桜前線も計測!”データ収集装置”としての自動運転タクシー(深掘り!自動運転×データ 第2回)

歩行者通行量や路面店情報、花粉も計測?





道路情報や交通情報をはじめ、さまざまなデータを生成・収集・解析しながら性能を発揮する自動運転。自動運転車がデータを生み出し、データが自動運転車を走らせると言っても過言ではないほどのデータマシンだ。

このデータマシンたる自動運転車が収集する情報は、自動運転に向けたものだけではない。全国各地を走行する車両から得られる情報は、モビリティ分野をはじめさまざまな分野に活用できる。

そこで今回は、全国各地で真っ先に普及し、比較的広い範囲を走行することが予想される自動運転タクシーなどを想定し、どのようなデータを収集できるかを考えてみた。

■天候に関するデータ:天気や気温、日照量などをデータ化 桜前線も観測可能に

自動運転タクシーは、走行中の各地の天気をリアルタイムで把握することができる。雨滴感知式ワイパーはすでに実用化されているが、雨を感知するセンサーによって降水量なども計測可能なほか、気温や日照量、紫外線、降雪・積雪量、風速など、さまざまなデータを計測することも不可能ではないだろう。

各地のデータを突合すれば、全国の天気図が完成する。若干流動性を伴うが、観測地点となる車両が多いためリアルタイムで変動する細かな天気図を作り上げることができる。

天気データの応用として、花粉の検知なども挙げられる。花粉を検知するセンサーを搭載することで、日時ごとの花粉飛散量などを測定し、情報を提供することもできそうだ。イスラエルには、世界中の大気質と花粉データを位置情報と連動して提供する企業なども存在しており、こうしたサービスは意外と受け入れられるかもしれない。

このほか、桜前線の北上なども細かに知ることができるのではないだろうか。各車両のカメラが桜を判別し、開花状況をデータ化することで桜前線情報を毎日更新することができる。同様に、紅葉をはじめ各地で観光素材となり得る自然風景をデータ化することで、四季折々の日本ならではの観光振興にも役立てることができそうだ。

【参考】花粉データを扱うイスラエル企業については「自動運転車は目に見えない「アイツ」を避けられるようになる」も参照。

■人の動態に関するデータ:タクシー利用者をはじめ歩行者通行量なども測定

自動運転タクシーを利用した乗車人数や乗降場所などをビッグデータ化することで、商業振興に役立つ重要データを作り上げることもできそうだ。

曜日や時間帯別の利用データをポイントごとに割り出すことができるほか、通りがかった歩行者通行量なども把握することができる。

これらのデータをもとに、民間が新たな出店エリア計画を立案したり、自治体が中心市街地の賑わい状況把握や公共交通の在り方の検討材料にしたりするなど、さまざまな活用方法に対応できそうだ。

■道路のデータ:道路メンテナンスや事故防止に向け情報を共有

車載カメラを利用し、道路のデータを集めることもできそうだ。アスファルトの大きなひび割れやくぼみ、剥離といった、走行に支障をきたす可能性がある道路の破損は、自動運転においても手動運転においても障害となる。

こうした道路の破損状況を画像や位置情報とともに記録・収集することで、円滑な道路メンテナンスが可能になる。類似した取り組みとして、千葉県千葉市や埼玉県越谷市などでスマートフォンを活用して画像を送信することで市民が手軽に通報可能なシステムが採用されているが、無人の自動運転タクシーなどがここに加わることでより詳細なデータを収集することができるだろう。

このほか、冬期間の道路の凍結情報や積雪情報、豪雨時の冠水情報、落下物、事故車両の情報など、事故防止に資する情報も迅速に収集し、共有することができる。

災害時などは、走行可能なルートの探索・共有にも活用できる。実際の車両走行実績データを元に通行可能な道路を地図上に示す「通れた道マップ(トヨタ自動車)」などがすでにサービスされているが、自動運転タクシーがこういったサービスに加わることで情報がいっそう強化されるだろう。

■駐車場の空き情報に関するデータ:IT化未対応の駐車場も網羅

無人駐車を可能にする自動バレーパーキングの実用化が進みつつあるが、自動運転タクシーは、従来の駐車場の空き情報なども収集し、データベース化することも可能だ。

IT化が進む駐車場は、全国展開する事業者を中心に自社駐車場の位置や料金、空き情報などをリアルタイムで発信しているが、IT化未対応の駐車場もまだまだ多く存在する。

こうした駐車場の情報を、自動運転タクシーに搭載されたカメラなどのセンサーによる目視も交えながら取りまとめることも不可能ではない。少なからず、既存の駐車場情報サイトへの付加情報として生きるはずだ。

■ダイナミックマップの強化:現場の細かな情報をダイナミックマップへフィードバック

自動運転タクシーが収集するデータは、ダイナミックマップの形成に大いに役立つ。ダイナミックマップは、協調領域となる高精度3次元地図にさまざまな動的情報を付加したリアルタイム性の強い地図情報で、自動運転の安定性や確実性の向上に役立てられる。

動的情報には、路面情報や車線情報、建物の位置情報といった3次元地図情報である「静的情報」と、交通規制の予定や道路工事予定、広域気象予報情報などの「準静的情報」、事故情報や渋滞情報、交通規制情報、狭域気象情報などの「準動的情報」、周辺車両や歩行者、信号情報といったリアルタイムの「動的情報」から形成されており、各関係機関がそれぞれの情報を随時提供するほか、リアルタイム性の高い交差点における歩行者情報などは、交差点に設置されたセンサーがV2I技術などによって各車両に情報を発信する仕組みが一般的だ。

ただし、道路上の落下物の情報や、路肩で転倒しているバイクの情報など、関係機関からただちに情報が送信されるとは限らない情報も多く、些細であってもこうした情報が自動運転をはじめ交通全体の安全につながることは間違いのないことだ。

これらの情報はドライバーから収集するのが最も効率的だが、自動運転タクシーであれば余計な手間暇をかけることなく情報を収集・発信することができる。将来的にはそれぞれの自動運転車が情報を持ち寄り、全体最適化を図る仕組みが必然となるが、こうした際に走行台数・走行エリアが広い自動運転タクシーが最も活躍するのだ。

また、現在進められている自動運転開発の現場では、実際に走行している車両からLiDARやカメラなどのセンサー情報を収集し、高精度3次元地図の作成や技術の高度化に役立てられている。これは、実現した後も同様で、センサーが誤検知しやすい場所や環境など、フィードバックを繰り返しながらより完成度を高めていく必要がある。

こうしたケースにおいても、柔軟にさまざまなエリアを走行する自動運転タクシーは非常に重宝する存在となるのだ。

■路面店の開店・閉業に関するデータ:飲食店サイトが欲するデータを収集

道路沿いに立地する路面店の情報も、自動運転タクシーならば収集可能だ。既存店の営業時間に関わる開店情報や、各店の駐車場の混雑状況なども把握することができる。

新規出店や閉店といった店そのものの出入りに関する情報も、いち早く収集することができるだろう。もしかしたら、店先に出された本日のおすすめメニューや特売情報といった細かい情報も拾い上げることが可能かもしれない。こうした情報は、特に飲食店サイトなどから需要があるかもしれない。

■防犯:指名手配犯を照合?迷子の捜索も

プライバシーの問題はあるが、自動運転タクシーに高精細なカメラを搭載することで、道行く人の顔を判別することができるようになる。こうした機能を活用し、あらかじめ読み込んでおいた指名手配犯の顔と歩行者を照合しながら走行することも可能になるかもしれない。

現在の顔認識システムは、AI(人工知能)の活用によって変装しても直ちにばれてしまうほどの精度を誇っている。こうした機能をパトカーをはじめ自動運転タクシーに持ち込むことで、より多くの人を検知し、逮捕につなげることができるかもしれない。

現実的な路線で同様のシステムを考えると、迷子や行方不明者の捜索に役立てることができる。性別や年齢、服装や体格などの基本情報をもとに、対象者に類似した人を検知した場合、位置情報とともに関係機関に即座に通知することで、速やかな事案の解決に結び付けることができる。

また、歩行者を特別視したセンサーではなく、あくまで自動運転を実現するための通常のセンサーであっても、一定程度歩行者などは自然に映し出される。ドライブレコーダーなども同様だが、こうした機能が動く防犯カメラとしてより有効に役立てられる日が訪れるかもしれない。

逃走車両や盗難車などに関しても、自動運転タクシーが偶然遭遇する可能性は決して低くはない。警察から自動運転タクシーに送信された車両ナンバーや車体の特徴などをもとに、対象車両を検知した際に即時情報が送信される仕組みなどがあっても良いのではないだろうか。

■【まとめ】移動サービスとともにデータ収集マシンとしても活躍

全国各地で誕生することになるだろう自動運転タクシーが集める情報は、その走行環境と搭載センサー次第で非常に多岐に及ぶものになることがわかった。

画像関係では、グーグルマップのストリートビューが頻繁に更新されるイメージに近付く。全国各地に散らばる無数の車両がストリートビューを映し出すことで、新鮮な画像マップが逐一生成されることになるのだ。

道路交通全般をはじめ、街並みのちょっとした変化も捉えることができる自動運転タクシー。その機能は、台数が増加すればするほどより正確性を増し、ビッグデータとして多方面で役立てることが可能になる。

もちろん、ビッグデータで重要となるのは、どういったデータをどういった目的で収集し、分析するかだ。この観点から、業界や企業からの要望を受けて自動運転タクシー事業者が特定のセンサーを車体に装着し、特定の情報を収集する――といった新たなサービスが誕生する可能性は高い。

自動運転ではない既存のタクシーでも可能な点はあるが、各種センサーを当然のように搭載しコネクテッド化された自動運転車だからこそ可能となる面も大きい。自動運転タクシーは、移動サービスの提供とともにデータ収集マシンとしても活躍するのだ。

>>特集目次

>>特集第1回:自動運転車のデータ生成「1日767TB」説 そのワケは?

>>特集第2回:桜前線も計測!”データ収集装置”としての自動運転車の有望性

>>特集第3回:自動運転車の最先端ストレージに求められる8つの性能

>>特集第4回:【対談】自動運転実現の鍵は「車載ストレージ」の進化にあり!

>>特集第5回:自動運転車と「情報銀行」の意外な関係性

>>特集第6回:自動運転の安全安心の鍵は「乗員のリアルタイムデータ」にあり

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