自動運転トラック、中国のスタートアップPlus.aiの驚異の実力

2021年に量産化見込み、中国では国家認証も取得



出典:Plusプレスリリース

自動運転タクシーや自動運転バスに続き、自動運転トラックの実用化に向けた動きが急加速している。海外では、中国系スタートアップのPlus.ai(智加科技)が4億2,000万ドル(約460億円)の資金調達を実施し、2021年中に量産化を始める見込みという。

自動運転トラックの開発領域では、続々と新参組が頭角を現している。この記事では、Plus.aiにスポットを当て、自動運転トラック開発企業の動向に迫っていく。







■アメリカで自動運転トラックのスタートアップがまた台頭
米中で自動運転の実用化目指す

Plus.aiは2016年設立の中国系スタートアップで、米シリコンバレーに本社、中国に研究開発拠点をそれぞれ設けて自動運転技術の開発を進めている。

2017年にカリフォルニア州車両管理局(DMV)から自動運転車の公道走行ライセンスを取得し、実証を本格化させた。世界最大級の技術見本市「CES 2019」では、レベル4技術を搭載した「International LTシリーズ」のトラックを展示したほか、ラスベガスのトラックルートで走行デモンストレーションを実施している。

また、ミネソタ州運輸局と提携し、雪を含むさまざまな気象条件下における実証や、カリフォルニア州テュレアからペンシルバニア州クエーカータウンまでの2,800マイル(約4,500キロ)に及ぶ輸送路を、セーフティドライバー同乗のもとレベル4で走行する商用貨物輸送を3日以内に完了したことなども発表している。

2020年1月には安全性テストプログラムを発表し、同年中に自動運転実証が可能な米国のすべての州をカバーするロードマップを示した。テストプログラムを通じて自動運転システムの商用展開の準備状況を測定する新たな指標も開発するとしている。

なお、同社は2019年末までにアリゾナやカリフォルニアなど17州で実証を行っている。自動運転技術の早期社会実装に向け、公道実証を加速していく方針のようだ。

AmazonやBlackBerry、NVIDIAを次々と採用

量産化に向けた動きも急加速している。2020年10月に自動運転システムの大量生産に備え米Amazon傘下のAmazon Web Services(AWS)を優先クラウドプロバイダーとして採用することを発表したことを皮切りに、同年11月にはカナダのBlackBerryが開発したOS「BlackBerry QNX」の活用、2021年1月には車載LiDARにOuster製品の採用、同年3月には自動運転システムへの米NVIDIAの「NVIDIA DRIVEOrin システムオンチップ(SoC)」の搭載をそれぞれ発表するなど、システム面の構成も一気に固めている印象だ。

資金面では、2021年2月に2億ドル(約220億円)の資金調達を完了したと発表した。香港の投資銀行や中国の自動車部品サプライヤーWanxiangなどの主導のもと、上海汽車集団の投資部門やトラック輸送プラットフォームを展開するフルトラックアライアンス(FTA)なども参加している。同年3月には、早くも2億2,000万ドル(約240億円)の追加投資も発表されている。

中国では国家認証取得、FAWと量産化へ

一方、中国ではFAW(一汽グループ)の大型トラックメーカーFAW Jiefangとパートナーシップを結んでいる。2019年に合弁事業を設立し、レベル4大型トラックを今後3~5年以内に、またレベル4テクノロジーを生かした量産型レベル2トラックを発売することなどを発表している。

2020年11月には、自動運転トラックとして中国で初めて「FAW J7+」が国家認証試験に合格したと発表した。量産化・実用化に向けた道が大きく開けた格好だ。最新の発表では、2021年上半期にFAW J7+の量産を開始し2022年に出荷する予定で、すでに1万台以上の受注があるという。

このほか、2021年には欧州でもパイロットプログラムを開始する予定としている。

Plusの自動運転システム「PlusDrive」

同社の自動運転システム「PlusDrive」は、既存のトラックへのインストールや新規開発車両へのオプション装備など、さまざまなプラットフォームに柔軟に対応できることが特徴だ。

マルチモーダルセンサーをはじめ、オドメトリやVisualSLAM、PointCloudベースのローカリゼーションなどの補完的なモデルとメカニズムが冗長性を発揮し、ソフトウェアやセンサー、ハードウェアに障害が発生した場合でも、安全に車両を制御可能という。

業界で採用広がるNVIDIAプラットフォーム

Plusが採用を発表したNVIDIA DRIVEOrinは、前世代のシステムオンチップの約8倍のパフォーマンスを発揮し、自動運転トラックで同時に実行される多数のアプリケーションとディープニューラルネットワークを処理するよう設計されている。

2019年末の発表以来、自動運転トラックを開発する同業他社においてもNVIDIA DRIVEOrinを採用する動きは広がっている。自動運転の早期実現を陰で支える立役者として、業界における存在感をいっそう高めている印象だ。

■すでに米国では複数の企業が自動運転トラックに注力

米国では、自動運転タクシーの実用化で先行するWaymoをはじめ、多くの企業が自動運転トラックの開発に力を注いでいる。

Waymoやテスラなど有力企業が参入

Waymoは2020年1月、テキサス州とニューメキシコ州で長距離トラック向けのマッピングを開始したと発表した。同年10月には独Daimler Trucksとパートナーシップを結び、ダイムラーのトラックにWaymoの自動運転システムを提供・搭載を図っていく方針を発表した。

EV(電気自動車)大手のテスラも開発を進めている。まず2021年にEVトレーラーを市場化し、乗用車以外にも事業領域を拡大していく方針だ。

アメリカのスタートアップ勢にも注目

スタートアップ勢では、Uber ATGを買収しトヨタなどと提携を結ぶAurora Innovationも有力だ。近年は自動運転タクシー関連の話題が目立つが、もともと自動運転トラックの開発に力を入れており、2021年1月には大型トラックメーカーの米Paccarと自動運転大型トラックの開発に向け提携すると発表している。

2018年創業のKodiak Roboticsは、高速道路で動作する自動運転システムの開発を進めており、現在テキサス州で商用実証を進めている。2017年創業のGatikは、2020年にカナダのLoblaws、米Walmartと相次いで小売り大手と提携し、自動運転車による商品配送に取り組んでいる。

2016年創業のEmbark Trucksは2018年に自動運転による米大陸横断に成功し、高速道路に特化した自動運転システムの開発を進めている。

■中国系スタートアップではTuSimpleやInceptioも

中国系スタートアップでは、2015年創業のTuSimpleがアリゾナ州を起点にマッピングを進めて自動運転網を拡大していく方針を打ち出しており、2024年までに米国全体を網羅する予定としている。このほか、2018年設立のInceptio Technologyもシリコンバレーに開発拠点を設けているようだ。

短~中距離を担う小型トラックや、大陸を横断するような長距離トラックなど開発タイプはさまざまだが、今後も新たな開発プレイヤーが最前線に名乗りを上げてくる可能性が高い。自動運転タクシーなどと同様、自動運転トラックも群雄割拠の時代を迎えつつあるようだ。

■日本でも自動運転トラックの実用化に向けた動きが進む

日本国内では、ドライバー不足に対応する革新的効率的な物流サービスの実現に向け、高速道路における隊列走行と自動運転レベル4の実用化を見据えた開発が進められている。

官民ITS構想・ロードマップ2020では、隊列走行の市場化期待時期について、レベル3に相当する後続車有人が2021年、レベル4に相当する後続車無人が2022年度以降と目標を定めている。

高速道路におけるレベル4は2025年以降としており、乗用車におけるレベル4の運用状況を見てから導入を進めていく方針だ。

トラックメーカー勢の取り組みでは、いすゞが2020年10月にスウェーデンのボルボ・グループと長期戦略的提携を交わし、同グループ傘下のUDトラックスの事業を2021年4月までに取得した。また、自動運転関連では日野と高度運転支援技術やITS技術の共同開発を進めるなど、協調路線を歩んでいる。三菱ふそうを含め、まずは隊列走行技術の確立に注力している段階だ。

このほか、東京大学発ベンチャーのTRUST SMITHが2020年11月、閉鎖空間におけるトレーラーの自動運転の研究開発を開始すると発表している。

■【まとめ】スタートアップが強みを発揮 競争激化で待ったなしの状況

日本では官民共同で協調領域の開発を進めている印象で、その成果は着実に積み上げられている。一方、米国では実用実証の段階に入っており、まもなく量産化を迎える段階まで達している。

自動運転タクシー同様スタートアップが強みを発揮しており、開発競争は激化の一途をたどっている。実用化に向け待ったなしのスタンスで各社が開発に臨んでいる状況だ。

【参考】NVIDIAの取り組みについては「世界で自動運転トラックの開発・実証加速!「黒子」はNVIDIA」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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