自動配送ロボットが次のフェーズへ!2022年4月の自動運転ラボ10大ニュース

万博見据えた実証も大きく加速

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新年度を迎え、新たな1年の技術進展に期待を膨らませる時期が到来した。前年度の総決算とともに新たな事業計画をベースとした取り組みが今後徐々に明かされていくことになる。

国内では、大阪・関西万博に向けた自動運転実証が本格化の兆しを見せているほか、自動配送ロボット実証にも動きがあったようだ。

2022年4月の10大トピックを1つずつおさらいしていこう。

■NVIDIAの自動運転チップ、EV企業の推定シェアは60%強(2022年4月1日付)

自動運転業界を席巻する半導体大手のNVIDIAが、EV(電気自動車)業界も席巻しつつあるようだ。同社の車載半導体「NVIDIA DRIVE Orin」がEVメーカー25社に採用されていることが明かされた。

EV最大手テスラは現在不採用と思われるが、米Lucid Motorsや中国のNIO、Li Auto、XPeng、IM Motors、WM Motor、Human Horizonsなど、新興勢の採用率が極めて高い。

Orinはレベル4を可能にする高性能チップだが、従来の自動車に比べコンピュータ制御比率が増すものと思われるEVとの相性も良さそうだ。また、高度ADASを開発・実装するEV開発企業も多く、レベル3時代を見据えてNVIDIA製品を採用する動きもあるものと思われる。

自動運転をはじめとしたモビリティ領域におけるNVIDIAのさらなる躍進に期待だ。

■日本は「5万円以下」56% 高速道向け自動運転機能に支払える額(2022年4月5日付)

矢野経済研究所が実施した「日米欧中における自動運転の消費者ニーズアンケート調査」によると、高速道路の自動運転システムに対する支払い可能金額として5万円未満と回答した割合は日本が最も多い結果となったようだ。

次回自動車購入時、オプション機能として同システムを搭載できる場合の支払い可能額を問いたところ、5万円未満と回答した率は日本56%、米国42.8%、ドイツ37.6%、中国5.8%となった。中国は10~30万円未満と回答した割合が最も多かった。

5万円未満はLiDARを1基搭載できるかどうか――といったラインで、正直なところ開発事業者泣かせの結果と言わざるを得ないが、現状、高速域非対応かつ条件付きのレベル3の実用化にとどまっているため、自動運転の安全性や利便性に対するイメージがまだ低い可能性がある。

通常の速度域で安心してシステムに運転操作を委ねられるところまでイメージが向上すれば、自ずと結果も変わってくるはずだ。こうした変化が現れるのは何年後になるのか、技術の進展と社会受容性の向上に注目したい。

■長崎空港とハウステンボス、「空飛ぶクルマ」で結ぶ構想(2022年4月8日付)

長崎県が、長崎空港とハウステンボスをエアモビリティで結ぶ構想を立てているようだ。長崎IR構想と連動する形で、年間2~300万人が訪れるハウステンボス地域と長崎空港を空飛ぶクルマで結び、交通アクセス向上を図るほか、観光業におけるエンターテイメントとしての活用、離島、中山間・過疎地域を中心とした地域交通の確保などを想定している。

実証フィールド候補地も壱岐空港や小値賀空港、新上五島空港など数多く、こうした要素もアドバンテージとなりそうだ。

東京都や大阪府などエアモビリティ導入に前向きな都道府県が徐々に出揃ってきたが、地勢的に海外線が長く、また離島が多い長崎県は、エアモビリティ導入にもってこいの県土と言えるかもしれない。

■4種同時実証!大阪、自動運転車や配送ロボをミックス 万博に向け(2022年4月9日付)

大阪・関西万博に向け、自動運転バスやタクシー、パーソナルモビリティ、自動配送ロボットの4種を交えた実証がスタートしたようだ。4種の自動運転モビリティを取り扱う実証は非常に珍しく、自動運転社会を見据えた濃密な取り組みとなりそうだ。

実証では、自動運転をはじめモビリティの管理や車内コンテンツ、信号協調など8項目に取り組むという。自動運転関連では、BOLDLYの自動運転車両運行管理プラットフォーム「Dispatcher」を「NAVYA ARMA」とティアフォーの自動運転システムを導入した「JPN TAXI」に接続するほか、パナソニックの遠隔管制システムとAPI連携を図り、自動搬送ロボットなどを加えた自動運転車両の遠隔監視などを行うようだ。

自動運転モビリティがスタンダードな存在となる未来では、自動運転モビリティ同士が当たり前のようにMaaS連携し、効果的かつ効率的な移動を可能にする。こうした未来を象徴するような取り組みだ。

■経産省、「MaaSコーディネーター」創出へ(2022年4月11日付)

経済産業省は、MaaS実現・普及に向けたスマートモビリティチャレンジの2022年度事業として、地域におけるアセットを全体最適化を図りながらオペレーションする「MaaSコーディネーター」の創出を推進する方針を発表した。

2022年度の方向性としては、各地域内外の関係者のニーズも集めながら効率的に活動を行うことや、横断的分析への協力を含め課題に対し計画的・意欲的に取り組む地域との連携強化、MaaSコーディネーターの創出を掲げ、自動運転関連の取り組みと連携を図りながら推進することとしている。

MaaS実装に向けた取り組みも4年目を迎え、課題も具体化してきた。全国への波及に向け横展開を意識した取り組みがいっそう加速しそうだ。

【参考】詳しくは「経産省、「MaaSコーディネーター」創出へ」を参照。

■警察庁調査、自動運転の市場化意向「定路線サービス」が最多(2022年4月14日付)

警察庁が実施した事業者ヒアリングによると、自動運転の市場化形態として「定路線運行の移動サービス」を目指す回答が最多となったことがわかった。

無人自動運転サービスにおける開発動向などを調査したもので、開発主体らの4割強が2025年度までの自動運転市場化を想定しており、サービス提供開始を想定する時期についても同様の結果となったようだ。

市場化形態意向としては、多い順に定路線運行の移動サービス(22主体)、物流サービス(21主体)、市場化形態は供給先による(14主体)、定路線運行以外の移動サービス(11主体)、その他(10主体)、自家用車(8主体)となっている。

国が掲げる開発目標のもと、自動運転バスを中心とした定路線サービスを2025年度目途で実現させる取り組みが多いようだ。

今後、法改正に合わせ各社がどのように取り組みを具体化していくか、要注目だ。

■続くボッシュの買収攻勢!自動運転ソフト開発の英Fiveも(2022年4月16日付)

独ボッシュが自動運転開発スタートアップの英FiveAIの買収に合意したと発表した。ボッシュは2月にも自動運転向けの高精度3次元地図を開発するatlatecの買収を発表したばかりで、相次ぐ買収攻勢で自動運転開発をいっそう加速させる構えのようだ。

両社ともボッシュのクロスドメインコンピューティングソリューション事業部傘下に入り、レベル3やレベル4開発を推進していく。

また、ボッシュは1月にもフォルクスワーゲングループのソフトウェア専門開発子会社CARIADともパートナーシップを結び、自動運転領域の開発を加速させている。

世界一を争うグローバルサプライヤーの開発動向が、自動車メーカー各社に大きな影響を及ぼすことは間違いない。今後、自動運転ソリューションをどのように世界展開していくのか、注目が集まるところだ。

■国内初!自動配送ロボで遠隔監視型の公道走行許可 パナソニックが取得(2022年4月21日付)

パナソニックホールディングスが、国内初となる自動配送ロボットの完全遠隔監視・操作型(フルリモート型)の公道走行許可を取得した。自動配送ロボット実現に向けた取り組みが一段階引き上げられた形だ。

国土交通省は道路使用許可における自動配送ロボットの走行形態の区分として、「準遠隔監視・操作型(セミリモート型)」「完全遠隔監視・操作型(フルリモート型)」「完全遠隔監視型(モニタリング型)」などを設定している。

セミリモート型は保安要員が必要となるが、フルリモート型では同員を配置する必要がなくなる。言わば、ロボット周辺に人員を配置する必要がなくなる段階だ。

自動運転車同様、セーフティドライバーや保安要員の有無は実用化に向けた過程の中で大きな節目となる。引き続き同社の取り組みに期待したい。

■自動運転バス、自治体の負担「ゼロ円」 茨城県境町の注目モデル(2022年4月22日付)

自治体として国内で初めて定常路線に自動運転車「NAVYA ARMA」を導入した茨城県境町の運用モデルに注目が集まっている。ふるさと納税などを活用することで、同町の持ち出し0円を実現しているようだ。

地方公共交通は赤字運営が多く、路線を維持するため自治体が予算付けを行っていることは珍しくない。しかし同町は、ふるさと納税や国の補助金などを有効活用することで自治体の負担を大きく軽減しているのだ。

先進的な取り組みゆえ国の補助を得やすく、また自治体として唯一無二の取り組みのため注目度が高く、ふるさと納税も集まりやすい。自動運転車の導入による観光効果やメディア効果といった経済波及効果も生み出している。先鞭をつけた自治体ならではの効果にとどまらず、それを町の財産・特色に位置付けた取り組みが功を奏している印象だ。

補助やふるさと納税は未来永劫続くものではないが、こうした先駆的な取り組みがあるからこそ社会全体における早期実用化も図られる。その意味で、同町の功績は今後ますます大きなものとなっていきそうだ。

■独アウディ、「自動運転時はハンドル格納」の方針変わらず(2022年4月26日付)

未来の自家用レベル4自動運転車は、ハンドル格納式がスタンダートなるかもしれない。それを象徴するのが独アウディのコンセプトカーだ。同社が近年発表した自動運転コンセプトモデルは、いずれもハンドル格納式となっているのだ。

手動運転と自動運転が混在する自家用レベル4では、手動運転用にハンドルやペダル類などの制御装置が必要不可欠だが、自動運転時には運転席を窮屈にする不要なものとなる。自動運転時にリラックス可能な車内空間を創出するには、こうした制御装置を格納するシステムが有効だ。

アウディ以外にも格納式を採用した自動運転コンセプトカーは多く、ジェイテクトなどサプライヤー勢の開発も盛んだ。自動運転時代には、制御装置の在り方も大きく変わっていくことになりそうだ。

■【まとめ】国内外でレベル4実証が加速する1年に

国内では、2022年度中、あるいは2023年度頭にもレベル4や自動走行ロボットの公道走行を可能にする改正道交法が施行される見込みで、実証はますます加速し、実用化をしっかりと見据えた取り組みが本格化していくことになる。

海外でもレベル4関連の実証が活発化し、先行する米国・中国を追い上げる動きが明確になっていくものと思われる。新年度にどういった進捗を見せるのか、2022年度の動向に引き続き注目したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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