自動バレーパーキングの仕組みや、やり取りされるデータは?(深掘り!自動運転×データ 第34回)

インフラと車両が協調して無人走行を実現



一定のエリア内などで無人走行を可能にする自動運転レベル4の社会実装が近付いてきているが、異なる目的でのレベル4の開発も着々と進められている。駐車場内で無人走行を可能にする自動バレーパーキングだ。

現在実用化が見込まれている一般的なレベル4は、移動サービスを担うバスやタクシーなどの特定車両の自動化を図るものが大半だが、自動バレーパーキングはやや毛色が異なり、インフラ協調のもと広く一般乗用車にレベル4をもたらす技術として開発が進められているのだ。

そこで今回は、インフラや車両に必要とされる装備や、インフラと車両間でやり取りされるデータなどに触れ、自動バレーパーキングの仕組みをひも解いていく。

■自動バレーパーキングとは?

自動バレーパーキングは、駐車場内という特殊なODD(運行設計領域)において自動運転を実現するシステムだ。英語表記「Automated Valet Parking」から、AVPシステムと呼ぶこともある。無人で移動を行うため、自動運転レベル4に相当する。

駐車場は基本的に私有地のため各法律による規制を受けない点や、歩行者の通行などを制御しやすい点、速度を抑えた走行が基本となる点など、自動運転を実現しやすい条件がそろっている。駐車場そのものに自動運転技術を導入することで、軽微な事故の抑制をはじめ、混雑の緩和、駐車スペースの節約などを図ることができる。通常、1台あたりの駐車スペースは乗客の乗り降りが可能な余白部分を含むが、無人であればこの余白となる部分を節約することができるのだ。

仕組みは、以下の3つに大別できる。

  • ①駐車場施設に設置したセンシング機器などを中心としたインフラ依存型
  • ②各車両に搭載されたセンシング機器などを活用した車両依存型
  • ③インフラと車両双方のセンシング機器を活用したバランス型

①は各車両に特別な装置・機能の搭載を必要としないため、誰もが利用しやすいシステムと言えるが、その分アナログな自動車をどのように無人で制御するのかが問われることになるため、現実的とは言えない。

逆に、②は各車両に高度な自動運転機能が備わっているため、応用範囲が広がる。しかし、量販車の多くにこうした機能を搭載するには現状多額のコストがかかるため、普及には時間がかかりそうだ。

このように考えると、インフラと車両双方のセンシング技術を生かす③の方式が最も現実的な選択肢となる。インフラと、ADAS(先進運転支援システム)レベルの駐車支援システムと外部からの通信で自動制御可能なシステムを備えた車両が協調することで、駐車場内における自動運転を実現する仕組みだ。

自動バレーパーキングの開発の多くは、この③のシステムを採用している。利用者は、駐車場の入り口や乗降場所で自動車を降り、スマートフォンで駐車をリクエストすれば、駐車場の管制センターが空き場所を検索して自動で自動車を誘導・駐車する。用を済ませて自動車に乗る際も同様で、スマートフォンで指示を出せば乗降場所まで無人で自動車が走行する。

■自動バレーパーキングのイメージ

イメージとしては、独BMWが実用化している「リモート・コントロール・パーキング」などを想定すると分かりやすい。リモート・コントロール・パーキングは、乗り降りが難しい狭いスペースに駐車する際など、車外から専用のディスプレイ・キーを操作することで、車両を遠隔操作する技術だ。システム作動時は車両のセンサーが障害物や歩行者などを検知し、自動で停止する。

さらに近いイメージでは、米テスラの「Smart Summon(スマート・サモン)」を挙げることができる。駐車場内や私道などにおいて、目視可能な200フィート(約61メートル)以内に停車しているマイカーを自分のもとまで呼び寄せる遠隔操作システムで、スマートフォンアプリで簡単に操作できるという。

こうした遠隔操作技術と駐車技術を備えた車両と、駐車場内のマッピングデータや駐車中の車両情報などを統括する管制センターがリンクすることで、自動バレーパーキングシステムが確立可能になる。ドライバーに代わり、管制センターが各車両に駐車スペースを割り当て、自動駐車を指示するのだ。

管制センターは、駐車スペースまでのルートを車両に送信し、移動中にバッティングしないよう他の車両の制御を行う。インフラに設置されたセンサーは、移動時や駐車時などに車両を監視し、ドライバーによる目視を代替する。

細かい相違点はありそうだが、自動バレーパーキングシステムの多くはこうした方式を採用するものと思われる。

【参考】テスラのスマート・サモンについては「自動運転、テスラの戦略まとめ スマート・サモン機能導入!ロボタクシー構想も」も参照。

■自動バレーパーキングの流れ
入出庫の流れ

自動車から駐車のリクエストを受けた管制センターは、駐車スペースの空き状況を確認し、停めるスペースを決定する。同時にその駐車スペースまでのルートを割り出し、自動車の誘導を開始する。この時、ルートに関するデータを該当する自動車に送信するとともに、他の移動中の車両とバッティングしないよう同時に制御ないしはルーティングを工夫する必要がある。

駐車場内における移動中は、場内に設置したセンサーと、車両に搭載されたカメラやレーダー、超音波センサーなどのセンサーの両方を利用する。車載センサーが検知した情報も随時管制センターに送信され、トータルとしてのセンシング能力を高める手法と、基本的には車載センサーに任せ、他の車両への異常接近などをインフラ設置センサーが検知した際に停止命令を下すなど制御に関わる手法など、いくつかのパターンが想定されそうだ。

出庫時も同様で、利用者からスマートフォンなどで出庫のリクエストを受けた管制センターが該当車両のエンジンを起動し、走行するルートを決定する。車両はそのルートに従って自動走行し、乗降場所に到着する。

自動バレーパーキングで生成されるデータ

自動バレーパーキングにおいて生成されるデータは、入出庫管理などの駐車情報とマッピングデータ、センサーデータなどが考えられる。

意外とシンプルなシステムと言えそうだが、より高度なシステムに昇華する場合は、各車両の車幅や全長などのデータ化や、リクエストから駐車までに要する綿密な移動時間のデータ化なども必要となってくる。

すべての車両を誤差1センチ程度に収めて正確に自動駐車する技術が確立されれば、目印となる各駐車スペースの区画線は必要なくなり、車両と車両間の余白スペースを限りなく縮めることが可能になる。こうした際、各車両の車幅もデータとして抑えることで、より効率的に空間を活用することが可能になるのだ。

移動時間のデータ化は、複数のリクエストを効果的に消化する際に役立つ。現在移動中の車両があとどのくらいで駐車が完了するかを予測し、その予測のもと別の車両はどのルートでどのタイミングで移動を行えばよいかなどを把握することも可能になる。

自動バレーパーキングは、ドライバーの負担を軽減するとともに、駐車場の運用そのものを最適化することが重要となるため、いかに効果的かつ効率的な駐車システムを構築するかがカギを握るのだ。

■必要となる装備

自動バレーパーキングを利用するには、自動車が一定のセンサーを備える必要が生じる。360度センシングと、インフラと情報をやり取りする車載通信機(DCM)、遠隔制御システムは必須となりそうだ。そして当然、データをやり取りするためには車載ストレージの搭載も必要になってくる。

【参考】Western Digitalでは車載システム開発におけるストレージ選定のために、Western Digital製のフラッシュストレージを検証用に提供するプログラムを実施中だ。詳しくは「こちら」から確認できる。この機会に試してみるのも1つの選択肢だろう。

センサーに関しては、ADAS向けに搭載されている既存車種のカメラや超音波センサーといった各種センサーがそのまま利用できるのかなど、気になる点は多い。今後、満たすべき規格や要件などが明確になり、新車販売時に「自動バレーパーキング対応車」といった感じの売り文句が付加される日が訪れる可能性もありそうだ。

■開発・導入状況

海外では、自動車メーカーのダイムラーと自動車部品メーカー・ボッシュのドイツ勢コンビによる開発が一歩進んでいる。

両社は2015年から共同で開発を進めており、2017年7月には独シュツットガルトにあるメルセデス・ベンツ博物館の駐車場で、実環境下における自動バレーパーキング技術を初公開している。

2019年7月には独バーデン・ヴュルテンベルク州当局からレベル4駐車機能として承認を受け、社会実装の道が大きく開けたようだ。

【参考】ボッシュとダイムラーの取り組みについては「ボッシュとダイムラーの自動駐車システム、自動運転レベル4でGOサイン」も参照。

国内勢も負けていない。一般財団法人日本自動車研究所(JARI)は経済産業省・国土交通省の事業「一般車両による自動バレーパーキングシステムの社会実装に向けた実証」のもと2016年度から研究開発を進めており、2018年11月には、一般公開のもと自動バレーバーキング機能実証実験を実施している。

【参考】JARIの取り組みについては「自動バレーパーキングの実証実験を一般公開 日本自動車研究所が発表」も参照。

民間では、パーキングシステム開発などを手掛けるアマノがAIを活用した画像解析技術などを利用した自動駐車システムの開発を進めており、2020年1月には、車両制御技術を手掛けるアイシン精機と協力して一般駐車場で実証実験を行うことを発表している。

【参考】アマノとアイシン精機の取り組みについては「一般駐車場で自動バレー駐車!アマノとアイシン精機、名古屋で実証実験」も参照。

また、パナソニックのオートモーティブ社は2019年10月、無人自動バレーパーキングシステムの開発を発表した。車両に搭載された複数のカメラやソナー、レーダーと、駐車枠や停止線といった簡単な2次元路面マップを用いた技術で、隣接車両と20センチ間隔の極狭空間に駐車可能と言う。

ADASで用いられるカメラなどの車載センシング技術とセキュリティ用途で用いられる監視カメラなどのインフラセンシング技術を融合させた技術で、ディープラーニングを用いた人検知による車載カメラ緊急ブレーキシステムや車載全周囲カメラ画像と2次元マップを用いた自車位置推定技術、インフラ監視・管制サーバー連携技術によって自動バレーパーキングシステムを構築している。

このほか、JARIの研究開発に合わせデンソーテンが管制システムの開発を行うなど、水面下を含め実用化に向けた動きは加速しているようだ。

■【まとめ】システム仕様の標準化が普及のカギに

自動バレーパーキングは、高度なADASとインフラを協調させることで駐車場内における無人走行を可能にしているイメージだ。ODDが比較的低難度のため、実現に向けたハードルもそれほど高くはないように思われる。別の観点で見ると、自動バレーパーキング導入により駐車に関わるビッグデータを収集することも容易になり、社会全体における駐車場の課題解決にも結び付けられそうだ。

今後の課題は、センサーや管制システムにおける規格・仕様だ。各駐車場の自動バレーパーキングの要件が大きく異なれば、「A駐車場では利用可能だがB駐車場では利用できない」といった不便が生じる。各社が開発するそれぞれのシステムにおいて一定の標準化が図られなければ、普及の大きな障壁となることは間違いないだろう。

一般乗用車以外では、カーシェアへの導入なども考えられそうだ。今後市場規模を拡大していくカーシェアは、ステーション数の増加とともに各駐車場の規模も拡大していく可能性がある。そうした際、乗降場所を設置して利用者が車両を呼び出す仕組みとして自動バレーパーキングを導入すれば利便性が増しそうだ。

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>>自動運転白書第1弾:自動運転領域に参入している日本企業など一覧

>>特集第23回:自動運転に必須の3Dマップ、どんなデータが集積されている?

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>>自動運転白書第2弾:自動運転関連の実証実験等に参加している日本企業一覧

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>>自動運転白書第3弾:自動運転業界における国内の主要人物一覧

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>>特集第31回:自動運転におけるデータ処理は「クラウド側」「エッジ側」の2パターン

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