【最新版】自動運転タクシーの実現はいつから? 料金やサービスは? 開発している会社・企業、メリットやデメリットを解説

世界・日本の開発状況に注目



21世紀の新たな次世代交通手段として、「自動運転車」と「タクシー」を組み合わせた自動運転タクシーへの注目が高まっている。タクシー車内に乗務員がいない無人状態で客を乗せて目的地まで行くというサービスだが、具体的にはどういったものでいつ実現するのか。憶測も含め、各社の取り組み状況などをまとめてみた。


■自動運転タクシーの概要やサービス予想

自動運転タクシーは「ロボットタクシー」「ロボタクシー」とも言われ、世界各国の自動車メーカーやスタートアップが開発や研究を進めている。

導入・実用化には一定の段階を踏む必要がある。実証実験のように有人監視のもと走行する自動運転レベル3(条件付き運転自動化)相当の自動運転車、遠隔管理のもと決められたルートや範囲において走行する自動運転レベル4(高度運転自動化)相当の無人自動運転車、そして範囲に定めのない自動運転レベル5(完全運転自動化)相当の完全自動運転車とステップアップしていくものと思われる。

【参考】自動運転レベルの定義については「自動運転レベル0〜5まで、6段階の技術到達度をまとめて解説|自動運転ラボ 」も参照。

自動運転レベル4相当の自動運転タクシー:限定エリア内での営業

空港敷地内や広範な商業施設区域内、限定された専用道路など、遠隔管理のもと一定の区域で走行する。初期段階は停留所が設置され、決められた場所から場所への移動に限定されるケースが多そうだ。その意味では無人運転バスとほぼ同じ感覚での利用になるのかもしれない。安全確保や正確な位置情報などが備われば、利用者のもとまで迎えに来るなど自由度は増すものと思われる。


自動運転レベル5相当の自動運転タクシー:エリア問わずに走行下

自動運転レベル4での実績を経て徐々に走行区域が広がっていき、最終的にレベル5に到達するものと思われる。レベル5が実現する頃には、利用者のスマートフォンの位置情報などを基に自動運転車が迎えに来て、設定した場所まで細かく送り届けてくれるシステムが確立されているだろう。長距離移動に適した寝台車型の車両や、空き時間には無人の宅配サービスを兼ねる車両など現段階では、想像もつかないサービスも生まれてそうだ。

利用方法やサービス概要は? 「流し営業」の自動運転タクシーも?

利用の予約から決済まで、スマートフォンなどを用いて行うことが基本になるとみられる。カーナビのように現在位置と目的地を入力することで自動運転車が迎えに来る仕組みで、料金は予約時にスマートフォンに表示されるだろう。カーナビ同様ルート設定や寄り道なども可能で、地域周辺の観光情報や飲食店情報なども簡単に入手でき、提携店の割引サービスなども登場しそうだ。

車両は通常駐車場などで待機しているものと思われるが、利用頻度などのビックデータをもとに「流し営業」を始める自動運転タクシーも現れるかもしれない。歩道にいる歩行者の特定のジェスチャーで自動運転車が客を拾う仕様も否定できない。

■自動運転タクシーのメリットとは?
料金が安くなる可能性大

自動運転タクシーが普及すると、従来のタクシーよりも料金が安くなる可能性がある。自動運転タクシーの普及当初は車両やシステム自体が高いために、サービス提供側となる会社も自動運転タクシー料金をある程度の価格にしなければいけないと思われるが、車両やシステム自体の価格が下がれば運転手の人件費が浮く分、タクシーの利用料金も安くなっていくと思われる。


タクシーサービスの質の安定

完全無人の自動運転タクシーにはタクシー運転手がいない。その代わりにコンピュータやAI(人工知能)が乗客の対応を行う。人の場合はサービスの質にムラが出るが、コンピュータやAIの場合は一般的に質に差は出てこない。「今日の運転手さんはハズレだった」なんてため息を吐くことも少なくなるかもしれない。

移動時間の短縮が期待される

自動運転タクシーでは、乗客や運転手ではなくAIが目的地までのルート選定を行う。単純な最短距離の算出だけではなく、クラウドなどからリアルタイムの交通情報などを取得した上で、最適なルートを見つけ出す。そのため、同じ目的地に行く場合でも自動運転タクシーの方が早く着けることが期待される。

■自動運転タクシーのデメリットとは?
渋滞がひどくなる可能性も?

自動運転タクシーの利用料金が低価格化し、電車やバスに乗るよりも安くなると、人々はこうした大量輸送公共交通よりも自動運転タクシーに乗りたがるようになることが予想される。需要が増えた分だけ自動運転タクシーの数も増えていくと、道路の混雑の悪化につながっていく可能性がある。

タクシー運転手の職が失われる?

無人の自動運転タクシーが普及し、従来のタクシーの数が減っていくと、タクシー運転手として働いていた「人」の雇用に影響を与える。自動運転技術の発展によって別なさまざまな雇用が生まれることもあり、トータルで考えなければならないが、「タクシー運転手」という職自体が消えていくのかもしれない。

地元の名店情報などが知れなくなる?

タクシーの運転手は観光案内役として活躍することもある。営業エリア内を走りまわっているため、行列ができているラーメン屋や賑わっているエリアの情報を詳しく知っているからだ。自動運転車が普及してタクシー運転手がいなくなると、こうした情報を得る機会がなくなる? いや、人々は別な方法で情報を入手すれば良いだけだろうか。

■自動運転タクシーを開発している企業と具体的な取り組み
ZMP×日の丸交通(日本)

2018年8月27日〜 9月8日の期間、東京都港区の一部区域で自動運転タクシーの営業実証実験を実施した。乗車場所は限定されるが、有料方式による実験は世界初となった。車両は自動運転レベル3相当で、ドライバーが運転席に、技術担当オペレータが助手席にそれぞれ乗車するが、車線変更や右左折、停止などの操作はシステムが自動で行った。

スマートフォンを用いた予約、乗車、決済という体験を通し、ユーザーに自動運転タクシーの商用サービスの現実的な利用イメージを広く持ってもらうことを目的としており、両社は2020年の実用化を目指している。

DeNA×日産自動車(日本)

自由な移動をコンセプトに掲げる交通サービス「Easy Ride」を共同開発しており、2020年代の早い時期の本格サービス提供を目指している。無人運転車両を活用し、専用のモバイルアプリで目的地の設定から配車、支払いまでを簡単に行うことができるサービスで、2018年3月に横浜市で実施した実証実験では、遠隔管制センターを設置し、車両に搭載したカメラなどがセンシングした車両周囲の状況や車内の様子を遠隔でモニタリングするテストなどを行った。

Google系Waymo(ウェイモ/米国)

他社に先駆けて自動運転車の開発に本腰を入れてきた米グーグル系の自動運転車開発企業Waymo(ウェイモ)。2018年12月5日に、米アリゾナ州フェニックスで自動運転タクシーの有料商用サービス「ウェイモワン」を開始したと発表している。商用サービスとしては世界初だ。

運転席に人が座らずに完全無人での走行が可能な自動運転レベル4(高度運転自動化)以上の技術を搭載しているが、当面は安全のために運転席には人が同乗しながらのサービス提供となる。

当初はこれまでのウェイモの自動運転タクシーの実証実験に参加した住民数百人のみがサービスの対象者で、次第にサービスの対象者を拡大していくものとみられている。

GM(ゼネラル・モーターズ/米国)

米自動車メーカーGM傘下の自動運転車開発部門Cruise Automation(クルーズオートメーション)がEV自動運転タクシー事業を2019年に始める計画を発表している。報道などによると、同社は事業参入に備えサンフランシスコの湾岸沿いの駐車施設に急速充電器を設置したほか、独自の配車アプリ・車両管理システム「クルーズ・エニウエア」の試験を行っているという。

また、2018年5月にはソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)がクルーズへ22億5000万ドル(約2400億円)を出資する計画を明らかにしており、自動運転やライドシェア分野を含めた協力関係を加速していくとの見方もある。

【参考】GM・クルーズの自動運転タクシー事業については「GM系クルーズ、EV自動運転タクシー事業へ充電拠点準備 ライドシェア企業に熱視線|自動運転ラボ 」も参照。

Audi(アウディ/ドイツ

独自動車メーカーアウディは「エアタクシー」の試験運用に向けたモデルケースを構築するプロジェクト「アーバン・エアモビリティ・プロジェクト」を2018年6月に発表した。道路の走行はもちろん空中を飛ぶこともできる「空飛ぶクルマ」で、ドイツ連邦や航空宇宙機器開発製造会社の仏エアバスなどとともに試験運用に向け開発を進めている。

Zoox(ズークス/米国)

タクシー向けの自動運転車の開発を進めるスタートアップ。乗員の快適性を重視し、ハンドルやブレーキなどを備えず広々とした乗車スペースを確保した車両の開発に一から取り組んでおり、2020年にも独自ブランドによるサービスの開始を目指している。まだ売り上げも商品もない会社だが、資金調達は順調で続々と優秀なエンジニアが集まっている。

Navya(ナビヤ/フランス)

自動運転EVバスを展開するナビヤも、完全自動運転タクシー「AUTONOM CAB(オートノムキャブ)」の開発を進めている。ハンドルやブレーキアクセルをはじめ運転席が備わっていない仕様で、公道で自動走行できるようにナビゲーションを最適化するための地図作成ツールを備えているという。2018年後半にサービスを開始する予定。

自動運転シャトルバスの「NAVYA ARMA(ナビヤアルマ)」は日本を含む世界各国で実証走行済みで、オートノムキャブも早い段階で日本国内で走行する姿を見られるかもしれない。

■自動運転タクシーの実現時期はいつ?
アメリカでは2018年に実現、他国でも徐々にスタートへ

ウェイモが2018年に有料の商用サービスをアメリカで開始した。今後、アメリカ以外でも他社が実証実験を重ね、自動運転システムの向上と合わせてサービスの展開をスタートさせていくだろう。

日本での全国的な本格展開は2025年以降か

法律面での規制も関わってくるが、官民ITS構想・ロードマップ2018によると、過疎地域など地方での移動手段や高齢者などの移動困難者の移動手段を確保することを視野に、2020年までに限定地域の公共交通などにおいてレベル4の遠隔型自動運転システムによる無人自動運転移動サービスを実現し、2025年以降全国展開を図ることとしている。

当面はこの国の動きに合わせて事業化が進む可能性が高く、地方におけるデマンド型交通の役割を担いながら検証と認知度を高め、既存のタクシー業界とすみ分けを図っていくものと思われる。

■「開発は始まったばかり」のフェーズは既に越えた

自動運転タクシーは既にウェイモが商用サービスを開始し、開発競争は既に「始まったばかり」とは言えない段階まで来ている。自動運転タクシーの普及でタクシー運転手の職が奪われるのではとの議論もあるが、交通手段として従来のタクシーよりも安く便利に利用できるのなら、普及はどんどん進んでいくとみられる。今後も自動運転タクシーの開発状況に注目していきたい。

【参考】自動運転タクシーの実現には、まず自動運転車の実現が不可欠だ。関連記事として「【最新版】自動運転車の実現はいつから?世界・日本の主要メーカーの展望に迫る|自動運転ラボ 」も参照。


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