米EmbarkがSPAC上場へ!天才2人が自動運転トラック向け技術を開発

人手不足の運送業界で「救世主」となれるか



出典:CEOのアレックス・ロドリゲス氏(左)とCTOのブランドン・モーク氏(右)=出典:Embark Trucks公式サイト

自動運転トラックの開発で知られるEmbark Trucksは2021年6月27日までに、アメリカ市場においてSPAC上場する計画を明らかにした。特別買収目的会社の「Northern Genesis Acquisition Corp. II」と合併する。米メディアが報じた。

2016年の設立から5年ほどのEmbark Trucks。自動運転トラック関連の技術を開発する企業の上場は中国系のTuSimpleに続くものとなる。この記事ではEmbark Trucksがどのような企業なのかを紹介していきたい。







■ロボット工学の天才2人が2016年に創業

Embark Trucksは、米カリフォルニア州サンフランシスコに本社を置くスタートアップ企業で、CEO(最高経営責任者)であるアレックス・ロドリゲス氏とCTO(最高技術責任者)のブランドン・モーク氏によって設立された。

アレックス氏は11歳のころからロボット製作を始め、中学生にして世界のロボット大会でチャンピオンに輝くなど、早くからその才能を開花させた。その後、カナダのウォータールー大学で機械工学で学んでいたところ、同じく機会工学を学ぶブランドン氏と出会い意気統合。2人は在学中に、カナダで初めてとなる自動運転車の開発に成功した。

大学生2人が作った「Marvin」と名づけられた自動運転ゴルフカートは注目を集め、2人をシリコンバレーのスタートアップ・アクセラレレータ「Y-Combinator」に導くことになる。アレックス氏とブランドン氏は、そこで初期の自動運転電気シャトルの開発に成功した。

ある時、そんな2人の活躍を伝えるニュースを見たトラック会社から、「自動運転の技術をトラック運転業界に活かし、運転手不足を解消することはできないか」と相談を受けたことをきっかけに、2人は自動運転トラック開発の道を拓いていく。

技術開発のパフォーマンス、コスト、ニーズなど様々な要素を検討した結果、アレックス氏とブランドン氏は乗用車の自動運転開発ではなく、トラック自動運転技術開発に専念することを決め、Embark Trucksの設立に至った。

■長距離トラックに焦点を絞って技術開発

そして多くが企業が乗用車の自動運転技術開発に躍起になる中、Embark Trucksは「自動運転技術が最も有効に活用されるのはトラック業界だ」と信じ、長距離トラックに焦点を絞った自動運転技術を追求してきた。

こうした戦略から、数々の企業が乱立する自動運転産業で、Embark Trucksは他企業と一線を画してきた。では、Embarkが大きな有用性を信じる自動運転トラックは、どれほど需要があるのか。

前述の通り、トラック業界、特に運送を担う長距離トラック業界は、その労働環境の悪さから、どの国でも往々にして運転手の人手不足に悩んできた。特に米国や中国などの大国では国土が広大なこともあり、トラック運転手の不足は深刻な問題となっている。

こうした状況の中、「物流の改善につながるのでは」と大きな期待を背負うのが、自動運転トラックだ。自動運転トラックは運送業界の問題を解決する糸口として、いま大きな注目を集めている。

【参考】関連記事としては「世界で自動運転トラックの開発・実証加速!「黒子」はNVIDIA」も参照。

■「利用距離に応じた利用料」というアプローチ

Embark Trucksは設立当初からトラック自体の製造はせず、ソフトウェアに焦点を置き開発を進めており、「プラットフォームにとらわれないシステム」を完成させようと取り組んできた。

そんなEmbark Trucksは、すでにロサンゼルス・アリゾナ間で自動運転トラックの商用活用を実験的に成功させた実績がある。また、高速道路の隣接エリアに自動運転トラック用の輸送ハブ建設を発表するなど、本格的な技術の実用化・普及に向けて動き出している。

また自動運転ソフトウェアの提供においては、他社と異なるアプローチを発表している。自動運転ソフトウェアの使用料を利用距離に応じた形とするというアプローチだ。この方が運送会社などに自動運転ソフトウェアを使ってもらいやすいと推測しているようだ。

■【まとめ】上場で注目度は一気に急上昇

ちなみに自動運転トラック開発という同分野での競合としては、同じく米企業のIkeやKodiak Robotics、中国系TuSimpleもEmbarkなどが挙げられるが、事業戦略はそれぞれ若干異なる。

例えば、すでに上場済みで最大のライバルとも言えるTuSimpleは、自動運転トラックの製造やオペレーション業務にも力を入れており、ソフトウェアの開発・提供に注力するEmbark Trucksとはやや戦略が異なる。

そんなEmbark Trucksがいま上場を果たそうとしている。本格的な自動運転長距離トラックの実用化に向け、Embark Trucksへの注目度は一気に高まりそうだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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