【資料解説】自動運転の官民協議会、第10回の要点は?パターン化参照モデルとは

自動運転実証を走行環境や技術でパターン化



自動運転実用化のターニングポイントとなるだろう2020年。国は「官民ITS構想・ロードマップ2019」の中で、実証実験の枠組みを利用した自動運転移動サービスを2020年に実現することを掲げている。実証実験とは言え、大きな前進と言えよう。







2019年11月に開催された第10回自動走行に係る官民協議会では、自動運転移動サービスの導入を円滑にする「地域移動サービスにおける自動運転導入に向けた走行環境条件の設定のパターン化参照モデル(2020年モデル)」が示され、同モデルに関する意見が交わされたほか、来年度に向けた実証実験の高度化について議論を進めた。

パターン化参照モデルの内容をおさらいしながら、議論の中身について触れていこう。

▼自動走行に係る官民協議会(第10回)議事要旨(PDFで閲覧できます)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/jidousoukou/dai10/gijiyousi.pdf

記事の目次

■パターン化参照モデルとは?

パターン化参照モデルは、自動運転移動サービスの導入に向け、2017~2018 年度に全国延べ36カ所で実施した実証実験のデータを踏まえ、同サービスの導入を検討している企業や団体向けに導入の検討段階において参考となる導入地域の環境や条件についてのパターンを整理した参照モデルだ。自動走行に係る官民協議会の了解に基づき日本経済再生総合事務局が策定した。

モデルでは、自動運転車両の導入に際して考慮されるべきODD(走行環境条件)の評価項目・指標を環境条件や道路条件、地理条件など9項目に整理したほか、自動運転車両に求められる主な技術要素を7項目に分類し、実際の走行ルートの候補地に即して具体的な走行環境上の課題を検討できるよう作業用シートに落とし込んである。

ODDの評価項目・指標は、①時間②天候③走行コース④公道/閉鎖空間⑤運行速度⑥通信環境⑦歩車分離⑧交通量⑨実勢速度――としている。

また、この9項目を踏まえたうえで求められる技術要素として、①運行速度②位置特定技術(走行タイプ)③認識技術(障害物検知)④モニタリング技術(車内監視カメラなど)⑤乗車定員⑥運転手⑦乗務員――を定めた。

作業用シートにはこのほか、実際に走行ルートの候補地を検証するにあたってはさまざまな走行環境上の課題が存在することから、それらを書き出して検討の経緯を記録するため、走行ルートを記載する欄も設定している。

各地域で実施される見込みの各実証において、それぞれの走行条件や技術要素などを作業用シートに書き込むことで、その実証がどのような環境でどのようなレベルの自動運転に取り組むかが判別しやすくなり、一定のパターン化が図られることで他地域における実証の参考や比較材料として役立てやすいものとなっている。

【参考】パターン化参照モデルについては「自動運転導入への国の9つの「評価項目・指標」、考え方は?」も参照。

■パターン化参照モデルに関する意見

パターン化参照モデルに対する協議会メンバーの評価は概ね高く、自動運転導入に向けた取り組みの入り口として、また取り組む内容の「ものさし」として有効とする意見が多数を占めたようだ。

「環境条件や道路条件などのODDとどのような車両を組み合わせれば良いかといった整理がされており、具体的な検討をする際に参考となる」

自動運転の導入を検討する事業者や自治体ら実施する側の参考資料として有益とする意見が多数を占めた。

これまでは、実証に当たり実際に走行を繰り返し時間をかけて現地の状況などを細かに確認していたが、パターン化・データベース化されることで状況を把握しやすくなり、新たな実証地域において、地域がどういった特徴を有し、それが難しい取り組みなのかどうかを共通のものさしの中で検討することが可能になる。

「(無人移動サービスの実用化に向け)地元の方と話す際に参考資料として使用可能。対策はケースバイケースだと思うが、目線を合わせる意味ではスタートがやりやすくなる」

「実施する側とされる側が同じ土俵で議論できる」など、同様の意見が多く出された。実証が行われる地域住民側においては、当然ながら自動運転に関する知識が乏しいケースが多い。自動運転の基礎的な仕組みをはじめ、なぜこのルートが選定されたのか、走行可能な環境は何か、走行が困難な状況は何かなど、ODDに関する情報が共有されることで、中身のある意見交換や協力体制の構築などを進めやすくなる。

同モデルを資料として活用することで、住民の理解や納得度を高めやすくなるのだ。

「モデルの粒度や精度はどこがバランスポイントかという点では今後ブラッシュアップの余地が残っている」

モデルを評価する一方、より有意義な資料とするため、改訂・追記すべきポイントなどを求める意見も出された。

具体的には、「分析の結果がパターン化参照モデル案にどのように反映されているかについてもう少し整理されると良い」「急な勾配やカーブ、路面状況なども自動運転に影響を与える。こうした部分も追加されるとより具体的な議論ができる」「車両性能の部分に乗員定数の追記をお願いしたい」などの意見があり、より詳細なパターン化を求める声もあったようだ。

また、「モデルをどのような場でどう使うかを考えないとミスリードになる」など、モデルの使い方に対し留意を促す意見も出された。

「ビジネスモデルに対してもモデル化やパターン化が必要。どのようなキャッシュフローになるかも含めたパターンの見える化を検討していければと思う」

新たな移動サービスの導入においては、継続性を担保するためにもイニシャルコストやランニングコスト、公的支援の有無などをはじめ、事業性・ビジネス性をしっかりと考慮しなければならず、こうした点も情報を収集・分析し、モデル化・パターン化を進めるべきとする意見だ。

「オーナーカーに自動運転システムを搭載するケースにおいて、ODDをどう定義し、どう申請するかを現在検討中。こうした活動でもこのパターン化参照モデルを参考にできるのではないか」

自家用車向けの自動運転の開発・実用化においても、ODDの設定などの際に同モデルを参考にできるかもしれないとする意見も出された。

自家用車向けの自動運転は、高速道路などの自動車専用道路を皮切りに徐々に走行エリアや走行条件などのODDを拡大していくものと思われるが、自動運転においてどのような走行環境が走りやすく、また走りにくいのかを具体化していく意味で、こうした一定のパターン化が行われる可能性は高そうだ。

■国の自動走行実証の高度化について

自動運転の実証については、各協議会メンバーがこれまでに実施した実証の成果や課題を挙げつつ、今後の取り組み方針などを述べた。実証の高度化に関しては「事業性」を課題に挙げる意見が多く、実証を通じてサービス継続に向けた検討がすでに始まっていることをうかがわせている。

また、実用化に向けた国の取り組みについても意見や疑問を呈する場面も多く、さまざまな角度から忌憚のない意見が飛び交った。

「2020年春から5Gの商用サービスが開始される。ダイナミックマップの配信などがより可能になり、今まで制約になっていたものを5Gで解決することがこれから出てくる」

移動通信の新規格「5G」の運用により通信環境が大幅に進化し、実証技術も飛躍的に高まることが予想される。5Gサービスは2020年度に始まる見込みで、新年度の実証の高度化に寄与する技術として大きな期待が寄せられている。

「事業性は近年最も危惧している部分。自動運転のさまざまな検証がなされてきたが、地域の交通計画に位置づけられたものは恐らく一つもない」

自治体との協力のもと各地で進められている実証だが、まだまだ試験的な意味合いが強く、地域における自動運転の位置付けが確固たるものになっていないのが現状だ。

事業性に関してはこのほかにも「道の駅実証などの事例でも利用者は1日10人程度。そこにどこまでお金をかけられるか。貨客混載の場合は貨物輸送をどのような事業とするか」「コストを下げるだけでは限界があり、より運賃を取れるところをいかに増やすかが重要」「可能性があると思うのは、既存のものを自動運転に置き換えること。コミュニティバスやデマンド交通など既存の当初から補助金が入っているものを、その補助金の枠内で一部自動化することは十分あり得る」などの意見が出された。

地方における自動運転移動サービスの実証は、地域住民の足を確保する公共交通の意味合いを含んでいるものが多く、自動運転技術を導入しても採算性を確保できるかは不透明な部分が大きい。

「車で何ができるのかが重要であり、自動か手動かには依拠しない。自動の方がより価値があるものや自動の方がコストを抑えられるものなどを段階的に切り替えていく考え方でもよい」といった意見の通り、自動運転を導入する意義をしっかりと見つめ直す必要も出てきそうだ。

「(自動運転移動サービスの実用化において)経産省資料の中に認定の仕組みを設ける議論があるが、これはなぜか。地域ごとの事情がある中、実用化までのアプローチはさまざま。実施している地域が宣言すればそれで良いのではないか」

たたき台として示された無人自動運転移動サービス認定の在り方に関する意見・質問だ。政府としては、2020年度に実現する目標を掲げているため、認定という形が良いかは別として何らかの形で政府としての特定が必要と考え、提案したようだ。

「認定」といった制度によって実証やサービスの質が一定程度担保できる一方、場合によっては足かせとなることも想定されるため、型にはめる形での認定制度に疑義を呈した格好だ。

■【まとめ】各地の実証が事業性を意識する段階に パターン化参照モデルで新規参入相次ぐか注目

事業性を意識した意見が明らかに増加しており、各地で進められている実証が実用化をしっかりと見据えた段階に達していることがうかがえる。

また、パターン化参照モデルの策定により、新たに自動運転の導入を検討している事業者や地域が参入しやすい環境も構築され、自動運転実用化の動きがますます加速しそうだ。

モデルは、今回の議論を踏まえて精査・検討し、改めて同協議会の了承を得たうえでしかるべき時期に公表するとしている。2019年度内の策定方針であるため、近いうちに公表されるものと思われる。

次回(第11回)の官民協議会の日程はまだ公表されていないが、年度内に開催される公算で、第10回の議論を整理・精査したうえで、2020年目途の社会実装への官民の取り組み状況や指標上の実装のあり方などの議論を予定しているようだ。

【参考】関連記事としては「自動運転、ゼロから分かる4万字まとめ」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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