【2021年6月分】自動運転・MaaS・AIの最新ニュースまとめ

トヨタと手を組むオーロラもついに上場?



2021年も夏を迎え、自動運転業界もいっそう熱を帯び盛り上がりを見せている。海外では、米国・中国で新たな公道実証・サービス許可が交付され、実用化に向けた取り組みがさらに加速している。新たな上場の話題も持ち上がり、ビジネス化の動きも活発化している印象だ。


国内では、トヨタ系のウーブン・プラネット・グループが気を吐いている。実証都市「Woven City」を筆頭に、さまざまな取り組みが形となって表れ始めている。

気になる2021年6月の10大ニュースを1つずつ振り返ってみよう。

■自動運転コンビニ、中国Neolixが150台超展開へ!北京が免許交付(2021年6月3日付)

自動走行ロボットの開発を手掛ける中国スタートアップのNeolixが北京市から公道走行免許を取得し、ロボット150台以上を導入してコンビニエンスストアサービスを展開する方針を発表した。

コロナ禍によるコンタクトレス配送需要で脚光を浴びた同社は、自動配送ロボットをはじめモジュール方式の車体で多用途展開が可能な自動運転車両の開発を進めてきた。配送やパトロール、小売り、金融サービスなど、さまざまな使い方を構想しているようだ。


自動運転技術は人の移動やモノの輸送にとどまらず、さまざまな業種と結びついて新たなビジネスやサービスを生み出すことが想定されている。同社の取り組みは、こうした未来につながる第一歩として大いに注目だ。

■「無人」自動運転タクシー、カリフォルニアでCruiseが一番乗りへ(2021年6月10日付)

GM Cruiseがこのほど、カリフォルニア州の無人自動運転タクシーのサービス許可を取得した。同州では初の許認可企業となり、クルーズが一番乗りとなる見込みだ。

同州における自動運転走行の許認可はDMV(カリフォルニア州車両管理局)が行っているが、自動運転車で移動サービスを行う場合、CPUC(カリフォルニア州公益事業委員会)の許可が別途必要となる。セーフティドライバー付きのサービス許可はこれまで8社が受けているが、Cruiseは初めてドライバーレスの許可も取得した。

自動運転タクシーで先行するWaymoの対抗馬として早くから期待されていたCruiseだが、ついに本領を発揮する日が近づいてきたようだ。

また、他社もこの動きに追随する可能性が考えられ、実証が盛んなカリフォルニア州でも本格的なドライバーレスのパイロットプログラムが次々と産声を上げるのかもしれない。

■自動運転関連企業の上場ラッシュは継続!AuroraとHorizonも!(2021年6月11日付)

自動運転スタートアップの米Aurora InnovationとAIチップ開発を手掛ける中国Horizon Roboticsに上場計画が持ち上がっているようだ。

Auroraはこの1年、Paccarやボルボ、トヨタ、デンソーとの提携やUberの自動運転開発子会社の買収など事業拡大を積極的に図ってきた。WaymoやGM Cruiseなどに引けを取らない技術を有しているものと思われ、大きな飛躍に期待が寄せられる。

一方、高度な半導体技術を持つHorizonも注目の1社だ。中国内の企業相手にシェアを高め、将来的にはNVIDIAなどのライバル企業に成長する可能性もある。

上場ラッシュを迎えつつある自動運転業界の盛り上がりは、まだまだ大きなものへと膨らみそうだ。

■全国初!愛知県、「都市部×長期」の自動運転実証を実施へ(2021年6月11日付)

自動運転の実用化に力を入れる愛知県はこのほど、2021年度の自動運転実証実験の概要を発表した。本年度は、交通事業者らが再現可能かつ持続可能なビジネスモデルの構築を目指し、常滑市の中部国際空港島内、長久手市のモリコロパーク(愛・地球博記念公園)、名古屋市の鶴舞周辺の3地域で実証実験を行う。

中部国際空港島では、遠隔監視の下2台の自動運転バスを同時運行させる実証を行う。モリコロパークでは公道と閉鎖空間を活用し、リニモの駅から園内目的地までを自動運転車でつなぐシームレスな移動の実現を目指す。

また、名古屋市内では、都心の幹線道路を含むルートで約3カ月に及ぶ長期実証で自動運転技術を用いたモビリティサービスの実現を目指す方針だ。

愛知県は、国のスーパーシティ構想への提案においても自動運転技術をふんだんに盛り込んだ計画案を応募している。スーパーシティの動向とともに、愛知県の取り組みに引き続き注目したい。

■Pony.ai、自動運転の「技術開発」だけでなく「完成車」も!無人タクシー用か(2021年6月18日付)

中国の自動運転スタートアップPony.ai(小馬智行)が、自動運転技術の開発だけではなく完成車まで手掛けようとしている。報道によれば、すでに完成車をつくるプロジェクトに向け、準備を開始しているようだ。

現時点では、自社工場を立ち上げるのか、設計を除いた製造部分を外部委託するのかは分からない。ただし、製造部分を外部委託するのが現実的な選択肢であると考えられ、「ファブレス」(工場無し)で完成車を作る計画と予想される。

■Waymo、運送大手J.B.Huntと自動運転トラックで貨物配送実証(2021年6月21日付)

ウェイモが、自動運転物流サービスの取り組みを加速させている。物流企業のJ.B.Huntと提携し、同社のフリートにWaymo Driverを統合し、テキサス州のヒューストンとフォートワース間における商品運搬に導入する計画を発表した。

自動運転タクシーサービス「Waymo One」に続き、トラック輸送サービス「Waymo Via」も新たな事業の柱として着々と進化しているようだ。現在はニューメキシコ州とテキサス州でパイロットプラグラムを行っているが、エリアを拡大し、本格的な長距離輸送に着手する日もそう遠くなさそうだ。

北米ではTuSimpleなど自動運転トラック開発を進める企業も多く、この分野における競争も間もなく激化し始めるのかもしれない。

■国交省、日本の海外展開分野に「MaaS」を追加 「行動計画2021」に明記(2021年6月21日付)

国土交通省がこのほど発表した「国土交通省インフラシステム海外展開行動計画2021」に、新たに「交通ソフトインフラ」が追加された。

インフラシステムの海外展開に向け取り組むべき施策をまとめたもので、鉄道や港湾、都市開発などに加え、MaaSをはじめとしたソフト主体の事業の海外展開・ビジネス展開をバックアップする方針だ。

自動運転やMaaS分野において、ティアフォーやWILLERのように積極的に海外展開を図る例はまだ少ないが、近い将来こうした分野における国際展開がビジネス拡大のカギを握ることになりそうだ。

■自動運転の7つのKPI、国が達成度を公表!「自家用車レベル3」などクリア(2021年6月21日付)

「高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部・官民データ活用推進戦略会議」が、官民ITS構想・ロードマップの今後目指すべき方向をまとめた資料「これまでの取組と今後のITS構想の基本的考え方」を公開した。

この中で自家用、物流サービス、移動サービスにおけるこれまでの自動運転技術の開発・実用化の進捗状況・評価が示された。レベル3の実用化や限定地域におけるレベル4自動運転サービスなど自動運転に関する7項目は目標達成または計画通り進んでいると評価されている。

今後、法整備の状況など踏まえながらレベル4の本格的な社会実装に向けた取り組みが加速していくものと思われる。自動走行ロボットの実用化なども含め、数年以内に大きな動きが出そうだ。

■街とモビリティ、国が2030年の将来像公表!自動運転やMaaSが大活躍(2021年6月25日付)

上の記事(6月21日付)と同様、「これまでの取組と今後のITS構想の基本的考え方」の中で「2030年に目指すべき将来像」が掲げられており、この記事ではこの将来像について解説している。

同構想は2014年に初めて策定されて以来、毎年更新されてきたが、自動運転技術が開発から実装に移行しつつある時期を迎え、2030年に目指すべき交通社会をベースに「フューチャープル」の発想で取り組みを推進していく方針としている。

将来像では、地方や都市など各エリアで自動運転やMaaSの導入がスタンダードとなっている。交通社会に本格的なイノベーションが到来する10年となりそうだ。

■トヨタの前線部隊「ウーブン」が本格始動!自動運転に投資、「地図」にも注力(2021年6月28日付)

TRI-ADから発展的に組織体制を一新したウーブン・プラネット・グループが、活動を本格化させている。

全体を統括する持ち株会社のもと、自動運転技術の開発を担うウーブン・コア、事業拡大に向けた革新的プロジェクトを担うウーブン・アルファ、成長段階の企業への投資事業を担うウーブン・キャピタルがそれぞれ事業を展開しており、6月には自動地図生成プラットフォーム「AMP」の活用に向け、いすゞ日野、三菱ふそうとそれぞれ検討を開始したほか、フリート事業のDX化を手掛ける米Ridecellへの出資も発表した。

Woven Cityにおける取り組みも具体的な検討段階に入り、都市建設の進捗とともにさまざまな実証が近い将来スタートする見込みだ。

本年中にまだまだ大きな動きを見せる可能性も高く、引き続き注目していきたい。

■【まとめ】海外スタートアップの事業が本格化 卒業組も続々

海外では変わらずスタートアップ勢が活発で、勢いそのままにスタートアップを卒業する動きが続出し始めている印象だ。

国内ではウーブンのほか、国や愛知県などが自動運転関連の取り組みや指針を掲げ、社会実装を後押しする姿が目立った。

2021年7月は、いよいよ東京2020オリンピックが幕を開ける予定だ。1年遅れとなったが、ワールドワイドパートナーを務めるトヨタはどのようなモビリティで選手をはじめとした関係者の移動をサポートするのか。また、コロナ禍における祭典として、コンタクトレス配送などどのように取り入れていくのか。

当初計画から大きな変更を余儀なくされたものと思われるが、いろいろな意味で世界から高い注目が寄せられることは間違いない。モビリティ・イノベーションがどのように社会課題の解決に貢献するかを披露する格好の舞台とも言える。7月の話題にも引き続き要注目だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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