トヨタ出資先、ロボタクシー「ドイツ全土」で試験可能に

Momentaが中国勢で初



出典:Flickr / DennisM2 (CC0 1.0 : Public Domain)

グローバル化が進む自動運転市場。ついに、ドイツ全土に及ぶレベル4実証ライセンスを取得した企業が現れた。トヨタも出資する中国Momentaだ。Baiduら先行勢の陰に隠れがちだったが、堅実な事業運営で自動車メーカー各社の信頼を得て、中国勢初となるドイツへの本格進出を果たした。

開発先行勢がドイツ以外の欧州各国を攻める中、Momentaはなぜドイツを目指し、ライセンスを取得できたのか。同社の取り組みに迫る。


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■Momenta@ドイツの動向

WaymoもBaiduも足踏みするドイツで全土に及ぶ試験ライセンスを取得

出典:Momentaプレスリリース

Momentaは2026年7月、ドイツ連邦自動車局(KBA)からドイツ全土におけるレベル4の自動運転試験の承認を取得したと発表した。

この承認により、世界で最も厳しい安全基準と検証体制のもと、ドイツの都市部でレベル4の自動運転技術の試験走行を行うことができるようになった。

ドイツの自動運転規制は厳格で、海外勢にとってはハードルが高いと言われる。米Waymoも2026年にミュンヘンに欧州拠点を設置したものの、実証には至っていない。中国勢も、積極的に欧州展開を推し進めているBaiduやWeRideもドイツでの本格実証は実現していないのだ。

そこに現れたのがMomentaだ。Momentaは、ドイツのベーブリンゲンに欧州本社を設けているほか、ミュンヘンにもオフィスを構えている。そして、メルセデス・ベンツ、BMW、フォルクスワーゲン・グループといったドイツ自動車メーカー勢とそれぞれパートナーシップを結び、緊密な関係を築いている。


米Uber Technologiesとも2025年に提携し、ミュンヘンを皮切りに欧州でロボタクシーサービスを展開する計画を発表している。

2026年2月には、ドイツのフリードリヒ・メルツ首相が中国を訪れ、メルセデス・ベンツとMomentaが共同開発したインテリジェントドライビングシステムを搭載した新型Sクラスに試乗している。

地道に信頼を高め、障壁を一つひとつクリアし、ドイツ全土における実証ライセンスを取得したものと思われる。

Momentaの創業者兼CEOのXudong Cao氏は「ドイツは公共の安全を最優先に自動運転の規制方法において世界的なベンチマークの一つを確立した。真の自動運転は、道路を見るだけでなく、道路を理解するシステム、つまり状況が展開する前にその展開を予測できるシステムに依存する。これが当社の物理AIアプローチの中核であり、テストする1キロメートルごとに技術ポートフォリオ全体における理解が深まる」とし、「この全国規模のテスト許可は、その理解が現実世界の複雑さと完全に結びつく場となる。KBAの信頼を得たことで、ドイツでのプロジェクトを推進し、商用展開に向けた強固な基盤が築かれた」と話し、ドイツでの展開に意欲を見せた。


Baiduはスイスや英国、WeRideもスイス……

Momentaはこれまで、上海や蘇州などの中国内のほか、メルセデス・ベンツとUAEの国営タクシー企業ルモとともにアブダビでロボタクシーサービスを展開する計画を発表している。具体的な海外展開としては、ドイツが2例目になるものと思われる。

中国トップのBaiduは、2025年にドバイとアブダビに進出し、公道実証に着手している。無人運転テストと商業化運営サービスの許可を取得し、2026年に無人ロボタクシーサービスを開始している。ドバイでは、2028年までに1,000台規模のフリートを構築する計画という。

スイスでも、国有バス企業PostBusと手を組み、2025年にロボタクシー事業に着手している。英ロンドンでは、配車サービス大手Lyft傘下のFreenowとのパートナーシップのもと、2026年7月に公道実証に着手したようだ。

WeRideは、広州、北京、南京、蘇州のほか、モンゴル自治区のオルドス、アブダビやドバイ、サウジアラビアのリヤド、シンガポール、欧州ではスイス・チューリッヒでロボタクシーの商用化や実証を進めている。

同社は自動運転バスにも力を入れており、こちらはカタールやフランス、スペインを含む世界10カ国で実証経験を有するという。

Pony.aiは、中国内のほか、クロアチアのザグレブで欧州初のロボタクシーサービスに自社技術を提供している。シンガポール、ルクセンブルクでも商用化に向けた取り組みを進めている。

独メーカーとの関係強化が決め手に?

各社とも欧州展開に色気を出しているが、ドイツにはせいぜい拠点を設けるのみで、実証には至っていない。

ドイツは規制上、公平な形で海外勢を受け入れているはずだ。しかし、自動車大国である以上、フォルクスワーゲンやメルセデス・ベンツなどの自国勢を何らかの形で保護・優先するような空気感ができているのかもしれない。

または、海外勢が忖度している可能性もある。BaiduやWaymoなどにとって、独自動車メーカー勢はライバルになり得るが、仲間にもなり得る重要な存在だ。その存在を無視して一方的に進出し、敵対化するのは避けたい……といった心理が働いているのかもしれない。

Momentaは、その点をクリアしたから正式にドイツ進出を果たすことができた……といった見方ができる。ADASソリューションにも力を入れ、各社と緊密な関係を築いているからこその偉業なのかもしれない。

■Momentaの概要

中国市場で各社とADASソリューションを共同開発

Momentaは2016年創業の自動運転開発企業だ。早い段階でE2E開発に着手した企業の一つで、自動運転開発と並行して当初からADASソリューションにも力を入れていたため、ロボタクシーに全振りしていたWeRideなどの先行勢と比べると目立たない存在だった。

2017年の資金調達シリーズBでメルセデス・ベンツ(当時ダイムラー)がいち早く出資するなど、自動車業界からの注目度は高かったようだ。NIOキャピタルも出資している。

2021年のシリーズCでは、トヨタやボッシュ、SAIC(上海汽車)、GMなども出資している。2021年には、BYDと自動運転技術を開発する合弁DiPi Intelligent Mobilityを設立している。2026年7月、香港証券取引所への上場を果たした。

ロボタクシー事業は、SAICとともに2021年末に上海と蘇州で着手している。継続事業となっているかは不明だが、100日間の試験運用で、利用者の98%が満足と回答し、80%が複数回利用したという。

2023年には、ADASソリューション「Mpilot Pro」を正式リリースした。LiDARやHDマップ不要で、基本的なADAS機能と自動駐車支援を可能にしており、さらに、高度な高速道路ナビゲーションパイロットや都市ナビゲーションパイロット、都市・高速道路クルーズパイロット、学習型駐車ナビゲーションパイロット、駐車ナビゲーションパイロット機能を備えている。広範囲に及ぶレベル2ソリューションと思われる。

同年、GMの中国法人がMomentaの協力のもと、上海でレベル4の公道試験ライセンスを取得した。ロボタクシーなどを見据えたものか自家用車の自動運転化を見据えたものかは不明だ。

2024年には、広州汽車系のGAC AIONや東風日産と正式にパートナーシップを結んだ。東風日産とは、エンドツーエンド(E2E)のインテリジェントドライビングモデルに基づいた先進的なインテリジェントドライビングソリューションを共同開発するとしている。

2025年には、ホンダやBMWとの提携も発表している。ホンダは、E2Eに基づいた量産対応の運転支援ソリューションを共同開発し、中国市場におけるフルシナリオ運転支援の普及を加速するとしている。メルセデス・ベンツは、モメンタとともに次世代インテリジェント運転支援システムを開発し、現地生産の新型EV「CLA」への搭載を開始した。

2026年5月には、SAICアウディがMomentaのレベル3機能を搭載した初のブランドになると発表した。共同開発したアウディパノラミックアシストドライビングシステムを搭載したアウディE7Xが先行販売されている。

中国市場が主戦地ではあるものの、自動車メーカー各社とパートナーシップを結び、着実に実績を積み重ねているのだ。こうした成果が、ロボタクシー事業や海外進出における信頼性向上につながっているのではないだろうか。

Uber TechnologiesやGrabといった配車プラットフォーマーとの提携も進んでおり、今後、満を持してロボタクシー事業者としての名を高めていく可能性は十分考えられそうだ。

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■【まとめ】E2E自動運転サービスの急先鋒に?

BaiduやWeRideなどの先行勢とは異なるアプローチで自動運転分野における存在感を高めてきたMomenta。レベル4技術の水準は未知数だが、場合によってはテスラやWayveなどより先にE2E自動運転サービスを本格化させる可能性もあり、今後の動向にしっかり注目したいところだ。

トヨタ、日産、ホンダといった日本勢ともパートナーシップを結んでいる点も見逃せない。左側通行の交通ルールをマスターするため、日本進出……といった可能性はないだろうか。頭角を現した有力企業の動向からしばらく目が離せなくなりそうだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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