「自動運転×タクシー業界」の最新動向は? グーグルの事業展開や日本における取り組みは?

業界の構図一変?サービス競争が過熱?





アメリカで2018年12月にドライバーが不在でも運行可能な自動運転タクシーが誕生した。米国に後れを取っているものの、日本国内でも営業走行による実証実験がすでに行われており、2020年の実用化を目指す動きがある。普及には時間がかかるかもしれないが、実現は遠い未来の話ではないのだ。







自動運転タクシーが実用化されると、その影響を最も受けるのは当然タクシー業界だ。自動運転車両を積極的に導入する事業者もいれば、有人ドライバーにこだわる事業者も出てくるだろう。いずれにしろ、事業を取り巻く環境が一変し、さまざまな変化への対応を迫られることになる。

自動運転タクシーの実現により、タクシー業界はどのように変わるのか。実現に向けた各社の取り組みとともに、業界の変化を予想してみる。

記事の目次

■「自動運転×タクシー業界」で成されることと起きる変化
新規参入続々 業界の構図が一変しサービス競争が過熱

自動運転車がタクシーに導入されると、何が起こるのか。真っ先に想定されるのは、当然ながらドライバーの無人化だ。路上で手を挙げてタクシーを停める行為はもちろん、目的地の設定や料金の支払い、ドライバーとのコミュニケーションなどすべてが機械化されることになる。

配車依頼や目的地設定はスマートフォンなどで行い、料金の支払いも完全にキャッシュレス化されることになる。地元の観光地や名店情報などは、車載モニターやタブレットから仕入れることになるだろう。

乗客への対応や運転技術など個々のドライバーによる格差はなくなる一方、新たに自動運転システムの優劣が話題となり、映像配信や地域の飲食店クーポン配布などタクシー事業者によるサービス競争が始まるものと思われる。

自動運転タクシーが実現するころには道路運送法などによる規制も変化し、既存のタクシー業者だけでなくライドシェア事業者をはじめとする新興勢が次々と台頭してくる可能性は高く、マイカー(自動運転車)の有効活用を図るためカーシェアの要領で個人が参入する可能性もあるだろう。

また、物流と融合した貨客混載などの活用方法や、レンタルルームとしての機能を備えたタクシー、ベッドを備えたタクシーなど、各種サービスが付加されたタクシーも登場することになり、さまざまなビジネスモデル誕生の可能性が高まる。

タクシー業界はさまざまなサービス提供事業者やプラットフォーマーと手を組み、次世代タクシー業界を作り上げていくことになるのではないだろうか。

なお、自動運転タクシーの気軽な利用形態が確立されれば、運転頻度の少ないマイカー所有者はマイカーを手放し、積極的にタクシーサービスを利用することも想定される。自動車販売が頭打ちとなる自動車メーカーは、MaaS(Mobility as a Service)事業者として事業の軸を移動サービスにシフトするほか、より複雑化する車両メンテナンスなどに力を入れることになるのかもしれない。

有人ドライバータクシーは貴重な存在に?

自動運転タクシーが実現しても、スマホを持たない子どもの利用や柔軟なサービス・コミュニケーションを求める利用者がいるため、しばらくの間は有人ドライバータクシーも混在することになる。場合によっては、有人サービスが重宝される時代が来ることも考えられるだろう。

乗車料金は、当面は既存のタクシーと競合させるため低めに設定されるものと思われる。需要や供給に合わせて価格が変動する「ダイナミックプライシング」などが導入される可能性が高そうだ。

■日本における自動運転タクシーに関する取り組み
ZMP:東京五輪見据え自動運転タクシー実用化へ

日本国内で最も積極的に自動運転タクシーの開発に力を注いでいるロボットベンチャーのZMPは、2017年12月に日本初となる無人の遠隔走行実験をお台場エリアで実施。2018年8~9月には、タクシー事業者の日の丸交通とともに世界初となる自動運転タクシーの公道での営業サービス実証実験を行った。

東京五輪を一つのターニングポイントに据えており、2020年の自動運転タクシー実用化を目指している。

DeNA×日産自動車:「Easy Ride」実証、2020年代早期実現目指す

両社は2017年1月から自動運転技術を活用した新しい交通サービス「Easy Ride(イージーライド)」の開発を進めており、2018年3月には、一般モニター搭乗のもと神奈川県横浜市で約4.5キロメートルのコースを往復運行する実証実験を行った。2020年代早期に無人運転車両による本格的なサービスの提供開始を目指すこととしている。

DeNA(ディーエヌエー)はタクシー配車アプリやカーシェア事業などMaaS分野にも力を入れている。

■アメリカにおける自動運転タクシーに関する取り組み
米Waymo:2018年12月にもサービス開始 世界の先頭走る

自動運転開発の先頭をひた走るGoogle系Waymo(ウェイモ)は、2018年12月にアリゾナ州で無人の自動運転車による有料配車サービスを開始した。2019年にはカリフォルニア州にも拡大する予定という。商用の自動運転サービスがスタートしたのはこれが初めて。

サービスには欧米の自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)の車両が使用されている。自動運転レベル4(高度運転自動化)の技術が搭載されているため、人が運転に全く関与する必要はないものの、当面は運転席に係員が乗車しながらサービスを提供する。

米GMクルーズ:2019年にEV自動運転タクシー事業開始予定

米自動車メーカーGM(ゼネラルモーターズ)傘下の自動運転車開発部門Cruise Automation(クルーズオートメーション)がEV自動運転タクシー事業を2019年に始める計画を発表している。報道などによると、同社は事業参入に備えサンフランシスコの湾岸沿いの駐車施設に急速充電器を設置したほか、独自の配車アプリ・車両管理システム「クルーズ・エニウエア」の試験を行っているという。

2018年11月には、既存のガソリン車の開発などを縮小して自動運転技術や電気自動車(EV)の開発に力を入れていく方針が明らかにされており、自動運転タクシーにも本腰を入れて臨む構えだ。

【参考】GMの事業方針については「米GM、全世界の従業員15%削減 コスト削減し自動運転開発に注力」も参照。

米ウーバー・テクノロジーズ:早期から実証実験、死亡事故で失速

米ライドシェア大手のウーバー・テクノロジーズも早くから自動運転開発を進めており、タクシー事業への導入を見据えている。米北東部ペンシルバニア州のピッツバーグ市などで実際に試験的な自動運転タクシーの実験も行っていた。

しかしウーバーの自動運転車が死亡事故を起こしたことで公道実験が中止となった。2019年前半には米市場に上場するとみられているウーバー。実証実験の再開とともに研究開発費も今後より一層つぎ込むものとみられる。

独VW:モービルアイとイスラエルでタクシー事業に着手 アウディは空飛ぶクルマ開発へ

独フォルクスワーゲン(VW)と米インテル子会社のイスラエル企業モービルアイは、自動運転車による配車サービスを2022年からイスラエルでスタートすると発表している。2019年にも試験サービスを開始する予定で、世界展開も視野に入れているという。

また、VWグループの独アウディは、航空機メーカーの仏エアバス、自動車デザイン会社の伊イタルデザインとともに、空飛ぶクルマ「Pop.Up Next」のプロトタイプを公開しており、早ければ大都市などにおいて10年以内に道路と空中を利用したフライングタクシーサービスを実現することとしている。

■欧州における自動運転タクシーに関する取り組み
独コンチネンタル:仏イージーマイル社と提携 世界戦略進める

タイヤや自動車部品大手の独コンチネンタルは、モビリティソリューション開発を手掛ける仏スタートアップ「Easymile(イージーマイル)」と手を組み、無人の自動運転タクシーの開発に着手している。

これまでにフランクフルトの大学キャンパスにおいて自動運転シャトルサービスの試験走行などを行っており、2018年には日本国内でも自動運転レベル5相当の車両の試乗会を行った。世界展開を視野に開発力と競争力を強化していく構えのようだ。

独ダイムラー×ボッシュ:2019年にカリフォルニア州で実証実験開始

独ダイムラーは自動車部品大手の独ボッシュと手を組んで自動運転システムのためのソフトウェアとアルゴリズムの共同開発を進めており、両社は、ドライバーの操作が不要な自動運転レベル4相当の完全自動運転車を2020年代初めまでに市場導入することを目指すほか、市街地の走行が可能な自動運転タクシーのためのシステムの開発と量産準備も進めることとしている。

2019年には、米カリフォルニア州でメルセデス・ベンツの「Sクラス」を改良した自動運転タクシーによる実証実験を開始することが発表されている。

【参考】ダイムラーの戦略については「ダイムラーの自動運転戦略まとめ 計画や提携状況を解説」も参照。

英国:タクシー会社やスタートアップ、ロールス・ロイスなどがそれぞれ開発に着手

イギリスでは、ロンドンのタクシー会社「アディソン・リー」が、英オックスフォード大学発のスタートアップ企業で自動運転ソフトウェアを開発するOxbotica社と組み、2021年にも自動運転タクシーサービスを開始する可能性が出てきたことが報じられている。

また、ブリストルを拠点とするスタートアップ企業バーティカル・エアロスペース(Vertical Aerospace)社は、空飛ぶタクシーサービスの提供を2022年までに始めると発表している。

航空エンジンなどを開発するロールス・ロイスも空飛ぶタクシーの開発計画を発表しており、2020年代前半の実用化を目指す構えだ。

【参考】アディソン・リーとOxboticaの取り組みについては「英国で2021年にAI自動運転タクシー登場か 英オックスフォード大学スタートアップが協力」も参照。バーティカル・エアロスペースの取り組みについては「空飛ぶタクシー、2022年にサービス提供開始 イギリスのバーティカル・エアロスペース社」も参照。

フランス:ルノーやナビヤが自動運転タクシー導入に向けた動き

フランスでは、ルノーがB to B利用も視野に入れたコンセプトカー「EZ-GO(イージーゴー)」を発表。ホテルなどの送迎サービスやタクシーサービスなども考慮した作りとなっている。また、自動運転EVバスを展開するナビヤも、完全自動運転タクシー「AUTONOM CAB(オートノムキャブ)」の開発を進めている。

■中国における自動運転タクシーに関する取り組み
中国:急成長中のスタートアップが自動運転タクシー事業に参入

スタートアップ企業Roadstar.ai(ロードスター・エーアイ)が、2018年内にも中国国内で20台の自動運転タクシーを走らせることを明らかにしている。当面はドライバー同乗のもと運営しながら規模を拡大し、無人運転に関する法整備がなされた後に遠隔操作による無人タクシーを実現させることとしている。

また、公共バスなどを運営するBaiyun Taxi(広州公交集団)も、自動運転スタートアップ「WeRide.ai」の協力のもと広州大学キャンパス近辺で無人タクシーサービスの走行実験を開始することを2018年11月に発表している。

このほか、インターネット検索大手の百度(バイドゥ)とスウェーデンの自動車メーカー・ボルボカーズが共同で自動運転タクシーの開発を進めることを発表しており、2020年代に自動運転レベル4の製造・実用化を目指すようだ。

また、ライドシェア大手のDiDi Chuxing(滴滴出行/ディディチューシン)が2018年に米カリフォルニア州で自動運転の公道試験の許可を取得しており、自社開発を促進する動きを見せている。

■2020年代に勢力拡大 自動運転タクシーの普及見据えたビジネスモデルを

自動運転が実用化される際、利便性や経済性などの観点からまず先にタクシーやバスなどの交通手段に導入される可能性が非常に高い。これまで公共交通を担ってきた各事業者は、来るべき未来を想定し、従来の経営手法に固執せず柔軟な発想で立ち向かう必要が出てくるだろう。

自動運転の実現には、技術面での確立はもとより、法整備やインフラ整備、社会受容性の醸成など越えなければならないハードルはまだまだ多く、その実現や効果に懐疑的な見方をする方も依然少なくない状況だ。

しかし、世界的に研究開発が進められ、国家レベルでの競争が過熱していることから、遅かれ早かれ実現することに変わりはない。2020年代には試験的導入から本格導入に徐々にシフトし、その勢力を拡大していくことになるだろう。自動運転によるモビリティ社会の変化はすぐそこまで来ているのだ。







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