【2021年4月分】自動運転・MaaS・AIの最新ニュースまとめ

国境を越え始めた「自動運転タクシー」



新年度を迎え、自動運転業界も活気を帯びている。国内では、ダイナミックマップ基盤がマップのコストパフォーマンスの向上や対象エリアの拡大を図っていく計画を発表したほか、国もレベル4の実用化に向け議論を本格化させている様子だ。


一方、海外ではGM CruiseやMotional、WeRide、TuSimpleといった新興勢がそれぞれ話題を提供し、業界を賑わせているようだ。

2021年4月の10大ニュースを1つずつ見ていこう。

中国EV戦争、シャオミ参入で混沌&激化!自動運転技術の搭載見据え(2021年4月1日付)

スマートフォンメーカーとして知られる中国の小米(シャオミ/Xiaomi)が、スマートEV(電気自動車)分野に本格進出することを発表した。今後10年間で計100億ドル(約1兆900億円)を投資する計画だ。

中国スマートフォンメーカーでは、ファーウェイも自社開発した自動運転技術を大々的に披露し、CASE(C=コネクテッド、A=自動運転、S=シェアリング・サービス、E=電動化)領域への進出を発表している。自動運転分野への参入は、中国テクノロジー系企業の潮流となっている印象だ。


ただ、シャオミもファーウェイもEVの自社生産能力を持っていない。ファブレス経営の手法を自動車分野に持ち込み、製造・生産分野にイノベーションをもたらす可能性があるため、こうした面で注目度は高い。

■FMSの高度化がカギに?日本郵便、複数台の自律配送ロボット実証に着手!(2021年4月1日付)

日本郵便が複数台の配送ロボットを活用した屋内ラストワンマイルに関する実証を行った。自動走行ロボットの実用化に向け、公道における実用実証サービスや複数台の活用実証など、本格導入を視野に入れた取り組みが加速しているようだ。

日本郵便は、香港のRice Roboticsが開発した屋内向け配送ロボット「RICE」5台を使用し、マンション入り口から配達先となる各戸の玄関前まで自動配送する実証を行った。こうした複数台の活用にはフリート管理システムなど運行全般を効率的に管理するソフトウェアが必須となる。

こうしたソフトウェアは、現時点ではロボット開発企業が提供するものをそのまま使用する例が多くを占めているが、将来的にはより専門性の高いソフトウェアベンダーが参入し、さまざまなロボットの同時運用を可能にするのかもしれない。

自動運転レベル4の関与者「運転免許、必要は必ずしもなく」(2021年4月3日付)

自動運転レベル4の実用化に向け、警察庁所管の有識者会議「自動運転の実現に向けた調査検討委員会」がこのほど調査研究報告書を発表した。

早期実用化される可能性が高い自動運転移動サービスを検討対象とし、以下の9点を論点に設定し、それぞれ検討結果をまとめたようだ。

  • ①自動運行中の交通ルール及びその履行の在り方
  • ②定型的・一般的な交通ルールの遵守を担保する方策
  • ③定型的・一般的な交通ルールの遵守を担保する責任主体
  • ④自動運転システムが自動的に対応することが期待できないルールについて、その目的を達成するための仕組みの在り方
  • ⑤自動運転システムが作動継続困難となったときの対応の在り方
  • ⑥自動運行に関与する者の要否、求めるべき能力や資格の在り方
  • ⑦関与者の存在すべき場所
  • ⑧不適格な運行主体を道路交通の場から排除することの要否とその方法
  • ⑨運行主体の適格性の審査等を行う枠組みの在り方

現在、保安上レベル2~3で運行しているものの、レベル4に限りなく近い自動運転システムによるサービスが始まっており、レベル4解禁に向けた動きもより強まっていくものと思われる。

ただ、現実的には「全ての公道で一斉にレベル4解禁」とはいかず、前段階として条件が整った限定地域でレベル4の実用実証を重ねる必要がありそうだ。そのためにも、特区制度の拡充など規制緩和を充実し、実証に取り組みやすい環境の構築が求められるところだ。

■現代自動車のEV、米で2023年から自動運転タクシーとして運行へ(2021年4月5日付)

ヒュンダイとAptivの合弁Motionalのロボタクシーに、ヒュンダイの最新EV「IONIQ5(アイオニック5)」が採用されることが報じられた。IONIQ5に自動運転システムを搭載し、Lyftの配車プラットフォームを通じて2023年からサービス展開する計画のようだ。

なお、4月27日には、トヨタ子会社のウーブン・プラネット・ホールディングスがLyftの自動運転部門「Level 5」を約5.5億ドル(約600億円)で買収することに合意したことが発表されており、Lyftの配車サービスを活用した自動運転タクシーの動向に注目が集まる。

ウーブンは、Lyftのシステムと車両データを活用し、自社開発を進める自動運転技術の安全性と商用化を加速させるとしている。現時点でLyftの配車プラットフォームに自動運転車を提供する類の協業ではない模様だが、将来的にはトヨタ車にウーブンの自動運転システムを搭載した自動運転タクシーとMotionalの自動運転タクシーがともにLyftのプラットフォーム上で運用される日が訪れるのかもしれない。

■自動運転の移動サービスサポート「あいおい vs SOMPO」の構図が鮮明に(2021年4月13日付)

福井県吉田郡永平寺町でスタートした遠隔型無人自動運転移動サービスにおいて、あいおいニッセイ同和損保とMS&ADインターリスク総研が自動車保険を提供すると発表した。

自動運転関連の保険商品開発は、あいおいと損保ジャパンが特に力を入れている印象で、乗用車向けのレベル3対応保険をはじめ、トラックの隊列走行向け保険などさまざまな実証環境に合わせた商品開発や研究を進めている。

自動運転サービスの保険業務を勝ち取るためには、実証段階から開発各社と協調して研究に力を入れる必要がある。あいおいは群馬大学とパートナーシップを結んでおり、SOMPOはティアフォーらと手を結んでいる。各陣営とも実証に積極的で、実用化に近いところに位置している。

自動運転業界における保険は、当面あいおいとSOMPOのせめぎ合いが続きそうだ。

■自動運転タクシーを独占的運行!GM Cruise、ドバイで2023年から(2021年4月16日付)

GM傘下のCruiseが、ドバイ道路交通局(RTA)と自動運転タクシーと配車サービスの運営に向け合意したことを発表した。2023年に運用を開始し、2030年までに4,000台規模まで拡大する計画という。

自動運転タクシーは開発・実用化ともに米国、中国が先行しているが、本格導入を目指す動きが世界各地に広がり始めているようだ。

日本では、ティアフォーらが自動運転タクシーの開発を本格化させ、5Gを活用した遠隔監視システムによる実証などを進めている。また、GM・Cruise陣営とホンダが自動運転モビリティサービス事業に向けた協業のもと、日本で技術実証を2021年中に開始する予定だ。将来的には「クルーズ・オリジン」を活用した事業展開も目指す動きもある。

また、WILLERとイスラエルMobileyeアジア圏におけるロボタクシーソリューション提供に向け戦略的パートナーシップを結んでおり、こちらも有力候補と言えそうだ。

法整備の動向にも左右されそうだが、日本国内でも数年以内に自動運転タクシーが実現しそうだ。こうした動きは水面下で各国に広がっているものと思われ、今後数年で世界の自動運転市場が大きく動き出す可能性が高いものと思われる。

■カリフォルニア州、WeRideに自動運転試験の「ドライバーレス」許可(2021年4月17日付)

自動運転開発スタートアップのWeRideが、米カリフォルニア州でドライバーレスによる自動運転車の公道試験許可を得た。同州における無人の走行許可は7社目となったようだ。

同社は中国でも無人自動運転の許可を得ており、2021年4月時点で有人を含む自動運転実証は450万キロ、無人実証は10万キロに達したという。無人車両がテイクオーバーなしで全長80.4キロに及ぶ広州の公道を2時間走行する動画なども公開しており、技術力には自信があるようだ。

ロボタクシーに加え、完全無人のミニバス(Mini Robobus)も鄭州や広州、南京で定期テストを実施しており、すでに数百の注文が入っているという。

加速し続ける中国系スタートアップの開発と実用化は、すでに米Waymoを捉えているのかもしれない。

自動運転トラック開発の中国TuSimple、米ナスダックに上場!株価の推移は?(2021年4月19日付)

自動運転トラックの開発を手掛ける中国スタートアップのTuSimpleが米ナスダック市場に上場した。2015年の創業から6年での上場で、自動運転トラック領域では他社に先行する形となった。

同社はレベル4車両を開発するとともに、自動運転トラックによる輸送ネットワーク「TuSimple Autonomous Freight Network(AFN)」構築に向けた取り組みを進めており、アリゾナ州フェニックスを起点に自動運転トラックが走行可能なエリアを徐々に拡大し、北米を網羅する戦略を打ち出している。

自動車業界では近年EVやLiDAR開発企業の上場が相次いでいるが、今後TuSimpleのような自動運転開発を手掛けるスタートアップの上場も続くかもしれない。自動運転技術が社会実装期を迎えた証と言えそうだ。

■道路の3Dデータ化、一般道も対象に!ダイナミックマップ基盤、ADASや自動運転向けに(2021年4月21日付)

高精度3次元地図の作製を手掛けるダイナミックマップ基盤が、よりコストパフォーマンスに優れた次世代の3次元地図データを2023年度から導入する方針を発表した。データ収録エリア(道路)も一般道路に拡大していく。

レベル3の市場化やADASの高度化といった動向を受け、あらゆる車両に高度なADASを搭載できるよう、大幅な低価格化を実現するとしている。対象エリアとなる整備路線は、2023年度に約8万キロ、2024年度に約13万キロを予定している。

国内の道路は、高速道路の実延長が約9,000キロ、一般国道が約5万6,000キロ、都道府県道が約13万キロ、市町村道が約103万キロとなっている。上級道路から順にマッピング化が進むと想定すれば、2023年度には国内全ての国道が網羅される計算となる。

高度なレベル2のさらなる普及や、レベル3のODD(運行設計領域)拡大に寄与する要素技術として、今後の動向に要注目だ。

■自動運転開発で求められる「性悪説」 テスラ死亡事故から考える(2021年4月24日付)

EV大手のテスラ車が木に衝突して炎上し、乗っていた男性2人が死亡した事故が日本でも大々的に報道された。1人は助手席、1人は後部座席で見つかっており、運転席には誰も乗車していなかったためだ。

同社の先進運転支援システム「Autopilot」(レベル2相当)などが作動していたかどうかはともかく、運転席無人が真実であれば、その状態で車両が動くこと自体が問題となる。

レベル1~2の運転支援システムはもちろん、システムからの要請に応じてドライバーが即座に運転操作を行う必要があるレベル3においても「ドライバー」の存在は必須となる。レベル3ではドライバーのセカンダリアクティビティは制限されているため、ドライバーの挙動を監視するドライバーモニタリングシステム(DMS)の搭載が義務付けられている。

一方、ハンズオフを可能とするなど高度化が進むレベル2においては、DMSの搭載は任意となっている。自動運転はもちろん、先進運転支援システムの高度化に伴い、DMSの標準搭載化なども進められていくのかもしれない。

■【まとめ】高度レベル2普及に向けたDMSの進化にも期待

海外では、自動運転タクシーやトラックの実用化に向けた動きが変わらず加速している。国内では、自動走行ロボット実用化に向けた動きが加速しているほか、自動運転技術の実装に向けた環境整備が着々と進行している印象だ。

一方、ダイナミックマップ基盤による高度なレベル2の普及を見越した動きは、ある意味でテスラ車の事故報道とつながる。高度なADASは今後間違いなく拡大していくが、こうした技術を過信・誤解するユーザーの増加も懸念される。

啓発だけでは解決しない問題であるため、DMSの標準装備化など、車内に向けた安全システムへの期待が高まるところだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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