自動運転開発を進める米Aurora Innovation(オーロラ・イノベーション)が新たなLiDAR企業の買収を発表した。2019年に買収したBlackmoreに続き、5D LiDARの開発を進めるOURS Technologyの買収を2021年3月7日までに発表したのだ。
オーロラは2020年12月にも米配車サービス大手Uberの自動運転開発ユニットを買収しており、この2年間で攻勢を強めている印象だ。この記事では、買収案件をもとにオーロラという企業の実態に迫っていく。
記事の目次
■7D Labs:シミュレーション技術を開発
オーロラが初めて買収した企業は、シミュレーション技術を有する7D Labsだ。
同社は映像制作会社のピクサー・アニメーション・スタジオのエンジニアが立ち上げたスタートアップで、自動運転向けのシミュレーション技術の研究を進めていたところ、オーロラ創業者のクリス・アームソン氏と意気投合し、2019年に「一緒に仕事を」という流れになったようだ。
7D Labsはオーロラでは知覚シミュレーションチームに携わり、各種センサーデータにおけるオブジェクト認識・追跡といったシステム開発を進めている。
■Blackmore:FMCW LiDARを開発
7D Labsに続き、オーロラが買収したのがLiDAR開発スタートアップのBlackmoreだ。同社は「FMCW LiDAR」の開発を手掛けていた企業で、「トヨタAIベンチャーズ」や「BMW i Ventures」などから出資を受けていた。買収は2019年5月に発表された。
LiDARのレーザー変調技術は、振幅変調を用いる「AM」と周波数変調を用いる「FM」の2つのタイプに大別でき、近年FM方式の開発を手掛けるスタートアップが増加傾向にあり、Blackmoreは早くからFMを用いたLiDAR開発を進めてきた。
創業者のRandy Reibel氏は現在オーロラのLiDAR部門の副社長に就任し、LiDAR開発に貢献している。2020年には新開発の「FirstLight LiDAR」のテスト車両への実装を開始したことが発表され、知覚システムがより広範囲を高速かつ高精度で認識・追跡できるとされている。
■Uber ATG:Uberの配車ネットワークに自動運転車投入
オーロラは2020年12月、配車サービス大手Uberの自動運転ユニット「Advanced Technologies Group(ATG)」の買収を発表し、戦略的パートナーシップも結んだ。
この買収・パートナーシップを通じて、オーロラはトヨタ・デンソーとも長期に及ぶパートナーシップを結んでいる。トヨタの「シエナ」に自動運転システム「Aurora Driver」を搭載させ、2021年末までに自動運転車の開発とテストを行う計画を立てており、将来的にはUber向けの車両の大量生産を目指しているようだ。
【参考】トヨタとの提携については「トヨタ×オーロラ、提携の真意は?自動運転ラボの下山哲平に聞く」も参照。
トヨタ×オーロラ、提携の真意は?自動運転ラボの下山哲平に聞く https://t.co/Xj54F03BDg @jidountenlab #Aurora #トヨタ #自動運転
— 自動運転ラボ (@jidountenlab) February 20, 2021
■OURS Technology:5D LiDARを開発
オーロラは2021年2月、新たにLiDAR開発スタートアップのOURS Technologyを買収すると発表した。開発を進めるFirstLight Lidarのさらなる強化を図っていく構えだ。
OURSは2017年創業で、XYZ軸に反射率と速度を加えた5D-LiDARの開発を手掛けている。オーロラのFirstLight LiDARにOURSの技術を組み合わせることで、劇的な低コスト化や小型化、パフォーマンスの向上が図られ、大量生産・商用化を大きく進展させるとしている。
■高まるオーロラの企業価値
買収案件はいずれも金額が公表されていないが、スタートアップが短期間で買収攻勢を実現するためには、相応の資金力やバックグラウンドが必要となる。
オーロラは2018年のシリーズAラウンドで9,000万ドル(約98億円)を調達したほか、2019年のBラウンドでは、米アマゾンや韓国の現代自動車グループなどから総額6億ドル(約650億円)以上を調達したと発表している。
Uber ATGを統合した2021年時点の企業価値は100億ドル(約1兆840億円)を超えると言われており、ユニコーンを超え、デカコーン入りを果たした有数のスタートアップに成長しているのだ。
■【まとめ】買収や資金調達はまだまだ続く?
オーロラによる自動運転関連企業の買収は今後も続く可能性があり、しばらく目が離せないところだ。
また、Uber、トヨタとの提携で自動運転技術のビジネス化に向けたビジョンは明確となった。このビジョンに向け、新たな投資ラウンドの実施や上場を目指す動きなど、さらなる資金調達に向けた動向にも注目したい。
【参考】関連記事としては「自動運転領域、過去の巨額買収まとめ 終わらない技術獲得競争」も参照。