モビリティ分野、政府が設定した6つのKPI 自動運転、空飛ぶクルマ、ドローン…

高速道路の自家用レベル4は2025年、空飛ぶクルマは?



出典:首相官邸

国の成長戦略を議論する未来投資会議において、2020年度策定の成長戦略に基づく「成長戦略フォローアップ案」が示され、閣議決定された。

モビリティ分野では6つのKPI(成果目標)が掲げられており、目標達成に向けた官民の取り組みに大きな期待が寄せられるところだ。







今回はこの以下の6つのKPIをクローズアップし、その中身とともに取り組み状況などを解説していく。

  • 2022年度目途での鉄道廃線跡等における遠隔監視のみの自動運転移動サービスが開始
  • 2025年目途に、高速道路上でレベル4の自動運転が実現
  • 2030年までに、地域限定型の無人自動運転移動サービスが全国100か所以上で展開
  • 2030年に、安全運転支援装置・システムが、国内販売新車に全車標準装備、ストックベースでもほぼ全車に普及
  • 2022年度を目途に、ドローンの有人地帯での目視外飛行による荷物配送などのサービスを実現
  • 2023年に、「空飛ぶクルマ」の事業を開始

▼成長戦略フォローアップ案
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2020/0717/shiryo_04_1.pdf

■2022年度目途での鉄道廃線跡等における遠隔監視のみの自動運転移動サービスが開始

官民ITS構想・ロードマップでは、2020年に実現する自動運転像として限定地域における無人自動運転移動サービスを設定し、最低限以下を満たすべき条件として以下の3点を挙げている。

  • 比較的単純なODD(廃線跡などの走行環境)
  • 1人で1台又は複数台の遠隔監視・操作
  • 遠隔監視の下で自動運転システムが操作を行うが、緊急時やテイクオーバーリクエストが発生した場合は、速やかに遠隔監視・操作者又は車両内のサービス提供者が必要な対応を実施する

無人自動運転移動サービス自体は2020年に複数エリアで実現する見込みだが、当面は監視有りの状態、つまりセーフティドライバーをはじめとした保安要員が必須となる。そこで直接監視のもと実績を重ね、2022年度には遠隔操作・遠隔監視のみの本格的なサービスの実施を目指すこととしている。

2023年度以降は、数ヵ所で遠隔監視のみ又は車内乗務員のみの自動運転サービスを開始し、徐々に拡大を図っていく方針だ。

鉄道廃線跡など、自動運転専用あるいは準専用で用いることが可能な限定空間は安全性を担保しやすいため、社会実装初期の段階では工場や空港敷地内などの閉鎖空間に次いで有力となるエリアで、こうした限定空間を利用した実証は、「ひたちBRT自動運転バス」(茨城県日立市)や「永平寺町廃線跡自動運転カート」(福井県永平寺町)などで取り組みが進められている。

【参考】日立市や永平寺町における取り組みについては「自動運転実証の誘致に意欲的な自治体10選」も参照。

■2025年目途に、高速道路上でレベル4の自動運転が実現

道路交通法の改正などにより、2020年に高速道路などの自動車専用道路における自動運転レベル3が解禁された。

安全上、当面は渋滞時など時速60キロ以下での運用となり、実用性の点ではまだまだ低い状況だが、自動運転システムによる運転を正式に認めた大いなる一歩で、実用状況や技術開発の状況を見て徐々にODD(運行設計領域)が拡大されていくものと思われる。

レベル4に関しては、自家用車は高速道路上で2025年目途での実現を目指すほか、その状況を踏まえ2025年度以降にトラックにおいても実現を目指す方針だ。

自家用車における高速道路のレベル4は、入り口となるインターチェンジから出口となるインターチェンジまで完全にシステムが自動運転を行うことになる。その間、ドライバーは注意義務などを免れるため、万が一自動運転が継続できなくなった際は、ドライバーに手動運転を要請することよりも、安全に車両を停止することが優先されることになる。

つまり、それだけ確実に走行可能な自動運転システムが求められるのだ。現実的には万が一の際は手動運転を要請し、応答がない場合に停車するレベル3の延長線上のような運用になる可能性が高いが、現行の考え方では、ドライバーには運転要請に応える義務がないことが前提となるのだ。

ハードルは高そうだが、技術的にはレベル3の延長線上にあり、あらゆる状況に対応できるようODDを拡大していくことが肝要となる。その意味では、自動車メーカー各社はレベル3を積極的に導入して実績を重ね、実用レベルを着実に引き上げていく方が近道となるかもしれない。

■2030年までに、地域限定型の無人自動運転移動サービスが全国100カ所以上で展開

1つ目の「2022年度目途での鉄道廃線跡等における遠隔監視のみの自動運転移動サービス」と一部重複するが、限定空間や混在空間も含め無人自動運転サービスを国内各所に拡大していく方針だ。

自治体などの協力が必須となりそうだが、その頃には技術も高レベルで安定し、遠隔操作のみで広いODDを満たすシステムが比較的安価に普及し始めている可能性が高い。

早期導入エリアの運用実績を参考に検討する自治体なども多く想定されるため、費用対効果などを含めたあらゆる観点から導入に向けた道筋をつける必要がありそうだ。

自動運転移動サービスの導入に向けては、2017~2018年度に全国延べ36カ所で実施した実証実験のデータをまとめた「パターン化参照モデル」が自動走行に係る官民協議会で提示されている。

導入を検討している企業や自治体などに検討段階において参考となる導入地域の環境や条件についてパターンを整理したモデルで、自身の地域に自動運転技術を導入する際の参考や比較材料として活用することで、導入に向けた活動を円滑にする狙いだ。

【参考】パターン化参照モデルについては「【資料解説】自動運転の官民協議会、第10回の要点は?パターン化参照モデルとは」も参照。

■2030年に安全運転支援装置・システムが国内販売新車に全車標準装備、ストックベースでもほぼ全車に普及

2030年までに一定のADAS(先進運転支援システム)が全新車に標準搭載されるほか、道路を走行するすべての車両においてもほぼ全車に搭載されることを目指す。

2018年の国内で販売された新車におけるADASの装着率は77.6%で、ストックベースでは同19.0%という。国土交通省の調べによると、2016年の衝突被害軽減ブレーキ搭載率は生産台数の66.2%、ペダル踏み間違い時加速抑制装置は同47.1%、レーンキープアシストは同13.7%、アダプティブ・クルーズ・コントロールは同38.7%の状況で、いずれも右肩上がりが続いている。

国は交通事故防止対策の一環として先進安全技術の普及に力を入れており、衝突被害軽減ブレーキを搭載した「セーフティ・サポートカー(サポカー)」や、衝突被害軽減ブレーキに加えペダル踏み間違い急発進抑制装置などを搭載した「セーフティ・サポートカーS(サポカーS)」といった補助金制度を2020年3月に開始している。

また、衝突被害軽減ブレーキの国際基準の成立にも寄与しており、国内でもいち早く同基準を導入することとし、新型車は国産車が2021年11月、輸入車が2024年7月、軽トラックを除く継続生産車は国産車が2025年12月、輸入車が2026年7月から、それぞれ衝突被害軽減制動制御装置を備えなければならないこととしている。

こうした状況を踏まえると、2030年に安全運転支援装置・システムが国内販売新車において全車標準搭載されるのは、一部特殊な車両を除けばクリアされる可能性が高い。一方、ストックベースでは、すでに出回っている大半のクルマが入れ替わるのに15年はかかることから、ほぼ全車への普及は難しいものと思われる。新たな税制優遇制度で買い替えを促進するなど、次なる一手が求められそうだ。

【参考】関連記事としては「【最新版】ADASとは? 基礎知識や読み方などを徹底まとめ!」も参照。

■2022年度を目途に、ドローンの有人地帯での目視外飛行による荷物配送などのサービスを実現

ドローンを活用した物流サービスを、有人地帯で2022年度にも実現しようとする目標だ。小型無人機の飛行レベルは以下のように定義されているが、このうちのレベル4に相当する。

  • レベル1:目視内での操縦飛行
  • レベル2:目視内での自動・自律飛行
  • レベル3:第三者が立ち入る可能性の低い無人地帯での目視外飛行
  • レベル4:有人地帯(第三者上空)での目視外飛行

総務省は小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会を開催し、空の産業革命に向けたロードマップを策定するなど基本制度の整備を進めている。一方、国土交通省は交通政策審議会 航空分科会 技術・安全部会の下に検討小委員会を設置し、機体認証や操縦ライセンス、運航ルールなどについて検討を進め、経済産業省は実現に向けた技術開発を後押しするなどそれぞれ取り組んでいる状況だ。

ロードマップでは、2019年度までに離島や山間部などにおける荷物配送ビジネスモデルの構築や都市部における荷物配送の実証実験を実施し、2021年度までに荷物配送ビジネスのサービス拡大や持続可能な事業形態の整理など、離島や山間部などにおける荷物配送ビジネスの実用化を推進していくこととしている。

2022年度以降に都市を含む地域における荷物配送の実現・展開を目指すこととし、人口密度の低い地域から着手し、次第に人口密度の高い地域に拡大していく方針だ。

レベル3からレベル4に向けた実証は着々と進んでおり、日本航空とテラドローンが兵庫県養父市と連携協定を締結し、2020年春に中山間地域における新たな物流サービス検証に向け実証を行うこととしている。

また、ゼンリンと楽天は2020年2月、岩手県岩泉町で各社連携のもと地元特産の食料品などを5キロの区間で配送する実証を実施したことを発表している。

【参考】日本航空とテラドローンの取り組みについては「【資料解説】「日本航空×空飛ぶクルマ」、想定シナリオが判明」も参照。ゼンリンと楽天の取り組みについては「空の革命へ「レベル3」で!ゼンリンと楽天がドローン物流実証」も参照。

■2023年に、「空飛ぶクルマ」の事業を開始

人の移動を伴う空飛ぶクルマに関しては、2019年度までに試験飛行や実証実験を行い、事業によるビジネスモデルを提示する段階まで達している。

期待や技術開発などと並行して技能証明の基準や機体の安全性の基準などに関する制度や体制を整備し、ドローン物流が実現してから2023年を目標に地方における人の移動を実現し、都市へと拡大していく方針だ。

2020年度中に機体及び運航の安全基準、操縦者の技能証明基準などの制度整備の検討に着手し、その進捗を踏まえて2021年度中にロードマップを改訂することとしている。

合わせて、2025年の大阪・関西万博において空飛ぶクルマを輸送手段として活用するため、自動・自律飛行技術や多数機の運航管理技術などの開発も進めていく方針だ。

民間では、SkyDriveが2019年12月に国内初となる空飛ぶクルマの有人飛行試験を開始した。豊田市の屋内飛行試験場を活用し、飛行高度や飛行形態、フェール状態、緊急着陸などさまざまなケースを策定し、徐々に複雑な動作・飛行をさせながら安全性検証・操作確認・飛行実績を重ねていくこととしており、今後は屋外飛行試験許可を取得し、2020年夏にデモフライトを行う予定としている。

一方、テトラ・アビエーションは米国で行われた個人用航空機開発コンペ「GoFly」で受賞するなど技術力を高めており、合わせて米国での試験飛行許可を取得するなど実証実験を加速させていく構えだ。

【参考】SkyDriveの取り組みについては「応援したい度MAX!空飛ぶクルマ開発のSkyDrive、協賛100社に どんな企業が支援?」も参照。テトラ・アビエーションの取り組みについては「日の丸テトラの空飛ぶクルマ、GoFly決勝で「唯一の受賞者」!」も参照。

■【まとめ】目を見張る技術の進化、社会受容性の醸成とともに目標達成へ

無人自動運転による移動サービスは、多くの人が「自動運転」を認識・体感する事業となることが想定される。言わば初期段階における自動運転の「顔」となるため、改めて実現に向けた取り組みに期待したい。

自家用車では、2025年にもレベル4の導入を目指すという。レベル3が解禁されたものの車両の開発・製造が追いついていない現在から見ると眉唾に感じるかもしれないが、5年先の話だ。過去5年間で自動運転技術が飛躍的に進化したことを考慮すれば、今後の5年間で想像を超える進化を遂げる可能性も十分あるだろう。

空飛ぶクルマなども同様で、技術の発展は目覚ましいものがあり、むしろこうした進化に社会受容性が追い付かない状況も想定される。ぜひとも多くの人の耳目を集め、体感できる形の実証を拡大するなどして、実用化に向けた取り組みとともに社会受容性の醸成を図り、目標達成に向けまい進されることに期待したい。

▼成長戦略フォローアップ案
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2020/0717/shiryo_04_1.pdf

※自動運転ラボの資料解説記事は「タグ:資料解説|自動運転ラボ」でまとめて発信しています。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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