2020年の自動運転・MaaS業界を総括!9つのトピックスで振り返る

自動運転バスやタクシー、レベル3の進捗は?



2020年もまもなく過ぎ去ろうとしている。新型コロナウイルスの影響などで進捗が鈍った面も少なからずあった中、自動運転やMaaSの各分野でどのような成果があったのか。計9つのトピックス仕立てで、2020年の自動運転・MaaS業界の動向を総括していこう。







■自動運転バスの実証実験が国内で活発化、実用化も
国内で際立つ自動運転バス実証

海外では自動運転タクシーの実用実証が目立つが、国内では自動運転バスの実用化に向けた動きが活発化している。車体は大きいものの、定路線を走行するバスの方が自動運転を実現しやすい点などが背景にありそうだ。

国土交通省・経済産業省の共同事業では、滋賀県大津市、兵庫県三田市、福岡県北九州市、茨城県日立市、神奈川県横浜市の5カ所で実証を進めており、一部では乗客を乗せるサービス実証を行っている。

横浜市ではこのほか、同市と相鉄バス、群馬大学、日本モビリティが2020年10月、大型バスの遠隔監視・操作における運転席無人自動運転の実証実験を営業運行で実施している。

また愛知県では県とNTTドコモなどが常滑市中部国際空港島で「空港島全域における自動運転車両による移動」をテーマにした自動運転の小型バス車両を運行させる実証実験を2020年10月に実施している。

羽田空港では、国の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の一環として、埼玉工業大学が空港周辺の公道で自動運転バスを活用した実証を行っているほか、羽田空港に隣接した複合施設「HANEDA INNOVATION CITY」敷地内では、BOLDLYやマクニカらが仏製NAVYA ARMAによる定常運行を2020年9月に開始している。

【参考】自動運転バスの実証については「自動運転バス、最新動向まとめ!2020年の実証実験は既に10件超」も参照。

公道における定常運行もスタート

茨城県境町では、BOLDLYとマクニカの協力のもと2020年11月に公道における自動運転バスの定常運行がスタートした。自治体が自動運転バスを公道で実用化するのは国内初で、車両はNAVYA ARMAを活用している。

■自動運転レベル3の解禁とホンダの発売計画
道交法と道路運送車両法改正でレベル3が可能に

改正道路交通法、及び改正道路運送車両法が2020年4月に施行され、レベル3車両の公道走行が可能になった。法的に自動運行装置が位置付けられ、自動運転中のドライバーの行動についても一部緩和される格好となった。

自動運行装置の保安基準としては、走行環境条件を外れる前に運転操作引継ぎの警報を発し、運転者に引き継がれるまでの間安全運行を継続すること、及び引き継がれない場合は安全に停止することや、ドライバーを監視するドライバーモニタリング機能の搭載、サイバーセキュリティ対策、作動状態記録装置の搭載などが定められたほか、自動運転車であることを示すステッカーを車体後部に貼ることも求めている。

一方、自動運転中のドライバーには、道交法第71条に定められたスマートフォンの通話やカーナビなどの画像表示用装置の注視を禁じる規定を適用しないよう定められた。こうした運転以外の行為「セカンダリ・アクティビティ」がどこまで認められるかはまだあいまいな点も多いため、今後の動向に注視が必要だ。

ホンダがいち早くレベル3発売へ

レベル3搭載車両は、ホンダが2020年11月までに同社の自動運転システム「トラフィック・ジャム・パイロット(TJP)」の型式指定を取得しており、2020年度内にTJPを搭載したレジェンドを発売する予定だ。高速道路上などでの渋滞時、時速50キロ未満で自動運転を可能にする。

海外勢では、独BMWが2021年中に量産化を開始、ダイムラーも同年中にレベル3システムをオプション追加する予定。中国勢では、長安汽車が2020年内に量産体制を進めるほか、吉利汽車が2021年に発売、Human Horizonsが2020年末から生産を開始する車両に搭載する方針のようだ。

ホンダ・レジェンドがレベル3を実装した世界第一号の量販車となるか、注目が集まるところだ。

■自動運転タクシーで「セーフティドライバーなし」続々

米グーグル系Waymo(ウェイモ)が2019年11月ごろ、セーフティドライバーなしの自動運転タクシーサービスに着手してから1年が経過した。この1年で中国勢を筆頭に各地でサービス実証が加速しており、中にはウェイモに続けとセーフティドライバーなしの無人運行に着手する例も出てきた。

中国では、AutoXが2020年12月に深圳において無人の自動運転タクシーの運行を開始している。また、百度も2020年12月までに、北京でセーフティドライバーなしの公道実証許可を得たと発表している。

中国ではこのほかWeRide、Pony.ai、Didi Chuxing、Momentaといった新興勢力が同サービスの実用化に向け開発・実証を進めており、AutoXらに続く企業が相次ぐ可能性が高い。

米国では、Aptivと韓国ヒュンダイの合弁Motionalが2021年にも自動運転タクシーの本格展開を図る予定のようだが、当面はセーフティドライバーが同乗する形式となる。

一方、GM系CruiseやAmazon傘下のZooxなどはハンドルやアクセルなどの制御装置を搭載していない量産モデルをすでに発表しており、これらが実用化される際はドライバーレスとなる見込みだ。

国内ではティアフォーなどが運転席無人で遠隔型自動走行も

国内では、ティアフォーやMobility Technologies、損害保険ジャパン、KDDI、アイサンテクノロジーの5社が取り組む自動運転タクシーの開発プロジェクトにおいて2020年11月に公道実証が行われ、運転席無人による遠隔型自動走行も行われたようだ。

社会実装に向け世界各地で実証が加速する自動運転タクシーの最前線は、「ドライバーレス」が1つのキーワードになりそうだ。

【参考】自動運転タクシー開発企業については「自動運転タクシー、Googleだけにあらず!「実証」と言えど定期運行続々」も参照。

■有望企業の上場

2020年には、大注目のスタートアップがナスダック市場に上場を果たした。LiDAR(ライダー)開発を手掛ける米Luminar Technologies(ルミナー・テクノロジーズ)だ。初日の2020年12月3日は22.98ドルで終え、その後は一時40ドル台まで値を上げるなど人気も上々のようだ。

2021年上半期には、自動運転トラックを開発する中国系スタートアップのTuSimpleが米国でIPOを予定しているようだ。国内では、画像認識アルゴリズムを開発するフィーチャが2020年6月に東証マザーズに上場している。

上場に限らず資金調達は依然活気づいており、フォースタートアップスが発表した「国内スタートアップ資金調達金額ランキング(2020年1〜11月)」によると、Mobility Technologiesが266.2億円で1位、ティアフォーが49.8億円で13位、空飛ぶクルマを開発するSkyDriveが38.9億円で18位にランクインしている。

ファンド側では、トヨタ系TRI-ADが運用総額8億米ドル(約879億円)のグローバル投資ファンド「Woven Capital」の設立を発表するなど、業界の成長を支える動きもまだまだ活発なようだ。

■自動運転トラック、日本は出遅れ感?
米中勢がリード

自動運転トラックの開発分野では、米国・中国勢が大きく先行している印象だ。米国勢は、ウェイモやテスラをはじめEmbark Trucks、Kodiak Robotics、Gatikなどのスタートアップも多く参入している。

Gatikはスーパー大手のウォルマートと協力し、ミドルマイル物流を担う完全無人の自動運転トラックを2021年にも導入し始めるようだ。

中国も同様で、TusimpleやPlus.aiといったスタートアップをはじめ、EC大手の京東商城なども開発を進めている。

すでに「米大陸横断」などの長距離実証を済ませているケースも多く、実用化を見据えた取り組みも目立つ。

国内も活発化の様相見せる

一方、国内ではいすゞやUDトラックス、日野、三菱ふそうといったメーカーが主力だ。高速道路における隊列走行技術の実証が際立つが、日野は大林組と大型ダンプトラックによるレベル4の実証を2020年11月から実施するなど、具体的な取り組みも出始めている。

2018年にレベル4を搭載した大型トラックの走行デモンストレーションを行ったUDトラックスは、2021年上半期にいすずグループ入りする予定で、研究開発面での進展にも期待したいところだ。

また、東京大学発ベンチャーのTRUST SMITHも自動運転トラックの開発を手掛けており、2020年11月には閉鎖空間におけるトレーラーの自動運転技術の開発をスタートしている。

米中勢と比べると日本の出遅れ感は否めないものの、大型で重量のあるトラックの自動運転化は、乗用車よりも後になると想定される。日本の狭い道路に対応した開発に向け、この分野への新規参入・企業連携などにも期待したい。

【参考】自動運転トラックの開発企業については「自動運転トラックの開発企業やメリットまとめ」も参照。TRUST SMITHの取り組みについては「東大発TRUST SMITH、閉鎖空間でのトレーラー自動運転へ開発開始」も参照。

■自動運転の大規模実証都市・実証施設計画のトレンド
国内ではWoven City計画

2020年の国内ニュースは、CES2020でのトヨタの実証都市「Woven City(ウーブン・シティ)」で大きく幕を開けた。工場跡地を再開発し、居住者や研究者の参加のもと、自動運転やMaaSをはじめ、AIやロボット工学、パーソナルモビリティ、スマートホームなどさまざまな技術やサービスを実証できる都市を構築するプロジェクトだ。

IoTをはじめとした先端技術を駆使して社会課題を解決する意味ではスマートシティの取り組みに類似しているが、各地のスマートシティプロジェクトが各々の地に適した固有のまちづくりを進めているのに対し、Woven Cityはあくまで実証都市であるため、ここで培われた技術やサービスは汎用性を持ち、各地に導入を図ることが可能となるかもしれない。

また、民間主導で一からインフラを建設していく取り組みは極めて稀だ。構想では最終的に70.8万平方メートルでまちづくりを進めていくという。これは840メートル四方の土地面積に相当する。

【参考】トヨタの戦略については「トヨタの自動運転戦略を徹底解説!2020年代に起こす大変革とは?」も参照。

海外では中国やオーストリア、カナダでも

中国では、国家プロジェクトとして北京や上海といった主要6都市近郊でスマートシティを一から構築する大規模プロジェクトが各地で進められている。オーストリアでは、首都ウィーン郊外の飛行場跡地を活用したスマートシティプロジェクトが進行中だ。カナダでは、グーグル系のSidewalk Labsがウォーターフロント地区を再開発する計画を進めていたが、こちらは頓挫したようだ。

海外では、英ジャガー・ランドローバーがアイルランドで自動運転やコネクテッドカーなどの技術を実証できる「SMART CITY HUB」を開設することを発表している。12キロの公道やスマートジャンクション、コネクテッドカーパークと呼ばれる施設を構築し、自動運転車が自動車や歩行者と共存できるテクノロジー施設を目指すようだ。

こうした取り組みからどのような技術やサービスが誕生するのか、未来都市づくりに向けた期待は大きい。

【参考】世界各地の取り組みについては「自動運転を導入する未来都市、国内外の巨大プロジェクトまとめ」も参照。

■交通事業者主体の地域MaaSの増加

国の音頭のもと各地でMaaS実証が盛んに行われている。経産省、国交省によるスマートモビリティチャレンジ事業の実証地域には、2020年度に52地域が選定された。このほか、交通事業者が主体となって構築を進めている事業も多い。MaaSの概念は、交通課題の解決に対し欠かせない存在となりつつあるようだ。

JR東日本は2020年1月、駅からのラストワンマイルを担うタクシーやシェアサイクルの予約や決済を可能にするMaaSアプリ「Ringo Pass」の提供を開始した。一方、JR西日本は観光型MaaS「setowa」やJR西日本グループのサービスを気軽に受けられるアプリ「WESTER」などの実証・実装を進めている。

このほかにも、東急電鉄による「Izuko」や小田急電鉄による「EMot」など、特定エリアで利便性を発揮するアプリも年々増加している。汎用性のあるトヨタの「my route」は、福岡市や横浜市などエリア展開を進めている状況だ。

この傾向は2021年以降も続き、交通事業者や自治体を主体に新規参入が続き、日本全国のカバー率を徐々に高めていくものと思われる。その後は一部地域で競合し始め、MaaSの統廃合や連携などが進む可能性もありそうだ。

【参考】日本におけるMaaSの取り組みについては「【資料解説】日本版MaaS実現へ、2025年度までの国の青写真」も参照。

■不動産会社などの異業種のMaaS参入が顕著に

移動の利便性を高めるMaaSは、移動の目的となる異業種を結び付けることでその真価を発揮する。異業種の代表例が不動産業で、MaaS×不動産の取り組みはすでに産声を上げている。

日鉄興和不動産は2020年2月、分譲マンション向けのMaaS「FRECRU(フリクル)」の実証実験を開始した。東急不動産は東京の竹芝エリアでモビリティサービスの実装に向けた実証実験を行ったほか、リゾート物件におけるMaaSの導入実証も行っている。

三井不動産はMaaSの生みの親とされるフィンランドのMaaS Globalと協業し、スマートシティ化を進める千葉県柏市の柏の葉キャンパスで導入を図っていく方針だ。

さまざまな不動産や物件とMaaSを結び付けて移動の利便性を高めることで、立地の有利不利を縮小することも可能になる。また、さまざまな自動運転モビリティやパーソナルモビリティが実装されれば、子どもから高齢者まで気軽な移動が可能になる交通環境も生まれるだろう。

他業種では、フィリップス・ジャパンがヘルスケアモビリティの導入・活用に向けた実証を行っているほか、ノバルティスファーマが慢性眼疾患の治療継続率向上を目的とするMaaSを活用した患者サポートプログラムの実証を進めている。医療や福祉分野との連携なども今後注目が高まりそうだ。

■観光MaaSアプリのリリースが本格化

数あるMaaSアプリの中でも、ビジネス面で大きな期待を寄せられているのが観光型MaaSだ。ターゲット層が地域住民をはじめ広範にわたるほか、観光施設をはじめ旅行につきものの宿泊や飲食、土産など地域経済と結び付けやすいからだ。周遊性も向上すれば、それだけ地域経済に好影響が生まれる。

東急やJR東日本、伊豆急行が取り組む観光型MaaSアプリ「Izuko」は2019年4月の実証開始から進化を続け、2020年11月スタートのフェーズ3では、デジタルチケットに対応したサービスが交通チケット16種、観光施設21種、観光体験や飲食104種まで増加している。

JR東日本はこのほか、2021年4月から東北6県を対象とした観光型MaaS「TOHOKU MaaS」を開始する予定だ。

京浜急行電鉄と都市開発支援スタートアップのscheme vergeは、神奈川県の三浦半島における観光型MaaS「三浦Cocoon」を開始している。JTBグループと東武グループは、栃木県の日光地域で環境配慮型・観光MaaSの2021年度導入に向けた検討を開始している。

国交省の日本版MaaS推進・支援事業関連では、北海道札幌市や栃木県宇都宮市、神奈川県南東部の三浦半島、広島県福山市、愛媛県南予地域、沖縄全域など、観光に重点を置いた取り組みも目立つ。

高いビジネス性は継続性や新たな参入を生みやすい。エリアによるが、観光型を軸にMaaS利用を促進し、普及を図っていくのも1つの手だろう。

■【まとめ】2021年もビッグニュースが飛び交う年に

コロナの影響を吹き飛ばすかのように自動運転・MaaSの各分野でしっかりと成果が上がり、着実に前進を遂げる1年となったようだ。

2021年は、Woven Cityの着工やホンダのレベル3車発売など、国内だけでも序盤から大きな話題が見込まれている。夏には東京五輪も開催される予定で、改めてイベント内外における自動運転技術のお披露目や活用などに注目が集まりそうだ。

また、こうした話題をさらに上回るようなビッグニュースが飛び出し、業界がいっそう活気づく年になることを期待したい。

【参考】関連記事としては「自動運転ラボ、2020年に読まれたニュース記事ランキング!」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)









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