自動運転テスト進める全世界53社まとめ@カリフォルニア 解説付

IT関連企業の勢い鮮明に

B!

カリフォルニア州車両管理局(DMV)の発表によると、同局が2018年5月9日までに自動運転試験の走行許可を交付している世界各国の企業は53社に上ることが分かった。

国別では、アメリカ企業が32社で最も多く、中国企業がネット大手の百度(バイドゥ)など8社、ドイツ企業がBMWやVWなど5社、日本企業がトヨタホンダ日産、スバルの4社と続いた。フランス企業は自動運転EVバスを開発するスタートアップ企業「NAVYA(ナビヤ)」の1社で、韓国もサムスン電子の1社のみだった。

2018年5月時点における認可取得台数では、米自動車メーカーGM傘下のCruise(クルーズ)社が104台で最も多く、米アップルが55台で2位、米グーグル系のWaymo(ウェイモ)社が51台で3位、米大手電気自動車(EV)メーカーのTeslaテスラ)社が39台で4位となっている。

日本勢はトヨタが全体で7位となる11台の認可を受けており、日産とスバルがともに各5台で11位、ホンダが4台で16位だった。各企業の許可車両台数(上位のみ)や本社所在国は下記の通り。(掲載順は許可交付時期の古い順)

・Volkswagen Group of America(グループ本社はドイツ)
Mercedes Benz(ドイツ)台数11位(5台)
Waymo LLC(アメリカ)台数3位(51台)
Delphi Automotive(アメリカ)
Tesla Motors(アメリカ)台数4位(39台)
Bosch(ドイツ)
・Nissan(日本)台数11位(5台)
・GM Cruise LLC(アメリカ)台数1位(104台)
・BMW(ドイツ)台数6位(12台)
・Honda(日本)台数16位(4台)
・Ford(アメリカ)
Zoox, Inc. (アメリカ)
Drive.ai, Inc. (アメリカ)台数5位(14台)
Faraday & Future Inc. (アメリカ)
Baidu USA LLC(中国)台数16位(4台)
Valeo North America, Inc. (アメリカ)
NIO USA, Inc. (アメリカ)台数7位(11台)
Telenav, Inc. (アメリカ)
NVIDIA Corporation(アメリカ)台数9位(8台)
AutoX Technologies Inc(アメリカ)
Subaru(日本)台数11位(5台)
Udacity, Inc(アメリカ)
Navya Inc. (フランス)
Renovo.auto(中国)
PlusAi Inc(アメリカ)
Nuro, Inc(アメリカ)台数11位(5台)
CarOne LLC(アメリカ)
Apple Inc.(アメリカ)台数2位(55台)
Bauer’s Intelligent Transportation(アメリカ)
Pony.AI(アメリカ)
TuSimple(中国)
Jingchi Corp(中国)台数11位(5台)
SAIC Innovation Center, LLC(アメリカ)台数16位(4台)
Almotive Inc(アメリカ)
Aurora Innovation(アメリカ)台数16位(4台)
Nullmax(中国)
Samsung Electronics(韓国)台数16位(4台)
Continental Automotive Systems Inc(ドイツ)台数10位(6台)
Voyage(アメリカ)
CYNGN, Inc(アメリカ)
Roadstar.Ai(中国)
Changan Automobile(中国)
Lyft, Inc. (アメリカ)台数16位(4台)
Phantom AI(アメリカ)
Qualcomm Technologies, Inc.(アメリカ)
aiPod, Inc.(アメリカ)
SF Motors Inc.(アメリカ)
Toyota Research Institute(日本)台数7位(11台)
Apex.Al(アメリカ)
Intel Corp(アメリカ)
Ambarella Corporation(アメリカ)
Gatik AI. Inc.(アメリカ)
・DiDi Research America LLC(中国)

>>次ページ アメリカ勢の注目企業9社は!? IT関連企業の存在感増す

アメリカ勢は試験走行許可台数で1〜5位を独占している。完成車メーカーのほかグーグル系ウェイモ社やアップル社、インテル社などIT企業の存在感も増している。主要企業は次の通り。

台数1位(104台)
■GM Cruise(GM クルーズ) 米GM(ゼネラルモーターズ)傘下の開発企業。GMはハンドルもペダルも搭載しない自動運転車「Cruise AV」を2019年に市販する計画を発表した。ドライバーを必要としない完全な自動運転車で、ハンドルやアクセル、ブレーキのペダル、手動操作用の仕組みが用意されていないという。

台数2位(55台)
■Apple(アップル)  米IT・ソフトウェア開発大手。2017年の認可から1年余りで許可車両台数2位に急浮上した。光を使ったセンシング技術で車両の周辺環境を検知するLiDAR(ライダー)を活用して、歩行者や自転車に乗っている人を見分けるソフトウェアなどの開発を急ぐ。

【参考】Apple社は自動運転業界での存在感を徐々に高めている。カリフォルニア州の公道の試験走行許可では台数で2番手につけている。詳しくは「アップル、自動運転事業を本格化 カリフォルニアで試験車両55台、特許取得も加速|自動運転ラボ 」を参照。

台数3位(51台)
■Waymo(ウェイモ) 米グーグル社の自動運転車開発部門が分社化して誕生したシステム開発企業。2018年5月時点で、公道における走行実験距離が960万キロメートル、自動運転シミュレーションにおける総走行距離は80億キロメートルに及び、事故予測の精度向上などAI開発を進めている。

【参考】グーグル系ウェイモ社の仮想走行実験に関する詳しい内容は「月往復10,000回分を自動運転で仮想走行 グーグル系ウェイモ|自動運転ラボ 」を参照。

台数4位(39台)
■Tesla Motors(テスラ・モーターズ) 米電気自動車(EV)メーカーで、「モデルS」や「モデル3」に自動運転レベル2(部分運転自動化)のシステム「オートパイロット」を搭載するなど、早い段階で自動運転技術の確立・市販化を進めてきた。完全自動運転機能の実現には各国・地域の認可が必要だが、すでに完全自動運転機能対応のハードウェアが全車に搭載されているという。

【参考】テスラ社は組織再編により、量産車の生産加速などを急ぐ。詳しくは「米EV大手テスラが組織再編へ 有力幹部、グーグル系自動運転部門ウェイモへ移籍|自動運転ラボ 」を参照。

台数5位(14台)
■Drive.ai  シリコンバレーに籍を置くスタートアップ企業。商業用の車を対象に、自動運転レベル4(高度運転自動化)の自動運転を実現するAI(人工知能)装置の開発に力を入れている。ライドシェア大手のLyftと提携し、自動運転レベル3(条件付運転自動化)相当の自動運転技術をサンフランシスコでテストする計画を進めている。

台数9位(8台)
■NVIDIA(エヌビディア) 米半導体大手。パソコン向けのGPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)で有名だが、自動運転向けAI車載オープンプラットフォームコンピューター「NVIDIA DRIVE PX」を販売しており、AI(自動運転)開発の分野でトヨタやコンチネンタル社など多くの企業と提携している。

台数16位(4台)
■Lyft(リフト) 米ライドシェア大手。自動運転分野への参入では競合するUber(ウーバー)社に遅れをとったが、フォードやGM、Drive.ai、Waymoなど、自動運転技術に取り組む企業と次々と提携を進めており、2018年にはラスベガスで完全自動運転タクシーの試験運行にも取り組んでいる。

【参考】Lyft(リフト)は創業後からアメリカ国内に注力し、最大手ウーバーの背中を追う。業界シェアなどに関する情報は「ウーバー越え目指すリフト、シェア3割強を米国内で獲得か ライドシェア業界動向|自動運転ラボ」を参照。

■Ford(フォード) アメリカ自動車メーカーのビッグスリーの一角。他の自動車メーカーとは異なる路線を掲げており、一気に自動運転レベル4(高度運転自動化)クラスの自動運転車の発表・発売を目指しているという。報道などによると、2021年に事業者向け、2025年に一般消費者向けにそれぞれ自動運転レベル4の車両を供給することを目指しているようだ。

【参考】レベル4では、高速道路などの限定領域内で車(システム側)が運転の主体となる。各レベルの詳しい定義については「自動運転レベル0〜5まで、6段階の技術到達度をまとめて解説|自動運転ラボ 」を参照。

■Intel(インテル) 米半導体大手。コンピューティング、コネクティビティー、クラウドに関する深い専門知識を武器に、自動車からクラウドまでを網羅した自動運転向けソリューションの開発を進めている。2018年5月には、同社が買収したイスラエル企業モービルアイ社が、自動運転技術を車両800万台に対して提供する契約を欧州の自動車メーカーと結んだことが明らかにされている。

【参考】米インテル傘下のモービルアイ社の巨額契約については「米インテル、自動運転技術で800万台分の巨大契約獲得 欧州メーカーに提供へ|自動運転ラボ 」を参照。

>>次ページ 欧州では本命ドイツ勢とフランスのNAVYA、その事業内容は?

ドイツ勢でカリフォルニア州から公道試験走行許可を得ている企業は4社だ。(Volkswagen Group of Americaは本社がアメリカだが、親会社がVolkswagen Groupがドイツにあるため「ドイツ勢」に加えている)

台数6位(12台)
■BMW ドイツの自動車メーカー。先進運転支援システム「ADAS」では、高速道路で時速140キロを上限に車両が自動的にブレーキとアクセルを制御する「アダプティブ・クルーズ・コントロール」や、渋滞の際に時速60キロを上限に車両が車速やステアリングホイールを自動的にコントロールし車線を維持する「トラフィック・ジャム・アシスタント」などを実用化している。

【参考】BMWは開発拠点を集約するなど、自動運転技術の開発をより一層加速させている。詳しくは「独BMWがドイツ国内に自動運転研究センター 開発拠点集約で実現に向けて加速|自動運転ラボ 」を参照。

台数10位(6台)
■Continental(コンチネンタル) ドイツ自動車部品サプライヤー大手のコンチネンタルの自動車関連システム部門。AI(人工知能)開発を中心にアメリカのNVIDIAや中国の百度などと提携しており、2020年に高速道路でのレベル4の自動運転の実用化、2025年を目処にレベル5の完全自動運転の実用化を目標に掲げている。

台数11位(5台)
■Mercedes Benz(メルセデスベンツ) ドイツの自動車メーカー。最新車種に自動再発進機能を備えた「アクティブディスタンスアシスト・ディストロニック」や、車線が不明瞭でも周辺車両やガードレールなどを検知しステアリング操作をアシストする「アクティブステアリングアシスト」、 歩行者に加えて交差点での車両の飛び出しにも自動緊急ブレーキが作動する「アクティブブレーキアシスト」など数々のシステムを搭載する。

■Volkswagen(フォルクスワーゲン) アウディやポルシェ、ベントレー、ランボルギーニなど数々の自動車メーカーを傘下に持つ一大グループ。技術開発に向けた他社との提携も多数で、アウディ社の「Audi A8」で先陣をきった自動運転レベル3(条件付運転自動化)の市販車を各ブランドに広げていく意向を示している。

【参考】VWグループのアウディは2018年の株主総会で、次世代自動車技術への巨額投資の計画を明らかにしている。詳しくは「独アウディ、自動運転やEV開発に8年間で5.2兆円投資 株主総会で発表|自動運転ラボ 」を参照。

■Bosch(ボッシュ) 自動運転に関連した部品・技術開発大手企業。赤外線レーザースキャナー(LiDAR)の量産化のほか、画像認識技術やミリ波レーダーの開発も進め、自動運転に必要なさまざまなパーツの製造に包括的に取り組んでいるほか、エヌビディア社と共同でAI(人工知能)搭載コンピュータの開発なども進めている。

【参考】ボッシュは自動運転車向けの部品・技術の開発で日本のデンソーと開発競争を繰り広げている。詳しくは「デンソーと覇権争う独ボッシュ、米シリコンバレーに自動運転・AIの新開発拠点|自動運転ラボ」を参照。

 

フランス企業ではナビヤ社が唯一走行試験許可を得ている。

■Navya(ナビヤ) フランスのスタートアップ企業で、無人自動運転シャトルバスを開発し、世界各地に送り出している。日本でもSBドライブ社などが同社のハンドルのない自動運転バス「NAVYA  ARMA」で実証実験をおこなっている。

>>次ページ 日本勢はトヨタ・日産・ホンダ・スバル、各社の方針は?

日本勢はトヨタ、日産、ホンダ、スバルの4社が走行試験許可を得ている。台数ではトヨタが11台で最も多く、日産とスバルが各5台、ホンダが4台と続く。

台数7位(11台)
■トヨタ・リサーチ・インスティテュート 日本の自動車メーカートヨタが、人工知能技術に関する先端研究、商品企画を目的に設立した。シリコンバレーを拠点にマサチューセッツ工科大学やスタンフォード大学に設立した研究センターと連携、共同研究しており、人工知能や機械学習の知見を利用して科学的・原理的な研究を加速させている。

【参考】トヨタは自動運転を含む次世代技術の開発に向け、2019年の技術開発費は過去最高の1兆800億円を見込んでいる。詳しくは「【速報】トヨタ決算発表、豊田社長『”自動車を作る会社”から”モビリティカンパニー”に』|自動運転ラボ 」を参照。

台数11位(5台)
■日産 日本の自動車メーカー日産が開発を進める自動運転技術「プロパイロット」は、先行車を検出して自動で加減速や停車をおこなう「インテリジェントクルーズコントロール」と、車線中央付近を走行するようにステアリングを制御し、運転者のハンドル操作を支援ハンドル支援をおこなう。2018年中には複数車線の変更を自動でおこなう技術の実用化を目指している。

台数11位(5台)
■スバル 日本の自動車メーカー。アイサイトは、人の目と同じように左右2つのカメラで立体的に環境を把握し、車だけでなく歩行者や自転車なども識別し、対象との距離や形状、移動速度を正確に認識する。衝突の危険がある場合はドライバーに注意喚起し、回避操作がない場合はブレーキ制御をおこない自動的に減速または停止する。高速道路で走行車線両側の区画線を認識してステアリング操作のアシストをおこない、車線内中央付近の維持や車線逸脱抑制をおこなう「アクティブレーンキープ」などの機能を搭載している。

台数16位(4台)
■ホンダ 日本の自動車メーカー。ホンダセンシングは、ミリ波レーダーと単眼カメラとコントロールユニットで構成されたシステムにより、衝突軽減ブレーキ (CMBS)や車線維持支援システム (LKAS)、一定の速度域で前走車との車間を保ちつつ走行車線をキープするようアクセル・ブレーキ・ステアリングの操作をおこなう「トラフィックジャムアシスト(渋滞運転支援機能)」などの機能を搭載している。

【参考】ホンダセンシングは完全自動運転の実現に必要なコア技術をいくつも搭載している。詳しい内容については「米国でのホンダセンシング搭載車、累計販売100万台突破 自動運転実現への注目技術|自動運転ラボ 」を参照。

>>次ページ 中国企業はネット大手の百度など、韓国はサムスン電子

中国勢では8社が走行試験許可を受けており、中国インターネット検索最大手の百度は車両4台で認可を受けている。ソフトバンクグループも出資する中国ライドシェア大手DiDiも最近になって認可を取得した。

台数16位(4台)
■Baidu(バイドゥ) 中国インターネット検索最大手の百度(バイドゥ)。自動運転車用のプラットフォームを開発するプロジェクトなどを立ち上げ、AI技術を武器に中国国家プロジェクトの認定も受けており、カリフォルニアをはじめ中国本土でも走行試験を重ねている。中国の自動車メーカー北汽グループと提携し、2021年までに自動運転車の量産ビジネスに入ることを計画している。

■DiDi(ディディ) 中国のライドシェア大手滴滴出行(ディディチューシン)。配車事業に加えAI(人工知能)や自動運転車の開発にもかなり投資しており、カリフォルニアでの走行試験により実用的な自動運転車の開発を進めるとともに、米国市場への足掛かりにしていると思われる。

 

韓国勢としてはサムスン電子が唯一走行許可を得ている。

台数16位(4台)
■Samsung Electronics(サムスン電子) 韓国最大の総合家電・電子部品・電子製品メーカー。自動運転やコネクテッドカー(通信機能を備えた車)分野の技術を確保し、自動車電装事業を強化するため、スマートセンサーやマシンビジョン(映像イメージを利用した検査・分析技術)、人工知能、コネクティビティーソリューション、セキュリティーなどの技術取得を目指している。

【参考】自動運転業界における主要プレイヤーの自動運転実現時期などの目標については「自動運転車の実現はいつから?世界・日本の主要メーカーの展望に迫る|自動運転ラボ 」も参照。

 

自動運転テストの走行試験は、アメリカのカリフォルニア州だけではなく、欧州各国や日本国内、中国国内などでも実施されている。中東イスラエルなどでも実施されており、各国が自動運転実現で形成が見込まれる将来の巨大市場を意識し、試験走行に関するルール作りを急いでいる。

今後さらに各社が自動運転技術の開発を加速させる中、試験走行に投入する台数も増やしていくとみられており、自動運転業界から目が離せない状況が続いていくことは間違いないと言える。

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