提携解消2年で明暗 赤字1800億円のテスラとインテル系モービルアイ 自動運転最前線

世界は両社をどう評価しているか


2018年3月に発生したテスラ車「モデルX」の事故の様子。コンクリートの中央分離帯にあるべき衝突衝撃緩衝具(Crash Attenuator)が以前の事故で撤去されてしたことが、事故の衝撃を大きくしたとされている=出典:米運輸安全委員会(NTSB)の予備調査報告書

米テスラモーターズの電気自動車「モデルS」が2016年5月に死亡事故を起こしてから2年が経過した。この事故から約2カ月後にテスラ社は、自動運転システム向けにソフトウェアの提供を受けていたイスラエルのモービルアイ社(2018年6月現在は米インテル傘下)と決裂し、提携を解消した。

なぜ提携解消に至ったのか、そしてこの2年で両社を取り巻く環境はどう変わったのか。自動運転の是非をめぐる議論が世界的に広がったテスラ社の2度目の2018年3月の死亡事故にも触れつつ、両社の動向と現状を追った。







■決裂のきっかけとなった死亡事故

事故は2016年5月7日、米フロリダ州のハイウェイで起こった。自動運転モードで走行していたテスラ車両が大型トレーラーに衝突し、運転していたドライバーが死亡した。

アメリカ国家運輸安全委員会(NTSB)の報告などによると、信号のない交差点で白いトレーラートラックの下に潜り込むような状態で車両が衝突したという。テスラ社によれば、日差しの強さやトレーラーの白い色が要因となり、自動運転のシステム側がトレーラーを「物体」として認識できなかったようだ。

また、ドライバーは事故当時「部分的な自動運転システム」を稼働させて走行していたとみられるが、実際には手を添えていなければならなかった37分間のうち、ドライバーは25秒間しかハンドルを手で触っていなかったことも明らかになっている。システム側はドライバーに対しても、ハンドルを握るよう警告を7回出していたという。

テスラはその後、2016年9月に警告にドライバーが反応しなかった場合は自動運転機能を使用不可にするなどの仕様変更を発表している。また米国家運輸安全委員会は、車自体には欠陥がなかったと結論づけた。

【参考】自動運転車の事故については、「自動運転の事故まとめ ウーバーやテスラが起こした死亡事故の事例を解説」も参照。
■テスラ社の赤字体質と2度目の死亡事故

テスラ社の経営の特徴としてまず挙げられるのが、右肩上がりで上昇する売上高と赤字体質だ。

売上高は2010年の約1億ドルから2012年には約4億ドル(約440億円)に、2014年は約32億ドル(約3500億円)、2016年は約70億ドル(約7700億円)、そして2017年は約117億ドル(約1兆3000億円)と順調に伸びている。その一方、営業利益は赤字続きで、2016年は6億ドル(約660億円)、2017年は16億ドル(約1800億円)にマイナス幅が拡大している。

資金難が続いているが、それを支えているのが投資家で、株価は上下動こそあるものの順調に推移していた。最高経営責任者(CEO)を務めるイーロン・マスク氏の型破りな発想や強気のビジョンに市場が突き動かされているようにも見えた。

しかし2018年に入ると、取り巻く状況が変わりつつあるのが垣間見える。

3月23日に同社の「モデルX」が衝突事故を起こし、ドライバーが死亡した。同社の死亡事故としては2度目だ。その1週間前には米ウーバーテクノロジーズ社の自動運転車が歩行者をはねて死亡させる事故が発生しており、立て続けに起こった自動運転車の事故とあって大きく取り沙汰された。

多目的スポーツ車(SUV)タイプの電気自動車(EV)「モデルX」=出典:テスラ社プレスキット

3月末には、主力セダンの「モデルS」を12万3000台リコールすると発表。エイプリルフールの4月1日には、イーロン・マスク氏がTwitter(ツイッター)で「テスラが全面的に経営破綻したことを伝えるのは残念だ」とつぶやいたところ、同社の株価は翌日に大きく下落した。

投資に支えられている同社にとっては笑えない冗談となってしまった。5月29日には、「モデルS」が道路脇に駐車中の警察パトカーに衝突する事故も発生した。

6月7日には、3月に発生した事故について米運輸安全委員会が予備調査報告書を発表した。テスラ社の「オートパイロットに問題はなく、事故原因はドライバーがハンドルを握らなかったことだ」という主張に疑問を呈しており、オートパイロットが事故現場直前で車線を離れるハンドル操作をしたことがきっかけになっている点や、本来ならセンサが前方にある物体を認識して減速しなければならないところを逆に加速している点などを指摘している。

テスラ社の受難はまだまだ続いている様子で、場合によっては企業経営の「運転」手腕が問われかねない事態も想定される。開発陣の流出も問題となっており、テスラ社は既に組織再編にも乗り出している。

■800万台分の巨大契約を獲得したモービルアイ社

イスラエルのモービルアイ社については、テスラ社との決裂から8カ月後の2017年3月、米インテル社による買収が発表された。買収金額は、驚愕の153億ドル(約1兆7500億円)と言われており、同社の技術水準が世界最高レベルという評価を得た形だ。

同社は自動車メーカーや部品供給業者20数社にシステムを納入しており、ドイツのBMWや米部品メーカーのデルファイ・オートモーティブなどと自動運転車システムの開発で提携している。2018年5月には欧州に拠点を置く自動車メーカーの車両800万台に同社の自動運転技術を提供する大型の契約を獲得した。

また、モービルアイ社の画像処理チップ「EyeQ」シリーズは世界27カ国・地域で計313車種に供給しており、最新の画像処理チップ「EyeQ4」は中国の電気自動車(EV)ベンチャー企業の蔚来汽車(NIO)の多目的スポーツ車(SUV)タイプのEV「ES8」に世界で初めて採用されるなど、自動運転業界における注目がいっそう高まっている様子だ。

モービルアイはイタリア国内でAI(人工知能)を搭載した自動運転車の走行試験を近く開始することが明らかになっている。欧州でモービルアイ社が自動運転車のテスト走行をすることを初と報じている海外メディアもあり、モービルアイの世界事業は今後より一層加速していきそうだ。







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