Pepperに続くロボティクス事業の全貌(ソフトバンク×自動運転・MaaS 特集)

WhizやServi、RICEがロボット時代を構築



ロボティクス事業に力を入れるソフトバンクグループ。「ソフトバンク×ロボット」と問われると、ヒト型ロボット「Pepper(ペッパー)」をイメージする人が多いものと思われるが、現在は配送や搬送、清掃など各種サービス用途に向けたロボットの展開にも本腰を入れており、新たなライフスタイルや価値創出に向けロボティクス技術の社会実装を推進している印象だ。







この記事では、同グループの中でロボティクス事業を手掛けるソフトバンクロボティクスとアスラテックの2社にスポットを当て、各社の取り組みを解説していく。

■ソフトバンクロボティクス
Pepperから移動ロボットへ

ソフトバンクロボティクスは2014年、ソフトバンクモバイル(現ソフトバンク)からロボット事業を譲り受ける形で事業を開始した。ヒューマノイドロボットやサービスロボットの開発・販売・メンテナンスサービスの提供を主な事業に据えており、設立からしばらくは感情認識パーソナルロボット「Pepper」の開発と普及に注力するなど、さまざまな業務・業態へのロボット技術の導入を推進している。

2017年11月、新たな取り組みに関する記者発表を行い、ロボットの進化について「2015年から顔、2017年から脚、その後に手」――といった具合に機能やタスクが進化していくと前置きし、まず「脚=移動」が可能なロボット事業への進出を発表した。

「脚=移動を伴う仕事」として清掃、警備、配膳、倉庫、配送を挙げ、第一弾として業務用清掃ロボット事業への参入を表明した。導入するロボットは、SoftBank Vision Fund(SVF)が同年投資した米Brainの自動運転技術「BrainOS」を搭載した搭乗式スクラバー(床洗浄機)で、事前に手動運転で対象エリアをマッピングすることで清掃ルートを記憶し、複数のセンサーで人や障害物などを避けながら自動運転する機能を備えている。

この「BrainOS」を搭載した自動運転清掃を利用するサービスは「AI清掃PRO」と名付けられ、翌2018年には、第2弾となるバキューム清掃ロボット「Whiz(ウィズ)」も発表されている。吸塵率を向上させた最新の「Whiz i」は、全幅470×全長480×全高661ミリの小型タイプで、最大3.6時間連続稼働できる。1時間当たり約500平方メートルを清掃することができるという。

新型コロナウイルスの流行が始まった2020年には、医療施設など生活インフラとされる6業種を対象に、Whizと科学的な清掃方法の確立をサポートする「施設清潔度診断サービス」の無償提供を開始した。Whizの利用で床面の新型コロナウイルス量が削減できることも第三者機関の調査で実証されるなど有効性が評価され、2020年6月末には累計1万台を突破し、業務用の自動運転清掃ロボット販売数において世界シェアナンバー1を獲得したことも発表している。

配膳・運搬ロボット「Servi」の取り扱いもスタート

2020年9月には、新たに配膳・運搬ロボット「Servi(サービィ)」の販売を2021年に開始すると発表した。Serviは、ソフトバンクグループが資金調達Aラウンドを主導した米Bear Robotics製で、3DカメラやLiDARなど各種センサーを搭載し、高さ4センチの障害物も検知するなど、前方に死角のない安全かつスムーズな移動を行う。自動運転はSLAM技術によって実現しており、柔軟に最適なルートを導き出して走行する。

サイズは幅46×奥行486×全高1046ミリで、幅60センチの狭い通路も通り抜けることができる。料理などを載せるトレーは3段備えており、最大30キロまで積載可能。時速約2キロで最大12時間ほど稼働することができる。

2021年2月の販売開始時には、すでにファミリーレストランなどの飲食店を中心に約100ブランドへの導入が決定しているという。ウィズコロナ、そしてアフターコロナを見据えた業務の効率化に向け、注目度はまだまだ高まりそうだ。

合弁アイリスロボティクス設立

ソフトバンクロボティクスグループと生活用品の開発・販売などを手掛けるアイリスオーヤマは2021年2月、法人向けサービス・ロボット分野での市場創造を目的に合弁「アイリスロボティクス」を設立した。

Whiz iやServiのアイリスエディションを製品化したほか、サービス・ロボットによる業務変革ソリューションの提案やサービス・ロボットの新商品開発などを進めていく方針だ。

【参考】アイリスロボティクスについては「清掃・配膳の自律走行サービスロボットで勝負!アイリスロボティクスが設立」も参照。

■アスラテック
遠隔操作をはじめとしたロボット制御技術を開発

アスラテックは、ソフトバンクロボティクスより一足早い2013年、ロボット制御システムの開発やロボット開発支援、ロボットコンサルティング事業を目的に設立された。

汎用性の高いロボット制御ソフトウェア「V-Sido OS(ブシドー・オーエス)」を主力に事業展開を進め、インターネット越しにPepperを遠隔操作できる「VRcon for Pepper」や、ロボットや装置をインターネット越しに遠隔制御できるコントローラ「V-Sido WebConnect」など数々のプロダクトを扱っている。

遠隔制御技術はさまざまな分野へ応用可能で、2017年には建設機械を遠隔操縦できる人型ロボット「DOKA ROBO 3(ドカロボ スリー)」の開発を発表している。

油圧ショベルなどの建設機械の運転席に設置したDOKA ROBO 3をオペレーターが遠隔操作することで、ロボットを介した建設機械の操縦を可能にしている。建機を改造することなく遠隔操作する技術だ。

2018年には、ソフトバンクと共同で5Gを活用しロボットを遠隔操作する実証実験を開始したほか、遠隔ロボットコントローラー「V-Sido WebConnect」を活用し、中嶋製作所の畜舎洗浄ロボット「クレバークリーナー」向けのロボット遠隔操作システムの開発や、無人搬送車向けの遠隔操縦ソリューションを開発するなど、応用の幅を広げている。

無人搬送車向けのソリューションは、仏Effidenceが開発した無人搬送車「EffiBOT」や、アスラテックが検証用に開発した試作無人搬送台車など、複数の無人搬送車で動作することを確認しているという。

配送ロボットの国内展開事業に着手

アスラテックは2020年2月、香港のRice Roboticsが開発した屋内向け配送ロボット「RICE(ライス)」の日本国内での展開サポートを開始すると発表した。

障害物回避やエレベーター連携機能などを備えた自動運転可能な配送ロボットで、搭載するLiDARや深度カメラ、超音波センサーなどを利用しSLAM技術を活用して自動走行する。外寸約76×54×50センチ、積載容量27×36×22センチの小型モデルで、ソフトウェアのカスタマイズ機能やフリート管理サービス「RiceCore」なども備えている。

RICEは、JR東日本が2020年12月から高輪ゲートウェイ駅で実施する非接触・非対面ロボットの実証実験に提供され、駅構内施設「Partner Base Takanawa Gateway Station」で軽食や飲み物、小荷物を非接触で利用者に届ける役割を担い、ロボットとエレベーターの自動連携の実現性などを検証した。

2021年2月には、日本郵便が実施する物流分野における配送ロボットの活用に向けた実証にRICE5台が提供された。セキュリティーマンションなどの屋内ラストワンマイル配送におけるロボットの可能性を検証するもので、複数台の配送ロボットとエレベーター、運行管理システムを連携させた荷物配送は日本初の試みという。

マンション入り口まで配送された荷物をRICEが受け取り、マンション内を自動走行して受取人の玄関まで届ける。玄関に到着すると受取人に到着の連絡とパスワードが通知され、RICEのマルチディスプレイにパスワードを入力することで荷物を取り出すことができる。不在時は荷物を保持したままマンション内の待機場所へ戻り、受取人から依頼があったタイミングで再配達を行うという。

RICEはこのほか、ソフトバンクグループの本社ビルにも配備され、ビル内のコンビニから社員らに商品を配送する取り組みなどが進められている。

■【まとめ】社内起業制度がソフトバンクグループの強みに

ソフトバンクが創業30周年を迎えた2010年に実施した、30年後のソフトバンクの姿を考える「新30年ビジョンコンテスト」でロボットをテーマに据えたアイデアが優勝し、これを機にロボット関連の研究開発が本格化し、ソフトバンクロボティクスやアスラテックの設立につながったようだ。

ソフトバンクグループは投資を通じて世界のスタートアップの成長を促進しているが、グループ内でも新規事業に向けた優秀なアイデアを汲み取り、事業化を積極的に促進している。社内起業制度が機能しているのだ。自動運転分野におけるBOLDLY(旧SBドライブ)を含め、ロボティクス事業もその成果と言えるだろう。

そして投資先の技術と自社グループの事業を結び付け、新たなサービス・ビジネスを積極展開していく。ロボティクス分野、自動運転分野ともに加速度的な成長が見込まれる分野であり、今後さらなる躍進を遂げる可能性が高い。引き続き各社の動向に注目だ。

>> 特集目次

>> 主力の通信・投資事業で変革!

>> MaaS実証加速、自治体との連携も

>> ビジョンファンド、注目の投資先は!?

>> 莫大な投資利益の可能性!自動搬送宅配ロボットを開発するNuroの全貌

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>> 自動運転バスの実証国内最多!BOLDLYの全貌

>> Pepperに続くロボティクス事業の全貌

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記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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