自動運転×小売、配送モデルは「玄関まで」「前の道路まで」「近くの場所まで」の3種類(特集:自動運転が巻き起こす小売革命 最終回)

小売業界におけるラストワンマイルで活躍





出典:フォードプレスリリース

実用化が一部の地域で始まり、開発に熱が入るラストワンマイル向けの配送ロボット。自動運転技術などを搭載し、無人で荷物などを運ぶことができるシステムだ。

この配送ロボットに関し、各社が開発・実証を進めているモデルを見ると、いくつかのタイプに分類できそうだ。そこでこの記事では配送ロボットを3タイプに分類し、それぞれの技術要件などについて調べてみた。







■近くのスポットまで型

各地域の物流・配送ステーションから、あらかじめ設置したスポットまで荷物を届ける仕組み。利用者は、自宅や職場などから最寄りのスポットを選択し、そこで荷物を受け取る。このタイプは大きく2パターン考えられる。

配送ロボットから直接荷物を受け取る

一つは、スポットで配送ロボットから直接荷物を受け取る方法だ。この方法を採用した例として、ZMPがローソンなどの協力のもと慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス内で行った実証実験が挙げられる。

実証実験では、キャンパス内にローソンの仮店舗と配達拠点(スポット)8カ所を設置。利用者は、スマートフォンの専用アプリをダウンロードし、スマートフォン上でローソンの弁当や飲み物、スイーツなどを注文すると、指定した時間に指定したスポットまで同社が開発した配送ロボット「CarriRo Deli」が商品を届ける。

利用者のスマートフォンにはカギとなるQRコードが送信され、これをロボットのカメラにかざすことで、商品が入ったロッカーが開く仕組みだ。

スポットが宅配ロッカー型になっている

もう一つは、スポットが宅配ロッカー型になっているもの。配送ロボットは、スポットに設置された宅配用ロッカーに荷物を入れるとお役御免となり、配送ステーションに戻ることができる。

ロッカーでは、配送ロボットから直接荷物を受け取る場合と同様に、利用者はスマートフォンを活用して鍵を開き、荷物を受け取る仕組みだ。

この配送ステーションからスポットまで自動で輸送するタイプには、自動運転レベル4技術が必要となる。ステーションからスポットまでの公道を、無人の自動運転車、あるいは配送ロボットが走行するためだ。

あらかじめ決まった区域内で一定のルートを走行することが基本となるため、技術的な難易度は低く抑えられるが、公道を走行する以上周囲のクルマや人、自転車、障害物、信号など、あらゆるものに注意を払う必要があるのは言うまでもない。走行速度も、徐行ではなく制限速度を出すことができるスペックが必要となる。

仮に自転車と同等の要件で路側帯や歩道を走行できる仕様もありそうだが、速度は低速で、かつ歩行者らを優先させるシステムが必要となる。

導入段階としては、大規模商業施設内など公道以外の狭い範囲で導入するケースが考えられる。ZMPの実証例のように、広大なキャンパスを持つ大学構内などで、敷地内に設置されたコンビニや飲食店などの商品を特定のスポットまで運ぶシステムであれば、スピードを抑えた走行でリスクヘッジしやすい。

大学構内を活用した取り組みは、ZMPのほか三菱地所と立命館大学、米Robby Technologies(ロビー・テクノロジーズ)とパシフィック大学、米Kiwiとカリフォルニア大学バークレー校など実例が多い。こうした環境で実用を兼ねた実証を重ね、宅配ロッカーと組み合わせたサービスで公道デビューを目指すプロジェクトが今後増加する可能性は高そうだ。

なお、配送ロボットから荷物を受け取る仕組みは、宅配ロッカーなどですでに実用化されているものと基本的には同等だ。

■家の前の道路まで型

「近くのスポットまで型」から発展したシステムが、自宅や会社などの建物の前の道路まで運ぶタイプだ。配送ロボットが自宅前などに到着すると利用者のスマートフォンに通知され、利用者自身が荷物を受け取りに行くシステムとなる。

配送ロボットには、高度な自動運転レベル4技術が必要となる。一定の区域内において、指定されたスポットまで自由にたどり着く必要があるからだ。自動運転タクシーなどと比べると、ほぼ同等のシステム要件となるが、人間を乗車させず、速度をより抑えた走行が可能なため、安全を確保しやすそうだ。

ただし、「近くのスポットまで型」と比べれば、より精度の高い位置情報システムや認識・判断技術などを備えるのはもちろんのこと、万が一迷子になった場合のバックアップ方法なども必要になるかもしれない。

このタイプは、EC大手の米Amazonやスタートアップの米Nuro、すでに実用化を開始している米Starship Technologies、国内ではHakobotなど、多くの企業が開発を進めている、いわば主力のタイプと言えるだろう。

■玄関の前まで型

「前の道路まで型」をさらに進化させた、最終形態といえる配送ロボットが「玄関の前まで型」だ。荷物を載せた配送ロボットが、配送ステーションから自宅の玄関まで届けてくれる。玄関に設置した宅配ボックスと連動すれば、完全無人で荷物の受け渡しが可能になる。

一見すると「前の道路まで型」と大差ないように思われるが、自宅前の道路と玄関の間は、意外とハードルが高いのだ。多くの場合、玄関などに段差があるほか、歩道から玄関までの敷地内は高精度マップでルート化されていないため、カメラなどの認識技術に依存するほか、そこそこ大きな段差に対応する足回りが必要となる。場合によっては、階段を上り下りすることも求められるかもしれない。

こういったモデルの実用化はまだ耳にしていないが、コンセプトモデルはすでに登場している。自動車部品メーカー大手の独コンチネンタルはラストワンマイル向けのコンセプトモデルとして、自動運転EVと犬型ロボットを組み合わせた独創的なモデルをCES 2019で発表した。

同社が開発中の小型バスタイプの無人運転車両「CUbE」に、犬型の配達ロボット「ANYmal」が搭乗した二段階の配送システムで、CUbEが配送ステーションから配送スポットまで荷物を運ぶ。到着後は、ANYmalが荷物を背負ってCUbEから降り、四足歩行で玄関まで運ぶ仕組みだ。

CUbEには複数のANYmalが搭乗しており、配送スポット近辺の複数の家に同時に荷物を届けることができる。

これと類似する研究開発は、米自動車大手のフォードも行っている。同社は2019年6月2日までに、二足歩行の配達ロボットの実証実験を行うことを発表している。

開発は、二足歩行ロボット技術で高い評価を得ている米オレゴン州立大学発のスタートアップAgility Roboticsとともに進められているという。

ANYmal同様、二足歩行ロボットが自動運転配送車両に乗り込み、配送スポットや自宅前などから玄関まで荷物を運ぶ姿を想像すると、まさに人間の代わりをロボットが担うSFチックな光景が頭に浮かぶ。

【参考】関連記事としては「ラストワンマイル向けの物流・配送ロボット10選」も参照。

■【まとめ】「近くのスポットまで型」が有力か

世界各地ではじめに実用化が広がりそうなのは、当然「近くのスポットまで型」だ。国内で設置数を伸ばしている宅配ロッカーステーションをスポットとし、無人でロッカーに荷物を収容する仕組みを開発すれば、宅配で大きな課題となっている再配達問題の解決とともに、配送ロボットを効率的に稼働させることができそうだ。

スターシップ・テクノロジーズが実用化している「前の道路まで型」は、低速走行の小型の車体を利用しているため安全性を確保しやすく、これまで大きな事故はないようだが、航続距離を伸ばすのは難しく、受取人が現れない場合の対応などにも課題を残す。

現実的な目線で実用化を考慮すると、自動運転車が配送スポットまで荷物を運び、宅配ロッカーに荷物を預けるシステムをベースに、課金オプションサービスとして小型の配送ロボットが自宅に設置された宅配ロッカーまで荷物を運ぶ――といったシステムなどの組み合わせが有効かもしれない。

こういったさまざまな手法についても今後研究が進み、利便性と効率性を両立したシステムが開発されるものと思われる。各社の今後の取り組みに引き続き注目したい。

>>【全3回特集・目次】自動運転が巻き起こす小売革命

>>送料が10分の1に…大本命!「自動運転×小売」の衝撃 世界の取り組み状況まとめ(特集:自動運転が巻き起こす小売革命 第1回)

>>「自動運転×小売」に力を注ぐ世界と日本の企業30選 鍵はラストワンマイル(特集:自動運転が巻き起こす小売革命 第2回)

>>自動運転×小売、配送モデルは「玄関まで」「前の道路まで」「近くの場所まで」の3種類(特集:自動運転が巻き起こす小売革命 最終回)

【参考】関連記事としては「ラストワンマイル系の物流ソリューション・サービスまとめ」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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