自動運転導入への国の9つの「評価項目・指標」、考え方は?

各指標の共通言語化とユースケースづくりを促進





内閣官房日本経済再生総合事務局の「自動走行に係る官民協議会」は2019年12月、自動運転サービスの導入を検討している企業や団体向けに、導入検討段階において参考となる導入地域の環境や条件を整理したパターン化参照モデルを策定・公表した。







▼「地域移動サービスにおける自動運転導入に向けた走行環境条件の設定のパターン化参照モデル(2020 年モデル)」の解説|内閣官房日本経済再生総合事務局(PDF)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/jidousoukou/pdf/model_kaisetsu.pdf

自動運転技術の導入に向け地方自治体などが自動運転事業者と検討を行うにあたり、このモデルを活用することによって各指標が共通言語化されるとともに、実際の走行ルートの候補地を前提としたより詳細なパターン分けの実施を通じたユースケースづくりが行われることに期待しているようだ。

パターン化参照モデルでは、2017~2018年度に全国で実施した実証実験のデータを踏まえ、自動運転車両の導入時に考慮すべき走行環境条件(ODD/運行設計領域)として環境条件や道路条件、地理条件などについて9つの評価項目を設定したほか、自動運転車両に求められる主な技術要素などを7項目に整理し、実際の走行ルートの候補地に合わせて具体的な走行環境上の課題を検討できるよう作業用シートも策定している。

以下、9つの評価項目を中心にどのようにパターン化されているのかを見ていこう。

■環境条件:「時間」「天候」の2つを設定

環境条件として①時間②天候——の2つを設定している。

①時間

自動運転車両が走行する時間帯については、一般的に日中の方が明るく視認性が高いなど運行上の課題が少ない。このため、課題に対応するための技術要素が少ないものから順に、「日中」「夜」の2つの指標を設定した。

②天候

一方、自動運転車両が走行する天候の状況については、一般的に天候が良い方が視認性も高いなど運行上の課題が少ない。このため、課題に対応するための技術要素が少ないものから順に、「晴・曇」「雨」「雪」「霧」と4つの指標を設定した。

具体的な事例としては、積雪のため歩行者が車道へはみ出し歩行していたため手動で回避するケースや、対向車が積雪回避のため道路中央へはみ出したため停止するケース、自動走行車が停車標示を見落としたなどが想定される。天候に関して地域ごとの特性がある場合は、必要に応じて検討すべきとしている。

■道路条件・地理条件など:「走行コース」「公道」など7つを設定

道路条件・地理条件では、③走行コース④公道/閉鎖空間⑤運行速度⑥通信環境⑦歩車分離⑧交通量⑨実勢速度——の7つを設定している。

③走行コース

③走行コースでは、自動運転車両が走行するコースについて、直進コースや左折のみのコースの方が視認性が高く、運行上の課題が少ないことから、課題に対応するための技術要素が少ないものから順に「直進のみ」「左折あり(右折なし)」「右折あり(信号あり交差点、右折信号あり)」「右折あり(信号あり交差点右折信号なし)」「信号なし交差点」の5指標を設定している。

④公道/閉鎖空間

④公道/閉鎖空間では、自動運転車両が走行する道路などの性質について、その閉鎖性が高いほど安全性が高く、運行上の課題が少ないことから、課題に対応するための技術要素が少ないものから順に「専用空間内(敷地内)」「専用空間(一部公道と交差)」「混在交通(周辺交通に制限あり)」「混在交通」の4指標を設定している。

⑤運行速度

⑤運行速度では、自動運転車両が走行する速度について、速度が低いほど安全性が高く、運行上の課題が少ないことから、課題に対応するための技術要素が少ないものから順に「低速(~20km/h)」「~40km/h」「60km/h」の3指標を設定している。

⑥通信環境

⑥通信環境では、自動運転移動サービスが走行する通信環境について、良好であるほど運行上の課題が少ないことから、課題に対応するための技術要素が少ないものから順に「良好」「一部不良」「不良」の3指標を設定している。

例えば、走行コースがトンネルや軒下、高い建物の近い地域や基地局から離れた地域を通過する場合など、通信感度に影響を及ぼすケースなどが想定される。なお、通信環境そのものだけでなく、自己位置特定のためにGPSを活用する場合をはじめ、車両の遠隔操作・監視のためにセルラー通信を活用するといった通信の用途に応じて必要な通信環境を確保すべきとしている。

⑦歩車分離

⑦歩車分離では、自動運転車両が走行する走行コースの歩車分離について、歩車分離が確保されているコースほど安全性が高く、より運行上の課題が少ないことから、課題に対応するための技術要素が少ないものから順に「歩行者自転車用柵等あり」「歩道あり」「路側帯あり」「路側帯なし」の4指標を設定している。

⑧交通量

⑧交通量では、自動運転車両が走行する走行コースの交通量について、他車両などの交通量が少ないコースほど安全性が高く、より運行上の課題が少ないことから、課題に対応するための技術要素が少ないものから順に「ほとんどなし」「少ない」「多い」の3指標を設定している。

走行コースにおける交通量が多い場合、複雑な走行条件となり運行上制約が付される可能性も想定されるため、事前の交通量を把握することが必要である。また、走行コースにおける交通者は、一般的な自動車のほか歩行者や自転車、農耕作業用トラクタなど多様であるため、あわせて把握することが必要としている。

⑨実勢速度

⑨実勢速度では、他の車両が混在する場合において、自動運転車両の走行コースにおける一般車両の実勢速度が低いケースほど安全性が高く、運行上の課題が少ないことから、課題に対応するための技術要素が少ないものから順に「低速(20km/h 程度)」「40km/h 程度」「40km/h 超」の3指標を設定している。

自動運転車は原則制限速度以内で走行するため、実証段階でも後方から追い越しされるケースが多く発生している。こうした後方車両の挙動が自動運転に影響を与えたり、事故を誘発したりする可能性も考えられる。

■自動運転車両に求められる主な技術要素など

パターン化参照モデルの解説内では、上記9つの評価項目を踏まえた自動運転車両に求められる主要技術についても触れており、車両性能として①運行速度②位置特定技術(走行タイプ)③認識技術(障害物検知)④モニタリング技術(車内監視カメラなど)⑤乗車定員の5項目、また人的関与として⑥運転手⑦乗務員の2項目を挙げている。

②位置特定技術では、自動運転車両が自車位置をどのように特定するかについて、「電磁誘導線/磁気マーカー」、「GPS」、「LiDAR/センサー」と3つのオプションを示すとともに、高精度なデジタル地図を事前に作成する必要がある場合にも触れている。

③認識技術では、自動運転車両が障害物をどのように検知して走行中の安全を確保するかについて、「カメラ」、「レーダー」及び「LiDAR」と3つのオプションを示している。また、それぞれの検知方法について、カメラやLiDARについては悪天候時の検出能力、レーダーについては識別対象となる物体の素材ごとに異なる検出能力など、それぞれの課題を考慮して最適なセンサー構成を検討することが必要としている。

④モニタリング技術では、車両内に監視カメラなどが設置されているかについて「なし」と「あり」の2つのオプションを示している。無人自動運転移動サービスにおいては、車内の安全確保のためどのような見守りを実施するかという観点から、モニタリング技術の検討が必要としている。

⑥運転手では、自動運転車両内に運転手を配置するか否かについて「運転席に乗車」と「遠隔操作/監視(車両内に運転手なし)」の2つのオプションを示している。自動運転車両の性能に鑑み、安全・円滑な運行を担保する上で運転手をどこに配置するのが適切かが問われる。

■【まとめ】分類化で分析や比較が容易に

こうした分類の公表は、自動運転の実証実験が全国各地で広がりを見せている証左とも言えるだろう。多種多様な自動運転システムが各地域で実施されるにあたり、一定のパターンに落とし込むことで分析や比較が容易になる。導入を検討している自治体などにとっても参照しやすくなるだろう。

2020年を迎え、自動運転の実現が目前に迫った感を受けるものの、基本的には試験導入の形となり、まだまだクオリティを上げる必要がある。また、試験導入によって機運が高まり、手を挙げる自治体なども増加する可能性が高い。

こうした流れを促進するためにも一定の分類化を進め、走行環境や各自動運転システムの特徴を明確にしていくことは非常に有用だ。実用化に向けた取り組みが加速することに期待したい。

【参考】関連記事としては「自動運転、完全に分かる4万字まとめ」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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