自動運転、デジタル目安箱に「特区創設を」「高齢者は手動運転禁止」等の声

国が2020年10月に設置、さまざまなアイデアが続々



「デジタル改革アイデアボックス」をご存じだろうか。デジタル化を推し進める政府が、国民から広く意見やアイデアを募ろうと2020年10月に開設した情報プラットフォームだ。







寄せられたアイデアは11月末時点ですでに4,400件を超えている。次世代モビリティ関連も関心が高いようで、「自動運転」でキーワード検索すると約80件がヒットした(コメント欄含む)。

どのような意見・アイデアが寄せられているのか。主だったものをピックアップし、紹介していこう。

【参考】デジタル改革アイデアボックス公式サイトは「こちら」。

■寄せられたアイデア・意見
羽田対岸の袖ケ浦~木更津に規制緩和特区を作ってみては

中国の深センを引き合いに、日本も規制を緩和した経済特区を創設し、自動運転をはじめとした技術革新を促進してはどうか――といったアイデアだ。広大な土地を確保して新たなまちを作ることで、住民の合意形成などを必要とせずスムーズに実証を行うことができる。

国内では現在、限定された地域や分野において大胆な規制・制度の緩和や税制面の優遇を行う国家戦略特区制度が実施されており、その内容も徐々に着手しやすいものへと改正が進んでいる。

2020年5月には、国家戦略特別区域法の一部を改正する法律案、通称「スーパーシティ法案」が参院本会議で可決・成立し、革新的な近未来技術に関する実証実験を迅速・円滑に実施する未来都市の形成に向けた動きが加速している。

【参考】スーパーシティ法については「自動運転も前進!成立した「スーパーシティ法」とは?」も参照。

新たなまちづくりの観点で言うと、トヨタの実証都市「Woven City(ウーブン・シティ)」がイメージとして近いかもしれない。民間主導だが、工場跡地を再開発して自動運転やAI(人工知能)開発などに向けたさまざまな実証を行う都市を一から作るプロジェクトだ。

高度な法治国家ゆえ中国や米国に後れを取りがちだが、日本も着実に規制緩和が進んでいるのも確かだ。

ロボットに対する道路使用許可の緩和を

規制関連では、ロボットや自動運転車をテストする際に必要となる道路使用許可に関し、スマートフォンやパソコンで簡単に申請できるようにし、最終的には要件を満たしたものであれば道路使用許可なしで公道走行可能にすべき――という意見も寄せられている。

道路使用許可関連の手続きも年々申請しやすくなってきており、実証の加速と安全の確保を両立する仕組みづくりも着実に進められている。近い将来、無人走行を可能にする自動運転レベル4技術が一定水準に達し、備えるべき技術・機能などの基準が明確になれば、所定の要件をクリアしたモデルは道路使用許可なしで走行可能になるかもしれない。

【参考】ロボットの実証については「ラストワンマイル物流へ自律走行ロボを!NEDOが主導し実証実験」も参照。

高齢ドライバーの自動運転義務化

高齢者ドライバーによる事故が顕著になっていることを考慮し、将来自動運転技術が確立した際は一定の年齢に達したドライバーに自動運転を義務付けてはどうか――といった意見だ。

将来、自家用車においてもレベル4以上の自動運転がスタンダードとなる時代が訪れるかもしれない。こうした変化に合わせて免許制度の改正が行われることも必然となるだろう。一定の事故歴や違反歴を持つドライバーは自動運転限定に――といった風潮が巻き起こる可能性もありそうだ。

雑草除去車両をAIで自動運転化しては

雑草除去車をAIなどで自動運転できないか――といったシンプルなアイデアだ。自動運転技術は、農機、建機、配送などさまざまな用途に応用されており、今後も自律移動とサービス・労務などを結び付けた新たな応用形が誕生していくことが予想される。

雑草除去関連では、すでに自動運転草刈り機が実用化されており、私有地以外での導入も比較的ハードルが低いものと思われる。公園や道路脇など公共空間における草刈需要は意外と高いため、ビジネスチャンスを見越した民間の開発・実用化を促進するのも有効かもしれない。

国としてのサイバーセキュリティ対策をしっかりと

内閣府が提唱する未来社会のコンセプト「Society 5.0」に向けた取り組みで危惧されるサイバー攻撃に対し、国としてのサイバーセキュリティ対策をしっかり講じるべき――とする意見だ。自動運転をはじめ、さまざまなモノがインターネットで繋がるIoT社会を見越し、リスクを踏まえた上でデジタル化を進めることを提言する内容だ。

国としてもサイバーセキュリティ対策を重視しており、エコシステムの構築や人材育成、投資の促進などさまざまな観点から政策を進めている状況だ。

同様に、「ブロックチェーンによる自動車のサイバーレジリエンスを実現」――といったアイデアも投稿されている。コンピューター化が進展し、無線アップデートの導入も進んでいる自動車において、ブロックチェーン技術を駆使するなど新しい防御システムを提案する内容だ。

自動車業界においては、サイバーセキュリティ対策を定めた国際標準規格「ISO/SAE21434」が存在するほか、2020年6月には、国連WP29(自動車基準調和世界フォーラム)でサイバーセキュリティ及びソフトウェアアップデートの国際基準が成立した。

サイバーセキュリティ対策は自動運転においていっそう重要性を増すことから、各車両が満たすべき要件の更新はもとより、官民総出で協調領域の研究開発を推し進める必要がありそうだ。

5Gは国が整備すべき

移動通信システム「5G」関連の意見も多く寄せられている。国策として5Gインフラを整備すべきとする意見や、通信インフラの「上下分離方式」による整備推進、さまざまな用途に活用される5G搭載カーの推進などだ。

商用化が始まり、スマートフォンでも一部エリアで高速通信サービスがスタートしているが、自動運転開発においても5Gの活用が見込まれており、多くの実証が進められている領域だ。

国策として進められている部分もある中、基地局なども国が整備すべきなのか、民間主導が良いのか結論はわからないが、自動運転の実用化においては常時5G通信が必須となるのか、交差点などスポット的な利用でも有効なのかなど、使い方次第で要するインフラも変わってくる。

初期に実現する自動運転移動サービスなどでは、必ずしも5Gを必要とするわけではないものの、将来を見越し、より多くのデータをリアルタイムで送受信可能な環境づくりを望みたいところだ。

全ての自動車の位置を把握できるシステムを

全ての自動車にIoT機器などを標準装備して道路上の車両位置を把握することで、状況に合わせてフレキシブルに信号の長さを変えるなど渋滞緩和を図るシステムを――といったアイデアだ。

同様に「準天頂衛星システムを使った自動運転技術確立と次世代交通システムの構築」として、衛星システムによる位置情報を組み合わせてリアルアイムに測定した位置情報を送受信し、視覚情報からだけでは感知不能な位置の自動車の動きまで含めた自動運転の最適化を「面として行う」技術の確立を求める意見も上がっている。

現在、道路交通情報通信システム(VICS)などで収集されている走行車両の情報をより細かに集めることができそうだ。乗用車のコネクテッド化が進んでおり、インフラと情報をやり取りすることで交差点の状況などを事前に把握するシステムなどは実用化されているが、コネクテッドカーが増加すればより応用範囲が広がることは間違いない。

自動運転においては、特にブラインドコーナーの情報などをやり取りすることで安全性をいっそう高めることができそうだ。

タクシーの運転を記録して学習用データとして自動運転開発に活用

バスやタクシーにカメラなどの記録装置を取り付け、狭い道路での安全な運転技術や歩行者の飛び出し、障害物への対応など、プロの運転技術を抽出して自動運転研究用のデータとして活用するといったアイデアだ。提出される運転技術データには対価を支払うことも想定している。

操縦技術のみならず、自車の動きに対し周囲の車両や歩行者らがどのような挙動を行うかといったプロならではの視点による予測技術なども有用だ。

法整備で自動運転車を宅配・物流事業で導入可能に

フードデリバリー自転車による事故が多くなってきたため、自動運転車を宅配事業に導入可能な法整備を求める意見だ。同様に、物流分野への自動運転技術の導入を求める意見も出されている。

宅配ロボットなどの開発は海外を中心に盛んだが、国内でも公道実証環境が整いつつあり、今後実用化を見越した開発が加速する見込みだ。

フードデリバリーのような近距離移動は宅配ロボットと相性が良い可能性が高く、ビジネス性の観点からも将来導入が進むかもしれない。

ちなみに自動運転ラボを運営する株式会社ストロボは、EC・宅配領域での自動運転技術の活用を支援する「自動運転宅配導入支援・PoC・実証実験コンサルティングサービス」の提供を通じ、スーパーやコンビニなどの小売業やデリバリー事業を展開する飲食店チェーンなどの自動運転デリバリー導入に向けた取り組みをサポートしている。

VRメガネと360°カメラを活用した運転時の死角除去

VR(仮想現実)技術を導入し、死角となる場所の映像を透過することで安全性を高める――といったアイデアだ。自動車業界では、死角となる自動車のピラー(窓柱)に背後を映し出したカメラ映像を透過する技術開発などが進められているほか、日産がリアルとバーチャルの融合により見えないものを可視化する技術「Invisible-to-Visible(I2V)」の開発を進めている。

また、AR(拡張現実)やMR(複合現実)を駆使した観光サービスやアバター技術など、自動車、ひいては自動運転に対応した次世代技術やサービスの開発も進められるなど、将来性に溢れる研究開発分野だ。

【参考】Invisible-to-Visibleについては「日産、”ビルを透明化する”将来技術発表 自動運転車に搭載へ」も参照。

信号機や交通標識のビーコン化

自動運転車が識別できるよう、全ての交通標識や信号機をビーコン発進装置にできないか――といったアイデアだ。合わせて、バスなどの公共交通機関や緊急車両からもビーコンを出すことで、自動運転車が道を譲ることなども可能になるとしている。

ビーコンはVICSなどで使用されており、こうした仕組みをありとあらゆる道路インフラに設置することで円滑な路車間通信(V2I)を実現し、自動運転車の安全を高めることが可能になる。

将来、全ての交差点でV2Iが可能になる時代が訪れる可能性は十分考えられそうだ。

■【まとめ】アイデアや意見続々、開発者もぜひ閲覧を

専門性の高い提言から、一般目線による自動運転関連の意見などさまざまな投稿が次々と出されており、すでに開発が進められている内容もあれば、気付きを与えられるものもある。

一つひとつに目を通していくと、自動運転技術に対する現時点における一般的な認識レベルや社会受容性などもうかがい知ることができ、総じて貴重な情報発信・収集の場となっている。同サイトの実施期間がいつまでかは未定だが、今後も多くのアイデアが寄せられることだろう。

国はもちろん、開発に携わる方々にもぜひ目を通していただき、将来技術やサービスの糧となることを切に願う。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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