トヨタのコネクティッド技術・取り組みまとめ 自動運転化にも欠かせないコア技術

「三本の矢」戦略、MSPFなど核に



自動車のコネクティッド化は、すでに全ての自動車メーカーにとっての至上命題となっている。自動運転化のためにもシェアリングのためにもコネクティッド化は欠かせない。


トヨタ自動車も例外ではなく、コネクティッド技術の開発や関連する取り組みに力を入れている。この記事では「トヨタ×コネクティッド」の切り口で、展開している技術や最近の動きを解説していく。

■「トヨタ×コネクティッド」の戦略概要

トヨタ自動車は2016年末に「コネクティッド戦略」を発表した。

今後全てのクルマに車載通信機(DCM)を搭載してコネクティッド化するとともに、コネクティッドサービスを提供する基盤となる「トヨタスマートセンター」を発展させ、MaaSへの取り組みを加速するための情報プラットフォーム「モビリティサービスプラットフォーム」(MSPF)を構築するという内容だ。


この大きな方向性は現在も続いており、2019年2月に発表された「トヨタのコネクティッド&MaaS戦略」においても、「三本の矢」とも言われる3大コネクティッド戦略が説明されている。

  • 1. 全てのクルマをコネクティッド化し、「モビリティサービスプラットフォーム」(MSPF)を構築
  • 2. 標準搭載ビッグデータの活用を推進し、お客様や社会に貢献すると同時に、「トヨタ自身のビジネス変革」を推進
  • 3. 様々な企業と提携し、「新たなモビリティサービスを創出」

「1」に関しては、2020年中に日本・アメリカ中国で販売されるトヨタの乗用車に車載通信機(DCM)を標準搭載し、完全なる「つながるクルマ化」を目指している。

また「3」にあるように、トヨタのコネクティッド戦略はトヨタ単体のものではなく、パートナー企業と提携し、仲間づくりをしながら行っていくという姿勢も注目したいポイントだ。

▼トヨタのコネクティッド&MaaS戦略
https://global.toyota/pages/global_toyota/ir/presentation/2019_q3_competitiveness_jp.pdf


■トヨタ車に搭載されているコネクティッド技術

トヨタでは、すでに多くの市販車に対してトヨタのコネクティッドサービスを装備している。その基礎となるのが「トヨタスマートセンター」の存在だ。クルマがトヨタスマートセンターと通信で接続することによって、安心・安全で便利なサービスを受けることができる。

DCMが標準装備されているクルマでこれらのサービスを受けられるのはもちろんであるが、手持ちのスマートフォンなどを通信機器として利用する方法もある。ここでは、コネクティッドサービスとして提供されている代表的なものを紹介していこう。

ヘルプネット

車中で病気になったときなどに、ボタンの押下やエアバッグの作動などを通じてオペレーターに接続され、状況によって緊急車両やドクターヘリなどの派遣を受けることができるサービスだ。

自分がどこにいるのか伝えることが難しい場合でも、位置情報が送信されるため短時間で緊急対応が可能となっている。

マイカーSecurity

マイカーSecurityは遠隔地のクルマを見守ることができるサービスである。スマートフォンのアプリで鍵の閉め忘れや駐車位置の確認などを行えるほか、緊急事態への対応も可能である。

クルマがこじ開けられたり破壊されたりした場合にはアラームで通知され、リモートイモビライザーによってエンジンの再始動やステアリングロックの解除を禁止することができる。万が一エンジンが起動された場合も通知してもらうことが可能だ。

エージェント

エージェントは音声対話サービスで、ナビに話しかけることで対話式で目的地や情報の検索が可能となる。目的地の設定まで含めて音声で行い、ハンドルから手を離すことなく行えるのが特徴である。

「近くのイタリアン」「駐車場があるところ」などの条件に従って目的地の絞り込みをすることができるほか、ニュース、天気、クルマの取扱説明書などの情報検索が音声でできたり、エージェントでうまく探せなかった場合は有人のオペレーターサービスに引き継いでリクエストに対応してもらうこともできる。

またさらに進んだ「エージェント+」サービスにおいては、クルマの「ふらつき」を検知して、音声でドライバーに声かけをして注意喚起したり、ビッグデータから今後の行先と走行ルートを予測して目的地を先読みしたサービスを行ってくれる。

MyTOYOTA

MyTOYOTAはスマートフォンのアプリから愛車の状況を確認できるサービスだ。広い駐車場でどこに駐車したかがわかる「カーファインダー」や車両のロック状態がわかる「うっかり通知」、閉め忘れ時に安心の「リモート操作」などの機能がある。乗車前にスマホでエアコンを作動させておくといった機能も。

TCスマホナビ

車載ナビと連携したスマホサービスで、事前にスマホでお出掛けプランを登録しておけば、車両内で目的地設定の必要がなくなる。「駐車場の予約」や「通れる道マップ」などの幅広いナビ機能もスマホ上で利用利用できる。

■「トヨタ×コネクティッド」の最新トピックス

既存のクルマに対して「つながる」サービスを提供する一方、未来を見すえたコネクティッドの取り組みも幅広く行われている。特に、他社との連携については様々な業種との取り組みがされている。ここでは主要なものを紹介していく。

Woven City(ウーブン・シティ)の発表

2020年1月、米ラスベガスで開催された技術見本市「CES2020」にて、豊田章男社長はあらゆるものやサービスがつながるコネクティッド・シティ「Woven City」のプロジェクトを発表した。静岡県裾野市にある東富士工場の跡地を利用し、約70.8万平方メートルの広大な範囲において作られる実証都市である。

2021年からまちづくりを開始し、トヨタの従業員やプロジェクト関係者など約2000人が居住する予定となっている。自動運転はもちろんのこと、環境との調和、サスティナビリティを前提とした街づくりがされ、人、建物、クルマが情報でつながることにより、よりよい暮らしができることを目指している。

▼Woven City公式サイト
https://www.woven-city.global/

NTTとの業務資本提携

スマートシティ構築の取り組みに関し、2020年3月にNTTとスマートシティビジネスの事業化に向けた業務資本提携を行うことを発表した。

NTTグループは自治体との結びつきも強く、スマートシティに関する取り組みも豊富だ。今後は両社にてモビリティサービスだけでなく、生活や公共サービスなどあらゆるものがつながるための「スマートシティプラットフォーム」を構築していくという。

まずは先行する取り組みとしてWoven Cityと東京都内の品川駅前にあるNTT街区においてこのプラットフォームの実装を行い、その後、全国展開していく計画のようだ。

MaaSサービス「my route」の全国拡大

トヨタがマルチモーダルモビリティサービス・MaaSサービスとして福岡県で実証実験をしていた「my route」。2020年1月の発表により、神奈川県横浜市や熊本県水俣市、宮崎県の宮崎市と日南市に展開し、順次全国へサービスエリアを拡大させることが明らかになった。

my routeは、クルマだけでなく公共交通やタクシー、カーシェア、自転車シェアなど様々な移動サービスを組み合わせたルート検索機能や決済機能を有している。JTBパブリッシングの観光データベース「るるぶDATA」とも連携していることで知られる。

MONET陣営での取り組み

トヨタは2019年にソフトバンクと共同出資でMONET Technologies株式会社を設立しているが、その活動が目立ってきている。

MaaSの本格的プラットフォームとなる「MONETプラットフォーム」を2020年4月にリリースし、オンデマンドバスなど様々な交通手段がサービスとして容易に接続できるようになった。

接続先の仲間づくりとして設立している「MONETコンソーシアム」についても、2020年8月現在600社を超え、大きな組織となっている。

AWSとMSPFにおける業務提携

2020年8月、トヨタは米Amazon傘下のAmazon Web Services(AWS)との業務提携を拡大すると発表した。グローバルでトヨタグループとしてAWSと提携を強化し、コネクティッドカーの普及に向けたMSPFをさらに拡充していく意向のようだ。

■【まとめ】コネクティッドの最先端を目指すトヨタ

このようにトヨタは「コネクティッド」を重要戦略と考え、様々な取り組みを始めている。そのためにはトヨタ単体ではなく、さまざまな企業とのパートナーシップも必要だと考え、最近ではソフトバンクやAmazon、NTTなどとの取り組みも強化しているのだろう。

これからもトヨタスマートセンターやMSPF、Woven Cityなどにおけるトヨタのコネクティッドに対する取り組みは、より加速していきそうだ。

【参考】関連記事としては「【保存版】トヨタ×自動運転の全てが分かる4万字解説」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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