MaaS実証加速、自治体との連携も(ソフトバンク×自動運転・MaaS 特集)

海外では主要モビリティサービス事業者に積極出資



出典:トヨタプレスリリース

自動運転をはじめとする次世代技術に注目し、モビリティ分野への進出を積極的に図っているソフトバンクグループ。モビリティサービスの実装や出資などを通じて同分野における影響力を高めている印象だ。

モビリティサービス関連では、世界的潮流となっているMaaS(Mobility as a Service)に関連した取り組みも盛んで、グループとして、またトヨタと共同設立した「MONET Technologies(モネ・テクノロジーズ)」を通じてさまざまな事業を展開している。







この記事では、ソフトバンクグループにおけるMaaS関連の取り組みを解説していく。

■MONET Technologiesによるアプローチ
MaaS向けソリューション続々と発表

ソフトバンク関連で最もMaaSに力を入れているのは、同社がトヨタと共同で設立した「MONET Technologies」だ。モネは、オンデマンドモビリティサービスやデータ解析サービス、Autono-MaaSを事業領域に据え、2019年の事業開始以来、モビリティの新たな力を引き出しさまざまな社会課題の解決や新たな価値創出に向け、活動を行っている。

2020年4月には、企業や自治体のMaaS実現を支援するデータ基盤やAPIなどを備えた「MONETプラットフォーム」の機能を拡充し、本格運用を開始している。

同年8月には、MaaS向けの架装車両やキットを提供する「MONET MaaSコンバージョン」の第1弾として、車内のレイアウトを柔軟に変更してさまざまな用途に活用可能な「マルチタスク車両」と、乗客のパーソナルスペースの確保と換気に配慮した「パーソナルベンチレーションキット」の開発を発表した。

同年9月には、MaaSのシステム開発に活用できる天気や観光、地図情報といったさまざまなデータやオンデマンドバスのシステム、決済システムなどのAPIを提供する「MONETマーケットプレイス」を正式にオープンするなど、自治体や企業向けのソリューションも続々と発表している。

【参考】MONETマーケットプレイスについては「MONETマーケットプレイスが正式オープン!MaaS向けに多彩なAPIを提供」も参照。

自治体との連携も活発に

モネは2019年2月の事業開始時、自動運転社会の実現を見据え次世代のオンデマンドモビリティサービスの提供に向け、以下の計17自治体と連携を開始することを発表した。

・北海道安平町
・秋田県仙北市
・神奈川県横浜市
・神奈川県鎌倉市
・石川県加賀市
・長野県伊那市
・岐阜県岐阜市
・静岡県藤枝市
・愛知県名古屋市
・愛知県豊田市
・滋賀県大津市
・兵庫県川西市
・広島県福山市
・広島県府中市
・広島県東広島市
・福岡県嘉麻市
・熊本県菊池市

その後も、北海道、福島県いわき市、千葉県千葉市、静岡県湖西市、同浜松市、愛知県、愛知県みよし市、福井県越前市、大阪府、香川県三豊市、同琴平町と連携協定を結んだほか、福島県国見町や群馬県富岡市のように事業ベースで協力する例も出ており、連携は広がりを見せている。

なお、千葉市やいわき市、鎌倉市、愛知県、大阪府、大津市など、モネとは別にソフトバンクも連携協定を結んでいる事例もある。

医療×MaaSなど実証事例も続々

官民連携の取り組みでは、すでに実用化を見据えた実証や、モネのプラットフォームを活用する事例が続発している。横浜市、豊田市、福山市は2018年度中にオンデマンドバスの実証実験を開始したほか、安平町ではモネの配車プラットフォームを活用したデマンドバスを運行している。

伊那市では、フィリップス・ジャパンとの協業のもと医療機器などを搭載した「ヘルスケアモビリティ」を活用した医療×MaaSに取り組んでいる。医療関係では、浜松市も移動診療車を活用したオンライン診療を実証する「春野医療MaaSプロジェクト」を実施している。

湖西市では、企業のシャトルバスを市民の移動手段として活用するデマンド型の有償移動サービスを実証する「湖西市企業シャトルBaaS事業」に協力している。なお、BaaSはBusとMaaSを掛け合わせた湖西市による造語だ。

いわき市では「いわき版MaaS推進事業」に向け協定を結び、グリーンスローモビリティを活用した次世代交通システムの実証などに協力している。

富岡市では市内約300カ所に停留所を設置し、2021年1月からデマンド型乗り合いタクシーの運行を開始している。

いずれも地域の実情や課題に合わせた形でモビリティの活用に取り組んでおり、今後もさまざまな形の実証が続きそうだ。

【参考】MONETと自治体との連携については「日本中の街のMaaS化支援!?MONET、自治体との連携加速 福島県いわき市とも」も参照。

自動運転車を活用した取り組みもスタート

東広島市では、広島大学やイズミとともにスーパーマーケットなどと連携した小売りMaaSを自動運転車で実現する「Autono-MaaS」の実用化に向けたプロジェクトが2021年2月にスタートしている。

1台のオンデマンドバスでスーパーへの送迎と商品の宅配を同時に行う貨客混載の実証や、広島大学の東広島キャンパス内で米May Mobilityの自動運転シャトルを活用する実証、電話注文した商品を店頭に設置したロッカーなどで受け取れるサービス「BOPIS(Buy Online, Pick-up In Store)」の実証、自動運転シャトルを活用した小売りMaaSの実証などを予定している。

【参考】東広島市における取り組みについては「「Autono-MaaS」で小売プロジェクト始動!MONET、自動運転車で商品配送」も参照。

MONETコンソーシアムには650社超が参画

モビリティイノベーションを実現する「なかまづくり」の一環として、業界・業種の垣根を越え企業間連携を推進する「MONETコンソーシアム」の活動も、徐々に本格化している。コンソーシアムには2021年3月時点で650社超が参画している。

ケーススタディとしては、電通と東京海洋大学が進める「自動運転型水陸連携マルチモーダルMaaS」における取り組みや、東急不動産やJR東日本などと取り組む「MaaSの社会実装モデル構築に向けた実証実験in竹芝」などが挙げられる。

水陸連携マルチモーダルMaaSの取り組みでは、ラストワンマイル移動を含む陸上移動手段と水上交通手段を組み合わせた実証実験を2019年9月に実施した。モネが陸上交通の配車プラットフォームを提供したほか、東京海洋大が自動運航船「らいちょう」、電通が水上交通の「船着場利用管理システムTriangle Connect」と「移動体向け情報配信システム」をそれぞれ提供し、水陸連携マルチモーダルの可能性を探っている。

また、竹芝の取り組みは東京都が公募した事業で、竹芝エリア内の勤務者向けオンデマンドモビリティサービスや、通勤者や観光客向けのマルチモーダルサービスの可能性について、2019年12月から2020年1月にかけて検証している。

MONETプラットフォームの機能が徐々に拡充

コンソーシアム参画企業は、モビリティサービスを通じた個別の連携を図ることが可能なほか、モネのプラットフォームを通じてさまざまなオリジナルMaaSへの自社サービス実装の道も拓ける。

「MONETマーケットプレイス」では、モネが提供するデマンド交通サービス開発キットやチケット、決済APIをはじめ、本人確認サービス(サイバートラスト)や動態管理API(住友電工)、観光やイベントAPI(JTBパブリッシング)、ルート計算API(オプティマインド)などがすでに提供されており、今後も拡充していく見込みだ。

MaaS事業者は、このマーケットプレイスからAPIを入手し、オリジナルのサービスを提供することができる。現在はモデルケース作りの段階で、今後MaaSプラットフォームの機能やデータの充実に合わせ、積極的に普及を図っていく構えだ。

■ソフトバンクグループによるアプローチ

ソフトバンクグループとしては、ソフトバンクがICT(情報通信技術)を生かし官民連携の取り組みを進めるほか、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)などを通じた出資でモビリティサービスの発展に寄与している。

配車サービス関連では、米Uberや中国DiDi Chuxing(滴滴出行)、シンガポールのGrab、インドのOlaといった世界大手を網羅しているほか、貨物トラックのマッチングサービスを手掛ける中国のFull Truck AllianceやブラジルのLoggi Technology、カーシェア事業を手掛ける米Getaround、電動モビリティシェアサービスの独Tier Mobility、モビリティサービスアプリと旅行予約プラットフォームの相互接続を手掛ける英Splyt Groupなど、多彩なモビリティサービス事業者に出資を行っている。

自動運転関連でも米GM Cruiseや米Nuro、米Aurora Innovationといった有力企業に出資しており、近い将来自動運転技術を活用したモビリティサービスを実現する可能性が高い。

個々のモビリティサービスプラットフォーマーが多いが、いずれもMaaSを構成し得る有力なサービスだ。MaaS系サービスは世界各地で乱立しているが、将来、統廃合などを経てよりスマートなものへと進化していくことが予想される。

その際、多くの場面でイニシアチブを発揮しながら各社の技術やサービスを連携させるパイプ役として機能し、相乗効果を生み出すことができる位置にいるのがソフトバンクグループだ。

そういった意味では、世界のMaaSに影響を及ぼすことができる有力企業の1社であり、今後、フィンランドのMaaS GlobalをはじめとしたMaaSプラットフォーマーとの連携や駆け引きなども始まるかもしれない。世界におけるMaaSの動向とソフトバンクグループの動向に要注目だ。

■【まとめ】新たな成功事例でMaaS革命を

国内ではモネを通じて、海外では投資を通じてMaaS分野で影響力を発揮するとともに、知見を高めながらサービス実装を進めている印象だ。

MaaS分野においては、MaaSアプリ「Whim」を展開するMaaS Globalの取り組みが模範とされる場面が多いが、正解は1つとは限らない。研究開発はまだ始まったばかりで、多様な進化を遂げる可能性が高い分野だ。

今後、ソフトバンクグループが新たな正解を導き出し、新たな成功事例を世に送り出すことに期待を寄せたい。

>> 特集目次

>> 主力の通信・投資事業で変革!

>> MaaS実証加速、自治体との連携も

>> ビジョンファンド、注目の投資先は!?

>> 莫大な投資利益の可能性!自動搬送宅配ロボットを開発するNuroの全貌

>> 強みの「通信」で隊列走行も成功!

>> 自動運転バスの実証国内最多!BOLDLYの全貌

>> Pepperに続くロボティクス事業の全貌

>> 【過去特集】孫正義の事業観(1)「馬鹿な国」発言はポジショントークか

>> 【過去特集】孫正義の事業観(2)「通信+α」事業に巨額投資でシフトへ

>> 【過去特集】孫正義の事業観(3)中国・滴滴出行との記者会見の全貌

>> 【過去特集】孫正義の事業観(4)譲った経営権、米国5Gと孫社長

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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