テスラ解雇組の争奪戦に火蓋 自動運転タクシー開発のZooxが続々採用

引き抜き合戦が激化へ



米電気自動車(EV)大手テスラ・モーターズを離れるエンジニアの争奪戦が水面下で始まった模様だ。組織再編に伴い3000人規模の人員削減が明らかになったテスラ社には優秀な人材も多く、自動運転関連各社による引き抜きや囲い込み合戦などが予想される。


シリコンバレーのスタートアップ企業で自動運転車を開発するZoox(ズークス)社も転職先の有力候補の一つに数えられており、すでに多くのテスラ出身者が在籍している同社を志望するエンジニアも相当数でてきそうだ。

■創業以来の赤字体質で人員削減を敢行するテスラ

テスラ社の人員削減は2018年6月、最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏が従業員宛てに送った電子メールで明らかになった。「収益性を改善するため全従業員の約9%を削減する難しい決断をした」といった内容で、子会社を含む同社の全従業員約3万6000人のうち3000人規模の人員整理になる見込み。

要因には、創業以来続く同社の赤字体質が挙げられる。2003年の創業以来、売上高は右肩上がりで伸び続けているものの最終損益は赤字続きで、2017年通期で売上高は前年比60%増の117億5875万ドル(約1兆3000億円)を確保したが、最終損益は前年の7億7304万ドル(約857億円)から22億903万ドル(約2450億円)に膨らんでおり、赤字は累計54億ドル(約6000億円)とも言われている。

2017年に発売した同社初の量産車「モデル3」の生産遅延が尾を引き、生産体制の不備が投資家の懸念材料になっているほか、2016年に買収した太陽光発電設置大手のソーラーシティ社から引き継いだ36億ドル(約4000億円)の負債などが財務を圧迫しており、強まる赤字解消圧力に応える形での苦渋の人員整理となった模様だ。



■330億円を調達し自動運転EVタクシーを開発するズークス

ズークス社はオーストラリア出身のデザイナーTim Kentley-Klay(ティム ケントレイ・クレイ)氏と、米スタンフォード大学で自動運転車の開発チームに参加していたAI(人工知能)エンジニアのJesse Levinson(ジェシー・レビンソン)氏が2014年に設立したスタートアップ。

自動運転EVタクシーの開発をゼロから進めており、ラウンジのような空間を持ったタクシーを2020年度までに開発することを目指している。創業から2年間で3億ドル(約330億円)超の資金調達を成功させるなどベンチャーキャピタル(VC)からの評判は高く、短期間でユニコーン企業の仲間入りを果たしている。

米経済誌のForbesによると、同社の500人の従業員のうち少なくとも80人はテスラ社出身という。個人所有車を開発するテスラ社に比べ業務利用を前提としたズークス社の方が開発の自由度が高いなどの理由が挙げられているが、ワンマン気質で個性豊かなイーロン・マスク氏との相性も根底にありそうだ。

なお、ズークス社は2017年にも米アップル社の自動運転エンジニア17人を採用したことが報じられている。純粋に優れたエンジニアの採用を推し進めている印象で、今回の人員整理によるエンジニアの移籍先の最有力候補の一つと言っても過言ではなさそうだ。


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