が負う責任は?

ルーベン氏:現在のレベル2の走行においては、万が一のことがあったときに運転手が責任を負うとなると、セーフティドライバー業務を担うことに躊躇する人もいるのでしょうか?

佐治氏:運転手としての責任には「民事責任」と「行政責任」と「刑事責任」の3つがあり、民事責任については保険がききます。

行政責任に関しては、運転手である以上、事故が起きた後にゴールド免許がブルー免許になるといったリスクはあります。刑事責任に関しては一般車と同じ扱いです。

本当の自動運転レベル4であればそもそも運転手がおらず、刑事責任は自動運転システムを作ったメーカーか、自動運転バスを運行している会社が負うことになるかと思いますが、現状はそうなっていません。

■Western Digitalは今後、より「大容量」「高速」なストレージを提供

佐治氏:御社の車載製品部門では、より優れた新しい製品の展望をお持ちだと思いますが、今後も非常に足が長い車載マーケットの中でどのような取り組みをされているのか、どのようなトレンドを追いかけているのかを教えてください。

ルーベン氏:今後は今まで以上に「大容量」「高速」なストレージが必要になっていくと思います。特に開発段階では車両側で数十TBのデータを扱う必要があり、弊社はすでに開発車両向けに製品を提供しています。

そのほか、車両側で取得したデータをあとで分析するために、クラウド側にデータを送信したり、自分のサーバーに落としたりするためのストレージも提供しています。耐久性や信頼性が高く、車載という厳しい環境で耐えられるような製品もすでにあります。

佐治氏:未来の自動運転車両への搭載を考えたときに、機能に対するマーケットからのリクエストや製品に対する引き合いは、間違いなく数年前と比べても強いですよね?

ルーベン氏:例えば、車両システムへ挿抜可能なSSDのニーズがあります。大量のデータを取得してクラウド経由で送信すると通信コストがかさむからです。もっとコンパクトで信頼性が高いものが欲しいというリクエストもあります。

もっと振動に強い基板に実装できるようなストレージの要望のほか、1TBまでのストレージやパソコンでよく使う高速規格「PCIe」への対応に関するリクエストも頂いています。

■用途やユースケースに応じた耐久設計、「信頼性」も重視

ルーベン氏: 御社でも自動運転用に弊社の車載ストレージをご使用いただいていますが、実際に使用した感想やフィードバックなど現場としての考えを教えていただきたいです。

佐治氏:ストレージに関して最も大きな不安要素は、データが破損していないかどうか、というところが一番大きいです。

我々は色々なSDカードを試しましたが、今はWestern Digital製の製品に落ち着いています。エンジニアによれば、他メーカーの製品と比べると故障率が飛躍的に低下したとのことです。予期せぬシャットダウンが起きたときのデータ破損もなく利用できています。

ルーベン氏:ストレージは全部一緒ではないですよね。量販店で買える製品と産業向けや車載向けの製品は作りが異なり、ユースケースも変わります。例えば、SDカードは昔は主に写真を記録する目的で設計されました。そして次の段階として、動画の記録にも適した設計に変えました。

車載に関しても、もともと車載で主に使っていたNANDフラッシュは地図データやナビ向けのもので、主にデータの「読出し」で使用されていました。一方、最近のドライブレコーダー向けのストレージでは常に「書込み」が行われています。こうしたユースケースの変化に合わせ、耐久性がしっかり保たれるよう製品デザインを追求しています。

自動運転ラボ:車載向け製品において耐久性以外のリクエストで特徴的なものはありますか?

ルーベン氏:「信頼性」ですね。自動運転だけではなく、車載向け製品は人の命が関係しますから、不良が起きてはなりません。仕様書通りに使えば壊れないという保証が求められます。信頼性にはデータリテンション(データ保持)も含まれます。

■自動運転バスで「歩車混在」の社会、「運賃無料」のモデルを実現

ルーベン氏:データという切り口のテーマに限らず、自動運転業界の方々が一番気にしているテーマの1つに、「都心部の自動運転」があるかと思います。この点について、BOLDLYさんはどういうアプローチをされていますか?

佐治氏:「現在できていること」と「これからやりたいこと」があります。

現在、大手デベロッパーである鹿島建設さんや三菱地所さんなどとともに、まちづくりの中で自動運転技術をどう活用するかを検討しています。

東京は道路が狭く建物も多いですが、歩行者天国にした道路で低速の自動運転モビリティと歩行者が歩車混在するような、そんな社会を作っていきたいと思っています。人間であれば人がたくさんいる中を運転することは難易度が高いですが、自動運転車であればセンサーで人との距離を保ちながら走行できます。

先日、丸の内の仲通りで、日本で初めて歩行者天国で自動運転車を走行させました。ウォーカブル(※編注:歩きやすい・歩きたくなる)な人間中心の道路を作るための実験で、歩行者に十分な周知が行われていることなどを前提に、警察も許可を出してくれました。

東京・丸の内の仲通りでの運行の様子

また、これまでにテーマパークなどで類似の実験を何度もやってきました。非常に狭い道で走行させることもありましたが、横をすり抜けようとする子供がいてもきちんと停まるよう、微調整をしながら稼働させました。

相模湖プレジャーフォレストでの運行の様子

ちなみに歩行者と同じ空間で自動運転バスを走行させる場合には、家族連れだったら自動運転バスの速度を「時速3.6キロ」、多数の大人が歩いている場合は「時速7〜8キロ」とするなどの基準を設けています。

自動運転ラボ:これからやりたいこと、についてはいかがですか?

佐治氏:東京都心は自家用車が多いため渋滞が問題ですが、山手線のように1〜2分間隔で自動運転バスをたくさん走らせれば、その利便性の高さから車両あたりの乗車人数が増え、結果として自家用車の利用が減ることで渋滞が緩和されるはずです。

さらに、都心の地下には使われていない駐車場が多くあります。そういう場所で昼間に自動運転車を充電して待機させ、仕事が終わったり、飲食店で会計を済ませたりという人の行動に紐づいたトリガーが引かれたときに自動運転車が地上に出て、最寄り駅またはそのまま自宅まで運んでくれたり・・・、そういうことを将来やっていきたいなと思います。

また、いろんな人の動き方からデータを取り、地下駐車場などのインフラをうまく使いながら、都心の自動運転バスが今ある鉄道やバスを補完するような毛細血管のような交通網の役割を果たしていければ、例えば飲食店などが駅から遠いところでも商売ができ、店舗を開きやすいようになるはずです。なぜなら自動運転バスがお客様を連れてきてくれるからです。

そうすれば都心集中型の現象も緩和されていくと思います。多くの人が利便性を考えて都心や駅の周りに住まざるをえない現状を変えることができるのが、自動運転の技術だと思っています。

■HANEDA INNOVATION CITYでもARMAが定常運行

ルーベン氏:最前線の現場にいらっしゃる中で、無人化の目途はいつごろだと感じていますか?

佐治氏:現在、HANEDA INNOVATION CITYでARMAが1台稼働しており、ターミナルとホテルを結ぶコースを往復しています。最初は保安員と運転手の2人がスタッフとして乗っていましたが、現在は運転手のみにしています。

HANEDA INNOVATION CITYでの運行の様子

「公道での無人運転はまだ法律上できないのではないか?」というご指摘は当然あるかと思いますが、今の日本では警察や国交省の協力により、「遠隔操作で運転手が外にいるスタイルでの無人運行」が可能になっています。その枠組みを使い、無人運転に挑戦したいと思います。

ルーベン氏:遠隔操作・監視では人件費がかかるわけですが、採算のことを考えれば、運行コストを最小化する仕組みも必要かと思います。その点はいかがですか?

佐治氏:1人で3〜5台まで対応できると、人件費やコストがペイできます。

我々の計算ですと、従来型バスを買って運転手を雇用するケースと、導入コストはやや高いものの自動運転バスを買って複数台を同時に遠隔操作・管理で運行させるケースでは、1人で3台以上の自動運転車を遠隔操作・管理できるようになれば、自動運転バスの方がコストは安くなってきます。

従来型のバスは運行台数が増えれば人件費の負担もその分高くなりますが、1人で複数台に対応できる自動運転バスなら、1台あたりの人件費が安くなっていくからです。

ちなみに、HANEDA INNOVATION CITYでの運行では鹿島建設さんとも協力していますが、鹿島建設さんは自動運転バスを「横に動くエレベーター」と称していまして、普通のエレベーターのように無料で乗れるようにするという考え方をお持ちです。

自動運転バスが導入されれば施設内の飲食店や企業テナントが集客や利便性の面で恩恵を受けるため、従来のエレベーターのように共益費や管理費から経費を捻出するビジネスモデルを組み、HANEDA INNOVATION CITYでは乗客から運賃を頂いていません。

我々もこうしたビジネスモデルを広めていきたいと思っています。実は境町も運賃脱却型で、乗車運賃は無料です。橋本正裕町長は、病院やレストラン、町が運営する体育館などを使うのに町民がお金を払ってくれているから、移動は0円でいいという考え方です。

Dispatcherによる遠隔管理の様子
■対談を終えて

自動運転車の安全走行や安定走行においては、さまざまなデータ管理などを含む要素技術が必要になる。今回は「データ」という切り口で、自動運転バスの運行でストレージに求められる要件などがトピックにあがったが、実用化の先にある未来に話が及んだことも非常に興味深かった。

自動運転技術はすでに実用レベルに達し、これからどんどん社会実装が進んでいく。そんな社会実装の流れを下支えする両社の取り組みに、今後も注目していきたい。

【参考】関連記事としては「【特集・目次】深掘り!自動運転×データ」も参照。







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