中国の電子商取引(EC)最大手アリババのクラウド部門が開発した大規模言語モデル「Qwen」と、半導体大手の米NVIDIAの自動運転向け半導体が統合したことが、2024年9月26日までに発表された。これはアリババの大規模言語モデルがNVIDIAの自動車プラットフォームへ統合した、初の事例となった。
またNVIDIAのモデルアクセラレーション技術を活用することで、計算コストを大幅に削減し、アリババクラウドのモデルによる複雑なタスクのリアルタイム処理での待ち時間を最小限に抑えることができるようになった。これにより、ドライバーと同乗者の双方に、スムーズで途切れのないインテリジェントな体験が提供されるという。
要は「トーク力が高い自動運転車」の実現にまた一歩近づいたわけだ。
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■車載音声アシスタントが複雑な問い合わせ対応可能に
アリババグループのデータ・インテリジェンスの中枢であるアリババクラウドは、NVIDIAおよび中国企業Banmaと共同開発した、自動車アプリケーション向けに設計された大型マルチモーダルモデル(LMM)ソリューションを発表した。今後、このソリューションは中国の自動車メーカー向けに提供される。
なおBanmaは、アリババグループと上海汽車集団(SAIC)の合弁会社である車載システムスタートアップだ。
今回の提携により、アリババクラウド独自の大規模言語モデル「Qwen」のシリーズが、自動運転車向けの「NVIDIA DRIVE AGX Orin」プラットフォームにシームレスに統合された。Qwenの高度な機能により、車載音声アシスタントは複雑な問い合わせへの対応やビジュアルインテリジェンスの処理が可能となり、ダイナミックで継続的な会話を行うだけでなく、近くのランドマークに関する情報提供や、雪の日にヘッドライトの点灯を促すなどの提案も実現できるという。
アリババクラウドは今後、NVIDIAと協力してQwenモデルをNVIDIAの次世代集中型車載コンピューティングプラットフォーム「NVIDIA DRIVE Thor」に適用する予定だ。このプラットフォームは、高度な運転支援機能や自動運転、AIコックピット機能を単一の安全でセキュアなシステムに統合するものだ。
■アリババクラウドは中国EVメーカーXpengとも提携
アリババクラウドは、中国の新興EV(電気自動車)メーカーであるXPeng Motors(小鵬汽車)と提携し、スマートコックピット体験を強化することも発表した。XPengはアリババクラウドのAIモデルと強力なクラウドコンピューティング機能を活用し、スマートコックピットおよび自動運転体験を再定義しているという。
具体的には、XPengはアリババクラウドのQwenを使用して、AI音声アシスタント「Xiao P」を強化している。LLMを搭載した音声アシスタントは、特別な指示を必要とせず、複雑な会話の文脈やユーザーの意図を理解する能力に優れている。そのためドライバーや乗客との自然で直感的な対話を実現する。例えば、ユーザーが「車内が寒い」と言うと、音声アシスタントは自動的に車内の温度を調整することができるという。
また、XPengはスマートコックピット以外にも、アリババクラウドと協力してさまざまなイノベーションのために大規模モデルを統合している。ユーザーは、XPENGのモバイルアプリ内でアリババクラウドのテキストから画像を生成するモデル「Tongyi Wanxiang」を活用し、車両の外装にカスタムステッカーをデザインすることが可能になる。
さらにXPengは、Qwenを活用したAIコーディングアシスタント「Tongyi Lingma」を使用し、自動車技術の研究開発効率を向上させる取り組みも進めているという。アリババクラウドは、堅牢で柔軟なコンピューティングリソースを提供し、XPengが自動運転向けの大規模モデルのトレーニングを加速することを支援している。
■NVIDIAの勢いはますます加速!
ちなみにNVIDIAについては、NVIDIAのデータセンターを自動運転技術開発に取り組む全ての自動車メーカーが採用していることを同社のCTO(最高技術責任者)が2024年9月に明かしたばかりだ。
アリババクラウドとNVIDIAがタッグを組むことで新しい技術が生まれ、ますます採用が進みそうだ。またアリババクラウドとXpengの取り組みについても引き続き注目していきたい。
【参考】関連記事としては「NVIDIAのデータセンター、自動運転開発の「全メーカーが採用」の衝撃」も参照。