自動運転の要素技術に数えられる高精度3次元地図。自動運転システムが参照するカーナビとして、また自己位置を正確に認識するためのマップとして、高い期待が持たれている。高度な自動運転レベル2を実現する日産のプロパイロット2.0ですでに実用化されており、今後のレベル3、レベル4の実用化においていっそう存在感を増すことになる。
この高精度3次元地図の作成を陰で支えているのが「モービルマッピングシステム(MMS)」だ。国内高速道路の高精度3次元地図の作成を手掛けたダイナミックマップ基盤もMMSを用いてデータ計測している。
今回は、MMSの概要や開発企業などを解説していく。
記事の目次
■モービルマッピングシステム(MMS)の概要
MMSは、各種計測機器を搭載した自動車などのモビリティで3次元位置情報を取得する計測システムを指す。一般的に、GNSSなどの測位端末装置や通信装置、表示装置、ジャイロセンサーなどの慣性計測装置(IMU)、カメラやLiDAR(ライダー)などの計測装置、走行距離計などで構成され、車両の天板に装着して使用する。
車両の走行に合わせてカメラやLiDARなどのセンサーが周辺の道路構造物をはじめ地形や建物などを高精度で効率よくマッピングしていく仕組みで、地形測量や地図作成などに活用されている。
人力に比べ車両を走行しながら計測するため、広範囲を短時間でマッピングすることが可能で、自動運転分野では、高精度3次元地図の作成に利用されている。
位置情報の精度向上がカギを握る
カメラ画像やLiDARによる3次元点群データをもとに地図を作成する上で重要となるのが位置情報の精度だ。GPSなどの測位情報をもとに現在位置を正確に割り出す必要があるが、GPSの可視性が良好な区間と、トンネルなど不可視な区間では計測精度に大きな誤差が生じる。
そこで開発各社は、標識などの地物や全国に配置された電子基準点をランドマークとして位置補正する技術や、ジャイロセンサーなどをもとに位置情報を演算処理して補正する技術、誤差予測・推定技術など、さまざまな技術を駆使して誤差数センチレベルの高精度測位を実現しているのだ。
データの後処理や有効活用ソフトウェアも
MMSのデータを利活用するには、データを補正し、3次元化処理や認識処理などを行って実際に利用可能な地図データを生成する後処理技術なども必要だ。
また、データのプレビューソフトをはじめ、画像データと点群データの重畳や点群データの調整、点群データから自動で道路上の地物などを認識してモデリングするソフトウェアなど、さまざまな用途に応じて利用可能なソフトウェアも各社が開発・製品化している。
■MMSの開発・サービス企業
三菱電機は、3台のGPSアンテナやIMUをはじめ、カメラ最大6台、レーザースキャナー最大4台を搭載可能なMMSを製品化している。GPS可視区間で、3次元空間を絶対精度10センチ以内、相対精度1センチ以内の高精度計測が可能だ。
冗長性の高いタイプXシリーズをはじめ、軽自動車に搭載可能なタイプK、超小型・軽量で搭載車種を問わないタイプGなどをラインアップしている。
【参考】三菱電機の取り組みについては「三菱電機、自動運転で活躍する3D地図作成の新製品 「MMS-G」を2018年12月に発売」も参照。
パスコも早くから開発を手掛ける一社で、前後方各上下2段のレーザースキャナー最大4台、デジタルカメラ2~6台、GPS3台、IMUなどで構成されるMMSを販売している。複合解析による高精度な測位・位置・姿勢を計算が可能で、座標取得精度は、衛星可視状態時において平面位置精度10センチ、高さ精度15センチを実現している。
アイサンテクノロジーは、三菱製MMSを取り扱うほか、後処理ソリューションとしてGISツールや図化ツール、点群編集ツールなど多彩なソフトウェアで利便性の向上をバックアップしている。
このほかにも、NTTインフラネットや朝日航洋など、電子地図情報や空間情報事業などを領域とする各社がMMSサービスを展開しており、裾野はかなり広がっているようだ。
【参考】アイサンテクノロジーの取り組みについては「自動運転実証「常連組」のアイサンテクノロジーが新拠点!3D地図の計測事業など強化」も参照。
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— 自動運転ラボ (@jidountenlab) May 6, 2020
■【まとめ】今後はソフトウェア領域の開発がいっそう進展
ハードウェアとしてのMMSは各社とも似通った構成で、個別のセンサーの高度化などを除くとある程度完成の域に達しているようだ。自動運転などで需要増が見込める今後は、ソフトウェアの領域で大きな進展を遂げることが予想されるため、引き続き各社の開発動向に注目していきたい。
【参考】関連記事としては「【最新版】ダイナミックマップとは? 自動運転とどう関係? 意味や機能は?」も参照。