FMSの高度化がカギに?日本郵便、複数台の自律配送ロボット実証に着手!

配送タスクやフリートの複雑化・高度化への対応で



出典:日本郵便プレスリリース

日本郵便が2021年2月から3月にかけ、複数台の配送ロボットを活用した屋内ラストワンマイルに関する実証を行った。自動運転技術の導入による物流革命に本腰を入れているようだ。

こうした取り組みは各所で加速しており、その実証内容も徐々に応用を効かせたものへと変わり始めている。配送ロボット開発サイドもプレーヤーが増加しており、今後ロボットの高機能化とともに差別化を図る動きが出てくるものと思われる。







ロボットの個性化は、開発競争を加速させるとともに各ロボットの適材適所における活用を促進することにもつながっていく。さらには、それぞれの長所を生かす形で複数ベンダーのロボットが同一フリートに編成される可能性なども考えられる。

この記事では、日本郵便の取り組みを紹介しながら、配送ロボットを解説していく。

■日本郵便の取り組み
2017年にロボット実証に着手

日本郵便による配送ロボットの実用化に向けた取り組みは2017年にスタートした。同社は2017年にローソン、東北日立、ZMPらの協力のもと、配送ロボットやドローンの物流分野への活用実現に向けた実証実験を福島県南相馬市で実施した。

ZMPの「DeliRo(デリロ)」を活用し、南相馬スポーツセンター敷地内に郵便局やコンビニ、住宅に見立てた拠点を設け、配送実験を行った。2019年1月には同市内の自動車学校と災害公営住宅において、より実際に近い環境での実証実験を行っている。

2020年3月には、日立ビルシステムと日立製作所、Drone Future Aviationの協力のもと、イタリアYape製の配送ロボット「YAPE」を活用し、ロボットのエレベーター連携を核に始点から終点まで自動運転で配送を行う実証を本社で行った。

同年9月には再びデリロを起用し、東京都内で国内初となる配送ロボットの公道走行実証実験に着手した。

複数台のフリート実証を開始

2021年2月からは、オートロックシステム付きのマンションなどの屋内で配送ロボットを活用する実証を約1カ月間にわたり千葉県内で実施した。複数台の配送ロボットとエレベーター、運行管理システムを連携させた日本初の取り組みという。

実証では、アスラテックが配送ロボットの提供、日立製作所が運行管理システム、日立ビルシステムが配送ロボットとエレベーターの連携をそれぞれ担当した。マンション入り口で郵便配達員から荷物を受け取ったロボットが自律走行し、指定された入居者の玄関前まで荷物を届ける仕組みだ。

香港製RICEを採用

ロボットは、香港のRice Roboticsが開発した屋内向け配送ロボット「RICE」5台が提供された。複数機を導入することで、1台が配達中や再配達待機中であっても他の機体が別の配送を行えるようにするなど、実際の利用シーンを見据えた実証を行った。

RICEの積載容量は27×36×22センチで、小荷物の配送に適している。マンション入り口で配達員がRICEに荷物を入れ、配達先の部屋番号を指定すると、RICEは自動運転でエレベーターなどを活用しながら配達先の玄関前まで走行する。

その後、受取人へ到着のお知らせとパスワードがLINEで通知される。受取人は、このパスワードをRICEに搭載されたマルチディスプレイに入力すれば荷物を取り出すことができる。

受取人が不在の場合は、一定時間経過後に荷物を預かったまま待機場所に戻り、受取人からの再配達依頼を待つ仕組みだ。

配送ロボットによるマンション内ラストワンマイルは、配送の効率化のみならず、セキュリティ管理が厳しい建物において導入効果をいっそう高めることができる。ビル管理システムとの連携を強化することで、さまざまなサービスに活用できそうだ。

ロボットと一体のFMSも重要に

このように、日本郵便はこれまでさまざまなロボットで実証を行っている。屋内向け、屋外向け、積載容量、航続距離、保温・冷凍可など、各ロボットのスペックは多様化が進み始めており、自社が想定するサービス展開に適合するロボットの選択肢は今後増加の一途をたどりそうだ。

また、実用化を見据えて複数機を導入する場合、各機体を効率的に運用するソフトウェアの重要性も増す。日本郵便による最新の取り組みのように、配送中のロボットや待機中のロボットなど需要に合わせて全ての機体を効率的に運用するためには、フリートマネジメントシステム(FMS)やルート最適化システムといったソフトウェアが必須となるのだ。

こうしたソフトウェアは、一般的に各ロボットに付随して提供される。ロボット開発メーカーは、フリート運用も想定した上で自社製品が最高のパフォーマンスを発揮できるよう開発段階から明確に意識しているからだ。

「RICE」の場合、フリート管理を行う専用のクラウドサービス「Rice Core」が付属している。パソコンやスマートフォンからロボットの監視や制御を行うことが可能で、複数機の一元管理をはじめ、各ロボットの位置やバッテリー残量などさまざまなデータをリアルタイムで確認できる。

各種システムとのAPI接続にも対応しており、ドアやエレベーターなどのビル管理システムやデジタルサイネージなどと連携することもできる。

ソフトウェアにも進化が求められる時代に

ロボット開発ベンダーによるソフトウェアは一通りの機能を備えているものと思われるが、将来的にシステム全体を最適化するためには、より高度な専門性が求められる可能性も考えられる。

例えば、屋外配送で必須となるルート最適化技術だ。導入当初は比較的狭いエリアで運用されるため、複雑なルーティング技術は必要ないかもしれないが、将来、何通りものルートを選択可能なエリアまで対象を拡大したり、1台のロボットに複数の荷物を載せ、一度の運行で複数カ所を回ったり、あるいは配送する荷物を出先で受け取ったりするなど、さまざまな活用方法が実用化される可能性は高い。配送タスクの高度化だ。

こうした際、歩道の幅や歩行者交通量といった各歩道の走行しやすさや、通行止めなどのリアルタイムの情報、走行経路における交差点や信号の数など、さまざまな条件を加味した上で最適なルートをはじき出し、最短で往復できるようなルーティング技術が必要になる。

現状、各開発ベンダーのソフトウェアは、配送エリア内を事前にマッピングし、走行可能な道を確定した上で比較的硬直的に走行ルートを導き出すものが多い。リアルタイムな交通情報や各機体の運行情報を勘案したルーティングや、複数カ所を柔軟に回る複雑なルーティングシステムなどは備えていないケースが大半を占めるものと思われる。

ロボット混在利用でソフトウェアベンダーが飛躍

高度なソフトウェアの必要性は、別の観点からも説明できる。日本郵便は、これまでの実証においてRICEやデリロ、YAPEなどさまざまなロボットを活用している。屋内向けと屋外向けといった具合で実証用途に合わせて試行しているものと思われるが、将来、複数ベンダーのロボットでフリートを構成する可能性も考えられる。

荷物の載せ換えに課題が残るが、自動運転車によるミドルマイル、配送ロボットによる屋外・屋内ラストワンマイルといった具合で荷物をリレーすることが可能になれば、宅配業務の効率化は飛躍的に高まる。

世界で開発が加速する配送ロボットは、屋内向け、屋外向けのほか、積載容量や積載個数、航続距離、運行速度、コミュニケーション機能の有無など、スペックが多様化している。荷物の保温や冷凍機能などを搭載し、差別化を図るロボットメーカーなども登場するかもしれない。

こうした個性豊かなさまざまなロボットを、適材適所で使用する事例が今後出てくる可能性がある。無人宅配の実用化が進み、フリートの規模が大きくなればなるほど、複数ベンダーのロボットを混在させる可能性も高くなるだろう。

その際、各開発ベンダーのFMSが他社製品に対応可能かどうかが大きなポイントとなる。それぞれのFMSが個別に機能したままでは1つのフリートを構成できないからだ。最低限の規格が必要となりそうだが、他社ベンダーのロボットとも協調・統合可能なシステムが求められることになりそうだ。

こうしたケースを想定すると、FMSをはじめとしたソフトウェア領域においては、餅は餅屋のごとく、ソフトウェア開発を専門とする事業者が存在感を高める可能性が高そうだ。

AI(人工知能)やアルゴリズム開発を専門とするソフトウェアベンダーが各社のロボットに対応可能なソフトウェアを開発し、さまざまなロボットを一括管理することが可能なプラットフォーム、あるいは各社のFMSをインテグレーションするソフトウェアを提供することで、配送ロボットサービス運用者の利便性は飛躍的に向上する。付加サービスとして独自のアプリケーションなどを加えていくことも可能になりそうだ。

さらに発想を飛躍させれば、配送ロボット運用プラットフォームの構築に向け、ソフトウェアベンダーや主要なロボット開発ベンダーを中心にコンソーシアムやアライアンスが結成され、一定の規格化やオープンソース化が進むことなども考えられそうだ。

■【まとめ】物流業界におけるDX進展の起爆剤に

ラストワンマイルを担う配送ロボットの実用化においては、ミドルマイルを担う既存の宅配業者とのシステム連携も必須となってくる。システムへの依存度が飛躍的に高まり、業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)を促進する可能性も考えられる。

ラストワンマイル問題の解決には、ロジスティクス全体を通じた変革が求められる。配送ロボットの実用化が、その起爆剤となるのだ。

【参考】関連記事としては「自動配送ロボの公道走行解禁、ECとFMSの連携が今後の鍵に!」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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