コネクテッド技術や自動運転関連技術の高度化や実装が進む自動車業界。技術や各コンピューター機器の高機能化とともに、データを処理・記録する基盤となるストレージの高性能化も進んでいるようだ。
一方、こうしたフラッシュメモリをはじめとしたストレージの規格は意外と知られていないのが実情だ。今回はフラッシュメモリの規格の1つ「e.MMC」に焦点を当て、車載ストレージに求められる要件に触れていく。
■e.MMCとは?
SSDに比べ小型で省電力
e.MMC(embedded Multi Media Card)はフラッシュメモリを採用したストレージ規格の1つで、組込み用のマルチメディアカードを指す。「e-MMC」「eMMC」と記載されることもある。
フラッシュメモリは、データの読み書きが可能な記憶素子で、パソコンでシェアを広げるSSD(Solid State Drive)やデジカメやスマートフォンなどで使用されるSDメモリーカードなどのフォームファクタに実装されて市場に投入されている。
e.MMCは、現ウエスタンデジタル傘下のサンディスクらが開発したマルチメディアカードを組込み用としてパッケージ化したもので、SSDに比べるとデータ転送速度や容量で劣るものの、サイズが小さく消費電力も少ないことから、タブレットなどのモバイル機器を中心に利用されている。スマートフォンの内蔵メモリをイメージすると分かりやすい。
同様の規格にUFS(Universal Flash Storage)があり、e.MMCを置き換える規格として開発や実装が進められている。容易に取り外し可能な外付けメモリであるSDカードに比べ、e.MMCは組込み用のため直接目にする機会は乏しいが、こうしたストレージの研究開発は今なお続いている。
今後、IoTの進展によってさまざまな機器がデジタル化され、通信機能を備えることが想定されるが、こうしたIoTによるデータのやり取りや記録を支えるデータ基盤となるのが組み込み用ストレージなのだ。
■車載分野におけるe.MMCのメリット
小型・省電力が車載の武器に
車載関連機器はスペースや使用可能な電力が限られるケースが多く、e.MMCやUFSが活躍する分野だ。コネクテッド化や自動運転技術の進展に伴い高性能ストレージを必要とする機器も増加することが見込まれるため、e.MMCやUFSにかかる期待は大きい。
従来の自動車においてもコネクテッドサービスが標準化されつつあり、通信機能の搭載やカーナビの進化などとともに求められるストレージの性能も高まっている。人と機械の情報伝達を円滑にするヒューマンマシンインタフェース機能などにおいてもストレージ需要は高まりそうだ。
進化を続けるADAS(先進運転支援システム)も同様で、特に実用化が始まった高精度三次元地図など、ADASの高度化に伴い必要とするデータ量は格段に増している。
まもなく社会実装が本格化する見込みの自動運転レベル3では、センシング関連が一段と高度化し、データ量は飛躍的に増す。画像処理の高速化なども求められ、より専門性の高い車載ストレージが必要となってくる。
■e.MMC製品の例
車載向けのe.MMC製品では、ストレージ大手のWestern Digital(ウエスタンデジタル)が、車載グレードの組み込みフラッシュドライブ「iNAND AT EM122/AT EM132」を製品化している。
最大転送速度400MB/Sを誇るe.MMC5.1インターフェースで、社内テストの結果、読み取り速度300MB/S、書き込み速度最大125MB/Sを記録している。データ容量は最大256GBで、高速起動をはじめ自動リフレッシュ、手動リフレッシュ、ヘルスステータスモニター機能などを備えている。未使用かつ気温55度の環境下におけるデータ保持期間は15年となっている。
このほか、AEC-Q100グレード2に準拠する-40から105度と幅広い動作温度に対応するなど、自動車特有の過酷な使用条件に耐える堅牢性や耐久性も備えている。
用途としては、ADASや自動運転をはじめ、HDマッピングやナビゲーションシステム、V2V・V2Iなどの通信、ドライブイベントレコーダー、テレマティクスやOTA(無線アップデート)、AIデータベースなど、コネクテッドカーや自動運転車を見据えた高い信頼性とパフォーマンスを誇るデバイスとなっているようだ。
■【まとめ】自動運転の進展とともにストレージもさらなる進化
コネクテッドサービスや自動運転の進展とともに、車載ストレージにはいっそうの大容量化や高速化などが求められることとなり、需要の増加とともに研究開発もさらなる進化を遂げそうだ。
また、車載製品では高い堅牢性や耐久性も要求される。フラッシュメモリとしての規格や性能をはじめ、車載に特化した製品であることも重要な要件となりそうだ。
車載ストレージ選びに関しては、Western Digitalが実施している「検証用 Western Digitalフラッシュストレージ無償提供プログラム」をぜひ有効活用したいところだ。
この記事で紹介した「iNAND AT EM122/AT EM132」を含む5種類の製品の中からニーズに合った製品を選ぶことができる。プログラムについての詳しい内容は「検証用フラッシュストレージの無償提供プログラム」から確認できる。
検証用に車載用フラッシュストレージを無償提供!Western Digitalがキャンペーンプログラム(深掘り!自動運転×データ 第35回) https://t.co/MtdTdCPrcZ @jidountenlab
— 自動運転ラボ (@jidountenlab) November 9, 2020
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