【2022年5月の自動運転ラボ10大ニュース】ホンダに続くレベル3が登場!

Uberは無人デリバリーに着手

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世界情勢が不安定感を増す2022年5月。自動運転業界はどのような動向を見せたのか。海外では、レベル4サービスや自家用車におけるレベル3に動きがあるなど、混迷を極める世界情勢に負けじと取り組む各社の力強い活動が目立った。

2022年5月の10大ニュースを一つずつ振り返っていこう。

■東は「自動運転」、西は「空飛ぶクルマ」 東京・大阪の方針比較(2022年5月2日付)

東京都を東、大阪府を西に見立て、自動運転と空飛ぶクルマに関する各自治体の取り組みに迫った記事だ。両自治体とも陸、空の自動運転化に取り組んでいるが、特に東京都は陸、大阪府は空に注力している印象が強いようだ。

東京都は2017年に東京自動走行ワンストップセンターを設置し、企業の自動運転実証をバックアップしている。都の事業としても毎年度自動運転実用化に向けたモデルプロジェクトを実施しており、自動運転バスやタクシーなどの実証が盛んに行われている印象だ。

一方の大阪府は、2025年に開催予定の大阪・関西万博がマイルストーンとなり、「空の移動革命社会実装大阪ラウンドテーブル」を設置するなど、空飛ぶクルマ実用化に向けた取り組みが大きく加速している。万博を契機に観光用途や短距離移動用途で空飛ぶクルマの実用化スタートし、徐々に空の路線を拡大していく運びだ。

東と西、それぞれの取り組みとともに新たなモビリティの導入で人やモノの移動がどのように変わっていくのか、要注目だ。

https://twitter.com/jidountenlab/status/1520883135881170944

■高速道での自動運転「上限120キロ以上」 NEXCO東日本が構想(2022年5月4日付)

東日本高速道路(NEXCO東日本)が発表した「自動運転社会の実現を加速させる次世代高速道路の目指す姿(構想)」によると、同社は将来、自動運転車両などに限定して規制速度の上限を時速120キロに緩和する案が持ち上がっているようだ。

現在の技術をベースにすると、むしろ自動運転は低速では?――と考えてしまうが、10~20年後の技術が成熟した未来においては、これが正しい形なのかもしれない。

このほか、車種別専用・優先レーンの整備による運行管理や自動運転車専用レーン・専用ICの整備、自動運転車に対する柔軟な料金設定、Highway MaaS、道路の渋滞・交通混雑情報のもと動的に車線数を変動させる交通システムマネジメント、大量収集した画像データをもとに自動で異常を検知するAI(人工知能)自動異常検知、ドローン巡回、自動運転車向けのエンタメコンテンツの提供、自動運転時代のツーリズムなど、計108案に及ぶさまざまな具体施策を整理している。

実感しづらい未来の話だが、膨大なインフラである道路の在り方そのものを変えていくには、相当の時間を要する。早い段階から先々を見据えた検討を進めなければならないのだ。

https://twitter.com/jidountenlab/status/1521605570205155328

■「人間には見えない塗料」で自動運転に参入!日本ペイントが発表(2022年5月5日付)

日本ペイントホールディングスの自動運転用塗料「ターゲットラインペイント」が、明治大学やシダックスなどが開発中の自動運転システムに活用されたようだ。

ターゲットラインペイントは、車載LiDARが認識できる特殊な塗料で、目視ではアスファルトと同化するため一般の道路利用者が路面標示と誤認するようなこともなく、自動運転車のみに命令や情報を提供することができる。塗装するだけでインフラを整備できるため、自動運転の導入コストやメンテナンスコストの削減も望めるという。

新たなインフラの可能性を広げるアイデアだ。自動運転車が利用する高精度3次元地図には、実際の道路には存在しない車線リンク(車線中心線)などのデータも収録されているが、こうしたラインを実際の道路に正確に描くこともできそうだ。

今後、どのような活用方法が生み出されていくのか、注目の技術だ。

https://twitter.com/jidountenlab/status/1521988044202688514

■空飛ぶクルマ向けの「空港」、英国で世界初オープン Urban-Air Portが発表(2022年5月5日付)

エアモビリティ向けのインフラ事業を展開する英Urban-Air Portが、英コベントリーに空飛ぶクルマ向けのエアポート「Air-One」を建設し、一般向けのデモンストレーションが行われたようだ。

直径46メートルのドーム型の構造で、中央に直径17.5メートルの開口部がある。プラットフォームリフトが6メートルの距離を上下に移動し、エアモビリティをドーム内からドーム上に運ぶ仕組みだ。

世界各地でエアモビリティの開発が盛んに行われ、一部は本格的な量産化段階を迎えつつある。飛行・運行ルールの確立など安全確保に向けた取り組みが必要不可欠だが、こうしたインフラ整備が進むことで初期におけるサービスの在り方なども見えてくる。

今後、社会実装に向けた動きがどのように展開されていくのか。要注目だ。

https://twitter.com/jidountenlab/status/1521980490080833539

■Innoviz、自動運転向けLiDAR開発で40億ドルの巨額契約獲得(2022年5月11日付)

イスラエルのLiDAR企業Innoviz Technologiesが世界最大級の自動車グループから40億ドル(約5,200億円)に上る巨額の注文を受けたようだ。自動車メーカーは明らかにされていないが、近く共同発表する予定のようだ。

発注先が気になるところだが、とてつもない量のLiDARを注文した可能性が高い。仮にLiDAR1基あたりの価格が比較的安価な1,000ドル(約13万円)だった場合、400万基分に相当する額だ。保守費用などを考慮しても、単一モデルでは持て余すほどの台数だ。中長期にわたるパートナーシップのもと、InnovizのLiDARを順次導入していくような契約かもしれない。

果たして、どのメーカーがどのような戦略のもとLiDARの大量搭載を進めていくのか。今後の発表が見逃せないところだ。

https://twitter.com/jidountenlab/status/1524177469498183682

■Armのチップ「続々と自動運転車に」 ソフトバンクG決算で孫会長(2022年5月12日付)

世界情勢の悪化から巨額赤字を計上したソフトバンクグループだが、傘下の半導体大手Armが逆境からの脱却をけん引しそうだ。

Armベースのチップの出荷数は右肩上がりを続けており、2021年は290億個に達したという。売上高は26億6,500万ドル(約3,400億円)だ。マーケットシェアでは、モバイル95%、IoT63%、自動車24%、クラウド5%の状況で、マルチコア化が進む各産業はまだまだ成長の余地があるという。

自動車分野では、EV(電気自動車)や自動運転車といったスマート化の進展に期待が寄せられるが、すでに自動運転車への高機能チップの出荷も始まっているようだ。

NVIDIAへの売却は流れたが、成長産業のさらなる伸長と2022年中を予定している再上場でソフトバンクグループに大きな利益をもたらす可能性が高い。2023年3月期の目玉として、Armのいっそうの活躍に期待したい。

https://twitter.com/jidountenlab/status/1524669087359528960

■自動運転、2社目の「レベル3提供」はメルセデスベンツ(2022年5月20日付)

メルセデス・ベンツ・グループがついにレベル3の販売を開始した。フラッグシップの「Sクラス」とEV「EQS」へのオプション設定を開始したのだ。乗用車への正式な実装としては、ホンダに次ぐ2社目となる。

当面は、ドイツ国内の1万3,191キロの高速道路において、時速60キロを上限にレベル3を作動させることができる。オプション価格は、必要となるハードウェアとソフトウェアを合わせてSクラスが5,000ユーロ(約68万円)、EQSが7,430ユーロ(約100万円)に設定されている。

各種報道によると、近く米国内の一部の州でも認可取得に向けて取り組むようだ。米国ではBMWやボルボ・カーズも2022年中にレベル3搭載車の社会実装を開始する計画で、徐々にではあるものの自家用車における自動運転技術が温度を高め始めている印象だ。

各地でレベル3が実装され、経験を積み重ねることで対象エリアや道路、速度域なども徐々に拡大していくことになる。そしてテイクオーバーリクエストが発生することなく安全性に太鼓判を押すことができれば、レベル4への道が拓けていく。

各社の自家用車における自動運転の取り組みに引き続き要注目だ。

https://twitter.com/jidountenlab/status/1527408763421872128

トヨタが資金投下!「自律走行できる車イス」の開発企業に(2022年5月22日付)

自動運転車いすの開発を手掛けるWHILLが、トヨタ系列のWoven Capitalから資金調達を行ったと発表した。Woven Capitalによる国内企業への投資は、公表されている中では初となる。

WHILLは、車いすをベースとした誰もが利用可能なパーソナルモビリティの開発を進めており、空港や病院などを中心に導入する動きが活発化している。

今回調達した資金は、増大する需要に対応するため事業を拡大し、空港や病院をはじめ近距離移動を必要とする歩行領域のサービス展開に活用していく方針のようだ。

また、両社のモビリティ製品やサービス連携にも注目が集まる。ウーブンをはじめトヨタとWHILLの連携事業などが創出されていく可能性があり、今後の取り組みに期待が寄せられるところだ。

https://twitter.com/jidountenlab/status/1528171281333428227

■ついにUber Eatsが無人宅配開始!自動運転車などで試験的に(2022年5月23日付)

Uber Technologiesが米カリフォルニア州で自動運転車や宅配ロボットを活用したフードデリバリーサービスのパイロットに着手した。

自動運転車はMotional、宅配ロボットはServe Roboticsがそれぞれパートナーシップのもと車両やサービスを提供している。サンタモニカとウェストハリウッドのUber Eatsユーザーは、自動運転によるデリバリーの有無を選択することができる。

ライドシェアやデリバリーなどで世界にネットワークを広げるUberと、自動運転技術の実用化を推し進めるMotionalやServe Roboticsといった開発勢それぞれの思惑がマッチしており、自動運転サービスの実装を大きく加速させる可能性が高い。

他エリアでの展開など、今後の取り組みに注目だ。

https://twitter.com/jidountenlab/status/1528495923810009088

■BMW、「仮想実験」で自動運転レベル3実現へ(2022年5月24日付)

BMWとAnsysがパートナーシップを拡大し、ADASや自動運転開発用のシミュレーションツールを共同で開発すると発表した。BMWは、データクリティカルなシステム情報を収集・編集するツールチェーンの一部としてAnsysのソフトウェアを使用し、レベル3開発を加速させる狙いだ。

Ansysのソフトウェアを活用することで、ロバスト設計の最適化とシミュレーションワークフローのオーケストレーションをより迅速に行うことができ、開発期間の短縮やプロジェクトコストの削減を図ることができるという。

自動運転開発は実用化後も反復継続して公道走行やシミュレーションを重ね、安全性をより高めていく必要がある。リアル環境における実走行とシミュレーターによる効率的な開発の両立が、各社の開発力を左右することになりそうだ。

【参考】詳しくは「BMW、「仮想実験」で自動運転レベル3実現へ」を参照。

https://twitter.com/jidountenlab/status/1528896058029314048

■【まとめ】レベル3やレベル4市場が盛り上がりを見せる

ホンダの独り舞台だった自家用車におけるレベル3では、メルセデス・ベンツがついに実用化を開始し、今後各社が追随する予定だ。レベル3市場が一気に過熱し、各社の自動運転開発をいっそう加速させることになりそうだ。

レベル4サービスでは、Uberらの取り組みに注目が集まる。世界最大級の顧客とプラットフォームを抱えるUberによる自動運転デリバリーサービスは、業界にとっても大きな試金石となる。利用者をはじめ、小売各社に対する社会受容性の向上などにも期待が高まるところだ。

着実に前進を続ける自動運転開発。6月の取り組みにも要注目だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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