【2021年3月分】自動運転・MaaS・AIの最新ニュースまとめ

ホンダが世界初量産レベル3発売、宅配ロボの実用実証も開始



2021年3月は、自動運転史に新たな歴史が刻まれた。世界初となる自動運転レベル3を搭載した量産車をホンダが発売したのだ。この功績は、自家用車におけるレベル3レベル4が普及した将来、その価値をより大きなものへと変えていくことになるだろう。


国内ではこのほか、宅配ロボットの実用レベルにおける実証がスタートするなど、こちらも新たな一歩を踏み出した印象だ。一方、海外では依然として自動運転分野における投資が盛んな様子で、出資や上場、買収の話題が相次いでいるようだ。

2021年3月の10大ニュースを1つずつ振り返ってみよう。

■Foxconnが将来、自動運転EVの「世界の工場」になる未来(2021年3月3日付)

EMS(電子機器受託生産)世界最大手の台湾・フォックスコンが、EV(電気自動車)開発に革命を起こそうとしている。EVソフトウェア・ハードウェアのオープンプラットフォーム「MIH」を立ち上げ、EV開発スタートアップを中心にパートナーシップを拡大しているのだ。

MIHは、EV分野にICT分野の知見を生かすことで効率的な開発や生産を実現するアライアンスだ。開発領域にはバッテリー技術や自動運転技術なども含まれており、自動運転技術はティアフォーが開発に協力している。


2020年10月の発表後、台湾や中国企業を中心に参加する動きが続発しており、2021年2月時点で600社超が参加している。BYTONやFiskerといったEVメーカーもすでにフォックスコンとパートナーシップを結んでいる。

自動車業界は、生産の難しさや既存の強力な販売・アフターケアネットワークなどが高いハードルとなり、新規参入が難しい分野として知られているが、EVや自動運転化を契機に業界の構図が変わり始めているのかもしれない。フォックスコンの取り組みはまさにその象徴で、今後の動向に要注目だ。

■「空飛ぶクルマ」開発の米Joby Aviationが上場へ トヨタも出資(2021年3月4日付)

空飛ぶクルマの開発を手掛けるスタートアップの米Joby Aviationがニューヨーク証券取引所への上場を発表した。自動運転分野ではLiDAR開発企業の上場が続いているが、ついに空飛ぶクルマ開発企業も上場する時代が訪れたようだ。

同社は2009年設立で同開発分野では古参に位置する。空のモビリティ事業の早期実現に向け2020年にトヨタとの協業が発表されており、資金調達Cラウンドをトヨタが主導し、3.94億ドル(約421億円)出資したことでも知られる。

なお、同業では中国のEHangも2019年に米ナスダック市場への上場を果たしている。一昔前には夢物語だった空飛ぶクルマは21世紀に入って目に見える将来技術となり、そして現実の技術として市場に認められる存在となったようだ。

■ホンダが自動運転レベル3車両を3月5日発売!新型「LEGEND」がデビュー(2021年3月4日付)

ホンダが自動運転レベル3を搭載した新型「LEGEND(レジェンド)」を発売した。レベル3を実装する量産車は世界初で、自動運転史に新たなページを刻んだ。

新型レジェンドには、高速道路の渋滞時などで自動運転を可能とする「トラフィックジャムパイロット(渋滞運転機能)」を含む先進安全技術「Honda SENSING Elite(ホンダセンシング・エリート)」を搭載しており、限定条件下におけるアイズオフ運転(レベル3)やハンズオフ運転(高度レベル2)などの先端技術が詰め込まれている。

販売計画ではリース専用かつ100台限定としており、まだまだ普及段階には至らないが、2021年中には独ダイムラーやBMW、中国メーカーなども量産化や実装を開始する予定となっている。

将来的には自動運転を可能とするODD(運行設計領域)も徐々に拡大していくことが見込まれるが、その第一歩がレジェンドであり、レジェンドをはじめとした先行勢が経験を積み重ねることでODDの拡大が可能になるのだ。

ホンダが踏み出した偉大な一歩を賞賛するとともに、これに続く他社の動向にも注目だ。

■自動運転開発のAurora、止まらない買収攻勢!LiDAR企業をさらに1社吸収(2021年3月8日付)

自動運転開発スタートアップの米Aurora Innovationが、LiDAR開発スタートアップのOURS Technologyの買収を発表した。2019年のBlackmoreに続くLiDAR企業の買収だ。また、同社は2020年12月に米Uberの自動運転子会社を買収したばかりでもあり、技術力のさらなる強化を促進している印象だ。

Uberを介する形でトヨタ、デンソーとの提携が決まり、Uberの配車ネットワークに自動運転車を導入する道筋も明確になるなど、開発から実装に向けた次のステージへ着実に足を踏み入れつつある。

自動運転開発を手掛けるスタートアップは多いが、自社技術を社会実装する段階まで昇華できるのは一握りだ。この一握りの中で存在感をいっそう高めつつあるAuroraは、2021年中に大きな動きを見せるかもしれない。

■重たい米もOK!楽天&西友、パナ製自動配送ロボで国内初サービス(2021年3月9日付)

楽天と西友、神奈川県横須賀市は3月から4月にかけ、宅配ロボットを活用した商品配送サービスを実施している。住民を対象にロボットが公道を走行して配達する国内初の取り組みだ。

3者は、横須賀市の「ヨコスカ×スマートモビリティ・チャレンジ」事業の一環として2019年から自動配送ロボットやドローンを活用した実証に取り組んでいる。

ロボットはパナソニック製の小型タイプで、最高時速4キロ、最大積載量30キロのスペックを誇る。配送エリアは馬堀海岸の住宅地約200×120メートルの範囲で、約5キロ離れた横須賀リサーチパークからロボットを遠隔監視する。

楽天は2021年3月、子会社の楽天DXソリューションが米ウォルマートから西友株式20%を取得したことを発表しており、ECと小売大手の取り組みは今後も拡大していきそうだ。

また、楽天は同月、日本郵政グループと資本業務提携に合意したことも発表している。物流やモバイル、DXなどさまざまな領域での連携を強化していく方針で、物流分野における協業などにも注目したい。

■手荷物搬送×自動運転、「日本初」はJAL!ANAも負けず劣らず取り組み加速(2021年3月12日付)

日本航空(JAL)が自動運転トーイングトラクターの本格導入を開始した。国内航空会社では初めての取り組みで、成田国際空港第2ターミナルの車両通行道路で運用する。

同社は2019年10月から手荷物運送用コンテナを牽引するトーイングトラクターの自動運転実証を行っており、運用に必要なノウハウの蓄積と安全性を確保する体制が整ったことから本格導入を決めた。車両はTLD製「TractEasy」で、レベル3走行が可能という。

自動運転トーイングトラクターの実証は全日空(ANA)と豊田自動織機、AiROなども進めており、JALに続き実用化を目指す取り組みが加速しそうだ。

なお、空港敷地内では、このほかにも旅客運送用のバスや車いすなどの自動運転化を図る取り組みも進んでおり、自動運転技術を早期実装しやすい場としても注目度が高まっている印象だ。

テスラ「FSDは自動運転の能力ない」 カリフォルニア州当局に説明(2021年3月13日付)

米EV大手のテスラが米カリフォルニア州車両管理局(DMV)に対し、完全自動運転に向けたソフトウェア「FSD」が現状は自動運転ではなくADAS(先進運転支援システム)に相当する旨説明していたことが明らかになった。

テスラは2020年秋ごろ、FSDに向けたベータプログラムとして、ソフトウェアを提供した一部のテスラオーナーからデータ収集を行う取り組みを開始した。確認のためDMVがプログラムの詳細について問い合わせたところ、テスラはFSDが技術的に自動運転に至っていないことを認めたようだ。

FSDは「Full Self-Driving」の略で「完全自動運転」を意味する。加えて同社CEOのイーロン・マスク氏は常々早期自動運転の実用化を公言しており、肩透かしを食らったような印象だが、現実的には妥当な見解であると言える。

ただ、マスク氏は完全自動運転の早期実現を諦めたわけではなく、あくまで現状の技術レベルを確認したにとどまる。引き続き野望含みのビッグマウスで世間を賑わせることはほぼ間違いなく、それがFSDの進化バージョンとなるか、まったく別の新システムとなるか改めて注目が集まるところだ。

■自動運転開発のGM Cruise、同業の米Voyageを買収へ 技術開発力の向上が狙いか(2021年3月19日付)

自動運転開発を進めるスタートアップの米Voyageが、同業の米GM Cruiseに買収されることを発表した。買収金額などは明かされていないが、Cruiseの開発をいっそう強化する方針のようだ。

2017年創業のVoyageは自動運転タクシーの開発を進めており、開発車両はすでに第3世代に達しているようだ。これまではFCAの協力のもとパシフィカに自動運転システムを統合していた。

一方のCruiseは、2020年初頭に量産化を見据えた自動運転車両「Cruise Origin」を発表しており、ほぼ完成域に達しているものと思われる。開発協力者のホンダと日本国内での実証も見据えている。

Waymoをはじめとしたスタートアップ勢に先行を許しているものの、自動車メーカー直轄の開発企業としては依然開発をリードしている印象だ。Voyageの技術を吸収し、自動車メーカー系巻き返しの急先鋒として今後の動向に注目だ。

■中国の自動運転企業Momenta、トヨタなどから5億ドル資金調達(2021年3月20日付)

中国MOMENTAが資金調達Cラウンドでトヨタなどから総額5億ドル(約550億円)の調達を完了したと発表した。ラウンドにはトヨタのほか、独ボッシュやダイムラー、中国テンセントらが参加している。

MOMENTAとトヨタは2020年にも高精度3次元地図の領域における協業が発表されている。TRI-AD(現ウーブン・プラネット)が開発した自動地図生成プラットフォーム(AMP)の中国における商用展開を促進する内容だ。

自動運転開発分野において、トヨタはこのほかにも中国Pony.aiや米Aurora Innovationなどとも出資や協業関係にあり、その数を年々伸ばしている印象がある。近々では、米Nuroへの出資も発表されている。近い将来、こうした関係がどのような成果となって表れるのか。トヨタの自動運転戦略に注目だ。

■Waymo向け半導体設計を受注!サムスン×自動運転、最新情報(2021年3月24日付)

韓国のサムスン電子が半導体開発に力を入れているようだ。韓国メディアによると、関係筋の話として同社が米Waymoの自動運転車向けの半導体設計を受注したと報じている。

サムスンは1月にも米テスラと自動運転車やEV向けの半導体開発を行うことが報じられているほか、3月には米Marvellと5Gネットワークパフォーマンスを強化するシステムオンチップ(SoC)を開発したと公式発表している。

なお、自動運転分野における半導体は、米インテルやNVIDIAら大手がこぞって力を入れている開発領域だ。国内では、トヨタとデンソーが2020年、次世代の車載半導体の研究や先行開発を行う合弁「MIRISE Technologies(ミライズ・テクノロジーズ)」を設立している。

一方、ルネサスエレクトロニクスは2021年2月、アナログ半導体の開発を手掛ける英Dialogの買収に合意したことを発表するなど、各社が開発体制の強化を図っている。

サムスンはもともと半導体事業で世界的躍進を遂げた過去を持つ。同社が自動運転分野に本腰を入れ始めたことで、競争がいっそう激化することは必至の情勢だ。

■【まとめ】自動運転に向けた関心や取り組みがいっそう高まる

レベル3量産車は今後世界的な話題へと発展し、世界全体で自動運転に対する法規制や社会受容性に関する関心が高まっていくものと思われる。

国内で実証が本格化し始めた宅配ロボットは、2021年度中に制度整備に向けた法改正の動きが本格化する可能性がある。新年度も自動運転技術の社会実装に向けた取り組みはなお活発化しそうだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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