自動運転と5Gの関係性を全解説 コネクテッドカーでも大活躍

ドコモ・KDDI・Softbankの戦略まとめ





各所で世間を賑わす次世代移動通信規格「5G」。モバイル通信規格の最新技術として世界が注目しており、まもなく実用化も本格化する見込みだ。この5Gは自動運転分野との関わりも大きく、通信事業者各社が実証実験などさまざまな取り組みに力を入れている。







5Gがどのように自動運転に関わっているのか。その役割について調べてみた。

■5Gの特徴

5Gとは「第5世代移動通信システム」の略だ。通信速度は最大20Gbps(ギガビット毎秒)で、現在主流のLTEの約25倍に相当する大容量高速通信を可能にするほか、多数の機器を同時に接続することができ、タイムラグの少ない低遅延も実現するため、イベント時など密集した場所でも安定した通信を可能にする。

具体的には、2時間の映画が3秒でダウンロード可能になり、ロボットなどの精密な操作をリアルタイム通信で実現できるほか、自宅においてもスマートフォンなど約100個の端末やセンサーをネットに接続することが可能になるという。

一部で限定的に実用化が始まっているようだが、一般的には2020年の実現を目途に世界各国で取り組みが進められている状況だ。2G規格であるGSM方式の携帯電話システムを採用している移動体通信事業者らによる業界団体GSMAによれば、世界の5G回線数は、2020年以降の約5年で11億回線、世界人口に対するカバー率は約3割に達すると予測している。

■自動運転やコネクテッドカーで果たす役割

自動運転車は、車両に搭載されたセンサーやAI(人工知能)により周囲の状況を検知・解析し、アクセルやブレーキ、ハンドル操作などを制御するが、安全性をより高めるため、周囲を走行する他の車両やインフラ、ダイナミックマップ、さまざまな情報が蓄積されたサーバーなどと常時通信し、相互に情報を送受信する。

自動運転車が扱う情報量は膨大で、米インテルの試算によると、1日4テラバイトのデータを生み出すという。このすべてを通信するわけではないが、刻一刻と変化する交通状況を送受信するため、相当な量のデータを素早くやり取りする必要があるほか、スマートフォンなどと同様、サーバーに蓄積されたデータやメモリを活用することで各車両における情報処理能力を引き上げることができるため、高速かつ大容量の通信が必要となるのだ。

【参考】自動運転車のデータ通信量については「AI自動運転のデータ量、インテルが1日4TB以上と試算 LiDARなどのセンサー群が一因」も参照。

また、高速走行中や渋滞中でも遅延なくデータをやり取りするには、5Gの特徴である低遅延性や多数同時接続能力が重要になってくる。

道路に設置された対応機器と自動車が通信を行う路車間通信(V2I)や自動車同士が通信を行う車車間通信(V2V)などは専用周波数を用いた狭域無線通信が主流だが、将来的には移動通信システムを応用する可能性は高い。

短期的には、携帯電話システムやスポット型、狭域・直接通信型のITS用ワイヤレスシステムなど、さまざまな特徴を有する複数のワイヤレスシステムを効果的に組み合わせる方式が用いられることになりそうだが、5G技術の確立後は大部分が5Gに置き換えられる可能性が高い。

上記を含め、「つながるクルマ」を意味するコネクテッドカーにおける各種サービスも当然データ通信ありきのシステムだ。すでに始まっているリモートメンテナンスサービスやエンターテインメント機能など、5G技術の確立によりいっそう質の高いさまざまなサービスが誕生するはずだ。

【参考】自動運転における通信方法については「自動運転とデータ通信…V2IやV2V、5Gなどの基礎解説」も参照。

■5Gと日本
周波数帯の割り当て発表、NTTドコモら4社に

総務省は2019年4月10日、5G(第5世代移動通信システム)の周波数帯をNTTドコモ、KDDI・沖縄セルラー電話、ソフトバンク、楽天モバイルの4社に割り当てることを発表した。

同省は2019年1月から2月にかけて5G導入に向けた特定基地局の開設計画の認定申請を受け付けており、各社からそれぞれ申請を受けていた。

割当て枠は①「3.7GHz帯及び4.5GHz帯」が6枠、②「28GHz帯」が4枠で、全国の5G基盤展開率や特定基地局の開設数など開設計画に基づいて審査を行った結果、①はNTTドコモ、KDDI・沖縄セルラー電話に各2枠、ソフトバンク・楽天モバイルに各1枠、②は4社それぞれに1枠ずつ割り当てることとした。

条件として、ソフトバンクには過去に発生した重大事故の再発防止策の徹底に努めることなど、また楽天モバイルには基地局の着実な開設に努めることなどが付されたほか、全社に5Gの特性を生かした多様なサービスの広範かつ着実な普及に努めることや使いやすい料金設定、不感地域における基地局の着実な開設などが付されている。

サービスの開始時期は各社とも2020年3月~6月の範囲で、5G基盤展開率はNTTドコモが97 %、KDDI・沖縄セルラー電話が93.2%、ソフトバンクが64%、楽天モバイルが56.1%としている。

NTTドコモ:デンソーやDeNAと協力

NTTドコモは2016年2月、高度運転支援および自動運転技術の実現に向け、LTEや5Gを利用した車両制御システムの研究開発をデンソーと協力して進めることに合意したと発表。また、同年11月にはディー・エヌ・エーと自動運転車両の遠隔管制における5Gの活用に向け、実証実験を共同で進めることにも合意している。

2017年5月には、コンチネンタル・オートモーティブ・ジャパンと、コネクテッドカーのインフォテインメント機能の拡張や、高精細画像伝送など車とあらゆるものをセルラー通信でつなぐため、5GをはじめとするセルラーV2X技術を利用した共同デモの実施や研究を計画することに合意している。

同年11月には、5Gの「高信頼」かつ「低遅延」を実現する通信技術「Ultra-Reliable and Low Latency Communications(URLLC)」の実証実験をファーウェイと共同で行い、3GPP標準化団体などが定める5Gの条件である99.999%以上のパケットデータ送信成功率の高信頼と、無線区間1ミリ秒以下の低遅延を同時に満たすことに世界で初めて成功したと発表した。

さらに2018年4月には、仏ヴァレオグループとコネクテッドカービジネスのサービス開発や展開において協業することを明らかにしたほか、2019年3月には、日産自動車が開発する「Invisible-to-Visible」技術を5Gを用いて走行中の車両で活用する実証実験を開始したことなども発表しており、通信技術を武器に自動運転分野へ本格参入している。

【参考】NTTドコモと日産の取り組みについては「遠方の知人とも「ドライブ」が可能な技術、日産とNTTドコモが実験 VRやARも駆使」も参照。

KDDI:ダイナミックマップ関連で実証実験

一方、KDDIもさまざまな取り組みを進めている。2017年12月には、ゼンリン・富士通とダイナミックマップ生成に必須技術となる大容量データの情報収集、及び自動運転車へのマップ配信技術の実証実験を開始することを発表したほか、2018年3月にはティアフォー、同年8月にはアイサンテクノロジーとそれぞれ業務資本提携契約を締結したことを発表している。

2019年2月には、名古屋大学やアイサンテクノロジーなどとともに、国内初となる一般公道において5Gを活用した複数車両の遠隔監視型自動運転実証実験を行うことも発表している。

【参考】国内初の遠隔監視型自動運転実証実験については「国内初!5G車両を含む2台の遠隔監視型自動運転の実証実験 愛知県一宮市で実施」も参照。

ソフトバンク:トラック隊列走行などの分野で実証実験

通信分野以外でも自動運転関連事業に力を入れているソフトバンクは、2018年3月に高速移動中のトラックと5G実験基地局間での信号伝送の実験を実施し、無線区間(片道)の遅延時間が1ms(マイクロ秒)以下となる低遅延通信に成功したほか、同年11月に5Gを活用するコネクテッドカーの開発向け検証環境を世界で初めて構築し、商用化に向けた検証を開始している。

2019年1月には、5Gの新たな無線方式「5G-NR」の無線伝送技術に基づく車両間直接通信の屋外フィールド通信試験を実施し、無線区間の遅延時間が1ms以下となる低遅延通信に世界で初めて成功したことも発表している。

【参考】ソフトバンクの5G戦略については「ソフトバンク、5G戦略の系譜 自動運転で「通信会社」から脱皮」も参照。

■5Gと世界
5G主導権争いをもとに政治分野でも火花

2019年4月、韓国当局が世界初となる商業用5Gを開始したとロイター通信が報じ、世界各国の企業らが反応した。米通信大手のAT&Tらは、これ以前に米国の一部都市で5Gネットワークを開始する計画を発表しており、自社が世界初などと敏感に反論しているようだ。

2018年、米国政府主導のもと、ファーウェイ創業者でCEOの任正非氏の娘で副会長兼CFOを務める孟晩舟氏が逮捕された件も、5Gの覇権争いが根底にあるとする説が有力視されている。中国大手を市場から排除し、次世代技術においても米国が主導権を握るためだ。

トランプ政権は中国製品の排除を各国に求め、一部の国はこれに従う形をとっているが、EUが2019年3月に発表した5G整備に係る指針では、5Gに関わる製品は6月までに国に安全保障上のリスクを評価するよう求め、判断を各国に委ねることとしている。

ファーウェイの真相は置いておくとしても、それだけ5G技術が各国、各企業にとって重要な存在かがうかがえるとともに、今まさに実用化の一歩を踏み出している状況が伝わってくるだろう。

国際基準づくりも最終フェーズに

国際基準をめぐっては、移動通信システムの国際標準を扱うITU(国際電気通信連合)と3GPP(3rd Generation Partnership Project)において、2020年の実現に向けた標準化活動が本格化しており、最終フェーズを迎えているようだ。

ITUは今後、5G(IMT2020)無線インタフェースの提案受付けを行い、2020年に勧告を策定する予定。3GPPは、2019年内に全ての技術性能要件に対応した5Gの仕様を策定することとしている。

■【まとめ】5Gは自動運転の生命線 通信事業者の存在感が今後ますます増大

2019年中に一部地域で実用化され、2020年中に普及に向けた動きが本格化すると思われる5G。スマートフォンなどの通信においてその威力を体感するほうが早そうだが、自動運転分野においても着々と実証が進められていることが分かった。

自動運転においては、センサー類と同様通信も生命線であり、欠かすことのできない重要な技術だ。通信事業者の存在感は今後ますます強まり、自動運転関連事業者との連携もいっそう深まっていくものと思われる。







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