国交省、日本の海外展開分野に「MaaS」を追加 「行動計画2021」に明記

デジタル技術を活用した「交通ソフトインフラ」とは?



国土交通省はこのほど、インフラシステムの海外展開に向けて取り組むべき主な施策などをまとめた「国土交通省インフラシステム海外展開行動計画2021」を公表した。







2021年版では、鉄道や港湾、航空、都市開発・不動産開発、道路など従来からの9分野に加え、デジタル技術活用を強化する観点から新たに「交通ソフトインフラ」が追加された。この交通ソフトインフラには「MaaS」(Mobility as a Service)も含まれる。

この記事では、交通ソフトインフラに焦点を当て、同計画の内容を紹介する。

▼国土交通省インフラシステム海外展開行動計画2021
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001408384.pdf

■交通ソフトインフラとは?
交通ソフトインフラ追加の背景

第四次産業革命の波が押し寄せる交通分野では、IoTやAI、ビッグデータなどの技術革新が交通のあり方に変化をもたらしつつある。その代表格がMaaSや自動運転だ。

デジタル技術を活用したこれらの次世代モビリティについては世界的な関心も高く、世界経済フォーラム(WEF)がすでに議論をスタートし、2021年4月には「グローバル・テクノロジー・ガバナンス・サミット(GTGS)」を開催し、新たなモビリティの可能性と課題について議論を行っている。

MaaSを構成する交通手段として欠かせない自動車交通においては、自動車台数の急増に伴う都市部の交通渋滞の改善が課題となっている新興国でバスによる公共交通サービスの向上が課題となっており、バス利用のデータ分析に基づき、乗客数と利用状況によりマッチしたバスネットワーク構築の支援や、バスターミナルの機能強化によるTOD(公共交通指向型開発)拠点づくりなどのニーズも高まっていくと考えられる。

こうしたMaaSやバスの運行管理や基準認証など、デジタル活用や制度運用などソフト面が重要な要素となるインフラ案件が今後増加することが見込まれ、これらを総称して「交通ソフトインフラ」と呼ぶこととし、海外展開に取り組む新分野として新たに追加することとした。

■MaaSの市場動向
国内・海外とも急激な成長見込む

MaaS市場については、定義や算出方法によって額に大きな違いが見られるが、いずれの予測も今後10年で急激な成長を見込んでいる点では共通している。

国内市場は、富士経済「MaaSの国内市場調査(2020年3月)」によると2019年見込みの8,673億円から2030年には2兆8,658億円まで成長すると予測されている。内訳は、カーシェアが482億円から4,555億円、配車サービスが3,110億円から1兆2,000億円、レンタカーが4,937億円から1兆1,545億円へそれぞれ成長するという。

また矢野経済研究所のレポート(2018年発表)のように、MaaSサービス事業者の売上高ベースで845億円を見込み、2030年には6兆3,600億円に達すると予測する調査結果もある。

海外市場に関しては、PwCの「デジタル自動車レポート2018」によると、米国・欧州・中国におけるMaaS市場規模は2017年の870億ドル(約9兆6,000億円)から1兆4,000億ドル(約154兆円)に到達すると予測している。

【参考】関連記事としては「2030年には3.5倍に!MaaSの国内市場、あと10年で3兆円間近に」も参照。

■日本の強みと課題
少子高齢化対応や民間主体の取り組みが強みに

日本では、地域の特性に応じたMaaSの取り組みが進められており、世界に先駆けて少子高齢化社会を迎える日本の取り組みは、今後、同様の課題を抱える他国への展開・応用が期待できる。

また、公共交通サービスの提供が基本的に民間事業主体で行われているのも特徴で、財政負担軽減の観点から民間資金を活用したインフラサービスの提供を志向する新興国などに対しても強みを持つ。

このほか、自動運転の実用化に向けた動きが進展しているのも強みで、この分野における知見・ノウハウを輸出相手国のソフトインフラ整備・運用にも生かすことができる。

一方で日本の課題は?

デジタル技術を活用した新たなサービスが世界各国で目まぐるしい速度で開発・実用化される中、「十分な実績を積み重ねた上で海外展開を進める」という従来型とは異なる概念での展開が求められる。

つまり、日本の技術やサービスの提供が相手国の課題解決に資する有効なソリューションであると見込まれる場合は、国内実績に捉われず積極的に海外展開を支援していく必要がある。

■【まとめ】テクノロジー企業にもチャンス到来

国交省は今後、MaaSをはじめとした交通ソフトインフラの需要・ビジネス性が今後大きく増すことを見越し、この分野における民間の海外展開をバックアップしていく。

すでにシンガポールやベトナムなどに拠点を設け、MaaSや自動運転の社会実装に取り組んでいるWILLERの取り組みは好例だ。

交通インフラの海外展開においては、これまでは大手建設企業らが主軸だったが、今後はスタートアップをはじめとしたテクノロジー企業にも大きなチャンスが巡ってきそうだ。

【参考】WILLERの取り組みについては「高速バス大手、自動運転への挑戦 WILLERの取り組みをたどる」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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