自動運転企業ランキング:トヨタは9位、1位は?米調査会社がトップ10発表

自動運転タクシー商用化のWaymoが首位



米調査会社のNavigant Research(ナビガント・リサーチ)が2019年3月、2019年第1クォーターの報告として「2019自動運転車リーダーボード」を発表した。20社(組)の大手自動運転システム開発会社を対象に市場戦略や生産戦略、マーケティング、製品の機能や信頼性など10項目にわたる評価を行い、ランク付けしたもの。


2019年版調査では、日本勢ではトヨタ自動車が最高位の9位で、ルノー・日産・三菱アライアンスが10位という結果だ。

今回はこのランキングのトップ10を紹介するとともに、各社の最新の取り組みなどを見ていこう。ちなみに以下がランキングの表だ。(追記:この記事を公開したあとに2020年版のランキングも紹介されているため、以下の表では2020年版ランキングも合わせて紹介していく)

順位2019年ランキング2020年ランキング
1位WaymoWaymo
2位GM CruiseFord Autonomous Vehicles
3位Ford Autonomous VehiclesGM Cruise
4位AptivBaidu
5位Intel-MobileyeIntel-Mobileye
6位Volkswagen GroupAptiv-Hyundai
7位Daimler-BoschVolkswagen Group
8位BaiduYandex
9位ToyotaZoox
10位Renault-Nissan-Mitsubishi AllianceDaimler-Bosch
■1位:Waymo 開発・実用化ともに先行

米グーグル系の自動運転開発企業ウェイモが昨年の2位から順位を上げ1位に輝いた。早くから自動運転開発に本格着手し、積極的に公道実証を進めてきた同社は、2018年12月に自動運転レベル4(高度運転自動化)相当の車両でタクシーの商用サービスを開始するなど、実用化の面でも他社を先行している。

2019年1月には、提携する欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)や英ジャガー・ランドローバー(JLR)など自動車メーカーから購入した車両を改造して自動運転車に仕立て上げる「工場」の建設を発表した。同社が自社開発する自動運転ソフトやセンサーを組み込む作業がメインで、改造によって自動運転レベル4の車両を生産していく見込み。


また、2019年3月には、自社で開発する自動運転車両用のLiDAR(ライダー)センサーを自動運転分野以外の企業に限定して提供することを公式ブログで明かした。2011年から独自にセンサー開発を進めており、ロボット工学やセキュリティ、農業技術など、自動運転と直接関係のない領域の企業に限定して提供し、広くフィードバックを得る構えのようだ。

実用化と商用化を見据えた同社の戦略は、現時点では文句なしの1位と言えそうだ。

■2位:GM Cruise 2019年に無人自動運転タクシー実用化へ

米自動車大手のGM(ゼネラル・モーターズ)は、2016年に自動運転技術を開発するベンチャーの米Cruise Automation(クルーズ・オートメーション)を買収して自動運転開発を加速させており、2019年にも無人の自動運転タクシー事業を開始することとしている。

GMが現在商用化を進めている自動運転システム「Super Cruise(スーパークルーズ)」は、現行の法整備状況から自動運転レベル2(部分運転自動化)扱いとなっているが、実質的な機能は自動運転レベル3(条件付き運転自動化)に相当すると言われており、自家用量販車においても量産体制はすでに整っている状況だ。

MaaS(Mobility as a Service)分野では、2016年初頭に米ライドシェア事業者のSidecar(サイドカー)を買収し、カーシェアリングサービス「Maven」を開始。また、米ライドシェア大手のLyft(リフト)との提携やタクシー事業への自動運転車投入計画など含め、自動運転技術を活用したMaaS戦略にも今後注目が集まりそうだ。

このほか、2018年10月に本田技研工業と自動運転技術を搭載したライドシェアサービス車両の開発に向け、協業を行うことに合意したと発表している。本田技研工業はクルーズへ7億5000万ドル(約850億円)を出資する。

■3位:Ford Autonomous Vehicles VWとの包括提携で世界シェア伸ばす

米自動車メーカーのフォードは、2016年にコネクティビティや自動運転、MaaS(Mobility as a Service)などの研究開発を手掛ける子会社「フォードスマートモビリティ」を設立。自動運転レベル3を飛び越え、2021年までに自動運転レベル4を実用化してライドシェアなどの配車サービス向けに供給することを発表しているほか、モビリティサービス企業へと転換する計画も発表している。

2017年2月に巨額出資を発表したAIシステム開発を手掛ける米スタートアップのArgo AI(アルゴAI)が技術開発の柱を担っており、自動運転戦略の中心的存在に成長しているようだ。

2019年1月には、独自動車メーカー大手フォルクスワーゲン(VW)と包括提携に合意したと発表しており、両社は技術や製品の相互供給を進めるほか、自動運転や電気自動車(EV)分野で協力する覚書も交わしている。

【参考】フォードとVWの提携については「VWとフォードが包括提携に合意 自動運転やEV分野で協力」も参照。

■4位:Aptiv Lyftと自動運転タクシーサービス開始

GMの自動車部品グループが分社化して誕生したデルファイ・オートモーティブ・システムズに端を発するAptiv(アプティブ)。2017年に自動運転ソフトフェアを開発するシンガポールのスタートアップ・nuTonomyを買収するなど近年は自動運転開発に力を入れている。

2019年1月には、自動運転プラットフォームの開発を共同で進めているライドシェア大手のリフトとともに、米ラスベガスで自動運転タクシーのサービスを開始したようだ。万が一に備えドライバーが同乗する自動運転車30台を運行させており、さらなる技術の向上を図る構えだ。

このほか、FCAとも協業体制を構築している。

■5位:Intel-Mobileye  EyeQシリーズ好調に推移 第5世代はレベル5をサポート

米インテルと高度な画像解析技術を持つイスラエルのモービルアイは、独BMWグループと2016年に結成した自動運転プラットフォームの開発を共同で進める「開発連合」で共同歩調をとっていたが、2017年3月にインテルがモービルアイを150億ドル(約1兆7200億円)超で買収し、傘下に収めている。

独自の画像処理アルゴリズムでADAS(先進運転支援システム)分野で大躍進を遂げたモービルアイは、2018年の第3四半期決算(2018年7〜9月)でも過去最高の1億9100万ドル(約215億円)まで売り上げを伸ばしている。

最新のシステムオンチップ「EyeQ4」は自動運転レベル3に対応しているほか、現在開発中の第5世代は2020年に導入される予定で、自動運転レべル4~レベル5をサポートするという。

【参考】モービルアイの自動運転戦略については「モービルアイ(mobileye)の自動運転戦略 インテル傘下、製品や技術は?」も参照。

■6位:Volkswagen Group 高度自動運転車2021年から市場へ

世界最大級の自動車メーカーグループの独フォルクスワーゲングループ。中核を担うフォルクスワーゲンをはじめ、アウディ、ポルシェ、イタリアのランボルギーニ、ドゥカティなど計12ブランドが名を連ねており、開発力は強力だ。

アウディが世界初となる量産車「Audi A8」に自動運転レベル3技術を搭載して大きな話題となったが、グループ全体の戦略「TOGETHER – Strategy 2025」では、高度に自動化された運転機能を2021年から競合他社を上回る形で市場に出すこととしており、グループ全体の自動運転システムを開発する企業が設立されているという。

他社との協業では、2018年6月に米フォードと商用車の開発や自動運転、EV分野で協力する提携を交わしたほか、自動運転におけるネットワーク・通信の標準化に向け、2018年7月までに米アクアンティアや独ボッシュ、コンチネンタル、米エヌビディアの4社と業界団体「NAV Alliance」を発足している。

2018年8月には、2020年にVW乗用車ブランドのすべての新車をネットに接続可能なコネクテッドカーにする計画を発表している。

■7位:Daimler-Bosch ボッシュやBMWと強力タッグ

メルセデスベンツや世界販売最大手のトラック部門などを抱える独ダイムラーは、堅実に他社との協業を拡大している。

自動運転に関しては、独自動車部品メーカーのボッシュと2017年4月に提携を発表しており、ソフトウェアとアルゴリズムの共同開発を行っている。両社は、ドライバーの操作が不要な自動運転レベル4相当の完全自動運転車を2020年代初めまでに市場導入することを目指すほか、市街地の走行が可能な「自動運転タクシー」のためのシステムの開発と量産準備も進めることとしている。

また、独BMWグループとはモビリティサービスの領域で協業を進めており、MaaSに関する5つの合弁会社の設立を正式発表している。両社はさらに、共同で自動運転開発を行うことも2019年3月に発表しており、自動運転レベル4相当の車両を共同開発し、2020年半ばの実用化を目指す方針だ。

【参考】BMWとの協業については「ダイムラーとBMW、レベル4級の自動運転車を共同開発」も参照。

■8位:Baidu 世界最大の自動運転プラットフォーマーへ協業広がる

国策のもと自動運転開発を進める中国ネット検索最大手の百度(バイドゥ)は、2017年に世界最大の自動運転プラットフォーム「Project Apollo(阿波羅)=アポロ計画」を立ち上げ、オープンソース化したソフトウェアプラットフォームで開発の効率化と推進を図りながら、自動運転分野における覇権を狙う構えだ。

これまでに、米フォードがアポロ計画で開発を進めていたテスト車両の改造を完了し、北京で自動運転レベル4に対応した自動運転車の実証試験を行う2年間のプロジェクトに着手することを2018年10月に発表したほか、独ダイムラーが自動運転やコネクティビティーの分野で百度と提携を強化することなども明らかにされている。

スウェーデンの自動車メーカーボルボ・カーは、百度と共同で完全自動運転EVの開発に乗り出すことを2018年11月に発表しており、自動運転レベル4のロボタクシーの製造を視野に入れているようだ。

日本でも、中国のバス車両メーカーの金龍客車が開発・製造した自動運転バス「Apolong(アポロン)」を、ソフトバンクグループのSBドライブが2019年初期までに実証実験用車両を含め10台日本に持ち込む予定となっている。

【参考】百度の自動運転戦略については「中国・百度(baidu)の自動運転戦略まとめ アポロ計画を推進」も参照。

■9位:Toyota ガーディアンとショーファーの全貌が徐々に明らかに

2018年以降はMaaS分野などモビリティサービスに関する話題が多いトヨタ。MaaS向けのコンセプトカー「e-Palette Concept(イーパレット・コンセプト)」の発表や、新しいモビリティサービスの構築に向けソフトバンクとともに設立した「MONET Technologies(モネ・テクノロジーズ)」、サブスクリプションサービス「KINTO」の開始など、新たな取り組みが目立つ。

自動運転分野では、同社が開発を進める「ショーファー(自動運転)」と「ガーディアン(高度安全運転支援)」の全貌が徐々に明らかになってきた。

米国を拠点にAI開発などを手掛ける「Toyota Research Institute(TRI)」が技術開発を進めており、ギル・プラットCEOがCES2019でガーディアンの開発進捗状況などについてスピーチで触れている。

大雑把な言い方をすると、ショーファーは完全自動運転システム、ガーディアンは従来のADASを進化させたもので、ショーファーの冗長システムとしての役割も担うものとなりそうだ。

このほか、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と国際宇宙探査ミッションで協業の可能性を検討していくことも2019年3月に発表されている。モビリティサービス会社を目指すトヨタだが、先進技術開発もしっかりと進めているようだ。

【参考】トヨタとソフトバンクとの協業やMaaSへの取り組みについては「やっぱりトヨタとソフトバンクの組み合わせが最強な件 MaaS系会社で最有力」も参照。ガーディアンについては「トヨタの運転支援技術「ガーディアン」とは? 自動運転機能なの?」も参照。ショーファーについては「トヨタの自動運転システム「ショーファー」を徹底解剖!どんな技術?」も参照。

■10位:Renault-Nissan-Mitsubishi Alliance グーグルと合流の報あり 国内では日産×DeNAに注目

世界最大級のアライアンスを組む仏ルノーと日産自動車、三菱自動車の3社。2019年2月には、米グーグルの陣営に合流する可能性が報道されており、実現すれば、ウェイモの自動運転タクシー向けに自動車を供給したり、ウェイモの自動運転技術を自車に導入するなど、さまざまな可能性が広がりそうだ。

2019年3月には、自動車コネクテッドサービスの新しいプラットフォーム「アライアンス・インテリジェント・クラウド」の立ち上げを公式発表している。

新プラットフォームは、第一弾としてルノーが販売する「クリオ」と日産「リーフ」の一部モデルに2019年後半から搭載され、クラウド経由のサービス提供を開始する予定だ。3社は今後も協業により最新技術を開発しながら、コネクテッドサービスを幅広い車種の市販車で提供していく方針という。

このほか、日産はディー・エヌ・エー(DeNA)とタッグを組んで技術開発とサービス開発に取り組んでいる「Easy Ride(イージーライド)」の実証実験を、前年に続き2019年2月に開始している。2020年代早期の本格サービス開始を目指しており、国内自動車メーカーとIT系の協業による本格的な実用化に注目が集まる。

【参考】アライアンスのコネクテッド向け新プラットフォームについては「日産ルノー三菱、コネクテッドカー向けの新プラットフォームを立ち上げ」も参照。イージーライドについては「【インタビュー】日産×DeNA、自動運転タクシー「Easy Ride」の進化に迫る」も参照。

■【まとめ】米国勢強し 高度自動運転技術の実用化がランクアップのカギ

参考までに、ランキングの11位以下はBMW-Intel-FCA、Volvo-Veoneer-Ericsson-Zenuity、Zoox、May Mobility、Hyundai Motor Group、Uber、NAVYA、Voyage、TeslaAppleの順となっている。

米国勢が強く、次いで独勢、日本勢といった印象だ。ランキングそのものの正確性・客観性はあくまで参考程度にとどめておくべきだが、アポロ計画を本格始動したバイドゥが順位を上げていたり、スタートアップのZooxやMay Mobilityが圏外から躍進するなど、この一年の動向を反映していることに間違いはなく、高度自動運転技術の実用化の影響も当然大きいのだろう。

2019年に自動車業界でどのような動きが生じ、来年のランキングにどのように反映されるのか。日本勢の躍進とともに、業界全体における新技術の開発・実用化に大きな前進が見られることを期待したい。

(初稿公開日:2019年3月28日/最終更新日:2021年10月20日)

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




関連記事