
国産車初となるハンズオフ運転を実現した日産の運転支援機能「ProPILOT2.0(プロパイロット 2.0)」。2019年の搭載開始から早7年が経過したが、その実力は国内他社の自動運転レベル2+と比較してもいまだ先頭を走る水準と言える。
このプロパイロット 2.0搭載車両の中で最も売れているのは「セレナ」と思われる。振り返れば、2016年に実装開始された初代プロパイロットが初採用された車種もセレナだ。
登場から10周年を迎えたプロパイロットと切っても切れない縁があるセレナ。セレナの自動運転技術(ADAS/先進運転支援システム)とともに、日産の安全技術に触れていこう。
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■セレナ×安全技術
セレナは日産の主力ミニバン
セレナはミドルサイズのミニバンで、トヨタのヴォクシーやノア、ホンダのステップワゴンなどと競合する車種だ。上級ミニバンのエルグランドと比べ手の届きやすい価格帯で、広い車内空間を有する安定の売れ筋モデルと言える。
年間販売台数は2023年が7万5,000台(ブランド通称別11位)、2024年が8万1,000台(同7位)、2025年が7万1,000台(同11位)で、日産の中ではノートの次に売れている車種となる(一般社団法人日本自動車販売協会連合会調べ)
5代目(2016~2022年)には、日産初のプロパイロットが搭載され、本格的なレベル2時代の幕を開けた。そして2022年に登場した6代目にはプロパイロット2.0が搭載され、レベル2+に相当するハンズオフ運転を可能にしている。
日産の稼ぎ頭でありながら、先進技術をいち早く取り入れた良車種と言えるだろう。
上級グレード「ルキシオン」にプロパイロット2.0が設定されている

セレナにおいて、プロパイロット2.0が搭載されているのは上級グレード「e-POWER LUXION(ルキシオン)」だ。ハイウェイスターなど他のグレードは通常のプロパイロットしか設定されていないため、注意が必要だ。
2022年11月時点で、高速道路同一車線走行時に時速40キロ以上のハンズオフ機能が採用されたミニバンとしては世界初という。
プロパイロット2.0は、高精度地図データと360度周囲センシングにより、同一車線内のハンズオフ運転を可能にするレベル2+機能だ。プロパイロット2.0作動中、ドライバーはハンドルから手を放し、アクセル・ブレーキペダルから足を離した状態でドライビングを楽しめる。
ただし、プロパイロット2.0はあくまで運転支援機能であり、自動運転ではない。ドライバーは常に前方に注意し、道路・交通・自車両の状況に応じて直ちにハンドルを確実に操作できる状況を維持しなければならない。
ハンズオフ運転が可能なのは、高速道路(高速自動車国道法に定められた高速自動車国道、道路法で定められた自動車専用道路)における本線走行中だ。対面通行路やトンネル内、カーブ路、料金所・合流地点とその手前などでは機能しないほか、側方にいる車両には反応しないため、大型車両などが隣の車線を走行しているときは注意が必要だ。
ハンズオフ走行時の車速は、制限速度+10キロの範囲で設定することができる。
利用方法は簡単だ。ナビゲーションシステムで設定したルート上の高速道路の本線に合流し、ナビ連動走行が可能になるとディスプレイの表示と音でドライバーに通知される。
ドライバーがスイッチ操作でナビ連動走行を開始すると、ドライバーが指定した速度を上限に、先行車両との車間距離を一定に保ちながら車線の中央を走行するよう支援する。
前走車が設定速度より遅い場合、システムが追い越し可能と判断するとディスプレイへの表示と音でドライバーに追い越しを提案する。ドライバーがハンドルに手を添えスイッチ操作で承認すると、右側の車線へ車線変更し、追い抜きが完了すると、車線変更可能なタイミングをシステムが判断して同様の操作で元の車線へと戻る。
ドライバーが自分の意思で車線変更を行うこともできる。ハンドルに手を添えて方向指示器を操作し、システムが車線変更可能と判断すると車線変更する。
ルート上の高速道路出口に近づくとディスプレイの表示と音でドライバーに知らせ、連絡路へ分岐した後、ナビ連動ルート走行を終了する。
プロパイロット2.0はセレナとリーフ、アクア、新型エルグランドに設定

プロパイロット2.0は、高精度3次元地図データ、車両周囲360度のセンシング、インテリジェントインターフェース、高精度な衛星測位技術によって実現している。
地図データは、ダイナミックマッププラットフォームが作製したものを利用している。高速道路の形状をセンチメートルレベルの細かさでデータ化した地図データで、全レーンの区分線情報と速度標識、案内標識などの情報を含む。
360度センシングは、7個のカメラ、5個のレーダー、12個のソナーで白線や標識、周辺車両を検知している。インテリジェント インターフェースは、道路や周囲の状況、制御の状態をリアルタイムに伝え、車線変更のタイミングをインタラクティブに決定するという。
高精度な衛星測位技術も自車位置推定の重要な要素となる。通常、GNSSによる位置精度は10~15メートルの誤差を有するが、センチメートル級の精度が必要な測量などで用いられる高度な技術を導入し、自車走行レーンまで正確に特定できるという。
このプロパイロット2.0が設定されているのは、セレナとリーフ、アクア、新型エルグランドのみとなっている。
通常版プロパイロットやさまざまな安全機能を装備
全グレードに設定されている通常版プロパイロットは、高速道路における単調な渋滞走行と長時間の巡航走行の両方に対応し、アクセルやブレーキ、ハンドル操作をクルマが支援する。ハンズオフはできないが、縦方向、横方向の両方をシステムがサポートするレベル2だ。
このほか、以下などの各機能が設定可能となっている。
- 衝突回避ステアリングアシスト
- インテリジェント エマージェンシーブレーキ
- インテリジェント FCW(前方衝突予測警報)
- インテリジェント DA(ふらつき警報)
- 標識検知機能
- インテリジェント LI(車線逸脱防止支援システム)&LDW(車線逸脱警報)
- インテリジェント BSI(後側方衝突防止支援システム)&BSW(後側方車両検知警報)
- プロパイロット リモート パーキング、RCTA(後退時車両検知警報)
- インテリジェント アラウンドビューモニター(移動物 検知、3Dビュー機能付)
- 踏み間違い衝突防止アシスト、インテリジェント ルームミラー
- 出典:日産公式サイト
■自動車メーカー各社のハンズオフ機能
トヨタの現行ハンズオフは渋滞時限定
プロパイロット 2.0のすごいところは、制限速度+10キロの範囲でハンズオフ走行を可能にしている点だ。ハンズオフ機能搭載車は国内でも珍しくなくなってきたが、その大半は「渋滞時限定」に留まっている。
トヨタは2021年4月、新型MIRAIとレクサスの新型「LS」に高度運転支援技術「Toyota Teammate/Lexus Teammate」の新機能として「Advanced Drive」を設定した。プロパイロット 2.0同様、高速道路の本線上で時速125キロまでの範囲でハンズオフ走行を可能とする機能だ。
しかし、現行のMIRAIとLSに設定されているのは「Advanced Drive」ではなく「アドバンストドライブ(渋滞時支援)」となっている。時速40キロまでの高速道路渋滞時にハンズオフを可能にする機能だ。
制限速度を満たすAdvanced Driveがなぜ中止されたのか公式リリースは出ておらず理由は不明だが、トヨタ・レクサスからは現在、渋滞時限定のハンズオフ機能しか提供されていない。
なお、アドバンストドライブ(渋滞時支援)は、アルファード、ヴェルファイア、ヴォクシー、ノア、クラウン、クラウン(エステート・クロスオーバー、スポーツ)、ランドクルーザー250、センチュリーに設定されている。
【参考】関連記事「トヨタの運転支援機能と日産ProPILOT、どちらがいい?【自動運転レベル1〜2】」も参照。
ホンダの最新ADAS「Honda SENSING 360+」はプロパイロット2.0クラス
スバルは2020年に実装開始した「アイサイトX」で、時速50キロまでの渋滞時ハンズオフ走行を可能にしている。レイバック、クロストレック、レヴォーグ、フォレスター、WRX S4に設定されている。
ホンダは2021年3月、リース限定発売した新型レジェンドに最新ADAS「Honda SENSING Elite(ホンダ センシングエリート)」を設定した。高速道路におけるハンズオフ運転を可能にするとともに、アイズオフを実現するレベル3技術「Traffic Jam Pilot(トラフィックジャムパイロット)」を搭載した国内唯一のモデルだ。ただ、限定販売のため現在は購入不可となっている。
その後、2025年に「アコードe:HEV」に設定した最新ADAS「Honda SENSING 360+」で再びハンズオフ機能を提供している。最高時速135キロまで対応した本格派ハンズオフだ。
このHonda SENSING 360+が、現在市販されている国内モデルにおいて唯一プロパイロット2.0同様に高速道路において制限速度を満たすハンズオフ走行を可能にしたものとなっている。
【参考】関連記事「ホンダの自動運転・運転支援技術(ADAS)は?機能・性能を解説」も参照。
■ハンズオフ技術の最新動向
レベル2++が今後のトレンドに?
ハンズオフ機能は、今後しばらく自家用車市場における先進技術として普及が進んでいくことは間違いない。ただ、トレンドはレベル2+からレベル2++に移行し始めている。
レベル2+は、高速道路限定など走行エリアなどに大きな制限が設けられるが、レベル2++は細かな条件は付されず、市街地などほぼ「どこでもハンズオフ」を可能にする高等技術だ。
歩行者が行き交う都市部の商業エリアの交差点などでも、ハンズオフ運転のまま右左折できるのだ。あくまで運転支援機能ではあるものの、交差点対応などは一気にハードルが上がる。ある意味、高速道路限定のレベル3よりも開発の壁は高いと言える。
実装ハードルが非常に高いレベル2++だが、近年、自動運転開発の主流がルールベースからエンドツーエンド(E2E)ベースに移行し始めたことで、実現にめどが立ったようだ。
E2Eは、特定エリアに制限されないレベル5を実現する可能性を持った技術として注目が高まっている。LLM(大規模言語モデル)などのAIの進化により実用化の目途が立ち、テスラなど先行開発勢が「どこでもハンズオフ」に相当するレベル2++を北米などで実装している。
テスラや中国新興勢がリード、日産も追随
今のところ、レベル2++の実用化はテスラと中国のファーウェイなど一部企業に留まっているが、ルールベースに基づいた開発を進めていたWaymoらもE2E開発に注力し始めており、今後、自動運転市場への影響を強めていくものと思われる。
自動車メーカーでは、E2E開発を手掛ける英Wayveと日産が手を組み、次世代「プロパイロット」の開発を進めている。
Wayveの最先端エンボディドAI技術を適用した自動運転ソフトウェア「Wayve AI Driver」と、次世代LiDARを活用した日産のGround Truth Perception技術を組み合わせた次世代「プロパイロット」を2027年度に実用化する。
アリアベースの開発試作車は、高速道路だけでなく市街地の複雑な道路環境においてもスムーズで安全な運転支援を実現したという。全域ハンズオフとなるかは不明だが、レベル2++相当になるものと見られる。
【参考】関連記事「自動運転レベル2+、レベル2++とは?」も参照。
■【まとめ】オールド自動車メーカー初のレベル2++は日産に?
日産の次世代プロパイロットの開発が計画通りに進めば、日本初のみならず、オールド自動車メーカーとして世界初のレベル2++実用化となるかもしれない。
セレナに搭載されるかは何とも言えず、新型エルグランドなどが有力視されているが、日産の復権につながる技術として、その行方にしっかりと注目したい。
【参考】関連記事としては「自動運転レベルの定義【0・1・2・3・4・5の機能・解説表付き】」も参照。













