コネクテッドカーの普及が始まり、「つながるクルマ」が続々と市場に投入されている。通信技術を生かしたさまざまなサービスが誕生しているほか、自動運転の社会実装に向けクルマがあらゆるモノと通信するV2X(Vehicle-to-X/Vehicle-to-Everything)に関する開発も進められている。
V2Xでは、どのようなデータがやり取りされるのか。手動運転車を含め、自動運転・コネクテッド時代の通信データについて解説していく。
記事の目次
■道路交通情報
V2I(路車間通信)やクラウド経由で、事故や渋滞、道路工事など道路交通に関する情報を送受信する。FM多重アンテナやビーコン受信機などで情報を受信するVICS(ビックス)の発展系のイメージだ。
VICSはFMや主要道路に設置された電波・光ビーコンから一方通行で情報を提供する仕組み。一方、高速道路に設置された最新のETC2.0は双方向のやり取りを可能にしており、広域的な渋滞情報などの提供とともに、走行車両の時刻や位置情報、速度、加速度や急ブレーキといった挙動などプローブ情報を収集し、道路管理や経路情報を活用したサービスなどに役立てている。
また、一部の交差点では、対向車や歩行者情報、信号情報などを通信するシステムも登場している。将来的には、一般道を含めさまざまな場所に送受信機が設置され、双方向でデータのやり取りが行われる可能性が高い。
多くはインフラ側からの情報提供となりそうだが、道路上を走行する各自動車に搭載されたカメラなどのセンサーデータを活用し、道路上の落下物や事故情報などリアルタイムの交通データを収集する可能性もありそうだ。
■自動車の挙動に関するデータ
普及が始まった各種コネクテッドサービスやテレマティクス保険においては、自動車の走行エリアや走行距離、加減速や操舵といった運転特性、自動車の状態などが適時クラウドに送信される。
自動車に関するさまざまな情報をデータ化することで、メンテナンスに関するアナウンスやアドバイス、保険料算定などさまざまなサービスが実現し、安全性や利便性を向上させる。
自動運転においては、クルマの異変に気が付くドライバーがいないため、全てのシステムを遠隔監視する技術が必要になりそうだ。
■隊列や追従走行に関するデータ
クルマとクルマが通信するV2V(車車間通信)では、通信型のレーダークルーズコントールや緊急車両存在通知、交差点における出会い頭の衝突注意喚起などが実用化されているほか、隊列走行技術の開発も進んでいる。
レーダークルーズコントールでは、前走車の加減速情報をリアルタイムで通信することで、後続車はスムーズに追従することが可能になる。
一方、隊列走行では、前走車に無人運転の後続車が短い車間距離で追従して走行するシステムの開発が進められており、前走車の加減速のほか、操舵に関わる情報も通信する。車線を変更する際や、隊列の中に他車両の割り込みがあった際に車間距離を開いたり速度を落として離脱を促したりするなど、協調した動きをとれるよう周囲の車両に関する情報も共有するものと思われる。
将来、自動運転車が普及した際にはこうした技術がスタンダードとなり、周囲の車両と各種データをやり取りしながら走行することになりそうだ。
■自動運転に関するデータ
自動運転においては、通信するデータや通信手法も多岐に渡る。高精度3次元地図関連では、前述したさまざまな道路交通に関する情報をクラウドやインフラと送受信し、地図に紐づけてダイナミックマップを生成する。
特に重要かつ膨大なデータとなるのが、センサーが取得したデータだ。カメラやLiDARなどが映し出したデータを必要に応じてクラウドとやり取りする。
センサーデータは自動運転の「目」としてリアルタイムで解析を行うほか、解析精度をいっそう高めるためクラウドに送信して収集するケースが多い。また、データ処理をエッジとクラウドに分散することで効率性を高める手法も研究が進んでいる。
エッジとクラウドでデータ処理をどのように分散するかは開発各社の考え方に依存するところだが、開発過渡期においては多くの企業がエッジサイドの自動運転システムをベースにしつつもクラウドの有効活用を模索するものと思われる。
それだけ膨大な量のデータを高速処理する必要があるということだ。エッジ、クラウドとともに高機能なAIが必要になることに加え、基盤となるストレージの高機能化も求められるところだ。
■コネクテッド技術の応用例:日産の「Invisible-to-Visible(I2V)」
日産は、リアル(現実)とバーチャル(仮想)の世界を融合した3Dインターフェースを通じて見えないものを可視化する技術「Invisible-to-Visible(I2V)」の開発を進めている。
車内外のセンサーが収集した情報とクラウド上のデータを統合することで、建物の裏側やカーブの先、濃霧の峠道など、ドライバーが目視できない状況をフロントガラスなどに投影し、運転に役立てる。事前に記録した映像やセンサーデータを駆使し、コネクテッド技術によってドライバーの目の前に再現する技術だ。
また、AR(拡張現実)によって車内にアバターを登場させるなど、遠方にいる人らと車内空間を共有できる技術も開発している。
手動運転、自動運転問わず、未来のモビリティの在り方を想起させる将来技術だ。
■【まとめ】コネクテッド化がクルマの進化を支える
個々の自動車の安全をはじめ、円滑な道路交通社会の形成に向け自動車はコネクテッド化し、さまざまなデータを生成・駆使しながら走行する。自動運転時代にはこうした流れが一気に加速し、膨大なデータがビッグデータ化されていくことになるだろう。
自動車のコネクテッド化は多方面に及ぶ技術進化や多くのサービスを生み出していく。こうした進化を支えていくため、今後は入り乱れるさまざまな通信手段・規格の標準化や通信インフラの整備、各通信を制御・統合する機器、データを保存・処理するための高性能ストレージ、高度なセキュリティ対策などが求められることになりそうだ。
データを保存・処理するためのストレージについては、車載品質の製品も登場するようになってきている。製品の開発企業としては米Western Digitalなどが挙げられ、車載に耐えうる高い耐久性や信頼性が特徴となっている。
そんなWestern Digitalでは、車載システムの開発企業に対して検証用に車載用フラッシュストレージを無償提供するというプログラムを実施しているので、車載ストレージ選びに悩んでいる企業などはぜひ活用してみてはいかがだろうか。
プログラムについての詳しい内容は「検証用フラッシュストレージの無償提供プログラム」から確認できる。
検証用に車載用フラッシュストレージを無償提供!Western Digitalがキャンペーンプログラム(深掘り!自動運転×データ 第35回) https://t.co/MtdTdCPrcZ @jidountenlab
— 自動運転ラボ (@jidountenlab) November 9, 2020
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