「MaaS」(マース)という単語を耳にする機会がここ数年で随分と増えた。交通業界にイノベーションを起こすと言われているMaaS。実証実験が国や自治体、民間企業などによって盛んに行われるようになり、現在もその勢いは衰える様子はない。
大手自動車メーカーのトヨタも、すでに独自のMaaSサービスを展開し、導入エリアを拡大しつつある。その名も「my route(マイルート)」だ。日本にはすでに複数のMaaSサービス・アプリがあるが、my routeは日本を代表するMaaSサービスと言えるほど展開スピードが速い。
日本国内ではスマートシティやスーパーシティの取り組みが進んでいるが、こうしたプロジェクトにおいてもMaaSが柱となるケースが多い。また、MaaSを構成する一要素であるライドシェアについても、解禁の動きが出てきている。
ただし、MaaSの取り組みが盛んになっているものの、まだMaaSの本質をよく掴めていない人も少なくないはずだ。この記事では最新情報をもとに、本格的に日本国内でも社会実装が進むMaaSについて、定義や概念、日本国内の取り組み、海外における導入状況を包括的に解説する。
▼日本版MaaSの推進|国土交通省
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/japanmaas/promotion/
▼次世代の交通 MaaS|総務省
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/02tsushin02_04000045.html
<記事の更新情報>
・2024年7月24日:参考画像を追加。関連記事を追加
・2024年6月18日:全体的に情報をアップデート
・2024年5月31日:ライドシェアの全面解禁の方向性について追記
・2024年1月31日:2024年4月からのライドシェアの部分解禁について追記
・2023年9月20日:ライドシェア解禁に関する動きや日本・海外におけるMaaSの展開状況、企業の取り組みなどについて追記
・2018年9月9日:記事初稿を公開
記事の目次
■MaaSとは?
まずはMaaSの基礎知識について解説していこう。
MaaSの読み方は「マース」
「Mobility as a Service」(モビリティ・アズ・ア・サービス)の略で、マースと読む。一部、「マーズ」と発音するケースもあるが、基本は「マース」と読むケースが多い。直訳すると「サービスとしてのモビリティ」で、移動のサービス化を意味する。
MaaSの概念は?
比較的新しい考え方のため定義にばらつきがあるが、一般的には「自動車や自転車、バス、電車など、さまざまな交通手段を個別の移動手段としてではなく1つのサービスとして捉え、シームレスにつなぐ新たな移動の概念」を指す。
2015年のITS世界会議で設立された「MaaS Alliance」によると、「MaaSは、いろいろな種類の交通サービスを需要に応じて利用できる一つの移動サービスに統合すること」と定義している。
従来、移動するための「モノ」に過ぎずそれぞれが独立している自動車やバス、電車、飛行機などの各交通主体を、移動するためのサービス・コンテンツとして取りまとめ、統一されたプラットフォームに乗せることで、利用者に効率的な移動の選択肢を与え、予約や決済などを統一することで利便性をもたらす統合型の移動サービスだ。
発展系として、近年では観光や飲食、医療、不動産など交通事業以外の産業を結び付け、付加価値を創出していくことも重視されているようだ。
MaaS実現に必要なこと
MaaSの実現には、各交通事業者の協力体制が必須となるのは言うまでもないが、特にデータ連携の在り方が重要になる。
MaaSにおいては、まず鉄道やバスの運行情報をはじめ、タクシーの位置情報、道路の交通情報などの移動・交通に関する大規模なデータをオープン化し、特定のプラットフォーム上で連携させることが必要となる。
また、地域情報などの関連分野のデータや、利用者の行動履歴や支払い履歴といったパーソナルデータなど、付随する膨大なデータの取り扱いをはじめ、協調領域・競争領域のデータ区分やデータ連携の方法など、MaaS陣営ごとに明確なルールを定める必要があるほか、他のMaaSとも連携しやすい形式を採用することが肝要になってくる。
また、現存する移動サービスに固執せず、地域の特性に応じて新たなモビリティの導入を検討することも重要となる。既存のバスやタクシー事業の自動運転化をはじめ、カーシェアやパーソナルモビリティなど、費用対効果を見定めながらラストワンマイルを意識したモビリティサービスの導入なども視野に入れ、エリア内の移動を最適化しなければならない。
各モビリティの交通結節点となるターミナルや小拠点となるデポの配置など、地域の都市計画や交通政策と結び付けた設備の再編なども必要になりそうだ。
■MaaSのレベル
MaaSのレベルは、一般的に0〜4の5段階で分類される。
MaaSレベル0:統合なし
レベル0は「統合なし」で、それぞれの移動主体が独立したままサービスを提供する旧来のものを指す。乗り換えなどの利便性向上は図られているものの大半の交通機関が独立運営されている状態だ。
MaaSレベル1:情報の統合
レベル1は「情報の統合」で、料金や時間、距離など各移動主体に関するさまざまな情報が統合されて利用者に提供されている段階を指す。レベル1の段階への到達は各国でさまざまな企業がウェブサイトやアプリなどを使って実現させ始めている。
MaaSレベル2:予約、決済の統合
レベル2は「予約、決済の統合」で、ワンストップで発券や予約、支払いなどが可能となる段階だ。利用者はスマートフォンなどのアプリケーションで目的地までのさまざまな移動手段を一括比較し、複数の移動主体を組み合わせたまま予約や決済などができるようになる。
MaaSの取り組みが加速する中、情報のデジタル化やキャッシュレス決済を導入する交通機関も着実に増加しており、MaaSアプリから予約・決済が可能となる場面も増えている。
今のところ、アプリから各交通事業者の決済画面に飛んで個別に決済する手法が多いようだが、将来的には複数の予約・決済を一括で行うシステムが浸透するものと思われる。MaaSを通した交通事業者同士の協業関係の深化が求められるとともに、決済関連事業者には新たな商機が生まれそうだ。
MaaSレベル3:サービス提供の統合
レベル3は「サービス提供の統合」で、原則としてエリア内のあらゆる移動サービスの予約や決済をはじめ、サービスそのものが一元化された状態を指す。
このレベルでは、エリア内における柔軟な移動を実現するサブスクリプションサービスも導入可能となる。月定額制で、さまざまな移動サービスが乗り放題になるイメージだ。
各移動サービス本来の利用料金に差があるため、一部を除く移動サービスの定額制や複数の料金メニュー設定、エリア限定定額サービスなどさまざまな導入方法が考えられるが、予約や決済などは完全に統合され、MaaSアプリからワンストップで全ての移動サービスが利用可能になる。
MaaSレベル4:政策の統合
最高度のレベル4は「政策の統合」となり、国や自治体、事業者が、都市計画や政策レベルで交通の在り方について協調していく段階を指す。交通結節点となるターミナルの配置など、インフラの再編も含め交通体系の在り方を模索していくレベルとなる。
レベル | 定義 |
MaaSレベル0 | 統合なし |
MaaSレベル1 | 情報の統合 |
MaaSレベル2 | 予約、決済の統合 |
MaaSレベル3 | サービス提供の統合 |
MaaSレベル4 | 政策の統合 |
【参考】MaaSレベルについては「MaaSレベルとは? 0〜4の5段階に分類」も参照。
■MaaSの市場規模
インドのコンサルティング企業「ワイズガイ・リサーチ・コンサルタント」によると、MaaSの世界市場は2017年に241億ドル(約2兆7000億円)規模だったが、2025年に2304億ドル(約25兆円)規模まで拡大するという。8年でおよそ10倍になるという推測だ。
【参考】ワイズガイの調査結果は「MaaS市場、8年で10倍 2025年に25兆円規模 インド企業が予測」も参照。
また、三菱総合研究所が2018年11月に発表したレポートによると、世界の自動車関連市場は現在の650兆円から2050年に1500兆円まで増大し、このうち900兆円がMaaS関連になると試算している。増加分のほぼ全てがMaaS関連となるような印象だ。
一方、矢野経済研究所が2019年2月に発表した国内MaaS市場調査によると、サービス事業者売上高ベースで2018年は845億円(見込み)のところ、2030年には6兆3600億円に達すると予測し、2016年から2030年のCAGR(年平均成長率)は44.1%で推移するとしている。
【参考】矢野経済研究所の調査結果については「MaaSの国内市場規模、2030年には飲食市場上回る6兆円台に」も参照。
富士経済が2020年3月に発表したMaaSの国内市場調査によると、2030年のMaaS市場は2018年比3.5倍となる2兆8,658億円になると予測している。
数字に差はあれど、各社ともMaaS市場が大きく成長していく見立てで、将来のモビリティ事業がMaaSを中心に展開されていくことを示している。
【参考】富士経済の調査結果については「2030年には3.5倍に!MaaSの国内市場、あと10年で3兆円間近に」も参照。
■MaaSがもたらすメリット
MaaSがもたらすメリットを3つ紹介する。
都市や地方における交通変革
公共交通機関やカーシェアなどによる効率的な移動が可能になることで、個人の自家用車による移動が減少し、都市の交通渋滞緩和に期待が持たれる。また、自動車による排気ガスの減少により、都市の大気汚染、温室効果ガス排出が抑制されるほか、自家用車保有台数が減少することで駐車場面積を減らすことができ、跡地の有効活用も可能になりそうだ。
赤字で公共交通の存続そのものが危ぶまれている地方においては、自動運転導入による省人化やルーティングの最適化を図るAIシステムの導入などとともにMaaSを検討することで、持続可能な交通環境を再整備することが可能になる。
交通機関の効率化
移動主体が自家用車から公共交通などにシフトすることにより運賃収入が増加し、従来赤字運営していた路線などで経営環境の改善や税金の投入など公的負担の軽減効果が見込まれる。
また、鉄道を維持することが難しい地域で路線を廃止し、その分の運用・維持資金をオンデマンドバスや自動運転車に投資することで、より効率的な運営が可能になるケースもありそうだ。
MaaS導入によってモビリティサービスのプラットフォーム化・デジタル化が進むことで経営環境が変化するが、これをチャンスと捉え新たなビジネスモデルを構築していくことが肝要だ。
個人の利便性向上
電車やバス、飛行機など複数の交通機関を乗り継ぐ必要がある移動において、移動経路の検索や予約、乗車、決済までが1つのサービスで完結可能となるほか、ラストワンマイルを担う新たなモビリティの登場などにも期待が持たれる。
モビリティサービスの利便性向上によって、一家に一台、あるいはそれ以上ともいわれる自家用車所有率は低下し、高額な自家用車の購入費や維持費の負担がなくなり、その他の支出に充当する余裕が生まれる。
このほか、企業が従業員に支払う通勤手当の一律支給が可能になり、既定の通勤経路以外の交通経路の把握なども容易になるため、企業・従業員双方にとって経費清算手続きが簡略化されることなども考えられそうだ。
■MaaSのサービス事例
続いてMaaSのサービス事例を紹介していこう。
鉄道やバス、タクシー:公共交通の核として存在感を発揮
既存の鉄道やバス、タクシーといった公共交通を担う移動サービスは、MaaSにおいても中心的な役割を担うケースが多い。全国に張り巡らされた鉄道やバスなどの路線をベースにラストワンマイルを結び付けていく考え方が主流だ。
また、バスやタクシーの自動運転化によりコスト削減や安全性を高める取り組みも加速しているほか、オンデマンドバスの導入なども期待できる。
サイクルシェア:MaaSの中では身近な存在 手軽に近距離移動が可能
自転車の貸出所(サイクルポート)を複数設置し、自転車を自由に借り出し・返却できるようにした共同利用システム。導入当初は自転車やサイクルポートなどハード面の整備に重点が置かれていたが、スマホの浸透などとともにアプリ開発などソフト面が充実し、飛躍的に利便性が増してきている。気軽にラストワンマイルを担うモビリティとして注目だ。
【参考】サイクルシェアについては「シェアサイクル・シェア自転車のサービス提供企業まとめ 世界・日本版、ウーバー参入も|自動運転ラボ」も参照。
カーシェア:市場拡大中 自動車メーカーの参入も
サイクルシェアの自動車バージョンで、事業者が会員に車を貸し出す仕組みを指す。利用者は、サービス事業者のもと自動車を所有せずに共有するような形で利用できる。
また、小規模カーシェア事業を可能にするプラットフォームサービスや、個人間カーシェアサービスなども登場しており、市場の拡大はまだまだ続きそうだ。
【参考】カーシェアについては「カーシェアの各社サービス料金を比較 市場拡大中のMaaS系サービス」も参照。個人間カーシェアについては「個人間カーシェアの主要4サービス・アプリまとめ MaaSサービスの一種」も参照。
ライドシェア:海外で市場拡大中、日本では「限定解禁」
移動に関するシェアリングエコノミーの中でも大きな市場規模を誇るライドシェア。車両そのものをシェアするカーシェアとは異なり、運転手のいる車に会員が同乗する仕組みで「移動」をシェアする。
事業者は、アプリなどを介して乗りたい人と乗せたい人を結び付けるマッチングサービスの提供など仲介がメインで、あらかじめライドシェア事業者に登録したドライバーが、自家用車を利用して顧客を送迎する旅客運送の性質も持つ。
国内では、市町村やNPO法人などが公共の福祉確保を目的に実施するケースや、ガソリン代など走行にかかったコストをシェアするタイプは規制対象外となっているが、営利目的のライドシェアは原則禁止されていた。しかし、2023年後半から解禁の動きが出て、2024年4月から部分的に解禁される運びとなった。
当面はタクシー会社がドライバーを雇用してライドシェアを展開することが可能になったが、全面解禁に向けた方向性を6月に示すとされたが、政府内で意見が割れて、結論が先送りされることとなった。今後、全面解禁に向けて政府・与党がどう動くのか注目が集まる。
【参考】関連記事としては「ライドシェアの法律・制度の世界動向」「ライドシェア、政権交代でも「全面解禁」見送り濃厚 立憲民主党も反対姿勢」も参照。
相乗り:タクシー相乗りで料金割り勘 サービス実証実験など進む
1台の乗り物に複数人数が一緒に乗り合わせることを意味し、一般の個人ドライバーと自動車をシェアするタイプと、タクシーの行き先が同じ客同士がタクシーに乗り合うタイプが考えられる。ライドシェアも同じ意味で用いられることが多い。
タクシーの相乗りは現在解禁に向けた実証などが加速しており、近い将来規制が撤廃される可能性が高そうだ。
【参考】相乗りサービスについては「コストシェア型の日本のライドシェアアプリ「notteco」ってどんなサービス?|自動運転ラボ」も参照。
シェアパーキング:駐車場を効率的に活用 独自アプリや制御装置で利便性増す
空き駐車場のシェアリングサービスで、モバイルアプリを通じて全国の空いている月極や個人の駐車場、空き地などを時間単位で貸し借りできるサービス。ゲート開閉式の駐車場などこれまで対応が難しかった駐車場も、独自の機器を取り付けることでキャッシュレス利用が可能になるサービスが登場するなど、利便性が増している。
また、店の軒先など、狭い空きスペースを有効に活用できる自転車向けの駐輪場シェアサービスなども登場している。
宅配・輸送・物流:配送大手から新規参入組まで幅広いサービス展開
MaaSは宅配や物流などにも及んでいる。国内配送大手のヤマト運輸とディー・エヌ・エーの2社が、次世代物流サービスの実現を目指すためのプロジェクト「ロボネコヤマト」に取り組んでいる。
希望する場所で宅配便を受け取ることができるオンデマンド配送サービスや、複数の地元商店の商品をインターネット上で一括購入し、まとめて届ける買物代行サービスなど、自動運転車を用いた実証実験などを行っている。
また、荷主と運送業者をオンラインで仲介して直接マッチングするサービス事業者や、買物・宅配代行サービス事業者など、多様なサービスが展開されている。インターネット通販の拡大など今後も需要が見込まれる領域のため、アイデア次第でさまざまな新規参入の形がありそうな分野だ。
【参考】ヤマト運輸の取り組みについては「ロボネコヤマトが神奈川県藤沢市内を走る 自動運転車両を使った配送実験|自動運転ラボ」も参照。
飲食サービス:Uberが日本で事業展開 マッチングサービス事業者も
ビルの空きスペースと移動販売可能なフードトラックをマッチングするプラットフォーム提供事業者や、「Uber Eats(ウーバーイーツ)」のように提携レストランの料理を宅配する食品配達サービス事業者などが登場している。
また、飲食に限らないが、タクシーなどと連携して飲食情報や割引サービス、広告などを提供・配信する事業も今後広がりそうだ。
【参考】ウーバーイーツについては「ウーバーイーツが関西へ本格進出 世界ライドシェア大手が運営|自動運転ラボ」も参照。
自動運転:MaaSとともに開発面で相乗効果
自動運転とMaaSは密接に関係しており、MaaSの活用により自動運転の開発が促進され、自動運転の実現によりMaaSの利便性も増す、といった相乗効果を持つ。
例えば、自動運転システムの開発には大量のデータが必要となり膨大なコストがかかるが、自動運転車を個人所有する場合と比べMaaSを活用することでデータを効率的に収集することができ、コストも分散される。また、MaaSによって提供される自動運転システムは、乗客1人当たりの走行コストを低下させることができ、新たな消費需要を生み出してシステムの安全性や利便性が向上していく好循環を生むことにつながる。
ちなみに日本ではホンダや日産が自動運転タクシーの展開計画をすでに発表しており、トヨタもe-PaletteというMaaS向けの自動運転シャトルの開発に取り組んでいる。
パーソナルモビリティや超小型モビリティ:さまざまなモビリティが登場
ラストワンマイルを担うモビリティとして、1人乗りのコンパクトなモビリティの開発や実証も盛んに行われている。
トヨタの「i-ROAD」のように公道を走行するモビリティをはじめ、歩道や施設内などの移動を前提としたモビリティなど種類は豊富で、現状、原動機付自転車(原付)扱いの電動キックボードの規制緩和を目指す動きも活発だ。
ちなみに自動運転技術を搭載させたパーソナルモビリティとしては、自動運転車椅子や自動運転スクーターなどが挙げられる。障害がある人や高齢者向けに開発されているケースが多く、社会実装に向けて実証実験も積極的に行われている。
【参考】超小型モビリティについては「超小型モビリティが、高齢者の移動に革新をもたらす」も参照。自動運転技術を搭載させたパーソナルモビリティについては「車でも自転車でもない…自動運転のパーソナルモビリティ、AZAPAエンジニアリングと富山大が開発へ」「空港で世界初!羽田に自動運転パーソナルモビリティ WHILLが開発」も参照。
■ライドシェアがついに日本で解禁へ
前述の通り、ライドシェアは原則的に日本で禁止されたきた。しかし2024年4月から部分的な解禁が決まった。
ライドシェア解禁の機運が高まったきっかけは、国内の有力政治家の発言だ。デジタル大臣を務める河野太郎氏や菅義偉前首相がライドシェア解禁に前向きな姿勢を示しており、菅氏は2023年8月の地方講演において関連する発言を行っている。
河野氏もほぼ同じタイミングで、テレビの報道番組において、地域ごとにライドシェアや自動運転サービスが自動解禁されていく独自案を示し、話題になった。小泉進次郎氏もライドシェアの解禁に前向きな姿勢を示していた。
その後、ライドシェアは2024年4月から部分的に解禁されることとなった。「部分的」と書いたのは、当面はタクシー会社しかサービスを展開できず、ライドシェアで働くドライバーはタクシー会社に雇用される必要があるからだ。
いずれ、全面的にライドシェアが解禁されることになるのか、注目だ。
【参考】関連記事としては「ライドシェアとは?(2024年最新版) 仕組みや解禁時期は?」も参照。
■MaaSの海外の導入事例
MaaSが導入されている海外の事例を解説していく。
フィンランド:MaaS発祥の地、官民一体でプラットフォーム開発
MaaSを世界で初めて都市交通に実装したフィンランド。なかでも、MaaSの名付け親として知られるヘルシンキのベンチャー企業「MaaS Global(マース・グローバル)」社が2016年から提供しているサービス「Whim(ウィム)」の注目度が高い。
ウィムの利用者は、それぞれの利用形態に応じた料金プランを選択し、ウィムが提供する複数の交通経路から最適なものを選び、予約から乗車、決済まで一括して利用することができる。交通手段にはバスや電車などの交通機関のほか、タクシーやバイクシェアなどもあり、スマートフォンのアプリを提示するだけで利用できるという。
サービス開始前の交通利用状況は、公共交通が48%、自家用車40%などだったが、サービス開始後は公共交通が74%と大きく伸び、自家用車は20%と半減した。
取り組みの背景には、フィンランドの主要大学やタクシー協会、民間企業など100以上の団体・組織が参画するITSフィンランドや同国の運輸通信省などの強力な支援がある。オープンデータとオープンAPIのプラットフォーム開発・整備を担うほか、移動に関する情報検索や決済などのサービスの統合を進めている。また、輸送サービスに関する法律の一元化も図られ、規制緩和も進められているという。
なお、マース・グローバル社は三井不動産との提携のもと日本進出を計画し、2020年に千葉県柏市で実証が始まった。
【参考】関連記事としては「MaaSアプリ「Whim」とは? 仕組みやサービス内容を紹介」も参照。Whimの日本進出については「三井不動産、「Whim」を展開するMaaS Globalに出資」も参照。
ドイツ:ドイツ鉄道やダイムラーがプラットフォーム構築、国境またいだサービスも
ドイツでは、ドイツ鉄道がマルチモーダル型の統合モビリティサービスプラットフォーム「Qixxit(キクシット)」を実用化させている。交通手段の検索から予約、決済まで可能で、当初はドイツ国内に限られていたが、現在では飛行機や長距離バスなど国境をまたぐ移動のプランナーとしての使い勝手の良さが人気を集めているという。
また、自動車メーカーのダイムラーの子会社も、統合モビリティサービス「moovel(ムーベル)」を実用化している。都市の交通流を最適化するMaaSプラットフォームで、利用者は公共交通機関の航空券のほか、カーシェアリングやレンタルバイクなどの他のモビリティオプションの予約や支払いも可能となっている。
ダイムラーはその後独BMWと提携を交わし、2019年2月にカーシェア、ライドヘイリング、パーキング、チャージング(充電)、マルチモダリティの各領域で両社のサービスを統合・連携した5つの新会社の設立を正式発表し、サービス運用を移行している。
両社は2020年6月に自動運転開発の分野で協業を停止したものの、サービス分野の5社は引き続き存続しているようだ。
【参考】ダイムラーとBMWのサービス分野における提携については「欧州の双頭・BMWとダイムラーによる「リーチナウ」の可能性とは?」も参照。ダイムラーとBMWの協業については「英断か悪手か…?BMWとDaimler、共同自動運転開発を一時停止」も参照。
イギリス:フィンランドのマース・グローバル社のサービス拡大
フィンランド同様、ウェストミッドランドにおいてマース・グローバル社が2018年4月からウィムのサービスを開始している。同社は将来的にカナダやアメリカといった北米での展開なども考えているという。
台湾:高雄市交通局が「Men-GO」を展開
台湾の高雄市では、市交通局が展開しているMaaSアプリ「Men-GO」(メンゴ)がある。2018年10月から提供されており、市内の複数の交通機関を利用する際の経路検索機能が搭載されているほか、定額料金での公共交通を利用することもできる。
■MaaSの日本の導入事例
日本でもMaaSの導入は進みつつある。
JR東日本:モビリティ変革コンソーシアム設立、ワンストップサービスの確立目指す
2016年に技術革新中長期ビジョンを発表。この中で、利用者の軌跡や車両・設備のデータに加え、バスやタクシーといった交通機関、自動運転技術やシェアリングの進展が著しい自動車の位置情報などのデータなどとリアルタイムで連携し、乗客1人ひとりに応じた情報提供を目指すこととしている。
バスや自転車といった二次交通との高度な連携など、さまざまな移動手段を組み合わせたドアツードアの移動サービスの提供を目指し、2017年に「モビリティ変革コンソーシアム」を立ち上げて産学民の連携を推進している。
▼モビリティ変革コンソーシアム:JR東日本
https://www.jreast.co.jp/jremic/
JR東日本としては、交通系ICカードSuicaと連携した「Ringo Pass」の実装を進めるほか、2019年には小田急電鉄とMaaS連携に向けた協議を開始している。
また、東京急行電鉄などとともに伊豆エリアでアプリ「Izuko」を用いた観光型MaaSの実証実験を開始している。東北では、宮城県・仙台市とともに、仙台圏における観光型MaaS構築に向けた連携を進めるなど、多方面に活躍の場を広げているようだ。
【参考】JR東日本については「JR東日本が「Suica×モビリティ」事業 配車サービスも連携、巨額投資も|自動運転ラボ」も参照。JR東日本へのインタビュー記事としては「【インタビュー】将来あるべきMaaSの姿を模索 JR東日本のモビリティ変革コンソーシアム」も参照。
小田急電鉄:利便性向上に向けグループ内連携から他社連携へ拡大中
MaaS構築に向けたオープン共通データ基盤「MaaS Japan」をヴァル研究所と共同開発するなどいち早くMaaS分野への進出を本格化させた小田急電鉄は、2019年10月にMaaSアプリ「EMot(エモット)」をサービスインし、実証に着手した。
サービス開始時における機能は「複合経路検索」と「電子チケットの発行」に留まっていたが順次サービスを拡大しており、デジタル箱根フリーパスのサービス充実やデジタルチケットの譲渡機能を実装するなど、徐々に進化を遂げているようだ。
【参考】小田急の取り組みについては「MaaSアプリに「周遊プラン」提案機能!小田急「EMot」で2020年内に導入へ」も参照。
トヨタ自動車:「my route」全国展開へ
トヨタは2018年11月、西日本鉄道とともに2018年11月に福岡県福岡市でMaaSアプリ「my route(マイルート)」の実証実験に着手した。2019年11月にはJR九州参画のもと福岡市と北九州市で本格実施を開始し、以後、サービス事業者を拡大しながらエリアを広げている。
my routeは自治体が取り組むMaaS関連事業などでも活用されており、例えば交通渋滞が課題となっている沖縄県ではmy routeを活用し、観光客が渋滞を回避しながら観光地まで移動できる仕組み作りに取り組んでいる。
▼my route[マイルート]|GooglePlay
https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.co.toyota.myroute&hl=ja&gl=US&pli=1
▼my route[マイルート]|App Store
https://apps.apple.com/jp/app/my-route-%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%88/id1437356534
【参考】関連記事としては「内容は三者三様!国交省「日本版MaaS推進事業」で12事業選定」も参照。
ちなみにmy routeは、2023年に入ってUI(ユーザーインターフェース)が刷新されている。ユーザーの反応などをもとに使い勝手を見直し、利用頻度が高い機能やサービスのインターフェースに改良を加えた。
対象エリアも拡大しており、2023年9月時点で、神奈川県、富山県、愛知県、愛媛県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、沖縄県などで展開されている。
モビリティ分野では、MaaS専用次世代EV「e-Palette Concept」の実用化に注目が集まる。移動サービスや移動販売など多目的な活用が可能で、自動運転システムもトヨタ製に限らず他社製を搭載することもできる。
【参考】my routeについては「トヨタMaaS「my route」、横浜でも提供開始 マネタイズの鍵は?」「使い勝手、一から見直し!トヨタMaaS「my route」が刷新」も参照。e-Paletteについては「トヨタが東京五輪で自動運転レベル4の車両披露 MaaS専用EV車e-Paletteも登場|自動運転ラボ」も参照。
トヨタとソフトバンク:MONET Technologies設立でMaaS事業推進
トヨタ自動車とソフトバンクはを2018年9月、共同出資のもと「Autonomous Vehicle(自動運転車)」と「MaaS」を融合させたAutono-MaaS事業を手掛ける「MONET Technologies」を設立した。
企業や自治体のMaaS実現を支援する「MONETプラットフォーム」の本格運用や、MaaS向けの架装車両やキットを提供する「MONET MaaSコンバージョン」など、提供サービスは年々広がりを見せている。
2019年3月には、モビリティイノベーションを推進する企業横断型組織「MONETコンソーシアム」を設立した。加盟企業は2023年9月時点で763社となっており、すでにオンデマンド通勤シャトルの実証実験など各社がコンソーシアムのもとさまざまな取り組みを展開している。
▼MONETコンソーシアム公式サイト
https://www.monet-technologies.com/consortium
【参考】関連記事としては「MONET Technologies(モネテクノロジーズ)とは? トヨタとソフトバンク出資、自動運転やMaaS事業」も参照。
JR西日本:観光型MaaS「setowa」本格サービス展開へ
JR西日本は、せとうちエリアへの観光誘客拡大に向け2019年度に観光型MaaS「setowa」の実証に着手した。
2020年9月から機能の拡充や操作性を改善して新たにサービスを開始しており、経路検索結果から各種移動サービス事業者の予約サイトやアプリへリンク連携してスマートフォンで予約・決済する機能や、周遊パスや話題のスポット紹介などサービス機能も充実させた。
WILLER:国内3エリアで「WILLERS」展開
高速バスの運営から移動・観光eコマースの開発など事業領域を拡大するWILLERは、MaaSアプリ「WILLERS」をサービスインしている。
対象エリアは2020年9月時点でひがし北海道エリア、京都丹後鉄道沿線エリア、南山城村エリアとなっており、QRコードを活用したチケットレスの利用やさまざまな交通機関の事前予約などが可能だ。
■MaaSとスマートモビリティチャレンジ
MaaSと「スマートモビリティチャレンジプロジェクト」の関連については、全体像をしっかりととらえておきたいところだ。
スマートモビリティチャレンジとは?
将来のMaaS導入などを見据えた「スマートモビリティチャレンジプロジェクト」は、経済産業省と国土交通省で立ち上げられた新プロジェクトだ。自動運転社会の実現のため、新たなモビリティサービスの社会実装を目指し、地域と企業の協働による意欲的な挑戦を促すとしている。
▼スマートモビリティチャレンジ
https://www.mobilitychallenge.go.jp/
2019年から開始され、初年度は地域の交通課題解決に向けたモデル構築を推進する「新モビリティサービス推進事業」を公募し、全国の牽引役となる先駆的な取り組みを行う「先行モデル事業」を19事業選定した。
また、新しいモビリティサービスの社会実装に取り組み、事業計画策定や効果分析などを行う「パイロット地域」には13の市区町村が選択され、各地でMaaSをはじめとしたモビリティサービスに関する検討や実証が始まった。
以下、2020年度のプロジェクトで選定された16地域うちの3つの事例を紹介する。ちなみに最新の2023年度の支援対象の選定結果は以下のURLから確認できる。
▼令和5年度「スマートモビリティチャレンジ」支援対象 選定結果
https://www.mobilitychallenge.go.jp/introduction/
事例①:生涯活躍のまち上士幌MaaSプロジェクト(北海道上士幌町)
北海道上士幌町のプロジェクトでは、郵便局車両への貨客混載(無償)、福祉バスのデマンド化と商店配送品の混載、自家用有償によるオンデマンド交通が行われた。
同町では公共交通機関は民間バスのみとなっており、町がコミュニティバスを運行しているが使用用途が限定されている。そのため、クルマが無い場合は町内の移動のハードルが非常に高く、ワーケーションなどによる中長期滞在者や高齢者の免許返納の増加により「域内公共交通の不在」という問題が顕在化してきている。
将来的に町の支出負担の削減と域内交通の拡充を目指しており、①福祉バスのデマンド化②貨客混載(福祉バスによるスーパーの荷物配送)③自家用有償(自家用車での輸送)④郵便局車両による客貨混載——の実証実験が行われた。
事例②:AI技術を活用した移動販売の持続性向上による豊かな暮らしの実現へ(兵庫県養父市)
兵庫県養父市では、人口減少などの進む地域で豊かな暮らしを実現するため、①予約制運行の試行②運行地域の拡大③AI・ITを活用した運行の効率化・みえる化——という3つの取り組みが実証実験が行われた。
こうした取り組みにより、コミュニティ希薄化や地域活力の低下、買い物難民の発生、移動販売の事業性悪化などの課題解決を目指した。
ちなみに③では、予約状況を送迎支援システム「らくぴた送迎」で管理し、当日の運行ルートや運行ダイヤなどをAI(人工知能)で自動設定した。また、GPSによる移動販売車のリアルタイム管理も行われた。
事例③:地方版MaaS確立に向けた広域エリア連携PJ(ひたち圏域、会津若松市)
茨城県のひたち圏域と会津若松市では、移動の98%以上が自家用車によるものだ。そのため、自家用車がない人にとっては周遊性が低く、地域経済の活性化を阻害する要因となっている。
そのため、地域の交通事業者や異業種事業者の交通商品を組み入れたバスの周遊券などを外部MaaSサービスで販売できるように、システム連携基盤(MaaS基盤)を構築した。
このMaaS基盤は各MaaSサービスなどが提供するアプリで商品を販売する仕組みとなっており、2020年度はナビタイムジャパンのアプリ「Hitachi MaaS」、ジョルダンの乗換案内、デザイニウムの「Samurai MaaS」での販売を準備した。
■「日本版MaaS」の推進・支援状況は?
国土交通省は「日本版MaaS推進・支援事業」を展開しており、以下の同省の資料にあるように、毎年支援事業を選定し、実用化に向けた取り組みをサポートしている。
例えば2023年度は、MaaS高度化につながる取り組みへの支援として、群馬県前橋市の事業など6事業を選定した。過去の選定では、2019年度に19事業、2020年度に36事業、2021年度に12事業、2022年度に6事業が選定されている。
以下、2023年度に選定された6事業のうち2つの事業にスポットライトを当て、紹介していこう。
▼令和5年度 日本版MaaS推進・支援事業 6事業について|国土交通省
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001617475.pdf
群馬県前橋市:市民の移動データを活用したMaaS高度化事業
群馬県前橋市では、地域で展開されている公共交通の利便性を高めていくために、MaaSの推進や交通網の最適化に取り組んできた経緯がある。そしてさらなるMaaSの推進に向け、市民の移動実態を明らかにする調査を行い、「真のニーズに合った交通網」を検討するとしている。
ちなみに群馬では、JR東日本が提供するMaaSプラットフォーム「モビリティ・リンゲージ・プラットフォーム」を活用し「GunMaaS(グンマース)」としてMaaSサービスが展開されている。
▼GunMaaS公式サイト
https://lp.g3m.jp/
三重県菰野町:菰野町MaaS「おでかけこもの」の機能高度化
三重県菰野町では、MaaSサービス「おでかけこもの」の取り組みが2020年1月から始まっており、このMaaSサービスに新たに、AIオンデマンド乗合交通の配車時間の短縮につながるコミュニティバスとの「乗り継ぎ案内機能」と、公共交通の動的な運行情報の確認機能を導入するとしている。
こうした機能の追加により、公共交通の運行のさらなる効率化・利便性向上を図っていくという。
▼菰野町MaaS「おでかけこもの」公式サイト
https://www.kotsu.town.komono.mie.jp/
■MaaS関連データの連携に関するガイドライン
国土交通省は2020年3月に「MaaS関連データの連携に関するガイドラインVer.1.0」を策定し、2021年4月9日にはその改訂版となるVer.2.0を発表している。
▼MaaS関連データの連携に関するガイドラインVer.2.0
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/transport/content/001399363.pdf
このガイドラインは、MaaSに関連するプレイヤーがデータ連携を円滑に行うために留意すべき事項を整理したものとなる。
MaaSでは連携するサービスが多様化し、連携されるデータの種類や提供方法なども日々進化しており、ガイドラインの定期的な改訂は今後も続いていく見込みだ。
ちなみにこのガイドラインは、ガイドラインに従うことを企業などに義務付けているわけではない。
MaaS関連データにおける「協調的」「競争的」の考え方
ガイドラインでは、データ連携を行う上で「協調的データ」と「競争的データ」というデータの分類をしており、それぞれの考え方について説明している。
協調的データは、MaaSプラットフォームを利用する全てのデータ利用者が利用可能とするデータであり、特別な縛りなどがなく全てのものが有用に活用できるデータだ。
競争的データは、データ管理者が個別で契約をした上でMaaSプラットフォームで利用されるデータだ。データ利用者は契約に基づく条件を受け入れた上で利用できる。
MaaS関連データの4項目
ガイドラインでは、MaaSに必要になるデータを4項目に分類している。具体的には「公共交通等関連データ」「MaaS予約・決済データ」「移動関連データ」「関連分野データ」だ。
「公共交通等関連データ」は交通事業者などからの静的・動的データなど、「MaaS予約・決済データ」は利用者によるMaaSの予約・決済に関わるデータなど、とされており、具体例として以下のような内容が紹介されている。
MaaS関連データの匿名化とセキュリティ
移動関連データや予約・決済データは人の移動・行動を俯瞰する上で有益な情報であるが、活用する際には個人が特定されないように匿名化の処理を施す必要があるとし、情報漏洩しないようなセキュリティの仕組みも重要だとしている。
■【まとめ】日本らしいMaaSの早期実現に期待
欧州を中心に発展を遂げてきたMaaSだが、ここにきて日本国内の取り組みが急加速しており、市場が急速に膨れ上がっている印象を受ける。国の推進体制と自治体の意向、そして民間の取り組みが効果的にマッチしているようだ。
各地でMaaSプラットフォームが立ち上がっているが、今後はデータ連携や新たな移動サービスの開発や導入、異業種との連携などがカギとなってくる。官学民一体となった取り組みに引き続き期待したい。
【参考】自動運転とMaaSは非常に関連性が強い。自動運転に関しては「自動運転に関する専門用語まとめ LiDAR、MaaS、ダイナミックマップ…|自動運転ラボ」も参照。
■関連FAQ
MaaSの読み方は「マース」で、「Mobility as a Service」の略語。日本語に直訳すると「サービスとしてのモビリティ」だが、さまざまな交通手段を一元化するサービスやアプリ、仕組みのことを指して使われることが多い。詳しくは「MaaSの読み方は?」も参照。
MaaSレベルはデータや機能などの統合度合いによって、0〜4の5段階で分類される。レベル0は「統合なし」、レベル1は「情報の統合」、レベル2は「予約、決済の統合」、レベル3は「サービス提供の統合」、レベル4は「政策の統合」と定義される。
各種レポートの内容を分析すると、MaaSの国内市場は少なくとも850億円規模、世界市場は少なくとも3兆円規模に上っているとみられ、国内市場は2030年には3兆円弱、世界市場は2025年には25兆円規模まで膨らむとされている。
元祖MaaSサービスは、フィンランド企業MaaS Globalが展開する「Whim」(ウィム)のことを指す。公共交通機関やシェアサイクルなどの移動手段を一元化し、一定条件下で定額で利用できるようにした。日本でも三井不動産が展開する不動産MaaSサービスで、Whimのシステムが活用されている。
実証レベルのサービスと実用化済みのサービスを含めると、トヨタの「my route」、JR東日本の「Izuko」、JR西日本の「setowa」、高速バス大手WILLERが展開する「WILLERS」などがある。
(初稿:2018年9月9日/最終更新日:2024年7月24日)
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)