自動運転化、巨大化する市場と縮小する市場 カメラだけで2025年に1.5兆円規模

センサーや車載インフォ、移動サービス市場などが急成長



まもなく社会実装の本格化が予想される自動運転技術。自家用車においては条件付きで自動運転を可能とする自動運転レベル3、移動サービス向けの商用車においては無人運転を可能とするレベル4搭載車両の市場化が見込まれている。2020年代は、自動運転市場が本格的に形成されていくことになる。







それに伴い、拡大が期待されるマーケットも数多く存在する。逆に縮小が予想される市場もありそうだ。この記事では、自動運転の普及によって拡大する市場、縮小する市場について解説していく。

■拡大が見込まれる市場
自動運転に必須のセンサー市場が拡大

まず、自動運転車に搭載される製品などの各市場が当然のように拡大していく。その筆頭は、カメラやLiDAR(ライダー)といったセンサー製品だ。

カメラやミリ波レーダーなどは、衝突被害軽減ブレーキなど運転をサポートするADAS(先進運転支援システム)市場ですでに成長を遂げており、さらなる高機能化に向け開発が進められている。

周囲の状況を立体的に計測することが可能なLiDARは自動運転に必須のセンサーとも言われており、部品メーカーや光学機器メーカー、スタートアップなどが特に力を入れている開発分野だ。条件付きで自動運転を可能とする自動運転レベル3の自家用車をはじめ、一定領域内で無人運転を実現する自動運転レベル4の商用車の多くがLiDARを採用するものと思われ、今後レベル3、レベル4市場の拡大とともに急成長する可能性が極めて高い。

矢野経済研究所が2020年10月に発表したADAS・自動運転用センサー世界市場に関する調査によると、メーカー出荷金額ベースによる2019年の世界市場はレーダーが約4,608億円、カメラが約8,087億円、LiDARが市場未形成の状況だったが、2025年にはレーダーが約8,505億円、カメラが約1兆4,742億円、LiDARが約85億円と右肩上がりの成長を予測している。特にLiDARの伸び率には注目すべきだろう。

インフォテインメント機能などとともに車載ディスプレイ市場が拡大

自動運転においては、ドライバーは運転操作から解放され、移動時間を有効活用することが可能になる。睡眠や食事はもちろん、仕事や娯楽に興じることなども可能になると思われる。

特に娯楽の分野は注目の的となり、映画などの映像コンテンツやゲーム配信などさまざまなサービスが誕生する可能性が高い。

また、移動に伴い、周辺の飲食店や観光施設などと連動した情報提供やクーポン配布なども行われる可能性がある。自動運転車は、通信技術を生かしてさまざまな情報を取り扱うことができるようになるのだ。

エンターテインメントとインフォメーションを組み合わせた「車載インフォテインメント」を実現する機器やサービスは今後大きく進化していくことが見込まれている。

また、これら各種サービスの提供において乗員の要望をくみ取ったり情報を伝達したり、また自動運転システムの作動状況や目的地までの移動時間など移動や車体に関わる各種情報を乗員に伝える技術も必要となる。機械と人が効果的に情報をやり取りするヒューマンマシンインタフェース(HMI)技術だ。

こうした際に必要となるのが、さまざまな情報を映し出すディスプレイだ。現行車両においても車載ディスプレイの大型化が進んでいるが、自動運転車では速度計などのインパネも含めたダッシュボード全面や、ウィンドウ部分をディスプレイ化する開発も進められている。

富士経済が2018年10月に発表した車載ディスプレイの世界市場に関する調査によると、2018年の市場規模4,808億円(見込み)から、2022年には7,184億円に伸びると予測している。従来の平面ディスプレイに加え、曲面・異形ディスプレイなども拡大していくとみている。

移動通信市場も拡大

携帯電話の普及により、移動通信が固定通信の売り上げを上回って久しいが、自動運転車の普及がこの傾向にいっそう拍車をかける。

自動運転車は交通インフラと通信する路車間通信(V2I)をはじめさまざまな通信手法を活用し、道路交通情報やセンサーが取得した情報などを外部とやり取りしながら走行安全性を向上させる。

各種通信の中で、中心的な役割を担うものが移動通信システムで、実用化が始まった5Gをはじめ、将来の6Gなどの活用が必要不可欠となる。

これまで移動通信システムの主力はスマートフォンだったが、自家用車をはじめコネクテッド化された自動運転車が実現・普及すれば、移動通信システムの需要は飛躍的に伸びる可能性が高そうだ。

なお、富士キメラ総研が2018年6月に発表した5G関連市場調査によると、自動運転向けのみの話ではないものの、5G対応基地局世界市場は2019年に1,100億円に達し、2023年には4兆1,880億円まで拡大すると予測している。

宅配自動化でEC市場の拡大を後押し

右肩上がりの成長を続けるEC市場。インターネットで買えないものはもはやないと言っても過言ではないほどだ。しかし、宅配を担うドライバー不足が深刻化し、ラストマイル問題が顕在化しているのも周知の事実だ。

こうした問題を自動運転技術が解決する。自動運転機能を備えた配送ロボットがラストマイルとなる宅配に奔走し、人手不足を補うのだ。また、量産化が進めばイニシャルコストは下がり、人件費などのランニングコストも下がることから、ECに伴う送料の低下にも期待が持たれる。

送料低下により安価な商品も注文しやすくなるため、EC需要を後押しすることにつながるほか、地域のスーパーやコンビニ、路面店などの小売りも宅配分野に本格参入する可能性も考えられる。自動運転はモノの移動も円滑にし、物流を変える力を持っているのだ。

「自動運転宅配」市場もゼロから急拡大へ

EC市場の拡大とも関連するが、ほぼゼロからの立ち上がりとして「自動運転宅配」の市場も今後急拡大が見込まれる。例えば、自動運転宅配ロボットを開発する米Nuroは、コロナ禍で「コンタクトレス」に注目が集まったこともあり、ビジネス規模が短期間に300%成長したという。

米Nuroはソフトバンクグループも10兆円規模の「ビジョン・ファンド」を通じて投資する注目企業で、アメリカ企業ではNuroのほかStarship TechnologiesやAmazon、日本企業ではZMPやHakobot、中国起業では京東集団なども、宅配ロボットの開発に取り組んでいる。

MaaS市場の拡大にも貢献

鉄道やバス、タクシーといったさまざまな移動手段がシームレスに繋がり、移動の利便性を高めるMaaS(Mobility as a Service)の社会実装に向けた取り組みも進んでいるが、ここにも自動運転技術が大きく関わってくる。

バスやタクシーの自動運転化をはじめ、カーシェアなども将来的には自動運転化される可能性がある。また、一人乗りの超小型モビリティやキックボードなどさまざまな移動手段が新たなシェアビジネスとしてMaaSに組み込まれることが予想されるが、こうした各移動手段にも自動運転サービスと相性の良いものが登場しそうだ。

なお、富士経済が2020年3月に発表したMaaSの国内市場における調査によると、2030年のMaaS市場は2兆8,658億円(2018年比3.5倍)、カーシェアは4,555億円(同11.9倍)、配車サービスは1兆2,000億円(同4倍)に達するなど、大きな成長を遂げると予測している。

【参考】関連記事としては「MaaSとは?2020年代に実用化!意味や仕組みまとめ」も参照。

自動運転ではEVがスタンダードに

自家用車のEV化(電動化)が進行しているが、この流れを自動運転が後押しする可能性が高い。自動車の制御をコンピューター化した自動運転車は「電気」との相性が良く、ほぼすべての自動運転開発企業がEVをベースに自動運転車の開発を進めている。

自動運転分野におけるバッテリー開発や自動車制御をはじめとした各種機構の電動化が自家用車のEV化を促進する可能性がある。

また、充電インフラも今後右肩上がりで増加すると思われる。充電ステーションが従来のガソリンステーションにとって代わる時代が将来訪れるかもしれない。

富士経済が2018年12月に発表した主要20ヵ国のxEV(EV、PHV、HV、マイルドHV、FCV)市場に関する調査によると、販売台数ベースで2017年に442万台だったものが、2035年には6,341万台に膨れ上がると予測している。

■縮小が見込まれる市場
自家用車販売は中長期的に減少傾向へ

波及効果の高い自動運転だが、その普及に伴い縮小が見込まれる市場もある。その代表例が従来の自動車販売市場だ。

自動運転技術がバスやタクシーなどに導入された場合、ランニングコストの低下などを背景に将来的には運賃が数分の1から10分の1程度まで下がるとする見方が強い。MaaSの普及とともに移動の利便性が増し、自家用車離れが進行するのだ。こうした流れは先進国に顕著に表れ、自動車販売の主力は発展途上国に向けられることになる。

すでに自動車メーカー各社は「モビリティサービス」分野への注力を始めており、トヨタが「TOYOTA SHARE」、日産が「NISSAN e-シェアモビ」、ホンダが「EveryGo」とそれぞれカーシェアサービスを展開しているほか、トヨタはMaaSアプリ「my route」の全国展開を推し進めている。

ただ自動車販売市場が長期的に縮小する一方、これまでにも触れた通り、物流系の自動運転宅配ロボットの市場は中長期的に拡大するとみられている。

自動車整備の質が変化、保険は縮小?

従来の自動車業界を取り巻く関連事業者も大きな影響を受けそうだ。自家用車の自動運転化が本格化すれば、自動車はコンピューターのかたまりとなる。また、交通事故をはじめバンパーを柱にこするといった軽微な接触事案なども減少するものと思われる。

自動車整備の質が大きく変化し、整備や修理の内容はコンピューター機器に関するものが主流となるのだ。従来の板金などハード面の修理を主体としていた整備・修理工場の需要は減少し、特殊整備の領域に足を踏み入れなければならない時代が訪れそうだ。

保険業界も大きな影響を受ける。通信を可能にする自動車のコネクテッド化によりテレマティス保険が右肩上がりの成長を続ける一方、自動運転車の普及が進めば事故そのものが激減するため、保険の中身が大きく変わってくる。自家用車の減少も考慮すれば、自動車保険市場も縮小していくことが予想される。

市場ではないが、交通違反の反則金収入も少なくなる?

市場ではないが、自動運転の普及によって大きく減少する収入がある。交通違反の反則金だ。自動運転車は酒気帯び運転やあおり運転はもちろん、速度超過などを行うことは基本的にない。場合によっては駐車違反などはありそうだが、システム上原則として交通ルールを順守するのだ。

道路上を走行する車両の大半が自動運転車になれば、交通違反は大きく減少する。警視庁によると、2017年度の違反金総額は約605億円に上るという。この収入の多くは、信号機や道路標識、横断歩道、ミラーの設置といった道路関連の整備に活用されるが、この財源そのものが大きく減少する可能性がある。

減少分の穴埋めはどうするのか。他の予算から組み入れることが予想されるが、取り締まり向けのパトカーを自動運転化し、無人で取り締まりや監視を行うことで人件費を削減することも考えられそうだ。

■【まとめ】自動運転が自動車産業とIT産業を結び付け、より大きな産業を形成する

このほかにも、高精度3次元地図に代表されるデジタル地図の市場など、自動運転を構成する各市場は当然ながら拡大していくことが予想される。また、MaaSをはじめとした移動のサービス化や、車内における各種サービスの開発も大きく前進しそうだ。

一方、縮小が予想される市場にも触れたが、既存のサービスから脱却し新たなビジネスモデルを構築することで新市場を形成していく可能性も十分考えられる。整備工場であればソフトウェアのアップデートに対応するといったイメージだ。

自動車業界に代わってIT関連企業が台頭する21世紀において、自動運転は自動車産業とITを結び付け、より大きな産業を形成する可能性を秘めているのだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
登壇情報









関連記事