トヨタ×オーロラ、提携の真意は?自動運転ラボの下山哲平に聞く

狙いは米Uberへの自動運転車納入か



自動運転開発を手掛けるスタートアップの米Aurora Innovation(オーロラ・イノベーション)は米国時間2021年2月9日、トヨタ、デンソーと戦略的パートナーシップを交わしたことを発表した。







オーロラ、トヨタ陣営両者の思惑はどこにあるのか。自動運転ラボ主宰でストロボ代表の下山哲平氏へのインタビュー・解説を通して紐解いていく。

■オーロラとトヨタ・デンソーの提携

オーロラによると、今回のトヨタ、デンソーとのパートナーシップは長期的かつグローバルな戦略的コラボレーションとしている。

具体的には、オーロラの自動運転システム「Aurora Driver」を搭載したトヨタ「シエナ」のフリートを設計・構築し、2021年末までに自動運転車の開発とテストを共同で行うこととしている。

また、米配車サービス大手Uber(ウーバー)を含む配車サービスネットワーク向けに、今後数年間のうちに開発した自動運転車の大量生産・販売・サポートの基礎を築くこととしている。

この取り組みの一環として、デンソーによる主要な自動運転コンポーネントの大量生産と、大規模展開に向けた資金調達、保険、メンテナンスなどの包括的なサービスソリューションを共同で検討していく方針だ。

■オーロラが着々と自動運転システムの提供体制を構築
Q トヨタ、デンソーと提携するオーロラはどのような企業か?

米テスラと米グーグルの元社員などによって2017年に設立された米自動運転スタートアップ企業で、2019年にはアマゾンなどから600億円出資を受けていたり、ウーバーの自動運転部門を買収したりと、自動運転開発会社として非常に注目されている企業です。

創業者兼CEOのクリス・アームソン氏は元グーグルの自動運転プロジェクトに携わり開発リーダーも務めた人物ということもあり、技術力のあるスーパーエンジニアが集まっている点が強いと言われています。

Q オーロラの自動運転技術の特徴や優れている点は?

オーロラは、個々の車両に依存しない自動運転システム「Aurora Driver」の開発を進めています。自動運転の中核をなすソフトウェアやLiDARなどのハードウェアをキット化し、一般乗用車や大型乗用車、大型トラックまで幅広い車種に搭載可能な自動運転システムを開発して、世界のメーカー各社とパートナーシップを結ぶ戦略です。

先だってオーロラはLiDAR開発スタートアップのBlackmoreを買収し、「FMCW LiDAR」という高感度で長距離センシングが可能な技術を手に入れるなど、着々と自動運転システムをソリューションとして提供できる体制を構築しています。

■「競争」ではなく「協業路線」を歩んでいるオーロラ
Q 自動運転分野におけるオーロラの立ち位置は?

オーロラは、世界をリードする自動車メーカーらと競争ではなく協業路線を歩んでおり、すでにフォルクスワーゲンやFCA、ヒュンダイグループ、米大型トラックメーカーのパッカーなどとパートナーシップを結んでいます。

自社の自動運転技術と世界の自動車メーカー各社の開発技術や生産された車両を連携させることで、安全性を高めるとともに開発速度を上げ、技術の市場投入へ向けた動きを加速させています。

有力なスタートアップは、ゼネラルモーターズに買収されたCruiseやアマゾン傘下となったZooxのように大型買収案件となることも珍しくありませんが、オーロラは特定企業の傘下に入らず、世界中の自動車メーカーとパートナーシップを結んでいくことを望んでいるようです。

【参考】オーロラと他社との協業については「FCA、商用車開発で自動運転スタートアップの米オーロラと協業」も参照。

■将来、トヨタがウーバーへ自動運転車両を大量納入か
Q 本題ですが、オーロラ、トヨタ、デンソー、それぞれの狙いや思惑は?

オーロラは2020年12月にウーバーの自動運転開発部門「ATG(Advanced Technologies Group)」を買収したほか、自社のテクノロジーをウーバーのプラットフォームに繋げ、Aurora Driverを幅広く提供する戦略的パートナーシップも結んでいます。これにより、ウーバーに対する自動運転技術の提供主として、優位性のあるポジションを確保したと言えます。

一方のトヨタも、2018年にウーバーに5億ドルを出資し、トヨタの自動運転技術「ガーディアン」とウーバーの自動運転システムを連携させたシエナをウーバーのライドシェアネットワークに導入すべく共同開発を進めてきました。2019年には、開発と実用化を加速するためトヨタとデンソーがATGに6億6700万ドルを追加出資しています。

オーロラにとっては、自らのポジションを活かすためにも、ウーバーという交通インフラとして非常に影響力のある相手に優れた車両を低コストで提供できないといけないはずで、そのためには、完成車メーカーであるトヨタと組むことは非常に重要な一手となります。

また、トヨタ・デンソーとしても、将来、大量の自動運転車両の顧客になる可能性があるウーバーへ車両を納入したいので、ウーバーとの関係性が深く、かつ自動運転技術に優れたオーロラと組むのは必然と言えます。

今回のパートナーシップは、ウーバーを介する形で両陣営の思惑が一致した結果と言えるのではないでしょうか。

■【まとめ】2021年中にさらなるビッグニュースが飛び出す可能性も

オーロラ、トヨタ陣営ともにウーバーと深く関わっていることもあり、今回の提携は必然のものと言えそうだ。

もともとウーバーの自動運転車にはATGとトヨタ双方の自動運転システムを搭載する予定だったが、ATGを引き継いだオーロラの自動運転システムにトヨタのガーディアンが冗長性を付与するような形になりそうだ。

米国を中心に世界各国でライドシェアサービスを展開するウーバー。この巨大プラットフォームへの自動運転車の導入は、各エリアで展開される自動運転タクシー市場に大きく影響するインパクトを持つ。

当初予定では、2021年にウーバーのライドシェアネットワークに自動運転車を導入する方向で開発が進められており、本年中にさらなるビッグニュースが飛び出す可能性も高そうだ。

下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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