自動運転の7つのKPI、国が達成度を公表!「自家用車レベル3」などクリア

2021年には後続有人隊列走行もスタート



内閣に設置されている「高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部・官民データ活用推進戦略会議」は2021年6月、「官民ITS構想・ロードマップ」におけるこれまでの取り組みと今後のITS構想の考え方に関する資料を公表した。

この資料では、今後のITS構想の基本的考え方とともに、自動運転実現に向けた取り組みの進捗状況に関するKPI評価が公開されている。







この記事ではKPIに焦点を当て、「自家用車」「物流サービス」「移動サービス」向けに計7つに区分された各取り組みの進捗状況・評価について解説していく。

▼官民ITS構想・ロードマップ〜これまでの取組と今後のITS構想の基本的考え方〜
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/pdf/20210615/roadmap.pdf

出典:首相官邸ホームページ(クリックすると拡大できます)
■自家用車:高速道路におけるレベル3(自動運転)
市場化等期待時期は「2020年目途」で、評価は「目標達成」

一定の条件下で自動運転を可能にする自動運転レベル3は、2020年4月の改正道路交通法、及び改正道路運送車両法の施行に伴い、国内での社会実装が可能になった。

民間では、ホンダが自社開発した自動運行装置「トラフィックジャムパイロット」の型式指定を国土交通省から2020年11月に取得し、これを搭載した新型レジェンドのリース販売を2021年3月に開始している。

トラフィックジャムパイロットは、高速道路などの渋滞時、諸条件のもと時速約50キロ以下で自動運転を可能にする。システムから手動運転への切り替え要請があった場合、ドライバーは直ちに運転操作を担わなければならない。

今のところ国内でホンダに追随する動きはないが、こうした初歩の自動運転が社会実装され、経験・知見を重ねることで可能な速度域や走行エリアが広がるなど、自動運転システムの高度化につながっていく。ホンダのレベル3実用化は業界にとって重要な第一歩と言えるだろう。

【参考】ホンダのレベル3については「ホンダの自動運転レベル3搭載車「新型LEGEND」を徹底解剖!」も参照。

■自家用車:高速道路におけるレベル4(自動運転)
市場化等期待時期「2025年目途」で、評価は「計画通り進捗」

民間において車両技術開発が推進され、レベル4におけるビジネス価値の検討が行われているほか、高速道路上の合流部などにおける道路側から情報提供を行う仕組みなどの検討も進められていると評価している。

レベル4関連の実証は一般公道や非公道における移動サービスが主体で、高速道路における表立った取り組みはほぼ聞いたことがない。民間各社の開発動向・進捗状況は不明だが、高速道路におけるレベル4はレベル3の延長線上にあるとも言える。

レベル3のODD(運行設計領域)が広がり、時速80キロで出入口間のすべてのエリアで自動運転が可能になり、テイクオーバーリクエスト(手動運転要請)が限りなくゼロに近づけば、レベル4は目の前だ。

このテイクオーバーリクエストをゼロにするハードルが高そうだが、ODDにおける各条件をあえて狭めることで高速道路におけるレベル4実現も夢ではなくなるはずだ。

■物流サービス:高速道路におけるトラックの後続有人隊列走行
市場化等期待時期は「2021年まで」で、評価は「計画通り進捗」

2021年度中の「導入型」有人隊列走行システム(ACC+LKA)の商業化を発表したほか、発展型として割込車や登坂路、車線変更などへの対応が可能なより高度な車線維持機能を加えた有人隊列走行の開発・商業化を目指すとしている。

日本自動車工業会に属する大型車メーカー4社は、定速走行・車間距離制御装置(ACC)に車線維持支援装置(LKA)を組み合わせた技術で後続車有人隊列走行システムの商用展開を進めていく方針だ。

後続車有人隊列走行はいわゆるレベル3に相当する。重量がある大型車のため慎重な制御が必要になるが、前走する先頭車両と直接通信し、ブレーキやハンドルなどの制御を連動させる仕組みのため、乗用車におけるレベル3と比較すると実現しやすい技術だ。

長距離を長時間走行する物流ドライバーの負担を軽減する技術として市場化への期待は高い。

【参考】トラックの隊列走行については「後続車が自動運転化へ!トラック隊列走行、3つの技術段階」も参照。

■物流サービス:高速道路におけるトラックの後続無人隊列走行
市場化等期待時期は「2022年度以降」で、評価は「計画通り進捗」

新東名高速道路の浜松SA~遠州森町PA間で、後続車の運転席を実際に無人とした状態でトラックの後続車無人隊列走行実証に2021年2月に成功している。

後続車無人隊列走行の実証は経済産業省・国土交通省から豊田通商が受託し、大型車メーカーや先進モビリティなどの協力のもと研究開発を進めている。

2021年2月の実証では、後続車の助手席にセーフティドライバーを乗せ運転席を無人にした状態で、3台の大型トラックが時速80キロで車間距離約9メートルの車群を組んで走行することに成功した。

有人の先頭車の走行軌跡を無人の後続車が自動で追従する「先頭車追従制御」と、隊列内への一般車の割り込みを防止するため、隊列内の車間距離を常に5~10メートル以内にする「車間距離維持制御」の2つの制御技術を使用している。

隊列走行においては、後続車有人無人を含めさまざまなトラックが柔軟に電子けん引可能になるよう、必要となるデータ連携や通信規格の標準化なども今後進展しそうだ。

■物流サービス 高速道路におけるトラックのレベル4
市場化等期待時期は「2025年以降」で、評価は「計画通り進捗」

実現に向けた2020年度前半の具体的な工程表を作成し、民間において車両技術開発を推進している。車両の技術開発に加え、道路情報などを活用した運行管理システムの構築や必要なインフラなど、事業化に必要な事業環境について検討を行うこととしている。

高速道路における一般乗用車レベル4のトラックバージョンだ。技術的には同一だが、車両の大きさや重量が異なるため、難易度は増す。まずは乗用車におけるレベル4技術の確立を待ち、それを応用する形で導入される見込みだ。

また、レベル4による無人走行のメリットを生かし、高速道路直結の物流拠点を各地に設けることで、物流拠点間をトラックのみで移動させることが可能になるかもしれない。インフラとともに物流網全体を再構築し、ロジスティクスの高効率化を目指す動きが今後活発になりそうだ。

■移動サービス:限定地域におけるレベル4無人自動運転移動サービス
市場化等期待時期は「2020年まで」で、評価は「目標達成」

移動サービスにおいては、限定地域の自動運転車専用走行空間において2019年11月から無人自動運転移動サービスを実施し、1年以上無事故でサービスを提供し実現可能であることを確認した。2021年4月時点では、公道でレベル2として運用している(道の駅「かみこあに」の取り組みと思われる)。

また、限定地域における遠隔型のレベル3無人自動運転移動サービスの運行も開始された。道路に敷設された電磁誘導線上を車両が読み取り、周辺の交通状況を監視しながら自動走行する仕組みで、2020年12月からセーフティドライバーが同乗するレベル2で実績を重ね、2021年3月にはセーフティドライバーなしの運行を開始している(福井県永平寺町の取り組みと思われる)。

制度整備では、従来の「運転者」の存在を前提としないレベル4の自動運転を想定した制度課題を検討中としている。

秋田県北秋田郡上小阿仁村では、道の駅「かみこあに」を拠点に各集落を結ぶ全長4キロのルートでヤマハ発動機製の低速車両を活用した自動運転実証を行っている。基本的にはセーフティドライバーが同乗しレベル2で運行しているが、一般車両の進入を制限した一部区間においてレベル4を実現しているようだ。

永平寺町では、遠隔監視室の1人の遠隔監視・操作者が3台の無人自動走行車両を常時監視・操作する遠隔レベル2での移動サービスを2020年12月に開始した。2021年3月に遠隔監視・操作型の自動運行装置を備えたレベル3車両として国土交通省から認可を受け、常時遠隔監視を必要としないレベル3での運行に着手している。

ちなみに日本国内では「自動運転レベル4」は法律的にはまだ解禁されていないため、「限定地域におけるレベル4無人自動運転移動サービス」を「目標達成」と評価している点には一定の疑問が残るが、セーフティドライバーの配置や遠隔監視によってすでに「実質レベル4」の段階にはあり、この点は評価されるべきことと言えそうだ。

【参考】道の駅「かみこあに」での取り組みについては「道の駅と集落結ぶ自動運転サービス、商用化が決定!まず秋田で」も参照。永平寺町での取り組みについては「誘導線を使う自動運転レベル3で移動サービス!福井県永平寺町でスタート」も参照。

■移動サービス:高速道路におけるバスのレベル2以上の運転支援・自動運転
市場化等期待時期は「2022年以降」で、評価は「計画通り進捗」

宮城県気仙沼BRTの専用道区間の一部約4.8キロにおいて2021年1月より実証を進めており、今後レベル3での運行を目指す。また、ひたちBRTの専用道区間約7キロでも実証を行っており、専用道区間内に複数の交差部がある中、インフラ連携を組み合わせたレベル2で走行している。

気仙沼BRTでは、JR 東日本が2021年1月から大型自動運転バスを活用した実証を行っており、本格的な実用化に向け時速60キロでの走行やトンネル内走行を含む専用道でのレベル 3 認証の取得を目指すとしている。

ひたちBRTでは、2020年11月に茨城交通などが中型バスを使用した実証に着手している。

【参考】自動運転バスの実証については「2020年度の中型自動運転バス実証、事業者5者と各テーマは?」も参照。

■【まとめ】自動運転技術の社会実装が徐々に目に見える形に

自家用車、物流サービス、移動サービスともに順調に自動運転実現に向けた取り組みが進んでいるようだ。現状、一般公道におけるドライバーレス運転をはじめとしたレベル4による運行は法律上認められていないが、新たな制度整備に向けた取り組みも進められている。

実証では、レベル4を見据えたレベル2、3の取り組みが拡大しており、2021年度中にも新たな動きが飛び出しそうだ。

小型の自動走行ロボットを含め、自動運転技術の社会実装が徐々に目に見える形になりつつある。引き続き、官民連携した取り組みの進展に期待したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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