自動運転実証の誘致に意欲的な自治体10選

東京、愛知、神奈川、藤沢市、伊那市、淡路市…





自動運転レベルの高度化に伴い、全国各地で自動運転の実証実験が進められている。企業や研究機関などが熱を入れる一方、受け入れる自治体側には幾分温度差がありそうだ。







地域課題の解決や次世代産業の促進に向け、受け入れに積極的な自治体を中心に実際に実証実験が行われている自治体をピックアップしてみた。

■愛知県:自治体と企業マッチングし実証実験促進

愛知県は2016年度から県自らが先導する形で大規模な自動運転の実証実験などを積み重ねており、2017年7月には、自動運転システムに関係する企業・大学などや、自動運転システムの導入を目指す県内の市町村が参画する「あいち自動運転推進コンソーシアム」を設立し、「あいち自動運転ワンストップセンター」を設置した。

自動運転の実証実験を希望する民間事業者と実証地域となる市町村などとのマッチングを推進し、実証実験実施の際には、民間事業者等に対し、関係法令上の手続に係る各種相談への対応や情報提供、関係機関との調整などを行っている。実証エリアには20市町24地区が登録されている。

コンソーシアムでは官民間のマッチングのほか、最新の技術動向を把握しながら自動運転に係るビジネス展開の可能性や具体化に向けた課題などを研究・検討するワーキンググループも設置されており、関連企業間のマッチングや国や県の事業への誘導、試作品の評価なども行っている。

愛知県内ではこれまでに、2014年度にデンソーが南知多道路、ZMPと名古屋大学が名古屋市守山区、2016年度にはZMPと名古屋大学のほかアイシンが岡崎市、アイサンテクノロジーが一宮市をはじめとする12~13市町で実証実験を行うなど、国内トップクラスの自動運転実証実績を誇っている。

2017年度までに行われた実証実験は25カ所、実証路線の総延長約63キロメートル、総実走距離は3500キロメートルを超えており、2017年12月には、全国で初めてとなる一般公道における遠隔型自動運転の実証実験を幸田町で成功させている。

2018年度は、複数台の遠隔型自動運転車両を同時に走行させる実証実験や第5世代移動通信システム「5G」の実験無線局を活用した実証実験を、アイサンテクノロジーを中心とした事業共同体が豊橋市、一宮市、常滑市で行っている。

【参考】愛知県の取り組みについては「愛知が和製カリフォルニアに!? 自動運転実証で知事、5G実験に意欲」も参照。

■東京都:スマートシティに向け自動運転実証も加速

東京都も愛知県同様、東京自動走行ワンストップセンターを設置し、公道実証に必要な手続きに関する電話相談や窓口相談の対応、関係機関との調整などを行い、自動走行システムの実証実験を促進している。2017年12月には、ZMPが同センターの支援第1号となり、遠隔型自動運転システムの公道での実証実験を実施した。

2018年4月には、都内における自動運転技術等を活用したビジネスモデル構築に関するプロジェクトを始動させた。

プロジェクトでは郊外部住宅団地での自動運転バスによる移動手段創出をテーマに、バス路線の補完や起伏が多い地域における住民の移動支援、AI(人工知能)を活用した車内サービスなどの活用策について検証する神奈川中央交通とSBドライブの事業のほか、遠隔監視のもと自動運転タクシーを走行させ、需要の多い都心部路線でのドライバー不足解消などの活用策やICT技術を活用した予約・配車・料金決済といった配車サービスを検証する日の丸交通とZMPの事業が採択された。

2020年の東京オリンピック・パラリンピックを一つの目標にスマートシティ施策を推進しており、五輪の舞台でも選手の移動などに自動運転が実用される見込みだ。

【参考】東京都のビジネスモデル構築に関するプロジェクトについては「東京都、自動運転事業に本腰 初予算8400万円計上 ZMPやSBドライブなどの実証実験に期待感」も参照。

■神奈川県・横浜市:ロボットやIoT推進 日産やディー・エヌ・エー、小田急などがさまざまな実証進める

ロボット共生社会推進事業として「さがみロボット産業特区」などを中心に自動運転に関する取り組みも盛んに行われており、2018年9月には、小田急電鉄、江ノ島電鉄、SBドライブの協力のもと、江ノ島海岸バス停から小田急ヨットクラブを結ぶ約1キロメートルの区間で自動運転バスの実証実験を行っている。

横浜市では、日産自動車が本拠を構えていることもあり、2013年に同社の協力のもと、さがみ縦貫道路で高速道路の入口から出口までを自動で走行し、車線内走行・車間距離制御、自動車線変更、低速車両の自動追い越し、自動合流、自動分岐などの機能について確認する実証実験が行われている。

2017年には、ディー・エヌ・エーとの包括連携協定及び業種や企業規模の枠組みを超えてIoTビジネスを目指すプレーヤーの連携を実践する事業「I・TOP横浜」に基づき、地域交通課題の解決を目指した「自動運転プロジェクト」を立ち上げている。

同年4月に金沢動物園内で自動運転バスの試乗イベントを実施したほか、2018年3月には日産自動車とディー・エヌ・エーが共同開発を進める無人運転車両によるモビリティサービス「Easy Ride(イージーライド)」の実証実験をみなとみらいで実施した。2019年2月には対象エリアを拡大し、配車アプリで目的地を自由に指定できるなどより実際のサービスに近い形で第2弾となる実証実験を行っている。

【参考】イージーライドについては「日産とDeNA、今年も自動運転サービス「Easy Ride」実験を開始」も参照。

■神奈川県藤沢市:ロボネコヤマトが走る藤沢市 自動運転の実証実験支援など推進

神奈川県と藤沢市、DeNA(ディーエヌエー)の3者は、藤沢市の国家戦略特区でロボットタクシーの実証実験を2016年2月にスタートした。走行コースはバスロータリーから商業施設までの約2.4キロメートルの区間で、ドライバーやオペレーター同乗のもと、モニター登録した地域住民がスマートフォンなどで予約し、区間内で乗車を体験した。

また、ディー・エヌ・エーとヤマト運輸は2017年4月から1年間、藤沢市の鵠沼海岸、辻堂東海岸、本鵠沼の各エリアで、自動運転社会を見据えた「ロボネコヤマト」プロジェクトの実用実験を実施。車内に保管ボックスを設置した専用EV車両を使用し、好きな時間帯・場所で荷物を受け取ることができるオンデマンド配送サービス「ロボネコデリバリー」と、地元商店の商品をインターネット上で一括購入し、運んでもらうことができる買物代行サービス「ロボネコストア」の2つのサービスを行った。

2018年4月には自動運転車両を使った配送実験にも取り組んでおり、車内に専任ドライバーが座っている状態で自動運転走行を約6キロにわたって行ったほか、ほかの車両が入ってこないクローズドな公道で車内にドライバーがいない状態で自動運転走行なども行った。

このほか、藤沢市は「ロボット未来社会推進プロジェクト」を2018年度に開始し、産学官の連携強化を図りながら自動運転の実証実験支援など先進的な取り組みを推進していくこととしている。

また、さがみロボット産業特区と連携し、「ロボットと共生する未来社会」の実現に向けさまざまなロボットが社会の中で活躍するモデル空間として「かながわロボタウン」の創出に取り組んでおり、2018年11月に開催した「かながわロボタウンキックオフイベント」では、自動運転バス「ロボットシャトル」の展示なども行っている。

■滋賀県大津市:京阪バスとの取り組みや道の駅を拠点とした実証実験も

国土交通省が進める中山間地域における人流・物流の確保の確保に向けた道の駅などを拠点とした自動運転サービスの実証実験に、大津市の道の駅「妹子の郷」が選定され、2018年12月に地域協議会を設立し、将来的なビジネスモデルの内容や実証実験の概要などについて検討を進めている。

実証実験は2019年3月ごろを予定しており、無人でも走行可能な自動運転レベル4(高度運転自動化)の技術が搭載された車両を使い、JR駅や市役所の支所などを結ぶ18キロの公道で実験を行うという。

同市はまた、自動運転バスの実用化に向け2018年6月に京阪バスと協定を結んでおり、産・観・学による次世代型モビリティ勉強会の設立や、大津市内での自動運転実証実験などを通して、大津市が抱える課題の解決や、京阪バスが目指す自動運転技術を生かした新たなビジネスモデルの創出に向けて協力することとしている。

2019年3月には、京阪バスと日本ユニシスが、琵琶湖畔とJR大津駅を結ぶ片道約0.7キロのコースで、一般車両と歩行者の混在区間を自動運転レベル3(条件付き自動運転)の自動運転シャトルバスで走行する実証実験を行う。

同市はこのほか、遊休スペースを活用した駐車場シェアリングサービスを手掛けるakippaとも2018年11月に連携協定を締結。2019年2月には、ソフトバンクとトヨタ自動車の共同出資会社MONET Technologies(モネテクノロジーズ)と次世代オンデマンドモビリティサービスの提供に関し連携することが発表されており、新たな技術やサービスを活用した地域課題の解決に積極的な姿勢をうかがわせている。

【参考】大津市の道の駅「妹子の郷」における実証実験については「人口250人の滋賀・葛川地域で自動運転の実証実験 レベル4搭載、道の駅を利用」も参照。

■長野県伊那市:道の駅活用し実証実験 モネとの連携も

国土交通省が進める中山間地域における人流・物流の確保の確保に向けた道の駅などを拠点とした自動運転サービスの実証実験に伊那市の道の駅「南アルプスむら長谷」が選定され、2018年2月に貨客混載による道の駅への農作物出荷や道の駅からの商品配達の実験などが行われている。

車両は先進モビリティの20人乗りバスが使用され、一般車や歩行者が混在する区間では、運転手の監視のもとハンドルやアクセルが自動で制御される自動運転レベル2相当で走行したほか、磁気マーカーを設置した約200メートルの専用区間では運転手不在で自動走行する自動運転レベル4を実証した。2018年11月にも第2弾となる実証実験を行っている。

このほか、同市はモネテクノロジーズと次世代オンデマンドモビリティサービスの提供に関し連携することも発表されている。

【参考】伊那市の道の駅における取り組みについては「長野で実施の自動運転バス実験、反対住民わずか1% 自動運転レベル2、自動運転レベル4で走行」も参照。

■兵庫県淡路市:ウーバーの配車アプリ事業の足がかかりに

持続可能な社会づくりを進める「あわじ環境未来島構想」の中で二人乗りの超小型電動車両の実証実験やEVレンタカーの導入などを行っているほか、2018年3月には地理空間情報技術開発を手掛ける国際航業と自動運転サービスの実証実験を実施。夢舞台サスティナブル・パーク内の1.9キロメートルの区間を高性能レーダーやカメラを搭載した自動運転をモニター体験できる機会を設けた。

同市はまた、観光戦略の一環として米ライドシェア大手のウーバー・テクノロジーズによる配車アプリ導入に向けた実証実験を2018年7月に開始。同社が配車アプリを本格展開させる足がかりとなった。

【参考】ウーバーの実証実験については「ライドシェア大手ウーバー、淡路島で配車アプリの実証実験開始」も参照。

■秋田県仙北市:国家戦略特区の強み生かし実証実験誘致へ

国家戦略特別区域に指定されている仙北市では、2016年11月にディー・エヌ・エーが10人程度乗車可能なロボットシャトルの実証実験を行っている。ハンドルやアクセル、ブレーキのない自動運転車が国内の公道を走行する初めての取り組みで、一般公募により募集した試乗者を乗せ、あらかじめ決められた片道400メートルほどの走行ルートを自動走行した。

2017年9月からは、AZAPAとリコーが環境耐性などの潜在的課題を抽出し、新たな技術イノベーションによる課題解決を目的とした自動運転車両の実証実験を行っている。

公道走行における技術的な課題や雪国での実用化、交通インフラ環境との協調性、法整備などの具体的な実用化への課題の洗い出しを行うこととし、AZAPAは、自動運転における経路生成や回避行動の自動運転制御、搭乗者の感性に関する制御技術をテーマに、リコーは、ステレオカメラなどを用いた全方位画像センシング技術、人の認知・判断・行動の高度解析をテーマに取り組み、両社で技術融合した車両を用いて自動運転における課題抽出と新たな技術的解決を図ることとしている。

同市はこのほか、モネテクノロジーズと次世代オンデマンドモビリティサービスの提供に関し連携することも発表されている。

■茨城県日立市:BRT活用しラストマイル走行実験

日立市では、経済産業省および国土交通省の2018年度事業「高度な自動走行システムの社会実装に向けた研究開発・実証事業:専用空間における自動走行などを活用した端末交通システムの社会実装に向けた実証」の一環として、産業技術総合研究所らが10月にラストマイル自動走行の実証評価を実施。廃線敷を利用した「ひたちBRT」のバス専用道路と一般道の計3.2キロメートルにおいて実証評価を行った。

全国でも珍しいBRT(バス高速輸送システム)インフラを持つ日立市には、今後も実証実験の話が舞い込んできそうだ。

■福井県永平寺町:「永平寺参ろーど」舞台にパナソニックや産総研などが実証

福井県と永平寺町、パナソニックは2017年10月から2019年3月までの長期間にわたり、自動運転車両走行の実証実験を行っている。

国の地方創生拠点整備交付金を活用して全長約6キロメートルの「永平寺参ろーど」を自動走行実証実験が行える環境に整備。永平寺参ろーど沿線には、大本山永平寺や少子高齢化が進行している集落があり、鉄道廃線後の交通手段確保など、地域の課題やニーズに対応できる自動走行車の有効活用について検証を行うこととしている。

一方、パナソニックは、これまで社内の試験場などで検証を重ねてきた自動運転技術を初めて公道に準じた環境で実証し、自動運転EV(電気自動車)コミューターの実用化に向けた検証なども行うこととしている。

また、産業技術総合研究所などの取り組みのもと、2017年度からラストマイル自動運転の実証も行われている。小型電動カートを用いた遠隔監視・操作技術と自動走行技術を組み合わせた遠隔型自動走行システムとなる端末交通システムの社会実装に向けた技術実証などを進めており、2018年10月からは国内初の複数台の自動運転車両と管制システムを用いた長期実証実験なども実施した。

米テキサス州で2018年3月に開催された国際IT見本市に町長自ら参加し、公式セッションの場で自動走行について発表するなど、自動運転をまちづくりに生かしている自治体として積極的にPRしている。

2018年11月には、自動走行の実用化に向け取り組んでいる自治体や企業の関係者ら参加のもとラストマイル自動運転シンポジウムも開催されたほか、約1カ月間にわたり自動運転車を定時運行し一般に開放する実証実験なども実施し、小学生が下校時に乗車するなど738人が利用したという。

【参考】永平寺町における産総研の取り組みについては「産業技術総合研究所、遠隔自動運転の実証実験 世界初、1人で2台を運用」も参照。

■【まとめ】実証実験需要はますます増加 誘致合戦勃発の可能性も

このほかにも、沖縄県や北海道、仙台市、大分市、北九州市、輪島市、桐生市、深谷市など、自動運転の実証への取り組みや受け入れを行っている自治体は数多い。愛知県や東京都に代表されるように一事業の枠を超え政策レベルで積極的に推進している自治体はまだ少ないが、交通課題の解決や地域振興と結び付けやすい分野のため、今後社会受容性の醸成とともに誘致活動なども促進されていくものと思われる。

自動運転レベル3以降の実用化において公道での実証実験は欠かせないものであり、今後ますます需要が高まることが予想されるが、企業らがさまざまな点を勘案して実証実験を行いやすい自治体を選ぶのは必然で、誘致合戦が始まる可能性もあるだろう。

都道府県単位における受け入れ態勢の整備や、実証実験に関わる法規制や手続き面での国レベルの対応など、よりスムーズに実証実験が行える環境づくりと、各自治体の施策に具体的にどのように結びつけるかが今後のカギになりそうだ。







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