MaaS実現に必須!オンデマンド交通サービスの提供企業まとめ

自動経路生成システムでサービスが大幅進化





近年、公共交通の維持が難しい過疎地などを中心にデマンド型の移動サービスが注目されている。需要(リクエスト)に応じて運行される乗り合いタクシー・バスが代表例で、バス路線の維持が困難な地域や、タクシー料金の負担が大きくなりがちな地域において存在感を増している。







このオンデマンド型の移動サービスは、各地で開発が進められているMaaSにおいても導入が検討されている。「ドアtoドア」の利便性と公共交通などを組み合わせることで、郊外型や点在型観光地などにおいてより効率的な移動が可能になるのだ。

そこで今回は、オンデマンドモビリティサービスを開発する企業をピックアップし、開発状況や実例などに触れていく。

(※本記事で紹介している企業様以外で、オンデマンド型の交通サービスに取り組まれている企業様がいらっしゃいましたら、編集部までご連絡下さい)

■MONET Technologies:最適な運行ルートを導き出す

ソフトバンクとトヨタ自動車が2018年10月に設立を発表した合弁のモネ・テクノロジーズは、データ解析サービス、Autono-MaaS事業とともにオンデマンドモビリティサービスを事業の柱に据えている。

「MONETオンデマンドモビリティ」サービスでは、乗降ポイントや乗車人数の情報から独自のアルゴリズムで最適な運行ルートを導き出すシステムを提供しており、ユーザー向けの予約アプリをはじめ、最適な運行ルートの通知やナビ機能による運行が可能なドライバー向けアプリ、ドライバー用のタブレット、予約状況や運行履歴の確認が可能な管理者Web、コールセンターWebを備えている。車両本体やドライバーなどは付属しない。

住民の移動が困難な交通空白地や高齢化地域、各観光地間のアクセスや公共交通からのアクセスが悪く、旅行者数が増えない観光地や集客が難しい地方の店舗・施設などに対し、任意の位置に乗降ポイントを設定し、オンデマンドによる予約・乗車を実現する。

定時便予約者の自宅で順次乗車・定時出発できる定時運行型や、日時や乗降場所を事前に予約する事前予約型、乗りたい時に乗りたい場所から予約する即時乗車型など、地域特性に合わせた運行形態を採用することが可能だ。

1フリートあたりのサービス料金は、初期費用として車両4台分まで50万円、5台目以降は1台あたり10万円、月額費用は利用回数1500回まで定額の15万円など。

オンデマンドサービスの開発に際し、モネは2019年2月から3月にかけ、三菱地所と東京・丸の内エリアを対象に、スマートフォンのアプリケーションで選択した場所から勤務地付近まで送迎するオンデマンド通勤シャトルの実証実験を実施。また、愛知県豊田市や神奈川県横浜市でも、モネのプラットフォームを活用したオンデマンドバスの運行実証実験に着手している。

北海道安平町では、安平町、安平町商工会および有限会社追分ハイヤーが運営する「安平町デマンドバス」にモネの配車プラットフォームを活用し、スマホアプリで安平町デマンドバスの予約ができる「MONETバス予約」を2019年8月から提供開始している。

安平町デマンドバスの車両イメージ=出典:MONET Technologiesプレスリリース

自治体との連携も進んでおり、豊田市をはじめ、広島県福山市、長野県伊那市、石川県加賀市、千葉県千葉市、香川県三豊市・琴平町とそれぞれ次世代モビリティサービスに関する業務連携協定などを結んでいる。

■ネクスト・モビリティ:福岡市でAIを活用した「のるーと」を運行

次世代型デマンドバスなど交通関連システムの構築に向け、⻄日本鉄道と三菱商事が2019年3月に設立した合弁で、同年4月から福岡市東区のアイランドシティ地区でAIを活用したオンデマンドバス「のるーと」の運⾏を行っている。

「のるーと」は、アイランドシティ地区とイオンモール香椎浜、千早駅間において利用者のリクエストに応じ効率的なルートを選びながら運行する。アイランドシティ内に乗降場所となるミーティングポイントを46カ所設設置し、需要に応じたきめ細やかなサービスを提供することとしている。

アプリ画面のイメージ=出典:⻄日本鉄道株式会社プレスリリース

利用者はスマホアプリで出発地と目的地を入力するとミーティングポイントが指定される。乗車時は、予約番号を伝え、運賃を支払う。アプリによるクレジットカード決済も可能だ。バスの待ち時間や到着予想時刻などもチェックできる。

こうした乗降リクエストを総合的に判断し、効率的に各利用者の需要に応じる最適なルートをAIが計算する仕組みだ。

■NearMe:相乗りシャトルサービス「スマートシャトル」を試験運行

タクシーの相乗りプラットフォーム開発などを手掛けるNearMeもオンデマンドサービスの開発に着手している。同社は2019年8月、AI配車システムを活用したオンデマンド型の相乗りシャトルサービス「スマートシャトル」の試験運行を、成田空港から東京都内9区を対象に実施した。

リムジンバスより若干高い価格設定だが、「ドアtoドア(空港)」サービスにより自宅など所定の場所まで送迎可能で、重い荷物が多い飛行機利用者の利便性を追求したサービス内容となっている。タクシー利用に比べると料金は5分の1ほどで、最大9人までの乗り合いと、最適な送迎ルートを実現するAIによって低下価格を実現している。

なお、同社は京浜急行電鉄とサムライインキュベートによるオープンイノベーションプログラム「KEIKYU ACCELERATOR PROGRAM」第2期に採択されており、今回の実証実験も京浜急行電鉄とサムライインキュベートとともに取り組んだようだ。

【参考】NearMeの取り組みについては「AI配車の相乗りシャトルサービス、都内で試験運行 NearMeがシステム開発」も参照。

■AirX:ヘリ手配オンデマンドシステムを構築

オンデマンドサービスは空の世界にも広がっている。ヘリコプターのライドシェアサービスなどエアモビリティの交通プラットフォームを開発するAirXは、遊休ヘリと着陸地の独自データベースに基づく国内唯一のヘリ手配オンデマンドシステム「AIROS(エアロス)」を構築している。

一般的に高価とされる小型航空機に対し、独自のテクノロジーを駆使して即時予約と運賃の低価格化を可能にするサービスだ。同社は2019年8月、こうしたサービスの拡大を目指し、総額1億3000万円の第三者割当増資の実施を発表している。なおNearMe同様、同社も「KEIKYU ACCELERATOR PROGRAM」第2期に採用されている。

■未来シェア:オンデマンド・リアルタイム配車を可能に

公立はこだて未来大学発のITベンチャー・未来シェアは、オンデマンド・リアルタイム配車を可能にする「SAVS (Smart Access Vehicle Service)」を開発し、各地で実証実験を進めている。

SAVSは、タクシー(デマンド交通)と路線バス(乗合い交通)の長所を融合し、時間・ルートを固定せず乗合い車両の配車決定を行うサービス。スマートデバイスとクラウドプラットフォームをベースとしたアプリケーションが通信し、AIがリアルタイムで全車両の走行ルートを決定する仕組みで、需要に即した乗合い車両の最適な配車決定を完全自動で行うことが可能になるという。

このスマート化技術(SAV)は、2016年12月にNTTドコモが実施したデマンド乗合い車両の実証実験で活用されたのを皮切りに、2017年3月には長野県上諏訪エリアで、諏訪地方観光連盟が主催する二次交通強化の一環としたSAV実証実験などが行われている。

同年7月には、愛知県名古屋市を中心に運営するつばめタクシーグループが自宅と空港間のドアtoドア送迎を行う「つばめエアポートリムジン」において、SAVの配車計算アルゴリズムを応用した同社独自開発の乗合い計算AIシステムが利用された。

その後も、鳥取県境港市や愛知県名古屋市、愛知県長久手市、長野県伊那市、熊本県荒尾市などで実証実験が行われているほか、東京急行電鉄と日本初となる「郊外型MaaS」の実証実験や経路検索サービス「駅すぱあと」を提供するヴァル研究所との業務提携、JTBとの資本業提携など、活動や研究の幅を大きく広げている。

■NTTドコモ:「AI運行バス」の提供を拡大へ

NTTドコモは、2017年3月から未来シェアとモビリティサービスプラットフォームの共同検討を進めており、東京都副都心地区や九州大学、兵庫県神戸市、鹿児島県肝付町、神奈川県横浜市、群馬県前橋市などで実証実験を重ね、リアルタイムで効率的な車両・ルートを導き出すAI配車機能の確立に取り組んできた。

2019年3月からは、AIを活用したドコモのオンデマンド交通システム「AI運行バス」を九州大学伊都キャンパスで商用提供を行っている。同社は今後、「AI運行バス」の提供を拡大し、2020年度末までに100エリアでの導入を目指す方針だ。

■日産×DeNA:自動運転技術を活用した「Easy Ride」を共同開発

日産自動車とDeNAが共同事業として取り組んでいる「Easy Ride(イージーライド)」は、将来的に自動運転技術を活用したオンデマンド配車サービスとして実用化することを視野に、開発や実証実験が進められている。

2019年2〜3月には、2018年3月に続く2回目の実証実験が神奈川県横浜市のみなとみらい地区や関内地区周辺で実施され、モニターとして実証実験に参加した約40組が約1カ月間継続的にEasy Rideを利用するなどした。

このEasy Rideに関しては、2020年代前半に本格なサービス提供を開始することが目指されている。

【参考】Easy Rideについては「【動画公開のお知らせ】Easy Rideに試乗!日産とDeNAが開発中」も参照。

■富士通:「SPATIOWLオンデマンド交通サービス」を開発

MaaS関連事業に本腰を入れる富士通は、クラウドサービス「FUJITSU Mobility Solution SPATIOWLオンデマンド交通サービス」を開発。移動サービス提供者に必要な予約受付や運行管理などの業務を支援する機能をクラウドで一貫して提供している。

利用者と移動サービス提供者を最適にマッチングし、利用者の利便性や移動サービス提供者の運行効率の向上を図るほか、幹線公共交通との連携や遊休資産を生かし、地域交通資源を最大限に活用するサービスだ。

同社は2019年3月、第一交通産業と新しいモビリティサービスの提供に向け協業を開始したと発表。第一交通が提供する乗合タクシーに富士通のクラウドサービスを適用したオンデマンド型乗合タクシーの提供を開始している。

第一交通は2019年2月時点で46市町村144路線で乗合タクシーを導入しており、自治体へのオンデマンド型乗合タクシーサービスの共同提案を進めて導入拡大を図っていく構えだ。

また、2019年4月には、ネッツトヨタ瀬戸内とも手を組み、試乗車などの遊休車両を利用した従業員向け乗合通勤にクラウドサービスを採用したことも発表している。

【参考】富士通の取り組みについては「富士通、MaaSサービスのウェブサイト公開 ラストワンマイルの移動支援」も参照。

■WILLER:シンガポールでオンデマンド運行実証

ITマーケティング事業や高速路線バス事業などを手掛けるWILLERは2019年5月、シンガポールの子会社WILLERSがカーシェアリング事業者の「Car Club Pte Ltd」と「Singapore Technologies Engineering Ltd」と自動運転の商用化に向けたコンソーシアムを設立し、国立公園においてアプリを利用したオンデマンド運行などの実証実験を6月から開始すると発表している。

国内では、国土交通省の新モビリティサービス推進事業に選定された京都丹後鉄道沿線地域や北海道阿寒・知床地域における地方郊外型MaaSや観光型MaaSの取り組みの中で、それぞれWILLERS MaaSアプリを活用した事業を進め、データに基づくオンデマンド交通を始めとする地域ニーズに根差した新交通サービスの企画や、地域計画に役立てることとしている。

【参考】新モビリティサービス推進事業については「いざMaaS元年へ!決定した19の先行モデル事業の詳細 自動運転やライドシェアの導入も」も参照。

■順風路:乗合い交通システム「コンビニクル」を提供

道路交通情報システムの開発をはじめ、オンデマンドバス交通システムの開発・運営などを手掛けており、東京大学との共同研究により開発した乗合い交通システム「コンビニクル」を提供している。

ランダムに入る予約に対し、乗り合いを発生させながら効率の良い運行を自動生成するほか、利用者の希望や運行車両の乗車定員、休憩時刻、車庫位置などの条件を考慮し、予約時に出発時刻や到着時刻を確定する。予約から配車まで、オペレータを介さずにフルデマンドの運行が可能という。

コンビニクルは、千葉県柏市などで導入されているようだ。

■コガソフトウェア:デマンド交通システム「孝行デマンドバス」を展開

システム開発を手掛けるコガソフトウェアは、デマンド交通システム「孝行デマンドバス」を展開している。フルデマンド・セミデマンドの運行モードに対応するハイブリッドデマンド交通システムで、クラウド上のWebアプリケーションのため、サーバーや専用機器を準備する必要がなく、すぐにサービスを開始できるようだ。

オペレーター向けのシステムはインターネット環境があれば使用可能で、ドライバー向けアプリは、Android端末で動作する公開アプリとして提供している。利用者は、パソコンやスマートフォン、フィーチャーフォン用のブラウザアプリによって、モバイルデバイスの利用に抵抗のない若年層はもちろん、電話予約を苦手とする聴覚障がい者らも気軽に予約できるという。

■【まとめ】AI活用で進化 交通課題解決に向けMaaSにおいても存在感を発揮

MaaS以前から開発が進められていることもあり、導入例は全国各地で散見される。近年は効率的な運用を求めAI技術を活用する例が増加しており、自治体や事業者の負担軽減をはじめ、利用者の利便性の向上などにもつながっているようだ。

MaaSにおいても、ラストマイルをはじめ乗り合いタクシーサービス需要が高い地域においては、AIオンデマンドシステムの導入が必須になるものと思われる。将来的に自動運転サービスが導入された場合なども必須の技術となるだろう。

地方における交通課題を解決するサービスとして始まったオンデマンドモビリティサービスも、確かな進化を遂げているのだ。

【参考】関連記事としては「MaaS(マース)の基礎知識と完成像を徹底解説&まとめ」も参照。







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