MaaSビジネス最新動向!将来の有望市場における収益機会とは?

市場規模は急拡大、自動運転技術の実装も



日本国内をはじめ、世界各地でMaaS(Mobility as a Service)を推進する取り組みが加速している。従来、独立運営していた自動車や鉄道、バス、タクシーといった各交通手段を、地域性を考慮しながら統合していく概念だ。







都市部においては渋滞や混雑が慢性化している移動をスムーズなものに、一方で地方においては赤字前提となっている公共交通の改善策として、移動革命を担う救世主のような存在に位置付けられている。

また、MaaSのインパクトは、交通領域にとどまらずさまざまな分野へ波及していく可能性を秘めている。MaaSに秘められた巨大市場とはどのようなものか。その展望を明らかにしていこう。

■MaaS関連ビジネスは2020~2021年に一気に拡大へ
2019年の国内市場規模は8,000億円超

MaaSの実用実証はすでに全国各地で始まっており、民間ではJR東日本や小田急電鉄、トヨタ自動車と西日本鉄道など基幹交通事業者らがそれぞれグループを形成し、各地で実証やサービス展開を図っている。

また、自治体の参加意欲も上々だ。国の呼びかけの下、自治体と民間が手を組んでコンソーシアムを形成し、地域の実情に合わせたMaaSの取り組みも全国各地で進められている。

国内においてMaaSに注目が集まったのはわずか2、3 年前のことだが、驚異的なスピードで社会への浸透を始めているのだ。こうした動きは今なお加速しており、新たに導入を検討する自治体や交通事業者らは後を絶たない。

富士経済の2020年の調査レポートによると、MaaSの国内市場規模は2019年の8,673億円(見込み)から、2030年には2兆8,658億円規模へと右肩上がりの成長を続けるという。

なお、この数字はモビリティ市場と駐車場シェアなど直接関連するサービスに限った数字であり,他分野への波及を含めるとさらに数字が跳ね上がるのは必然だ。

現在は基盤を固めている段階で、まだまだ試行錯誤やチャレンジが続いている。絶対的な正解が存在しない未知数の領域のため国の支援や企業投資も盛んであることから、2021年も新規参入が相次ぎ、市場が一段と拡大していく可能性が極めて高そうだ。

【参考】関連記事としては「2030年には3.5倍に!MaaSの国内市場、あと10年で3兆円間近に」も参照。

■MaaSにおけるビジネスチャンスの類型
移動が最適化されることによるビジネス機会

MaaSの実現により移動の利便性が向上すると、各交通事業者は個々の利益ではなく域内交通全体の最適化を見据えた経営方針にシフトしていくことになる。MaaS利用者の増加がひいては自社の利益に結び付くからだ。

利便性が増すほど利用者も増加するため、ラストワンマイルを埋める新たなモビリティ参入の余地が生まれるなど、交通分野のビジネス性が向上する。

また、移動の利便性の向上は、各エリアにおける地理的優位性を平準化していく。移動に対する不自由がなくなれば、駅から多少離れた土地の利便性も増すことになり、費用対効果から遠隔地の需要が喚起される。不動産の価値が変わることにより、ビジネスチャンスが大きく膨れ上がる可能性を秘めているのだ。

各種情報との連携が推進されることによるビジネス機会

MaaSは交通関連情報だけでなく、さまざまな情報を付加・連携させることで相乗効果を発揮する。例えば、飲食店や観光施設の情報や割引クーポンなどを付加することで、MaaSの利用者を増やすとともに各店舗の集客を図ることが可能になる。

このほかにも、医療連携を図る動きなどもあり、発想次第でさまざまなビジネスを想起することができそうだ。

■MaaSを構成する新モビリティサービスもそれぞれが巨大市場に
カーシェアをはじめとしたシェアサービスが急成長

都市部を中心に高い需要を見せているカーシェアサービスは、市場規模をより大きなものに変えていく。富士経済による調査では、カーシェアの国内市場規模は2019年(見込み)の482億円から2030年には4,555億円に拡大する予測を示している。

現行のカーシェアは、借りたステーションに自動車を返却する「ラウンドトリップ方式」が主流となっているが、異なるステーションに返却可能な「ワンウェイ方式(乗り捨て方式)」の導入に向けた取り組みが進んでおり、導入が本格化すれば利便性が飛躍的に増す。

超小型モビリティなどカーシェア専用モデルの開発や、個人所有の自動車を貸し出す個人間カーシェア、小規模カーシェア事業の導入を可能にするプラットフォームの展開にも注目だ。

シェアサービスではこのほか、サイクルシェアの展開や、電動キックボードなど新たなパーソナルモビリティの動向にも注視したい。

需要に応じたサービスが売りのデマンド交通も成長

デマンド交通には、予約に応じて運行する定路線型バスや準自由経路型(マイクロトランジット)、タクシー配車サービスや相乗りタクシー、ライドシェアといった配車プラットフォームサービスなどが含まれる。

タクシー配車サービスはアプリの浸透により右肩上がりの成長を続けており、スマートフォンをベースにさまざまなモビリティの予約や決済を可能にするMaaS導入の試金石となる可能性がある。

ライドシェアは、公共の福祉を確保する目的等以外での導入は規制がかけられており、デマンド型バスとともに公共交通の維持が困難な地方において導入を検討する動きが見られそうだ。

自動運転技術の導入も各所で進展、一大市場に

自動運転技術を活用したモビリティサービスの実用化にも注目だ。人の移動では、タクシーやバスをはじめパーソナルモビリティへの導入にも期待が寄せられる。

将来的には、自動運転タクシーを活用してモノを配送する貨客混載の取り組みや、自動運転車を活用した小売りなども登場する可能性が高く、人の移動を超えたMaaSの応用形としてさまざまなサービスが結びつくことも考えられそうだ。

自動運転バスは社会実装に向けた取り組みが大きく進んでいる。BOLDLYやマクニカなど、自治体や企業向けに実用化を見据えた導入促進サービスを展開する企業も存在感を増しており、両社は2020年9月に羽田空港に隣接する商業施設の敷地内、同年11月に茨城県境町で仏Navya製「NAVYA ARMA」を活用した定常運行をそれぞれ開始するなど成果を出し始めている。

また、2021年3月には、産業技術総合研究所らが福井県吉田郡永平寺町で取り組む自動運転移動サービスにおいて、遠隔監視・操作によって自動運転レベル3を実現する自動運行装置「ZEN drive Pilot」が国交省運輸局から認可を受けた。

ODD(運行設計領域)は、鉄道廃線跡地の「永平寺参(まい)ろーど」とその南側一部区間において、電磁誘導線とRFIDを活用した状態で時速12キロ以下で走行することなどが条件となる。平時は1人の遠隔監視・操作者が3台の無人車両を運行しているが、ODD下では常時監視する義務がなくなり、運転負担を軽減することが可能という。

車両や自動運転システムは、産総研やヤマハ発動機、日立製作所、慶應義塾大学SFC研究所、豊田通商らが開発と研究を手掛けている。

走行条件は限られているものの、安全を確保しやすい条件下で実用化を促進し、知見を積み重ねていく方針だ。こうした取り組みが徐々に広がり、移動サービスとして広く認知されMaaSに組み込まれていくことに期待したい。

付随するサービス市場にも注目

駐車場シェアなど、移動やモビリティに直接関連するサービス市場の成長にも期待が持たれる。今後、カーシェアやサイクルシェアなどのワンウェイ化が進むと、各地に設置するステーション需要も増加することから、こうした駐車場シェアサービスなどと連携した柔軟な運営形態などが生まれる可能性もありそうだ。

物流MaaSも進展

モノの移動では、ラストワンマイルを担う宅配ロボットの実用化を見据えた取り組みが加速している。国が本腰を入れ、公道における実証要件の整備や実証事業に本格着手したのだ。

これまで宅配ロボットの実用化を見据えた開発や取り組みは、ZMPや楽天、日本郵便など一部企業にとどまっていたが、パナソニックやティアフォーらが新たに開発に参戦するなど熱を帯び始めている。

政府は今後、2021年春を目途に制度整備に向けた基本方針を決定し、新年度早期に関連法案の提出を目指す構えだ。こうした方針が決定すれば、社会実装に向けた民間の動きもより活発化するものと思われる。

新型コロナウイルスの影響で注目が高まる飲食デリバリーなどにも活用可能で、宅配サービスの可能性はいっそう広がっていきそうだ。

また、こうした新たな輸送サービスの登場は、物流全体における配送の効率化へとつながっていく。1つの荷物を1つの運輸事業者が運ぶのではなく、ミドルマイルやラストワンマイルなど状況に応じて複数の事業者が協調し、効率的なロジスティクスを実現していくのだ。

自動運転技術の導入を1つの契機に、物流システムの連携が進んでいくことに期待したい。

■MaaSで激変が起きる業界、チャンスな業界は?
不動産の価値に変革をもたらす

米国では、MaaSを付加したマンション販売などがすでに始まっている。MaaS物件の住人は、所定のMaaSを無料で利用することができるのだ。

MaaSと不動産を結び付けることで移動の利便性を向上させることができるため、郊外物件でも駅近物件に対し地理的優位性を埋めることが可能になる。商業地においても同様で、新たなビジネスチャンスを生む契機となる。

国内でも日鉄興和不動産や三井不動産などが実証に着手している。日鉄興和不動産は分譲マンション向けのMaaS「FRECRU(フリクル)」の実証実験を2020年2月に開始した。一方、三井不動産はフィンランドのMaaS Globalに出資し、マンション住民向け複数交通機関のサブスクリプションサービスの実証を進めている。

【参考】関連記事としては「注目度が急上昇!「MaaS×不動産」最新のビジネス事例まとめ」も参照。

MaaS導入で観光地が激変、旅行業も活性化

地方の観光地における重要課題の1つに、交通手段が挙げられる。主要な駅からのアクセスをはじめ、点在する各観光地をどのように周遊してもらうかが鍵を握っているのだ。

こうした地域にMaaSを導入することで柔軟な移動手段を確保するとともに、観光地そのものや周辺の飲食店、宿泊施設、土産物店などの情報や割引サービスなどをMaaSに組み込むことで、経済効果を高めることが可能になる。

旅行業者においても、新たなツアーの企画などが盛んになりそうだ。

決済のキャッシュレス化が進展する

アプリを介して利用するMaaS決済はキャッシュレスが前提となり、キャッシュレス決済がさまざまな移動手段に導入され、一度にまとめて決済することが可能になる。

将来的には各交通事業者の料金体系が統合され、1つの移動サービスを利用するかのようにワンストップで利用可能になる見込みだ。

現在乱立が続く「〇〇Pay」が交通サービスと深く結びつき、社会のキャッシュレス化を加速させる可能性は非常に高く、決済プラットフォーマーなど関連ビジネスが大きく盛り上がりを見せる可能性が高い。

新たなメディア・広告媒体としての可能性も

MaaSの普及により各交通機関の利用者が増加することでラッピング広告や車内広告などの価値が高まるほか、MaaSアプリそのものも新たなメディア・広告媒体として機能する可能性がある。

移動を伴う広告は、ローカル広告などの宣伝効果を高めることができる。新たな媒体としても注目だ。

■【まとめ】早期参入で手にすることができるイニシアチブ

この記事で書かれた内容はMaaSにおいてすでに想定内のものであり、今後さまざまなアイデアがMaaSと掛け合わさり、未知のポテンシャルをいっそう高めていくことが予想される。

すでに黎明期を迎え市場は膨れ上がり始めているが、早期参入で手にすることができるイニシアチブは非常に大きい。「自身の業界とは無関係」といった先入観を捨て、MaaSとの接点を見つめ直してみてはいかがだろうか。

【参考】関連記事としては「MaaSとは?2020年代に実用化!意味や仕組みまとめ」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
登壇情報









関連記事