ライドシェア解禁、「女性は絶対乗るな」ってほんと?

海外では事件も発生、危ない移動手段なのか?



東京23区などで2024年4月8日から、日本で初となる有償ライドシェアがスタートした。最初は地域や時間帯を限定して運行され、今後サービス展開を拡大していく計画だ。「日本版ライドシェア」などと称されている。


海外では一般的なライドシェアサービスだが、海外ではトラブルも起きていることから、日本での導入には安全面などから否定的な意見も多い。ネットでは「女性は絶対に乗るな」といった声も見掛ける。

結論から言えば、女性は絶対に乗るべきではないというわけではない。一方、タクシーに乗車する際と同様、注意した方が良い点はある。整理して考えてみよう。

■運行主体はタクシー会社だから大丈夫?

日本版ライドシェアサービスの概要

日本版のライドシェアでは、あくまでタクシー事業者が主体となる。事業者が一般ドライバーの教育や運行管理、車両整備管理を行うなど全面的に運送責任を負う形で、一般ドライバーはタクシー事業者に属する必要がある。

海外で主流のライドシェアや日本のUber Eatsなどでは、ライドシェアドライバーやデリバリースタッフは「ギグワーカー」として働いている。ギグワーカーとは、インターネットのプラットフォームを通して単発の仕事を請け負う労働者のことを指す。


今回始動した日本版ライドシェアのドライバーは、タクシー会社に所属しているため、「ライドシェアとは言えないのではないか」といった声も多い。

ドライバーの管理・指導体制は?

国土交通省は各地方運輸局自動車交通部長などに向けて、「自家用車活用事業における運行管理について」という書面を出している。「法人タクシー事業者による交通サービスを補完するための地域の自家用車・一般ドライバーを活用した有償運送の許可に関する取扱い」について定めたものだ。

この資料を読むと、ドライバーの管理・指導体制の一端を知ることができる。

▼自家用車活用事業における運行管理について
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001734885.pdf


「自家用車ドライバーに対する指導監督」に関しては、具体的には下記の記載がある。

新たに自家用車ドライバーとして選任する者に対しては、国土交通大臣が告示で定める適性診断を受けさせるとともに、運輸規則第38条第2項に準じて行う指導監督を行うこと。また、自家用車ドライバーとして選任した者に対しては、旅客自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う指導及び監督の指針第1章に定める項目を以下の頻度で教育すること。

・第一種運転免許を保有する自家用車ドライバー・・・四半期毎
・第二種運転免許を保有する自家用車ドライバー・・・毎年

上記の他、自家用車ドライバーに対する指導監督やその記録の保存等は、運輸規則第38条、第39条及び第40条に準じて実施すること。(出典:https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001734885.pdf

つまり、普通自動車免許を持つドライバーに対しては3カ月ごと、タクシー車両などを運転できる二種免許を持つドライバーに対しては毎年の指導監督を行うということになる。そもそもライドシェアドライバーになるには、タクシー会社による研修を受けることが前提条件となっている。その後のチェックなどを定期的に行っていくということのようだ。

また、タクシー配車アプリを介して配車や支払いを行うため、全ての運行記録は保存されることになる。基本的にアプリ払いでキャッシュレスのため、降車時に料金などでトラブルになる可能性は少ない。

ドライバーのサービスの質やマナーは?

一方、実際の乗車時のドライバーのサービスやマナーなどについては、不安な人も多いかもしれない。確かに、国が定めたドライバーに対する研修や指導監督は乗客に対する犯罪行為の抑止力にはなるが、ドライバー個々人の悪意ある行動を完全には防げない。

しかし、それはタクシーも他のサービスも同様のことだ。そのため、今回解禁された日本版ライドシェアだからといって、特段過剰に不安を感じなくてもいいという意見も少なくない。

ちなみにライドシェアを配車できるタクシーアプリでも、すでにドライバーを評価できるシステムになっているものもある。

■海外でのライドシェアの犯罪事例

海外では、米国でライドシェア大手Uberのドライバーが乗客に性的暴行を加えたとして逮捕される事件が、たびたび起こっている。

中国ではライドシェア最大手のDiDi Chuxing(滴滴出行)を利用した女性が立て続けに殺害されるという事件が過去に起きている。さらにDiDiのライドシェアを利用した女性客の様子を運転手が盗撮し、無許可でライブ配信していた事件もあった。

その対策として、米国では女性専用のライドシェアサービス「Safr」が2017年にスタートして話題を呼んだ。Safrは運転手として女性だけではなく男性も一定程度は雇用しているが、運転手も乗客も相手の性別選択権を持つという内容であった。

東南アジアでサービスを展開しているGrabは、ドライバーの登録に際して面接を行うなど、厳密な審査をしているようだ。ただし東南アジアではタクシー車両やドライバーの質があまり良くない国もあるため、一概にタクシーが安全でライドシェアが危険とは言い切れない面もある。

1台のタクシーを許可無しに他の人に貸して、車内に掲示しているドライバーの証明とは全く違う人物が運転しているケースもある。そういった場合は、トラブル時に責任を追及することが難しい。

■女性が注意すべきことは?

日本で女性がライドシェアサービスを利用する場合、心配な点として盗撮行為やセクハラ、暴行行為などが挙げられる。

まずは乗車の際に、車両ナンバーを記憶しておくことだ。登録車両での運行が必須になるためアプリにも表示されているはずだが、念のためだ。これは流しのタクシーを拾った時も同様で、車内のドライバー情報の掲示などを写真に撮っておけば、忘れ物をした際などの問い合わせに便利だ。

自宅前で乗車や降車をしないということも安全対策になる。フードデリバリーでは、ユーザーが女性だと分かった場合に、ドライバーが個人的に再度自宅を訪れるといったトラブルもたびたび起きている。自宅を特定されないように気をつけることも大切だ。

今回東京でスタートしたライドシェアサービスのドライバーには、女性もいるようだ。現段階ではライドシェアドライバーは数が少なく、ドライバーを指定するのは難しいかもしれない。しかし、ゆくゆくは女性が女性ドライバーを指定できることが可能になれば、追加料金を払ってでも指定したいという人は多そうだ。

■日本のライドシェア、今後の進展状況に注目

ライドシェアというサービスは、近年深刻になっているタクシー不足を解消するための良い仕組みであることは確かだ。海外での利用経験者の多くは、日本でのライドシェアも積極的に利用してみたいと思っているといった調査結果も出ている。

このほど始まった日本版ライドシェアが、今後どのように進展していくのか、引き続き注目だ。

【参考】関連記事としては「ライドシェアとは?仕組みは?」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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