トヨタの前線部隊「ウーブン」が本格始動!自動運転に投資、「地図」にも注力

AMP活用パートナーシップ続々



自動運転をはじめとしたモビリティ・イノベーションに向け最先端技術の開発を担うトヨタのウーブン・プラネット・グループが活動を本格化させている。







2021年6月には、米スタートアップのRidecellへの投資や、地図領域における三菱ふそうやいすゞなどとの協業をそれぞれ発表するなど、意欲的な姿が目立つ。

この記事では、同グループの概要とともにこれまでの取り組みをおさらいしていく。

■ウーブン・プラネット・グループの概要

ウーブンの歴史は、トヨタが自動運転技術の開発に向け2018年に設立したTRI-AD(トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント)に始まる。TRI-ADは高度運転支援技術「Teammate」の開発や高精度地図の生成・更新技術など、先行開発分野で成果を上げてきた。このTRI-ADを発展的に昇華させた新体制がウーブンだ。

トヨタは2020年7月、TRI-ADをグループ全体に対する戦略的意思決定やパートナーとの協業拡大などを行う持株会社の「ウーブン・プラネット・ホールディングス」、自動運転技術の開発や実装、市場導入を担う「Woven Core(ウーブン・コア)」、Woven CityやArene(アリーン)、Automated Mapping Platform(AMP)など既存の事業領域を超えた新たな価値を創造する「Woven Alpha(ウーブン・アルファ)」の新体制に移行すると発表した。

2020年10月には、グループ全体の新事業開発力を強化するため運用総額8億ドル(約879億円)のグローバル投資ファンド「Woven Capital(ウーブン・キャピタル)」の設立も発表した。2021年1月にグループ各社は本格的に事業を開始している。

【参考】ウーブン・プラネット・ホールディングスについては「自動運転関連ソフト開発のトヨタTRI-AD、事業拡大へ組織再編を発表」も参照。

■Woven Coreの取り組み

自動運転技術の開発を担うウーブン・コアは、トヨタの自動運転開発の肝となる「Mobility Teammate Concept」のもと、認知や車両制御・操作、機械学習、ドライバー・アンド・パッセンジャー・モニタリング・システム、シミュレーション技術などの研究開発を進めている。

認識技術では、正確な運転環境の分析を可能に

認識技術では、カメラやレーダー・LiDARのデータを用い、車両や歩行者、道路などを認識することで正確な運転環境の分析を可能にしている。中でも、コンピュータビジョンや最新のAI(人工知能)技術を組み合わせることで複雑な状況にも対応できる高精度な認識技術を特徴としている。

車両制御・操作システムでは、認知システムが収集したデータを使用し、最適なルートと車線の選択やスムーズな車線維持、加減速、高度な車線変更のサポートなどを行う。

機械学習では、最新のAI技術によって周辺環境を高精度で認識し、事故防止のアクションを実現する。車両走行データに加え空撮なども活用し、さまざまなシーンを含む大規模データを常に収集すると同時に、車両走行アプリケーションに合わせた最適な機械学習モデルを設計している。収集したデータを常に機械学習モデルに追加学習させ、車両のモデルを更新することで継続的な性能の向上を図っている。

人間の動作をトラッキングする監視システム

ドライバー・アンド・パッセンジャー・モニタリング・システムは、Teammate Conceptの中核とも言える技術で、あらゆる側面からドライバーと同乗者の行動を深く理解することに役立つ。車内で得られる画像シグナルデータを処理し、頭の位置や向き、視線、口、姿勢などの人間の基本的な動作をトラッキングする。

これらのデータを活用することで、集中力の低下や眠気、感情、体調など、時間の経過によるドライバーや同乗者の状況変化を予測することができる。各乗員の状況や好みを学習することで、乗車前から運転中、降車後に至るまでカスタマイズしたサービスを提供することが可能になるという。

自動運転開発に効率性をもたらすシミュレーション技術では、自動運転テスト車両の実際のデータを活用し、シミュレーター上で視覚・聴覚・触覚の情報を作り出すことで、車両が実際に走行している体験を忠実に再現する。複雑で大規模なシステムも車両の実際の動きを仮想環境で再現することで、高速でシミュレーションを行うことができる。

■Woven Alphaの取り組み

ウーブン・アルファは、Woven CityやArene、AMPのようなオープンソフトウェアプラットフォームなど、新領域に対する事業拡大の機会を探索し、革新的なプロジェクトを立ち上げ推進する役割を担っている。

Woven City:新技術を実証するリアルな場

Woven Cityは静岡県裾野市で2021年2月に着工した実証都市で、自動運転をはじめパーソナルモビリティやロボット、AI技術などさまざまな領域の新技術をリアルな場で実証するマチだ。

建設が始まったばかりの上、代わる代わる実証を行う未完の都市ゆえ全貌が明らかになることはなさそうだが、ENEOSとのパートナーシップに合意したと2021年5月に発表した。水素の生産から配送、使用に至るまでのテストとデモンストレーションを行う予定だ。

Arene:車両ソフトウェアの効率的な開発サイクルを実現

AreneはクルマのAPIや安全性のための基本的要素を包括する最先端のプラットフォームで、車両ソフトウェアの効率的な開発サイクルを実現する。Arene OSを搭載した車両にはミドルウェアとHAL(ハードウェア抽象化レイヤー)が含まれるため、Areneを使うことでどのようなクルマにも同じコードを搭載することができるという。

AMP:自動運転に必要な高精度地図データを自動生成

AMPは、自動運転に必要な高精度地図データを自動生成するオープンプラットフォームで、各開発者から匿名化されたセンサーデータを収集することで、一般道路をはじめとする道路や車線をグローバル規模で包括する高精度地図の開発が可能になるという。

地図関連では2021年6月にいすゞと日野とAMPの活用に向けた検討を進めていくことで合意し、小型トラックを中心とした領域への活用を進めていく方針としている。

また同月、三菱ふそうトラック・バスともAMPを用いた共同研究を進めていくことを発表している。両社はすでに10以上の実証項目を検討しており、第1弾としてAMPの高精度地図を三菱ふそうが開発するカーブ進入時速度超過警報装置に実装し、同装置を搭載した大型トラック「スーパーグレート」を走行させる実証実験を行い、安全運転支援における高精度地図の効果や課題を検証するとしている。

■Woven Capitalの取り組み

ウーブン・キャピタルは、ウーブン全体の新事業開発力の強化に向け、自動運転モビリティや自動化技術、AI、機械学習、データアナリティクス、コネクティビティ、スマートシティといった領域を対象に革新的なテクノロジーやビジネスモデルを開発している成長段階の企業に投資している。

すでに2社に出資しており、第1号案件には、自動配送ロボットの開発を進める米スタートアップNuroが選ばれた。

第1号案件として米Nuroに投資

Nuroは車道を走行する小型モビリティタイプの配送ロボットの開発を進めており、これまでに米小売り大手のクローガーやウォルマート、ドミノ・ピザ、CVSなどとパートナーシップを結び、配送実証を行っている。

2020年12月には、米カリフォルニア当局から自動運転車の商用展開も認可されており、実用化待ったなしの状況だ。なお、同社にはソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)も2019年に出資している。

出典:ウーブン・プラネット・ホールディングス社プレスリリース
第2号案件として米Ridecellに投資

2021年6月に発表された第2号案件では、DXやIoT技術でフリート管理に変革をもたらす米Ridecellが投資対象となった。

Ridecellの自動化・モビリティプラットフォームによってテレマティクスやフリート管理、内部システムを統合的に確認でき、そこから得られる情報を活用することでビジネス・オペレーションやワークフローを自動化することができるという。

クルマのサブスクリプションサービスを手掛けるトヨタのKINTOの欧州法人がすでに同社のソリューションを採用しているようだ。

出典:ウーブン・プラネット・ホールディングス社プレスリリース
米Lyftの自動運転開発部門の買収を発表

ウーブンはこのほか、米配車サービス大手Lyftの自動運転開発部門「Level5」を買収すると2021年4月に発表した。買収額は約5.5億ドル(約600億円)で、人材や技術面での強化に加え、米サンフランシスコのパロアルトや英ロンドンに開発拠点を拡大する足掛かりにする方針のようだ。

■【まとめ】王道歩むトヨタ、普遍的な自動運転技術の確立目指し邁進

自動運転分野では、トヨタ内部の自動運転技術となるTeammateのほか、AMPやAreneといった外向きのプラットフォーム技術で自動運転業界における協調領域・競争領域全般の開発促進を図るとともに、新たなビジネス創出に向け邁進している印象だ。

自動運転サービスの実用化では海外スタートアップが先行しているが、トヨタはさらにその先、世界のどのエリアでも自動運転を実現する普遍的な技術の確立を目指している。まさに王道だ。

ウーブン・キャピタルによる投資案件もまだまだ続くものと思われ、あらゆる先端技術がトヨタに結集し始めている。Woven Cityや海外での取り組みを含め、今後の動向に要注目だ。

【参考】関連記事としては「トヨタの自動運転戦略とは?2021年も大変革へアクセル全開」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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