2021年の「自動運転」10大ニュース!レベル3の実用化スタート

米国では無人トラックによる配送も

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テスラのイーロン・マスクCEO=出典:Flickr / Ennoti (Public Domain Mark 1.0)

年の瀬を迎え、2021年も間もなく終わりを告げようとしている。前年に続きコロナ禍に見舞われたものの、自動運転業界は着実に前進を遂げた1年となった。

自動運転に関する2021年の10大ニュースをひとつずつ見ていこう。

ホンダ自動運転レベル3車両を3月5日発売!新型「LEGEND」がデビュー(2021年3月4日付)

ホンダが量産車で世界初となる自動運転レベル3搭載車を発売した。自家用車における自動運転時代の幕を開ける大きな一歩だ。

ホンダは、新型レジェンドに最新の安全システム「Honda SENSING Elite」を搭載し、その中の一機能として、渋滞時に自動運転を可能にする「トラフィックジャムパイロット」を実装した。

レベル3量産車は、ダイムラー(メルセデス・ベンツ)やBMWなどに追随する動きがあり、2022年中に複数台が市場投入される見込みだ。

ホンダが先陣を切ったレベル3市場が徐々に拡大し、社会実装における安全が広く確認されれば、技術の高度化とともに実速域でのレベル3なども可能になるものと思われる。各社の先進的な技術と取り組みに期待したい。

■テスラ「FSDは自動運転の能力ない」 カリフォルニア州当局に説明(2021年3月13日付)

世界ナンバーワンのEV(電気自動車)メーカーとしてメジャーな存在となった米テスラだが、同社のもう1つの顔が自動運転開発だ。イーロン・マスクCEO(最高経営責任者)主導のもと、2021年も自動運転技術をめぐる面で話題を振りまいた。

同社は、ソフトウェアのアップデートによって将来完全自動運転を実現するADAS「FSD(Full Self-Driving)」のベータ版の提供を開始したが、その名称や宣伝文句などをめぐり、「自動運転」への誤認が懸念されている。

こうした状況下、テスラは米カリフォルニア州の車両管理局(DMV)に対し「現時点では自動運転の能力がない」旨を説明したようだ。

一方、同社のADAS「Autopilot」においても、過去の事故をめぐり米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)が本格調査に乗り出すなど、取り巻く環境は厳しさを増している。

今後こうした圧力がいっそう強まる可能性が高い。名称変更や誤認事故防止に向けた改善を迫られるのが先か、あるいは名称に負けない自動運転機能の実用化が先か――2022年は、こうした観点にいっそう注目が集まりそうだ。

自動運転タクシーを独占的運行!GM Cruise、ドバイで2023年から(2021年4月16日付)

米GM Cruiseによる自動運転サービスがついに現実味を帯びてきたようだ。ドバイ道路交通局と契約を結び、2023年から同国内で自動運転タクシーサービスを開始する計画を発表した。

サービス専用の自動運転車「Origin」も導入し、2030年までに4,000台規模まで拡大する予定としている。

同社はこのほか、ホンダとの協業のもと日本でも自動運転サービスを展開する方針で、すでにホンダが実証に着手している。

また、カリフォルニア州では無人車両による自動運転の商用サービスの許可も取得しており、本国におけるサービス展開もカウントダウンの段階に入った印象だ。

先行するWaymoを追撃する最有力候補として期待が寄せられるほか、世界展開を見据えた今後の動きに要注目だ。

トヨタの前線部隊「ウーブン」が本格始動!自動運転に投資、「地図」にも注力(2021年6月28日付)

トヨタグループにおいて、自動運転領域をはじめとした最先端技術の開発を担うウーブン・プラネット・グループが本格始動し、グループ内に新たな風を吹き込んでいる。

TRI-ADを再編して2021年1月に始動したウーブンは、ガーディアンやショーファーといった自動運転技術をはじめ、自動地図生成プラットフォーム「AMP」実用化に向けた取り組みなど、それぞれの動きを加速している印象だ。

また、Lyftの自動運転開発部門Level 5やCARMERA、Renovo Motorsといった有力企業・部門を相次いで買収しており、先端技術の獲得にも余念がない。

実証都市「Woven City」も着工し、研究開発の成果を試す場も今後数年のうちに本格始動するものと思われる。トヨタと各パートナー企業の最前線が結集するさまざまな取り組みに大注目だ。

LiDAR業界、販売先の獲得合戦が本格化!セプトンやオンセミが大量受注を発表(2021年7月21日付)

LiDAR開発企業のビジネスが本格化の兆しを見せている。2020年ごろから自動運転の実現に伴う大型受注とともに株式上場の動きが本格化し、新たな市場を形成している。

Velodyne LidarやLuminar Technologiesをはじめ、Innoviz Technologies、Aeva、ON Semiconductor、Cepton Technologiesなど、受注案件が相次いでおり、本格市場化を予感させるかのようにスタートアップの上場も続発しているのだ。

LiDARは自動運転レベル4のほか、レベル3や高度なADASを実現する自家用車への搭載も始まっており、まだまだ市場が膨らみ続けることは間違いない。

国内でも、パイオニアや京セラ、リコー、東芝、三菱電機、デンソーなど、LiDAR開発に力を入れる企業は多く、こうした企業の躍進にも改めて期待したい。

■「自動運転レベル4」の法規要件の策定へ、国交省が2億円予算(2021年9月10日付)

国土交通省は2022年度、自動運転レベル4の関連法案策定に向けた取り組みを進めるようだ。新年度の予算概算要求において、「自動運転(レベル4)の法規要件の策定」として2億円を要求した。

レベル4は、特定のODD(運行設計領域)内においてドライバーの介在を要しない走行を可能にする。つまり、ドライバー不在の走行を前提とした法改正が必要になるのだ。

車両によっては、ハンドルやアクセル、ミラーなど未搭載のものもあるため、保安基準の改正も必要になるほか、事故の際の責任関連や非常時の救護義務に扱いなど、詰めなければならない点は数多い。改正法の起案時期は未定だが、見込みとしては2023年に法案が提出され、2024年中に施行される可能性が高そうだ。

海外では、ドイツ連邦議会が2021年5月にレベル4を可能とする道路交通法改正法案を可決しており、2022年中にも施行される予定だ。

レベル3の社会実装から早々にレベル4実現に向けた動きが加速しており、日本をはじめ各国の動向に要注目だ。

Apple、自動車ビジネスを本格展開へ iOS活用、自動運転車開発も(2021年11月4日付)

2021年は、自動運転分野における米アップルの動向がより多く取りざたされる年となった。通称「Apple Car(アップルカー)」の開発・製造をめぐり、関係者筋の話が次から次へと飛び交った。

アップルは、iPhoneをはじめとする自社サービスを自動車と連携させる車載情報系OSに力を入れる傍ら、自動運転開発プロジェクト「Titan」のもと、秘密裏に自動運転開発を進めている。

市場投入予測時期は2024年前後とまだ先だが、2020年末ごろから製造パートナーをめぐる報道が過熱し、ヒュンダイや日産、トヨタなど代わる代わる名前が挙がっては消火されるパターンが続いている。

肝心のアップルカーの中身がいまだ見えてこないが、今後は機能やデザインなどについても憶測や関係筋の話が増加することが考えられる。2022年もアップルカーのめぐる報道に注視したい。

■トヨタと提携の米AuroraがSPAC上場 自動運転スタートアップ、株主にUberやAmazon(2021年11月5日付)

自動運転開発スタートアップの米Aurora Innovationがナスダック市場にSPAC上場した。DARPA経験組が創業した有力スタートアップの中でも、いち早い株式公開となった。

Aurora Innovationは2016年に創業。独自の自動運転システム「Aurora Driver」を、トラックから乗用車まで幅広く統合を図っていくビジネスモデルで自動運転業界に臨んでいる。トヨタ・デンソーとも提携しており、ライドシェアサービス向けにトヨタ・シエナを自動運転化する取り組みが現在進められている。

創業者のクリス・アームソン氏は、米国防高等研究計画局(DARPA)主催の自動運転レース経験者で、チームメイトにはNuroやArgo AI創業者らが在籍していた。大会参加者にはこのほか、Cruise創業者やグーグルの自動運転プロジェクトを主導したセバスチャン・スラン氏らが名を連ねている。

世界の自動運転開発をけん引するスタートアップの一角が上場したことで、各企業の事業化に向けた取り組みがいっそう加速する可能性があり、要注目だ。

■世界初!米Walmart、完全無人の自動運転トラック導入 拠点間配送で(2021年11月9日付)

米小売り大手ウォルマートが、ついにドライバーレスの自動運転配送に着手したようだ。自動運転開発スタートアップGatik製の自動運転トラック2台を活用し、アーカンソー州の物流センターと店舗間約7マイル(約11キロ)でミドルマイル配送を行っている。

両社は2019年にパートナーシップを結び、自動運転配送の実証に着手した。以来、セーフティドライバー同乗のもと7万マイル(約11万キロ)以上の走行を重ね、安全性を確認したため無人化のフェーズに移行したようだ。今後、ルイジアナ州でも同様の取り組みを行っていく。

ウォルマートはGatik以外にもNuroと提携し、テキサス州でパイロットプログラムに取り組むなど、自動運転の実用化に積極的だ。GM Cruiseとも2020年にパイロットプログラムに着手しており、2021年4月には同社に出資も行っている。

トラックタイプのGatik、乗用車タイプのCruise、小型のNuroとさまざまなパートナーとの提携により、ミドルマイルからラストマイルに至るまで自動運転技術を導入していく方針のようだ。

小売大手による取り組みは、実用実証を推進する自動運転開発勢にとって大変心強いものだ。自動運転技術の早期実用化には、こうしたサービス事業者の取り組みも非常に重要となる。

■自動運転配送、ついに岸田首相が解禁へ!次期国会で法案提出(2021年11月15日付)

新内閣のもと、自動配送ロボット実用化に向けた動きは着実に前進するようだ。岸田文雄首相が、2022年の次期通常国会で自動配送サービス実現に向けた法案を提出すると明言した。

自動配送ロボット実用化に向けては、2019年ごろに機運が高まり、官民協議会などが設置された。2020年には、コロナ禍でコンタクトレス配送のニーズが高まったことも踏まえ、安倍晋三元首相が「遠隔監視・操作の公道走行実証を年内、可能な限り早期に実行する」と呼びかけ、公道実証環境が一気に整備された。

同年秋には、国の助成事業のもと数々の実証プロジェクトが立ち上がり、公道実証が加速するとともにロボット開発も熱を帯び、パナソニックやティアフォー、ホンダなどが機体の開発に乗り出している。

法案は現在進行形で詰めの作業に入っているものと思われ、最終的にどういった中身となるか要注目だが、こうした動きに対し、関心を寄せる小売事業者らも一気に増加する可能性も高い。自動配送ロボット関連の事業は、2022年に大きく動き出すことになりそうだ。

■【まとめ】自動運転技術の社会実装が加速 2022年の動向にも大注目

2021年は、自家用車におけるレベル3が実装され、レベル4をめぐる動きもいっそう活発化した。LiDARをはじめとする関連業界のビジネス化も大きく加速した印象だ。

この流れは間違いなく2022年も続き、自動運転技術がよりいっそう目に見える形で社会実装されていくことになる。引き続き業界の動向に大注目だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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