BlackBerry、車載データによるイノベーション促進!新ファンドの狙いとは?

車載データの共有・オープン化に弾みをつけるIVY



出典:BlackBerry IVY Innovation Fund公式サイト

自動運転分野で躍進を続けるカナダのBlackBerryは、車載データプラットフォーム「BlackBerry IVY」のエコシステム拡大を目指し「BlackBerry IVY Innovation Fund」の設立を発表した。

コネクテッド化が進む自動車業界においては、ビッグデータとなる各種データの有効活用が求められているが、IVYはこのデータ活用シーンを促進するソリューションとして高い期待が寄せられている。







この記事では、IVYの概要とともに、BlackBerryによるファンド設立の狙いについて解説していく。

■BlackBerry IVYとは?

BlackBerry IVY(以下IVY)は、クラウド事業を手掛ける米AmazonのAmazon Web Services(AWS)とBlackBerryが共同開発を進めているクラウド接続型の高拡張性ソフトウェア・プラットフォームだ。多岐に渡る車載センサーのデータ読み取りを容易にし、クラウドデータと合わせた利活用を可能にする。

近年の自動車には、多数のサプライヤーから供給された数千個もの部品が使用されており、それぞれ独自仕様のハードウェア・ソフトウェアコンポーネントを組み合わせて構築されている。こうしたコンポーネントに含まれる車載センサーも多様化が進み、独自の専門的な形式でデータを生成しているため、データの取り扱いには高度な専門的スキルが必要とされる。

車載サブシステムからのデータアクセスも難しく、革新的な最新ソリューションの開発や市場投入を遅らせる一因になっているという。

IVYは、車載データを正規化するBlackBerry QNXの各種機能と、IoTや機械学習向けの機能を含むAWSの広範なサービス・ポートフォリオを基礎としており、車載データに機械学習を導入し、予測的な見通しと推論を導き出すことでこうした課題を解決するとしている。

IVYを導入することで、自動車メーカーらは車載データの把握が容易になり、ユーザーのアクセス権をコントロールしつつ、エッジコンピューティング機能によってデータの迅速・効率的な処理を最適化することが可能になる。

■BlackBerry IVY Innovation Fundとは?

一方でBlackBerry IVY Innovation Fundは、IVYのエコシステム拡大を目的としたスタートアップ育成プログラムだ。IVYから得られる豊富なインサイトを有効活用できるスタートアップらの育成を図り、業界のイノベーションを促進することを目指している。

スタートアップに対する投資も行い、当初は最大5,000万ドル(約55億円)の資金で投資先を選定していくという。投資を受けた企業は、IVYのAIから得られるインサイトとBlackBerryおよびAWSのサポートを活用することも可能となる。

また、スタートアップ向けのクラウドリソース「AWS Activate」を通じて、最大10万ドル(約1,100万円)分のAWSクレジットを利用できるほか、スタートアップ企業向けのセルフサービス・プラットフォーム「Activate Console」を通じて、知見や技術ガイダンスなどビジネスの構築に役立つ情報を得られるという。

■IVYがビッグデータの有効活用を促進

BlackBerryは、コネクテッドカーから得ることができるさまざまな種類の豊富なデータを、さまざまな立場の企業が有効活用できるよう、IVYエコシステムの発展に取り組んでいる。今回のファンド設立もこうした取り組みの一環と言える。

ただ、こうしたデータは各車両固有のデータであり、基本的に自動車メーカーと車両のオーナーが保有権を握る。テレマティクス保険などでデータの一部を提供する動きがあるものの、データによっては個人情報が含まれていることもあるため、データの提供に対して慎重姿勢を崩さないメーカーもある。

また、各種データが内包しているであろう価値の高さを測りきれないため、気軽にデータを提供できない空気も感じられる。こうした状況が、データ分析・活用を専門とする事業者らの参入を阻む要因となっている。

IVYはこうした状況に一石を投じる。コネクテッドカー向けのソリューションとして導入が進めば、セキュアな環境で個人情報を保護しながらデータ共有を推進することが可能になる。自動車から吸い上げられたさまざまなデータが安全に開放され、それを必要とする第三者が有効活用する道が開ける。

さらに、イノベーションに必要不可欠となる有能スタートアップの新規参入を促す仕組みとして「ファンド」を設立することで、データの開放・共有・利活用の一連の流れを効果的に形成し、ビッグデータ分野における新たなビジネスシーンの創出につなげることが可能になる。

将来のモビリティビジネスにおいて、こうしたデータの有効活用がイノベーションのカギを握るといっても過言ではない。IVY、そしてIVY Innovation Fundは、この領域の変革を促進する実に巧妙な仕掛けとなっているのだ。

■【まとめ】モビリティデータ活用シーンをIVYが席巻する?

モビリティ業界では、日々大量のデータが生成されている。今後、自動車のコネクテッド化や自動運転化が進めば、そのデータ量は飛躍的に規模を増していくことは想像に難くない。そして、そのデータが内包する価値をどのように見極め、活用していくかが将来のイノベーションの決め手となるのだ。

自動車メーカーによる車載データの提供は、ホンダの「Honda Drive Data Service」のように今後拡大していくことが予想されるが、こうした状況を大きく促進するソリューションとしてIVYが機能し、ファンドが新たなプレイヤーの誕生を促進する。そして、その成果は新たなモビリティサービスとして社会に還元されていく。

モビリティ関連のビッグデータビジネスに変革をもたらすIVY。今後、業界における存在感を飛躍的に高めていくことは間違いなさそうだ。

【参考】関連記事としては「Motional、自動運転車にBlackBerryの開発ソリューションを初採用」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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