LiDARのMEMS式とSolid State式、特徴や違いを解説

自動運転の「目」となるコアセンサー


出典:Velodyne社プレスリリース

自動運転車に欠かせない「目」の役割を担うセンサー類。その中でも近年開発競争が激化しているのがLiDAR(ライダー)だ。当初は自動運転開発用が主流で高価だったが、市販車への実用化を模索する中でさまざまな技術が導入され、低価格化も進んでいる。

現在主流になりつつあるのが「Solid State(ソリッドステート)」式と呼ばれるタイプで、その中でも「MEMS(メムス)」式という技法を目にすることが多い。今回はこのソリッドステート式、メムス式に焦点を当てながら、LiDAR市場の動向を探ってみよう。







■Solid State式とは?

従来の3D-LiDARは筒状で、その中でレーザーと検出器を回転させることで360度全方位を観測する機械的回転方式が主流だったが、駆動部にモーターが必要なため小型化・軽量化が難しく、コストも高いなど量産する上でのデメリットが多かった。

このデメリットを克服するため駆動部をなくすメカレス化が進んでおり、中でも半導体技術や光学技術で機構部を置き換える「ソリッドステート式」が増加している。

ソリッドステートはもともと固体状態を指す英語で、これが高じてトランジスタやダイオード、ICなど、固体の性質を利用した半導体素子の電気回路を指すようになった。

回転機構を持たないため、全方位ではなくレーザーの照射角の範囲でのみセンシング可能で検知領域は小さくなるが、小型で壊れにくく、設置場所の自由度が広がるため、複数のセンサーを利用して水平方向360度をカバーする場合が多い。

LiDAR市場を長らくけん引している米VelodyneLiDAR社もソリッドステート型の安価モデルの開発にめどを付けており、変化する需要に柔軟に対応していく構えだ。

【参考】ソリッドステート式のLiDARの関連記事としては「東陽テクニカ、世界初のTrue-Solid-State型マルチビームLiDARの販売開始|自動運転ラボ」も参照。

■MEMS式とは?

ソリッドステート式におけるスキャン方式の一つがMEMS方式だ。MEMSとは、「Micro Electro Mechanical Systems」の頭文字をとったもので、「微小電気機械システム」を指す。

機械要素部品、センサー、アクチュエーター、電子回路を一つのシリコン基板、ガラス基板、有機材料などの上に微細加工技術によって集積化したデバイスで、プリンターヘッドや自動車のエアバッグ、加速度センサー、プロジェクターで光を制御するミラーデバイスなど、幅広い分野で使用されている。

MEMS方式のLiDARは、一般的にミラーやコイル、磁石などを用いた電磁式のMEMSミラーを用いてレーザー光を走査させる。独ボッシュやパイオニアなどがMEMS方式LiDARの開発に取り組んでおり、パイオニアはMEMS技術を応用した電磁式の小型ミラーとレンズを組み合わせ、遠距離のセンシングが可能なラスタースキャン方式、近距離・広範囲のセンシングが可能なウォブリングスキャン方式の2つのシングルレーザータイプを製品化し、高解像度スキャンを実現している。

■開発が進むさまざまなLiDAR
米スタートアップはフェーズドアレイ方式を採用

米Quanergy Systems社は、ソリッドステート式3D-LiDARにフェーズドアレイ方式を採用した。送信電波の波面制御を電子走査的に行なう静的な掃引方式で、光の位相をコントロールしてビームを配向するという。

通常のレーダーのようにアンテナを回転させてレーダー波を照射・受信するのではなく、位相変換素子を平面に多数並べ、各素子からほんのわずかに位相の異なったレーダー波を照射し、反射してきたレーダー波を重ね合わせることで周囲の物体の位置や3次元形状を計測する技術のようだ。

独大手はフラッシュLiDARを開発

独Continental社は3DフラッシュLiDARの開発を進めている。走査型ではないためスキャン速度が速く解像度も高いという。走査型に比べ概して測定可能距離が短いが、データ取得の繰り返し周波数が速いため、市街地など密集した都市部において複雑な交通環境を把握するのに適している。

■LiDAR不要論

自動運転において、LiDARを不要と論ずる技術者や経営者もいる。有名どころでは、米テスラ社CEOのイーロン・マスク氏が「レーダーとカメラだけで完全な自律走行車をつくれる」と豪語している。

また、日本国内ではAI(人工知能)ソリューションを手がけるRevatron株式会社が、3DカメラにAIの技術を活用したスマートカメラ「View LiDAR」を2018年6月に発表している。

AIを駆使した新発想により、シンプルな視差計算で3次元認識し、カメラのみで自動車から物体までの距離を計測できるほか、その物体がどういったものか識別することも可能な技術を確立した。

■センサー市場は右肩上がり、開発競争の激化は続く

株式会社矢野経済研究所の調査によると、自動運転用センサーの市場は今後も伸び続け、LiDARやレーザーの市場規模は、2017年の約25億円から約4959億円まで約200倍に急拡大するという。

引き続き新技術の研究開発が進められ、高機能化や低価格化も進行していくものと思われるが、LiDAR不要論にあるようにカメラなどのセンサーもまた進化している。

LiDAR、カメラ、ミリ波レーダーなど、それぞれメリットデメリットがあり、複数を組み合わせて搭載するというのが現在における主流の考え方だが、デメリットの克服次第では、第4のセンサー登場の可能性も含めて将来センサー市場を独占する存在が現れるのかもしれない。







関連記事