莫大な投資利益の可能性!自動搬送宅配ロボットを開発するNuroの全貌(ソフトバンク×自動運転・MaaS 特集)

コロナ禍で成長、「R2」も米運輸省からお墨付き



NuroのR2=出典:Nuro公式ブログ

自動運転分野においてさまざまなスタートアップへ投資を行っているソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)。世界の有力企業に積極的に投資を行い、テクノロジーの発展に大きく寄与している。

中でも注目の1社が、車道を走行する配送向け自動運転車の開発を手掛ける米スタートアップのNuro(ニューロ)だ。その技術は実用化域に達しており、近い将来ソフトバンクグループに巨額の利益をもたらす可能性がありそうだ。







この記事ではNuroの概要を解説し、その有望性に迫っていく。

■Nuroの概要:Google出身者が2016年に創業

Nuroは2016年、グーグルで自動運転開発に携わっていたDave Ferguson氏とJiajun Zhu氏(現CEO)が立ち上げたスタートアップで、自動運転技術を活用した無人配送車の開発を進めている。

2018年に開発初号機となる「R1」を活用し、米スーパーマーケット大手のKroger(クローガー)と配送実証に着手したのを皮切りに、パートナー企業を徐々に拡大している。2019年には現行機となるR2を導入した。

R2は2020年2月、米国運輸省(DOT)と米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)から公道走行の認可を取得した。人の乗車を前提としない車両でアクセルなどのペダルやステアリング、ミラーなども備えていない特殊な自動運転車だが、公道走行する上で必要とされる保安基準を満たすとみなされた格好だ。DOTによる自動運転車の承認はR2が初という。

一方、カリフォルニア州では同年4月に当局から無人による公道試験走行の許可を受けた。完全無人の走行許可は同州で2番目という。同年12月には同州初となる自動運転車による商用利用認可も受けており、2021年はいっそうの飛躍に高い期待が寄せられている。

【参考】R2の商用利用許可については「自動運転車での商用デリバリー、米Nuroがカリフォルニアで認可を初取得!」も参照。

■Nuroの資金調達:SVFから複数回の資金調達

創業後、Nuroは中国と米国で資金調達Aラウンドを実施し、約100億円規模の調達に成功した。

2019年2月には、SVF主導のラウンドで巨額の出資を受け、事業を加速させていく。各メディアによると、SVFから9億4,000万ドル(約1,030億円)の投資を受けたと報じられている。

2020年11月には、5億ドル(約550億円)規模の資金調達Cラウンドを発表している。Fidelity Management&Researchなどの新規組とともに、ここでもSVFが追加出資しているようだ。

スタートアップによる資金調達としては非常に順調で、2019年の資金調達時点で企業価値は27億ドル(約2,900億円)とも言われている。現在はさらに価値が向上しているのは間違いなく、右肩上がりの成長はまだまだ続きそうだ。

■Nuroの自動運転車
オリジナル車両R2が活躍

Nuroの開発や実証では、R2とともにトヨタ・プリウスを改造した自動運転車が用いられている。R1、R2とも小型ながら車道走行を前提とした仕様になっており、技術的には通常の自動運転車と共通する点が多いようだ。

R2は全長約270センチ、車幅約110センチ、高さ約180センチで、高さ以外は軽自動車よりも二回り小さいサイズだ。360度計測を実現するカメラやLiDAR、レーダー、オーディオセンサーなどを備え、安全な走行を実現している。

走行速度は最大25マイル(約40キロ)で、約630リットルの荷室に最大190キロの荷物を積載することが可能だ。航続距離は不明だが、バッテリーは31kWhとなっている。

小型宅配ロボットとR2は競合しない?

現在ラストワンマイル配送を担う自動運転車・ロボットの開発は、歩道走行などを前提とした小型モデルが主流となっている。時速数キロの低速でゆっくり走行するため、安全を担保しやすい。オフィスビルや商業ビル内などで稼働することもできる。

反面、小型ロボットは荷物の積載容量や配送距離などに限界がある。比較的長距離配送の需要が高い人口密度の低いエリアにおける配送では、Nuroタイプの配送車の方が利便性が高いかもしれない。特に米国などでは比較的中長距離輸送の需要が高いエリアが多く、小型ロボットと自動運転配送車の使い分けが将来進んでいく可能性もありそうだ。

サブロボットによるラストワンマイル宅配構想も

Nuroは過去、自動運転配送車に小型ロボットを載せてラストワンマイルを担う仕組みについて特許申請を行っている。車道を走行する自動運転配送車が縁石沿いに停車し、そこからサブロボットが各住宅の敷地内まで走行し、玄関先に荷物を届ける仕組みのようだ。

同様のアイデアは独コンチネンタルも発表しており、自動運転EV(電気自動車)と犬型ロボットを組み合わせた配送コンセプトモデルを技術見本市「CES 2019」で発表している。また、米フォードは2019年、二足歩行の配達ロボットを活用した実証実験を行うことを発表している。

配送ロボットの社会実装初期においては、住宅などの前の道路まで届けるタイプが主流になるものと思われるが、将来的には玄関まで届けるタイプが登場し、サービスを競うのかもしれない。

■Nuroの多様な配送パートナーシップ

Nuroは2018年8月、クローガーとアリゾナ州スコッツデールで自動運転車を活用した食料品配達パイロットをスタートした。開始当初はプリウスを使用し、その後R1を導入している。

配送は有料で5.95ドルの定額料金が必要となるが、同年12月には自動運転配送が1,000回に達したことが発表されている。

配送車両が到着すると利用者のスマートフォンに通知が届き、車両のタッチスクリーンにPINコードを入力することでドアが自動的に開く。荷物を降ろし、「完了」をタップするか立ち去るとドアが閉まる仕様のようだ。

なお、現在はテキサス州ヒューストンでサービスを提供している。新型コロナウイルスの影響でコンタクトレス(非接触)が推奨されているため、タッチスクリーンの代わりに利用者が車両の前で親指を立てると、遠隔監視・操作でドアを開閉する仕組みを採用しているようだ。

2019年6月にはDomino’s(ドミノ・ピザ)、同年12月にはWalmart(ウォルマート)とそれぞれ提携を交わし、ヒューストンで配送パイロットプログラムを開始している。

コロナ禍の2020年5月には薬局チェーン大手のCVS Pharmacyと提携し、処方箋や日用品などの配送を無料で行うパイロットプログラムをヒューストンで開始したほか、カリフォルニア州では患者収容施設における医薬品の非接触配送などにも取り組んでいる。

■自動運転トラックスタートアップのIkeを買収

Nuroは2018年10月、自動運転トラックの開発を手掛けるIke(アイク)とパートナーシップを交わしている。同社はグーグルやUber、アップルなどで自動運転開発経験を持つエンジニアらが立ち上げたスタートアップで、退職後の数カ月間はNuroの事務所内で研究開発を行っていた間柄のようだ。

パートナーシップでは、Nuroが技術提供を行う代わりにIkeの株式を取得している。その後も緊密な関係は続いていたようで、2020年12月にはNuroがIkeを買収すると発表された。

R2タイプの自動運転車と長距離輸送をメインとする自動運転トラックはタイプは異なるものの、ともに物流分野で活躍する自動運転車だ。ミドルマイルやラストワンマイルをそれぞれ担い、協調して新たなロジスティクスを構築していく可能性がありそうだ。

■【まとめ】2021年も「自動運転×宅配」に追い風続く

コロナ禍を契機にコンタクトレス配送に注目が集まっていることに加え、米運輸省やカリフォルニア州から自動運転車両のお墨付きや商用許可を取得するなど、2020年は非常に大きな前進を遂げた1年となった。

資金調達も順調で、2021年も追い風は続きそうだ。サービス提供中のヒューストンに加え、カリフォルニア州でもサービス開始が見込まれるほか、新たなパートナー企業が登場する可能性も高い。同社の動向に改めて注目したい。

>> 特集目次

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記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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