ソフトバンクビジョンファンドの自動運転・MaaS領域の投資まとめ

ライドシェア各社はじめ有力企業が目白押し





出典;ソフトバンクグループ公式動画

2019年4〜6期の決算発表会をこのほど開いたソフトバンクグループ株式会社(本社:東京都港区/代表取締役会長兼社長:孫正義)。近年投資事業に力を入れており、グループ全体の営業利益において、投資部門であるソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)が占める割合は肥大化している。

そのSVFが力を入れている投資領域が自動運転やMaaSなどのモビリティ分野だ。2019年中には2号ファンドが立ち上がり、同社の成長戦略を担う将来に向けた投資はまだまだ続きそうだ。







今回はSVF設立前のグループによる出資なども含め、モビリティ分野に身を置く出資先企業20社をピックアップ(ABC順)し、紹介しよう。

■ARM Holdings(英国)

ソフトバンクグループが2016年に3.3兆円の巨額買収を実施し、話題となったCPU開発大手の英ARM(アーム)もSVFの投資先として名を連ねている。

ソフトバンクグループからファンドへの出資コミットメント額280億ドル(約3.1兆円)のうち、ARM株式の約24.99%(約82億ドル/約9100億円)を現物出資している。

なお、ARMのアプリケーションプロセッサは、車載情報機器でシェア85%、ADAS(先進運転支援システム)で65%を超えているという。

■Brain Corporation(米国)

高度な自律走行システムの開発を専門とするソフトウエア企業。2009年に米カリフォルニア州で設立され、米通信事業大手のクアルコム系ベンチャーキャピタルから資金を調達しながら成長を遂げた。主に自立走行する清掃ロボの開発を進めている。

2017年資金調達CラウンドでクアルコムとSVFから1億1400万ドル(約120億円)を調達し、同年ソフトバンクロボティクスと提携も交わしている。

■Cambridge Mobile Telematics(米国)

ドライバーの運転評価アプリや運転リスクを測定するプラットフォームの開発など、運転行動を分析するCambridge Mobile Telematics(ケンブリッジ・モバイル・テレマティクス)は2018年12月、SVFから5億ドル(約550億円)の出資を受けたことを発表した。

同社の技術は、保険価格設定に関わる運転技術の正確な測定や、運転操作を改善するインセンティブの提供などを行うことができるという。

■DiDi(中国)

中国配車サービス最大手の滴滴出行(Didi Chuxing)へも早くから出資を行っており、2016年の総額73億ドル(約8000億円)の資金調達ラウンドに参加しているほか、2017年実施の総額55億ドル(約6000億円)のラウンドでは大半を出資している。

SVF設立後の2017年12月には、SVF主導でさらに40億ドル(約4200億円)を出資。2019年3月には、孫正義氏がさらに16億ドル(約1700億円)を出資予定であると語ったことが報じられている。

ソフトバンクはDiDiの日本進出も支援しており、将来的な企業価値の向上とともにビジネスパートナーとしての成長を見守っているようだ。

■Doordash(米国)

2013年米カリフォルニア州で創業し、オンデマンドデリバリーを手掛けるラストマイル物流スタートアップのドアダッシュ。2018年3月、資金調達シリーズDラウンドでSVFなどから5億3500万ドル(約560億円)を調達したほか、同年5月にもシリーズGラウンドでSVFなど既存株主から6億ドル(約630億円)調達したことを発表している。

■fair(米国)

自動車のサブスクリプションサービスを展開する米カリフォルニア州のスタートアップ。2018年12月に、シリーズBラウンドでSVF主導のもと3億8500万ドル(約430億円)の資金調達に成功している。

ライドシェア大手の米Uberを交えたサブスクリプションサービスが特徴で、同社からリースした車両をライドシェアに活用するライドシェアプログラムなども用意している。

■Full Truck Alliance(中国)

中国で2017年に創業したトラック配車アプリ最大手の満幇集団(フル・トラック・アライアンス・グループ)は2018年4月、SVFなどから総額19億ドル(約2000億円)に及ぶ資金調達を発表した。同年8月には新たにSVFなどから10億ドル(約1100億円)規模の資金調達を実施する見込みであることなども報じられており、中国内における同社の地位を確固たるものに築き上げている。

■Getaround(米国)

米カリフォルニア州で2009年に創業された、個人間カーシェア事業を手掛けるスタートアップのGetaround。2016年にトヨタ自動車系の未来創生ファンドから出資を受け、カーシェアに活用するスマートキーボックスの共同開発などを進めてきた。

2018年8月には、シリーズDラウンドでSVFやトヨタ自動車から3億ドル(約330億円)の出資を受けており、世界最大規模のカーシェア事業者への道を着実に歩んでいる。

■GM Cruise(米国)

2013年に米カリフォルニア州で創業した、自動運転開発を手掛けるクルーズ。技術力が高く評価され、2016年に米自動車大手のゼネラルモーターズ(GM)に買収され、同社傘下の自動運転開発企業として開発力に磨きをかけている。

2018年5月にGMがソフトバンクグループとの提携を発表し、GMからクルーズへ11億ドル(約1200億円)、SVFからクルーズへ22億5000万ドル(約2400億円)が投入された。

同年10月には、GMとクルーズの自動運転開発にホンダが加わることが発表され、ホンダからクルーズへ7億5000万ドル(約850億円)出資するほか、今後12年に渡り事業資金約20億ドル(約2240億円)を支出する計画も公表された。

2019年5月には、GM、SVF、ホンダから新たに11億5000万ドル(約1260億円)の追加出資を受けることも発表されている。

当初予定では2019年中に自動運転タクシーサービスを開始することとしていたが、安全性を高めるため延期する方針であることが2019年7月に報じられている。

【参考】クルーズへの出資については「自動運転企業のGMクルーズ、新たに11.5億ドルを資金調達」も参照。自動運転タクシーの延期については「GMクルーズ、「安全第一」で自動運転タクシーのサービス延期」も参照。

■Grab(シンガポール)

シンガポールに本拠を構える配車サービス大手。2012年の創業後、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムと東南アジアでサービスを拡大している。

ソフトバンクグループからの出資は、2014年12月の資金調達シリーズDラウンドで2億5000万ドル(約280億円)を調達したのを皮切りに、2015年8月のシリーズEで3億5000万ドル(約420億円)、2016年9月のシリーズFで7億5000万ドル(約770億円)と続き、ソフトバンク投資部門のMing Maa氏を役員に迎えるなど関係は深まっていく。

2017年7月のシリーズGでは、ソフトバンクグループとDiDiなどから25億ドル(約2700億円)、2019年3月にはSVFから14億6000万ドル(約1600億円)と出資は続き、2019年7月には、ソフトバンクグループが同社を通じ、今後5年間でインドネシアに20億ドル(約2160億円)規模を投資する計画も発表されている。

【参考】ソフトバンクグループのインドネシアへの出資については「ソフトバンクG、インドネシアに5年間で20億ドル投資 出資先のライドシェア大手グラブ通じ」も参照。

■Light(米国)

コンピュテーショナル・フォトグラフィー(CP)と呼ばれる次世代イメージング技術を研究開発するスタートアップ。2018年7月に、SVFが主導する資金調達ラウンドで1億2100万ドル(約130億円)を調達した。

同社が開発した16眼搭載カメラ「L16」の日本国内販売も同月に発表され、輸入製品販売サイト「ヴェルテ」で取り扱われている。自動運転に応用可能な技術を持っており、今後の開発動向に注目したい一社だ。

■Loggi Technology International(ブラジル)

荷主とドライバーをマッチングする配送アプリ開発を手掛けるブラジルのLoggiへ、2018年10月に1億1100万ドル(約120億円)、2019年6月に1億5000万ドル(約160億円)をそれぞれ出資している。

■MapBox(米国)

アプリ向けなどオンラインマップサービスの開発を手掛ける2010年設立の米スタートアップ。グーグルマップなどにはない高いカスタマイズ性を武器にシェア拡大を図っている。

2017年にSVFなどが総額1億6400万ドル(約170億円)の出資を行っている。

■Nauto(米国)

画像認識技術やAIアルゴリズム開発を手掛ける米スタートアップ。2015年にシリコンバレーで創業し、安全運転支援デバイスとなるAI搭載型通信ドライブレコーダーなどを製品化している。2017年6月には、日本の拠点として「Nauto Japan GK」の設立も発表している。

2017年7月、シリーズBラウンドでSVFやToyota AI Venturesなどから総額1億5900万ドル(約165億円)を調達している。

■NVIDIA(米国/売却済み)

半導体大手NVIDIAへの出資は、SVFによる投資の代表格といえる。ソフトバンクグループが取得した後SVFへ移管した模様で、ファンドの資金調達のクローズの際にエヌビディアの株式を所有していることを発表している。投資額は明らかにされていないものの、一部報道による約3000億円相当という。

2019年2月に発表された2018年度第3四半期決算説明会では、NVIDIA株をすべて売却したことを表明。2018年11月にエヌビディアが発表した第4四半期(2018年11月~2019年1月)見通しなどを背景に同社株は急落しており、ソフトバンクグループの連結営業利益へのマイナス影響が心配されたが、価格下落をヘッジするカラー取引により、普通出資していた807億円を3624億円で回収する結果となった。

【参考】エヌビディアの戦略については「エヌビディア(NVIDIA)の自動運転戦略まとめ 半導体開発や提携の状況は?」も参照。

■Nuro(米国)

自動運転車両を用いた無人宅配事業の開発を進める有力スタートアップのNuro(ニューロ)。2017年の創業からわずか1年後の2018年に米スーパー大手のクローガーと協力し、配送用自動運転車「R1」を活用した無人配達プロジェクトに着手することを発表している。

2019年2月にSVFから9.4億ドル(約104億円)の資金調達を行い、同年6月にはR1を改良した「R2」を使用し、ビザ宅配大手の米ドミノ・ピザと自動運転車両を使ったピザの無人配達事業を開始することも発表している。

■Petuum(米国)

AI開発を手掛ける米スタートアップで、カーネギーメロン大学でコンピューター科学・機械学習の教授を務めるDr. Eric Xing氏らが2016年に設立した。

同社のAI技術は自動運転をはじめセキュリティや品質管理、医療診断など広範な応用が可能で、2017年10月にシリーズBラウンドで9300万ドル(約10億円)をソフトバンクグループなどから調達したと発表している。

■Rappi(コロンビア)

中南米で宅配アプリサービスを手掛けるRappiが2019年4月、SVFなどから10億ドル(約1100億円)を調達することが発表された。

今後、ソフトバンクグループが2019年3月に発表した、中南米市場に特化した50億ドル(約5500億円)規模のファンド「ソフトバンク・ラテンアメリカ・ファンド(仮称。発表当初はソフトバンク・イノベーション・ファンド)」へ出資元を切り替える予定という。

■Uber(米国)

米配車サービス大手のウーバーをめぐる出資交渉は2017年に始まった。ソフトバンクグループをはじめとした投資家集団とウーバーや主要投資家らとの交渉が明らかにされ、長期折衝の末約80億ドル(約9600億円)の出資が決まり、2018年1月に株式取得が完了した。

同社の株式上場を間近に控えた2019年4月には、トヨタ自動車とデンソー、SVFが、米ウーバーテクノロジーズの自動運転開発部門「Advanced Technologies Group(ATG)」を基にした新会社に計10億ドル(約1120億円)の出資を行うと発表した。トヨタとデンソーは6億6700万ドル(約750億円)を、SVFは3億3300万ドル(約370億円)を出資する。

【参考】ウーバーへの出資については「トヨタやソフトバンク、米ウーバーの自動運転部門に1120億円出資」も参照。

■Zume Pizza(米国)

ロボットを活用した宅配ピザ事業を手掛けるZume Pizzaは2018年11月、資金調達シリーズCラウンドでSVFから3億7500万ドル(約400億円)調達したことを発表した。

同社の技術は自動運転ではなく、ロボット技術により調理過程を自動化するもので、配送中のトラック内で調理を可能にする特許を取得しているという。将来、自動運転宅配ロボなどと組み合わせることで可能性が大きく広がることが予想される。

■【まとめ】東南アジアや中南米への投資加速 2号ファンドにも要注目

出資先は非常に広範に及ぶが、自動運転に関連した企業はやはり多い。世界の有力配車サービス企業を網羅しているほか、東南アジアや中南米への投資も加速しており、将来性豊かなスタートアップの発掘はさらに進みそうだ。

投資事業は世界経済全体の動向にも大きく左右されがちだが、ベンチャーキャピタルはスタートアップの成長に欠かせない大きな存在であり、またソフトバンクグループは自社をはじめ出資先同士の連携を図った事業展開なども見据えている。

2号ファンドを含め、今後も動向を注視していきたい。







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